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人生は亀の歩みのように

作者: かいみん珈琲

作品の裏に皮肉を込めてます。


でも、当然ながらフィクションです。


自分も頑張ろうという意味も込めてます(笑)

2040年 某月某日  出版社会議室にて



 ――私はノロマな亀。  

 

 自分が求めていた場所やモノ。

 人生の中で最後までに手に入れていれば、それでいいんですよ。



 そう語り始める、Bさん。

 20年ほど、敏腕編集長として腕を振るってきた彼。

 

 歳は60近い。

 シワを深く刻んだ頬が、終始、笑顔となって吊り上がる。


 若手の男記者は、彼の半生について聞く。

 Bさんはまだ無名だった、若い頃の昔話に花を咲かせる。


 当時、Bさん(当時20歳)に同年代のAさんがいた。

 彼らは大学の同級生。

 共に小説家を目指そうと息巻いていたそうだ。


 


 とある日。


「なぁB、オレらが書いてる小説をこのサイトに載せてみようぜ?」

「小説投稿サイト? なにコレ……なんか怪しい……」


「怪しくねぇよ。それはたぶんまだ出来たばっかのサイトだからだ」

「そうかな……ボクはパソコンで字を読むより本の方が……」


「でもよ、これで投稿すればオレらの小説を全国の人が読んでくれるんだぜ? すごくね?」

「そう、だけど……」


「まぁまぁ少しは新しい事にチャレンジしてみようぜ! な!」




 とある日。


「なぁB、見てみろよ! オレの小説がレビューも評価もすっげーついてるぜ!? 幸先良すぎだろ!?」

「すごいね。ボクなんて全然、読まれてもいないよ……」


「なぁーに気にするなよ! オレの方が内容もタイトルのセンスも良いってだけさ!」


「それって自慢?」

「まぁね!」




 とある日。


「………………」

「なにやってんだ、B?」


「うん。ツブヤキをね、少し」


「ツブヤキ? あぁ自分の事とか、何やってるかってタイムラインを投稿するヤツか……ってお前、小説投稿はどうしたんだよ!?」

「やってるよ、ちゃんと。でも、このままただ投稿してるだけじゃ誰も読んでくれないからね」


「読んでくれないから、ツブヤキ……? わけわかんねぇよ」

「まずは告知だよ。ボクがこんな小説を書いてるって知ってもらうための」


「ふーん。オレはそんな事よりも、毎日ガンガン投稿してる方がいいと思うけどな……そのおかげでいつもランキング上位だし!」




 とある日。


「……おい、B。またツブヤキしてんのか?」

「ううん。今度はブログ作ってるんだ」


「は? ブログ? お前、いい加減小説一本に絞れよ! 小説家になりたいんじゃねぇのかよ!?」


「なりたいよ。だからブログなんだよ」

「意味わからん。いっちゃ悪いが、亀みたいなノロマさにイライラするぜ」


「亀で結構。ボクはボクなりの方法で小説家になるんだよ」

「ふんッ! オレが先だよ! こないだ編集者から連絡があってオレの小説を本にしてみないかって誘いがあったんだ!」


「へぇあめでとう、A君」




 とある日。

 

「あれ、どうしたのA君。そんなしょげた顔して……」


「……最近、スランプなんだ……投稿サイトでは新作を出しても人気なのに、それを本を出版すると全然数字が伸びなくてさ……」


「本屋さんではあまり人気が出ないって事?」

「はは、そうみたいだな……ちぇ……図星すぎて反論もできねぇ」


「広告とかしっかりしたの?」

「……ほとんどない。同じ出版社の巻末に載るくらい、だと、思う」


「本屋さんではどう陳列されてたの?」

「……同じジャンルの新作の中にちょこんと、数冊だけ横積みで……」


「そう、なんだ……」


「そういや、B。お前も今度初めて書籍化するんだってな……おめでとう。オレみたいな一発屋にはなるなよ……?」

「うん。ありがとうA君」




 とある日。


「なぁなぁB! お前コレはどういう意味だよッ!?」

「え? どういう意味って?」


「コレだよッ! なんでお前が書いた処女作の本の帯にあの有名小説家のコメントが載ってるんだよッ!?」

「ああ。『〇〇先生 大絶賛!!』って帯ね。〇〇先生とはブログで知り合って仲良くなったんだよ」


「しかも売れた数もすっげーらしいじゃねぇかよ! どんな手を使ったんだ!」


「どんな手って……普通だよ。ボクの書いている小説の事や小説家の仲間とツブヤキをしていただけだよ? それがいろんな人の目に止まってくれたんじゃないかな」


「いろんな人の目に……?」

「うん。小説投稿サイト以外の、不特定多数の人にね」


「………………」

「たぶんね。A君の作品は投稿サイトだけに読んでもらえる方法なんだよ。ボクはそんな事が嫌だから、投稿サイトの他にもツブヤキ、ブログで喧伝したり、そこにも小説を載せていったんだ」


「……つまり、オレは井の中の蛙って事か?」

「そこまではいわないけど……ボクは井戸の蛙でも、足の速いウサギじゃなくていい。ノロマな亀で十分。ボクがしたい事を、着実にできれば」


「……したい事……」

「そう、したい事。ボクはいろんな人にボクの書いた小説を読んでほしい。そのためには投稿サイトだけじゃ役不足なんだよ」




 ――ほら、よくいうでしょう。

 

 と、Bさんは記者に微笑んだ。


 何事も急がば回れ、とね。

読了ありがとうございました。


現在に満足せず、

亀の歩みでもいいから頑張ろうと思えていただけたら幸いです。


もし、ちょっと考えさせられたとか。

もし、皮肉で耳が痛いなとか。


そんな方がいらしたら評価やブックマークをしていただけると励みになります!!

よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の書いた小説を、いろんな方面の人に読んで欲しいというしっかりしたものを持っていることが素晴らしいと思います。
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