第10話 針牛
「いや、エグザムドとか言うのの情報書けよ。消化試合だからって書くのやめるのはさぁ……」
エレメンツ本部ビル7階の自分の部屋で、俺、コロナは輝の提出していた報告書を読んでいた。まあ、その報告書はたまにある問題だらけなやつだった(恐らくは書いてる途中で飽きたか用事が入ったか)が。
問題というのはちょこちょこ脱線する上にこちらとしては肝心要なところがまるで書いていない、というのがそれだ。巨大怪獣の対処法やらテロリストと化した元中堅ギルドの集団など、俺たちテンスやハンドレッツの一部はともかく、サウザン以下他大部分には注意しなければならない事柄だ。……多分、聞く前に殺ったとか、調べてもわからなかったとか、どうしようもない部分もあるのだろうけれど。それにしたって怪獣の倒し方くらい……まさか、さっさと終わらせるために最大技ブッパしたら倒れたとか? ……あー、聞くのヤダなぁ。
そんな事を考えながら少し冷めた紅茶のカップを傾け、頭の中の靄を払うため口の中に流し込むようにして飲んでいると、ドアがコンコンコンコンと、4回ノックされた。
「いるよ、どうぞ」
とりあえず存在を示すと入室を促す。4回ノックってことはなんやかんやほぼ一人に限られる。一般、というか下のギルド員は大抵3回だし、レイヴンもなんやかんや3回。トールとイルムはノックしないしハルやミラーは2回。ローゼさんの場合はメッセージが届く。あの人ノック嫌いなのかと聞いたらいっぺんイギリス時代の友人の部屋のドアをノックしたら爆発してそれからノックしないようになったとか。嘘臭い。まあ結論としてはマナーの類を知っていて、しかも日本の通説通りのものではなく4回やって知識のマウントとか完璧なビジネス上の付き合いみたいな心の距離の遠さを示してくる、セリオさん、となる。
「入るわね」
うん、ビンゴ。そのなんというかビスクドールみたいな佇まいはタイプではないにしろ綺麗だとか好ましいと思えるのに言葉とか態度の冷たさですごい気まずい、重苦しい雰囲気をまとっている。陰口とか叩かれてそう。胸も大きいのに。
染めてはいないであろうと確信できるほど艷やかできらびやかな長い金髪をなびかせながら部屋に入ってくる。本当に所作はキメッキメなんだけどなんだろうな、美しいとか以前に怖いが先にくるの。人形というほど無表情なわけではないけど基本真顔で動いてるから出で立ちと相まって、こう、呪われそうっていうか。なんか人工物っぽいからか? まあそういるもんじゃあないしな、低身長金髪巨乳……
「失礼な事考えてるわね……」
「えっ、いや、そんなことは…「表情に出てる」あ、はい、すいません」
通とかローゼさんとかこの人とか。すごいさらっと心読んでくる節あるんだけど俺ってそんなに表情に出るタイプなんだろうか。いや、でも通とかはどっちかって言うと……こう、言語化しづらいけど多分、全身きぐるみ状態で顔が見えない状態でも読んできそうな気配あるんだよな。
とりあえず本当に考えていたので思わず敬語で平謝りになりながら、その手に持った書類に目が行った。
「まあ、良いわ。取り敢えず之、ローゼ側からの報告書。一応メッセージでレイヴンには送ったそうだけど、『なんか不安だから』ってこっちにも送ってきたわ」
「え? あ、本当だ。レイヴン、これは送ってきてないな」
差し出された報告書をパラパラとめくり、なんというか事実だけを陳列した内容に目を滑らせながら読み終わると、とりあえずテロ組織の名前と怪獣の特徴の部分を抜き出してメモにまとめておく。とりあえず対応の方を進めよう。てかやっぱりあのバカ最大技ブッパやりやがってる。いや、もう街に入り込まれてるからってのはわかるけどさ。
「それで、他にも何かあるのか? 多分、これだけだったらわざわざ俺の部屋をノックとかしないだろう?」
「そうね。この間の借り、返して貰おうと思って」
「あの武士もどきスライムの? そりゃあ戦利品以外の報酬は渡さなかったけどさ、あれどっちかってぇとレイヴンにキレられてそれどころじゃなかったから「言い訳を聞きたいんじゃないの。気になったアイテムが有るから其れを狩りに付き合えってだけの話」……ウス」
気まずさから口が回る回る。なお、即効で中断させられる模様。いや、だって、この人相手に無言とか好きに言葉のナイフで切り刻んでくださいと言ってるようなものだし……まあ、変わらなかったけどさ。
「しかし、ローゼさんは? 俺よりもあっちのほうが対応幅広いけど」
「居たなら頼んでるわよ。ローゼ、現実の方の仕事でね。会った事が有るから解ってるでしょうけど、そうとは見えなくても講演会とかで忙しい時も在るの」
「あぁー、そっかぁ、なーるっ」
ローゼさん。基本このセリオさんの保護者みたいな顔してる非保護者。まあ大学教授っていう肩書、【Re:Mapping法】とか言う脳機能回復の方法及びそれを可能とする機械の開発っていう名声からは常識的に考えればあちらが保護者なんだろうけど、ローゼさんにはちょっとした、こう、言葉を選ぶと少し世間ずれしている部分があって、そのフォローをやっているのが現実では教え子というか医学生としてローゼさんのゼミに所属するこのセリオさん。セリオさんが保護者に見えるというのが盆に現実の方で出会った俺の率直な感想だ。ヒカルとかイルムとかはまた違うんだろうけど。トオルとハルはこう、身内だしな。
まあそんな感じのローゼさんだが、第一印象はカタギじゃないし、よしんばカタギでも頭脳労働からは程遠そうな見た目、というのが事実。筋骨隆々で右目が義眼、顔の右側には大きな裂傷痕ありって時点でその印象は避けられないだろう。
話してみるとジョークとかも普通に言うんだけどジョークの時すら眼が微塵も笑ってないからな。いや、俺が義眼の方ばっか気を引かれているからかもしれないけれど。
「で、俺に白羽の矢が立ったと。ハルは……あぁ、アイツ今日バイトとか聞いたな。イルムとかも遠距離行けるし良かったんじゃ?」
俺の言葉にセリオさんは顎に手をやると、その大きな胸を強調するかのように胸を張りながら宣言する。
「知らなかった? 私、結構人見知りなの」
「……胸張ることじゃない気がするなぁ……」
―――――
ユースティス・クライング・ウェイストランド。まあイニシャル取ってECW。誰なんだろうねユースティス。
そんな荒野になんの用があってきたのかというと、ユニークアクセサリがほしいんだとか。ユニークアクセサリ、まあユニークアイテム全般に言えることだが、そのドロップするモンスターの素材を利用して作ったとしても再現のできない、すなわち、作成再現性のないものがユニークアイテムと呼称される……らしい。とはいっても考察系のサイトに書いてあったことの鵜呑みだけど。
そこら辺は興味があんまりないから良いとして、欲しいユニークアイテムというのがステータスの頑丈値上げて全体的な耐久性を底上げするペンダントなんだとか。長所伸ばしたほうが良い気がするんだがね。敏捷上げるとか、突き技のために重量上げるとか。
「レベルが貴方達に比べて低いから、回避不可全体攻撃とか来たなら為す術なく死ぬしかないの。それは避けたいところね」
「トラウマかなんかあるんですか?」
「大学のゼミ生の同期達とローゼでやってる時それに似たモノで私だけ庇われてね」
「一人だけ残った、って上にそういうのもあるって知ったからこその対策ってことです?」
「解っているならば態々口に出す事じゃあ無いでしょう?」
「ウース」
セリオさん人見知りとか以前に踏み込まれるの大嫌いなの直すべきじゃあないかなあ。
いや、恥ずかしいってのはわかるんだけど、これだけで怒気孕ませて釘指すのは、ちょっと、何言えばわからなくなるぞ……?
「まあローゼも口にはしないだけで対策はとっていると思うわ。私とは、別ベクトルでしょうけど」
「考え方、結構違いますものね」
「所詮秀才と天才ってやつのカテゴリの差よ。ああまで違うと呆れも混じるわ」
「その割にはローゼさんについて話す時声が嬉しそ「黙りなさい」ウィッス」
俺の首に小太刀か突きつけられるがセリオさんは俺とは真逆を向いて顔を隠している。けど、耳は見えるし真っ赤だし。声も羞恥で震えている。この人自分で思うよりポーカー・フェイスできてないんだよな。もっとこういうところ見せたら周りと仲良く「考えを止めないなら喉かっさばくわよ」
「考えに介入はちょっとずるいんではないですかねぇ……!?」
「表情に出てる」
「そんな漫画の吹き出しみたいになってんの俺の表情!?」
思わず手鏡を出して覗き込む。よし、今日も男前! じゃなくて。
「まあそこら辺は置いといて。お目当てのモンスター、そんなレア物なんですか? やけに出てきませんけど」
「……まあ、トラブル、かアクシデント、でしょうね。目立った条件もない報告例も多い、ドロップ率だけ低い。そんなアイテムを落とすモンスターだったから。周って狩っていくつもりだったんだけど……人の気配とか、調べられるかしら?」
「……特にそういう特殊能力やらはありませんが……他のモノを使えばわかります。というか……映った」
話をしている最中に目の端に映ったある種の痕跡。踏み荒らされた地面の不自然な高さの違い、言ってしまえばそれだけ。
「偶々狙いが被った、ってぇだけならいいんですがね」
「覚えておきなさい、こういう時の悪寒やらなんやらは案外高い的中率を誇るのよ」
「ですよねぇ」
―――――
「……ニンジャ?」
物陰から覗いた先、荒野を歩く面頬をつけた顔も分からぬニンジャとしか形容の仕方のない怪しい奴ら。
そんなものが目に入ればセリオさんの馬鹿馬鹿しそうな声にも思わず頷きかけるわけで、違和感も相まって眉を顰めるしかできない。あれ、荒野とはいえ多分、疚しいことしていて周り警戒してるんだよな? じゃないとモンスター相手に警戒してるにしちゃあ匂いとかには気を使ってないし……人相手にしか警戒してないみたいだ。聖奈、あの輝のファン兼自称御庭番は『隠密行動中に匂い消しまでやるとかえって怪しまれるんですよね』とか言ってたし。その割には足元下駄だし。なんでソロソロ動いてんのにカラコロ音鳴らしてんの? ギャグだったなら腹抱えて笑い飛ばしたいんだけど。
「うーむ、セイナ……違った、スァッカとは別流派、みたいですね。頭巾だとか忍者刀とか細かいとこが違う」
「今流派は関係ないでしょう? アレ、エレメンツの所属なの?」
「見覚えはないですね」
あんなのいたら速攻聖奈とか通あたりが『笑えるニンジャファンボーイ』とかいって報告上げてくるし。聖奈はともかく通は多分ぶっ飛ばしたあとで報告上げてくるんだろうなぁ……。そう考えると、まだ俺たちが先に見つけてよかったのかもしれない。
「で、どうするの?」
「事情聴取ですかねー。まあ一応、もしかしたら、ですけどガチのニンジャファンボーイでそれっぽい格好でそれっぽい動きをしながら狩りに来てた可能性もまあ、ないことはないですし。いや、ここまで怪しいと逆にあるかもしれない」
「……怪しすぎて、敵意とか害意とか、全くわからないものねぇ……。そうしましょう」
意見を合わせた俺達は意を決して物陰から立ち上がる。そして声を上げた。
「ギルド・エレメンツ、クラン・テンス。コロナ」
「同じくセリオ」
「そこのニンジャファンボーイ共。セブンス・ストリークに近いこの荒野で何してた? この道はギルドスラムに繋がるが。ただの狩りなら悪いがその面頬外して名前を言いな」
背負った大剣に手をかけながら、俺はファンボーイたちに声をかける。ギルドスラム、正直関係が微妙なギルドが門の外に支部建てまくりやがった場所は、チョクチョク見回って不審な動きがないかを確認している。……確認してなかったら街中でテロ起こされたし。あの愉快犯共が。そんなわけでなんかあったら輝とか通とかあと限界達したイルムがタングステン棒持ち出してまでギルドスラムを襲撃しても、まあ文句は以前テロしやがったバカギルドに言ってくれとクレームを受け流しているわけだ。
そんな場所にこんな怪しいのが行くとか何するか予想がつかなさすぎて困るというのが正直な気持ち。さっきまでの動きで腕前は正直期待できないんだよなぁ……
忍者リスペクトのギルドがいくつかスラムにあったはずだし、そもそも体捌きがなぁ、武道とかカジッてる感じでもない、喧嘩慣れもしてなさそう、そもそも名乗りあげた時からひたすらに目が泳いでる。何だコイツら。
「フ……フン! ただ魔物を狩りにきただけの事、とやかく言われる筋合いはなし!」
ダウト。目を見ればわかる。キョドってんな。おそらくリーダー格なのだろう、集団の中心にいた少し背の低いニンジャファンがくぐもった声で告げるが、ここまで下手だと何もいう気が起きない。ニンジャ向いてないな。騎士とかやれ騎士とか。
「あー、セリオさん? 少し、これは……」
「言われなくてもわかってるわよ。これは、ほっとけない」
そう言葉をかわすと俺とセリオさんは同時に得物に手をかけた。
「な、何故得物に手を伸ばす!?」
「「そういう目をしたッ!」」
リーダー格のニンジャファンの震える声をそう切り捨てるとセリオさんは踏み込み、俺はしゃがむように足に力を込める。
「しからば、御免!」
先程まで震えていた声が打って変わってはっきりとした物言いで、ニンジャファンが何かを投げる。というか、今の声、女?
「何をやっているのコロナ、前ッ!」
「は?」
少し声に気を取られ、セリオ酸の声に意識を戻すと目の前にはワイヤーでできた網が広がっていた。……ニンジャファンの癖に麻縄とかじゃねぇの!?
「ワイヤーッ!?」
「ふざけているのなら余裕あるわね」
「えっ、いやっ、悲鳴をわぁいやーってわけじゃなくて、網がワイヤーだったことへのリアクションで」
網が絡まって微妙に動きづらい俺を背にして、セリオさんは天高く跳び立つ。……わたわた網を外そうとしてる俺が言うことじゃないけど、あの人飛べないのにハイジャンプする癖あるよなぁ。太陽を背にするにしてももうちょっとやりようがある気がするけど。いつだったか刀の刃面利用とかしてたし。
「テンス・コロナ!」
「覚悟ーッ!」
最上段で刀を振りかぶったニンジャファンの部下たちが俺に切りかかってくる。刀の刀身、長い。おそらく70前後。鞘の先端、何も無し。鍔、広くない。下緒、長くない。忍者刀でもなんでもないな。スァッカならガチ切れするんじゃないか?
「まずは名乗れよ、阿呆共」
正直、この程度のワイヤーが絡んでいたところで、さっき書いたこと以外は刀が抜けないくらいしか支障はない。
まあ刀や剣がなければレイヴンやローゼさん辺りには為す術なくやられるのも事実だけど、この程度の奴らに負けるほどヤワじゃない。
「今から死ぬ者に名乗る名はない!」
「中途半端なエミュレートやめろっての。それに、だ」
振り下ろされた刀に人差し指と中指を二本沿うように這わせる。この辺か?
「折れ---「こんな風に」
親指を叩きつけるようにして勢いをつけ、捻じ曲げるようにする。粘性足りんな。どこの安物だ?
「別に刀抜かなくたって」
折れた刀身を人差し指と中指で挟むように持ち替える。大体トランプ投げみたいな感じ。
「アンタらくらい倒せる」
数瞬遅れて振り下ろしてきた方に向かって投げつける。あっ、喉直撃。運が悪かったな、こいつ。
「俺が名乗る意味がなかったことになるだろう?」
そのまま振り下ろされた刀を半身下げて躱す。踏み込みが浅い。
「名乗りなよ」
振り下ろされた刀がワイヤーを切り裂いたのを確認すると、網の残骸を振り払う。……この辺りの相手に刀抜くのもなぁ。
「--ギルド・杏紗會」
「アンシャカイ? 聞いたことがないな……」
反射的に聞いたことがないと答えるが、脳裏に引っかかる。聞き覚えがある。確か―――
冷や汗が、首筋に垂れた。
「あっと、待って待って待ってセリオさぁん!? 殺らないで待って待って待って!」
「は?」
セリオさんの方を見るともう心臓に突き刺そうとマウント取って両逆手に構え、女忍者もどきのほうが必死に抵抗してる状況だった。なんやかんや強いんだよなセリオさん。
「多分輝、レイヴン関連!」
「何? なぜあの人の名を」
「β以来ならアポ取ってくれる!? っていうか殺っちゃったよ一人どうしよう!?」
「……成程? β時代の知り合いだったの? コイツら」
慌てる俺を尻目にセリオさんは呆れた顔をして小太刀を鞘に収め、マウント状態から飛び退いて膝についた土を払った。
「俺じゃあなくてレイヴンが、だけど。顔見たことなかったんだよなぁ」
「まあ、組織の名前しか知らなければそんなもの、ね。挙動不審で怪しかったし」
「問答無用で殺しに来といてその反応……!?」
ごめんて。女忍者もどきの言葉に心の中でそう返すと、俺はウィンドウを操作しインベントリから大剣、烈火を取り出す。なぜだろう、嫌な予感が増してきたのは。
「で、なんでビクビクオドオド挙動不審でセブスト向かってたのさ」
「それは……追われてて。人手が多ければなんとかなるかと」
「追われて? 何に―――」
セリオさんがそこまで発した直後、高速で何かが飛来し、セリオさんがそれを二刀で弾き飛ばした。
弾き飛ばされた飛来物を見るに、苦無手裏剣程度の……棘?
「……サボテンと、何だ?」
「牛でしょうね。蹄と角と体格からいって」
「荒野に牛ィ?」
飛来物の飛んできた方向を見ると、そこにはサボテンと牛が融合したかのような正直ちょっと気味悪いモンスターが鼻息荒く佇んでいた。
せめてもうちょっとディフォルメしてくれない? 牛部分。
「Brrrr!」
「おったぁ!?」
俺の脳内を読んだのかサボテン牛はその身に、実に? 生やした棘をコチラに放ってきた。
危ない。一振りで吹き飛ばせる程度とはいえノーモーションかよ。……地面には、深々と突き刺さってますね? へぇ、なんか膨らんで―――
「なにボォっと突っ立ってんの飛び退けェ!」「ウィッス!」
セリオさんの声に従い横に転がるように飛ぶとさっきまで俺の胴体があった空間を破裂した針が通り抜けていった。判断早い。
「何? 様子見で致命的ミスかます日なの今日?」
「いや、ホントごめんなさい、なんかそうみたいです」
「なら気合入れ直しなさい!」
不機嫌なセリオさんに背中を蹴られる。いや、まあ確かに今日は網引っかかるわ冷静に考えると後で輝にすごい文句言われそうなコト(知り合いのギルドに襲いかかる)やるわ、威力確認しようとして二段目に引っかかりそうになるわ……確かに腑抜けてんな?
「ヨォーシ、やるか……」
烈火を担ぎ直し、腰を深く落とす。見据えるのはあの針牛、一刀にて断ち切る。
「ハ? 貴方何「そこのは頼んだ!」ハァ!?」
突っ込む、針が飛んでくる、回転、勢い殺さず担いだままの烈火で受ける、回転、向き直り、正面!
「我流一刀流! 兜割り!」
烈火を振り下ろしながらサボテン牛の股下に滑り込むと、繊維質が千切れる音を立てる。
「もう一発!」
くぐり抜けたあともう一度最上段から振り落とすと、真っ二つになったサボテン牛は青い光の粒子になって消え失せた。
「……二刀、振っちゃったな」
「コロナ!」
セリオさんの声、あれ、機嫌更に悪く
「何ァに突っ走ってんのよふっざけんじゃないわよ!?」
「グペレラ!?」
突き刺さった蹴りで連続した記憶は終わりを告げ、目を覚ますといつの間にかギルドハウスの執務室に場所を移していた。
「―――と言う事? 私、ローゼはあまり関係ないことのように感じるけど」
「まあ、できればレイヴンさんに直接―――あ、コロナさん、起きました?」
「……ああ? え、何?」
俺がついでに飲み物飲んでたりした間に、なんかここで出るとは思えない名前が出てきていた。ローゼさんなんか関係あんの?
「杏紗會、エレメンツの傘下ギルドになれないかなぁって。なのでマスターかサブマスに取次をセリオさんに頼んでました」
「あー、ギルドスラム経由の理由それ? たまにストレス解消でレイヴンスラムになんか撒いてるから」
「この間は全身発光する薬だったかしら?」
「気化しても効果ある質悪いやつね。いや、ゲーミング発光かますスパイ共はたしかに面白かった……」
ローゼさん腹抱えて笑ってる俺とレイヴン見てドン引いてたけど。そういうネガティブな感情は読みやすい。眉間にシワ寄るから?
「あとは立地的に。うちの方角ここから南ですから」
「最寄りがスラム側、と。目立つ格好で隠密やろうとしてたのは」
「そもそも忍び込む気はなくてあのサボテン牛に目をつけられたから忍び寄ってただけなんですが、その」
「ああうんすまない。怪しすぎてつい」
流石に決めつけすぎたかな。観察眼はある方だと思っていたけど、複合的なものは少し難しい。
「まあ、俺の謝罪の意思を込めて、こっちで勝手に登録しとく。後日旗とかステッカー受け取りに来てほしい」
「はい! ありがとうございます!」
しかし、セブンス・ストリークの南側。街は1つ、【エイス・レイス】しかない。あそこがウチに助けを求めてくるってことは。
「ディスアクトがそろそろ仕掛けてくるか」
まあいいさ。俺達に敵はない。




