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第24話『好きな人の部屋でして。』

 少しの間、花畑の時間を楽しんだ後、俺は咲夜達を連れて家へと帰る。


「ただいま」

「おじゃましまーす」

「おじゃまします」

「お、おじゃましますっ!」


 何度も来たことがあるので平気そうな紗衣や咲夜とは違い、俺の家に来るのは初めての麗奈先輩はとても緊張している様子だった。

 ちなみに、家族には麗奈先輩も一緒に俺の部屋で勉強することを伝えてあるので、


「おかえり、お兄ちゃん!」

「おかえり、颯人。みなさん、いらっしゃい」

「颯人、おかえり! あらぁ、その金髪の可愛い女の子が生徒会長さんなのね! 初めまして!」


 家族全員でわざわざ玄関まで出迎えてくれたのだ。母さんに至っては、麗奈先輩のことが気に入ったのかさっそく抱きしめているし。


「母さん、出会っていきなり抱きしめるな」

「……そうね、ごめんなさい。あまりにも可愛かったから。初めまして、颯人の母の神楽陽子です。よろしくね」

「父の神楽直樹です」

「妹の神楽小雪といいます! 第一中学校に通う1年生です!」

「は、初めまして! 夕立高校2年の皇麗奈といいます。生徒会長もやっています。あと、中学は颯人君や小雪ちゃんと同じ第一中学校出身です。颯人君のことが……す、好きですが、まずはお友達としてお付き合いしています。よろしくお願いします」


 さすがに生徒会長を務めているだけのことはあるな。緊張していてもしっかりと自己紹介ができている。


「へえ……お兄ちゃん凄いな……」

「小雪の言う通りだな。俺の息子とは思えないくらいに凄い」

「お父さんもかっこいいわよ。ただ……ふふっ、青春ね。いい香りがするわ」


 家族が好意的な反応を示しているけれど、麗奈先輩はますます顔が赤くなってしまう。このままだと、彼女の精神が持たない感じがしたので、


「さあ、俺の部屋に案内しますね。父さんも母さんも試験勉強が目的だから、邪魔はしないでくれよ。小雪は静かに勉強ができるなら、俺の部屋にいてもいいぞ。3人ともついてきてください」


 俺は咲夜、紗衣、麗奈先輩のことを自分の部屋に連れて行く。一緒に勉強したいのか小雪もついてきた。俺か小雪が勉強机を使えば、5人一緒に勉強できるか。


「ここが俺の部屋です」

「うわあっ……素敵なお部屋だな……」


 俺の部屋に来ることができて嬉しいからか、麗奈先輩は幼子のような可愛らしい笑みを浮かべながら部屋の中を見渡している。そのことに、咲夜、紗衣、小雪はクスクスと笑う。


「みなさん、適当にくつろいでください。俺、飲み物を持ってきますけど、何がいいですか?」

「あたしはこの前と同じくカフェオレがいいな。甘く作ってくれると嬉しい」

「咲夜さんと同じ!」

「私はアイスのブラックコーヒーでお願いするよ、颯人」

「私もアイスコーヒーがいいな、はやちゃん」

「分かりました。では、飲み物を用意するんで、みんなはくつろいだり、勉強を始めたりしてください」

『はーい』


 みんないい返事をするなぁ、と思いながら俺は部屋を後にし、1階にあるキッチンへと向かう。

 キッチンに行くと何やら料理をしている母さんの姿が。夕飯に出すのかひじきの煮物を作っている。


「あら、颯人。飲み物を作りに来たの?」

「ああ。勉強をするからか、みんなコーヒー系を頼んできた。母さんは夕飯に出す煮物を作っているんだ」

「うん。颯人も小雪もお父さんも甘めが好きだから、今回もちゃんと甘く作るわよ」

「そうか。それは楽しみだ」


 うちの家族はみんな甘いもの好きだから、煮物は甘めになることが多い。また、メインのおかずも定期的に甘辛いものになる。

 母さんの隣で、みんなから注文された飲み物を作っていく。俺も紗衣や麗奈先輩と同じようにアイスのブラックコーヒーにするか。


「それにしても、咲夜ちゃんだけじゃなくて麗奈ちゃんっていう可愛い女の子を連れてくるようになるなんてね。颯人はモテモテね」

「咲夜は分からないけれど。ただ、中学までの自分には想像できなかった時間を送っているのは確かだな」

「ふふっ、お母さんは咲夜ちゃんでも麗奈ちゃんでも紗衣ちゃんでも、お嫁さんになることに大歓迎よ」

「……き、気が早すぎる」


 一瞬でも、3人の純白のウェディングドレス姿を想像してしまったではないか。しかも、3人ともよく似合っていて。ドキドキしてしまったので、自分の分のアイスコーヒーをゴクゴクと飲んだ。


「あらあら、そんな反応を示すなんて颯人も可愛いわね。私と2人きりでいるときのお父さんにそっくり」

「……そうかい」


 咲夜と話すようになってから、特に女性絡みのことでドキドキしやすくなっていたけれど、それは父さんからの遺伝だったのか? 何とも言えない気持ちになるな。

 全員の飲み物を作り終わると、母さんから昨日のパートの帰りに買った抹茶味のクッキーをもらった。


「それじゃ、試験勉強を頑張ってね」

「ああ」


 俺は飲み物とクッキーを持って自分の部屋へと戻っていく。


「お待たせしました。飲み物と、母さんからクッキーを……あれ?」


 部屋の中を見てみると、麗奈先輩の姿が見当たらない。あと、勉強を始めているのは紗衣だけで、咲夜と小雪はベッドの側で楽しげに喋っていた。


「みんな、麗奈先輩は? お手洗いに行ったのか?」

「ここにいるよ、お兄ちゃん」


 小雪はそう言うと、咲夜と一緒に俺のベッドを軽く叩いている。そういえば、さっきと比べてベッドが膨らんでいるような。

 飲み物とクッキーを乗せたトレイをテーブルに置き、俺はゆっくりとベッドの掛け布団をめくる。そのことで、ベッドに横になっている麗奈先輩とご対面。


「……おはようございます、麗奈先輩」

「……おはよう、はやちゃん」


 どうも、と麗奈先輩は顔を真っ赤にしながらはにかんでいる。


「えっと、その……はやちゃんのいい匂いがするって言ったら、咲夜ちゃんと小雪ちゃんが寝かせてくれたの」

「先週の咲夜のこともあったし、麗奈会長も寝かせていいかなって。変なこともしなさそうだし。好きな人のベッドだから気になるんだと思うから。それに、私も小さい頃はよく颯人や小雪ちゃんのベッドでゴロゴロしていたからね」


 確かに、小学生くらいまで、紗衣はよくベッドの上で漫画読んでいたり、テレビを観たりしていたな。泊まりに来たときは、このベッドで一緒に寝たこともあったか。


「は、はやちゃん。許可を取らずにこんなことをしてごめんなさい」

「……まあ、麗奈先輩ですからかまわないですよ」


 その流れで小雪や咲夜のことを見ると、彼女達は苦笑いを浮かべていた。俺に怒られると思っているのだろうか。怒るつもりは全くないが。


「2人は悪くないよ! あと、本当にはやちゃんのいい匂いがしたよ! ふとんを被ったから、はやちゃんに包まれている感じがして幸せでした。試験勉強のやる気もアップしたよ! はやちゃんのことがますます好きになった」

「……そうですか」


 そんなに可愛らしい顔をして、俺のことが好きだって言われるとドキドキしてしまうな。麗奈先輩が俺のベッドで横になっているのも一因かな。1歳しか違わないけれど、年上の女性だからかとても艶めかしく思えて。あと、先輩がゴロゴロすることで服とシーツが擦れる音が聞こえるのも。2人きりだったら、結構ヤバかったかも。


「で、では……麗奈先輩のやる気もアップしたところで試験勉強を始めましょうか」

「うん!」


 みんな、自分の勉強スペースに腰を下ろす。小雪は勉強机で、高校生4人がテーブルを使うことに。

 小雪の勉強の面倒を見やすいように、彼女に一番近いところに俺が座り、そこから時計回りに咲夜、紗衣、麗奈先輩という並びで座ることに。勉強する場所が決まったところで、俺はさっきみんなから頼まれた飲み物を置いていく。

 そして、それぞれが試験勉強を始めるのであった。

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