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第9話 領主、冒険者と戦う

「ふぅ……ゴブリン共、いるか!」


 森の方にある隠し通路を抜け、キマドリウスはダンジョン最下層の5階層へと来た。


「いるでゴブよー」


「あ、キマ様だゴブ!」


 キマドリウスの声に反応し、4匹のゴブリンが奥からやって来た。


「単刀直入に言う。早速だが、もう冒険者が来た」


「えぇー!! 早すぎるゴブ!」


「か、勝てるかゴブ……?」


 予定では3日後にダンジョンの事を伝え始め、冒険者を呼ぶ予定だったのだ。

 だからまだ人数も少ないし、防衛の場所やシフトも決まっていない。

 ゴブリン達が困惑するのもしょうがない事だ。


「大丈夫だ、今回は俺が直々に手伝う。安心してくれ」


「分かったゴブ!」


「わーい、これで勝てるゴブ!」


 (本当はレベル1なんだがな……まぁ喜んでくれているようだし、黙っておこう)


「よし、ではついてこい!」


 そうしてキマドリウスは4匹のゴブリンを引き連れてダンジョンの1階層を目指して上がって行った。

 目的はもちろん、冒険者達を撃退するためだ。


「にしても良かったんでゴブか?」


「何の事だ?」


「財宝の事ゴブよ。キマ様に言われた通り、一階層にめちゃくちゃ置いたゴブよ」


「あぁその事か、それなら簡単だ。財宝が多いと思ってくれたら冒険者の数が増えるからだ」


 財宝の量が少ないダンジョンよりも、多いダンジョンの方が冒険者はやって来る。

 だから一階層に"あえて"財宝を多めに置いたのだ!


「考えているゴブね!」


「当然であろう。だっておr……」


 彼らが1階層に辿り着き、その先へと進んでいる時。

 キマドリウスの言葉は、威勢のいい声に遮られてしまった。


「おおおぉぉ!! モンスターだ! みんな身構えろ!」


「でたわね! ここに来るまでに財宝がたくさんあったから取り返しに来たんだわ!!」


 そこにいるのは、財宝の入った袋を抱える4人組の冒険者。

 キマドリウスが宿屋であった4人組だ。


 キマドリウスはそんな4人の様子を見て、ひとまず胸をなでおろした。

 何故なら彼が領主キマであると気付いていないからだ。


 今、キマドリウスは服装を変え、仮面をつけている。

 だがバレない可能性が無い訳では無い。

 だからバレていない事に安心し、マントをはためかせた。


「フハハ! よく来たな! 俺はこのダンジョンの主だ!」


 明らかに領主の時とはテンションが違う。

 やはり『魔王』や『ダンジョンボス』という職は彼にとって天職なのであろう。


「なに!? いきなりダンジョンボスだと!?」


「……でもこいつを倒せば、このダンジョンのお宝は俺達が独占できるって事だろ」


「一階層だけでもこれだけあったんだから、ものすごい量の財宝を隠しているはずよ!」


 冒険者たちの目つきが、徐々に餌を見つけた獣の目つきへと変わっていく。


「フハハ! その通りだ冒険者達よ!! この奥には手つかずの財宝が大量にあるぞ!!」


 (……本当は嘘だがな。財宝のほとんどは一階層に置いてあるからな)


「おぉ! がぜんやる気が湧いて来た!! ならいくぜええぇぇ!!」


 冒険者の一人、黄色い髪をした軽装の冒険者が、短剣を抜いてキマドリウスに襲いかかる。

 キマドリウスはそれに対し、


 ――ガンッ! バンッ! ガンッ!!


 と地面から無数の鉄の棒を出現させた。


「うぐっ!! っがはッ!!」


 その鉄の棒達は、軽装の冒険者の腕や足に絡まり、冒険者の動きを封じた。

 そして、そのいくつかは彼の身体を貫いた。


「マッキー!! 大丈夫か!!」


「がはっ……お、俺はもう無理だ……お前たちだけでも……」


 軽装の冒険者――マッキーは口から血を吐きながら、無理をして仲間を逃がそうとした。


「逃げましょうみんな! あんなにも細かく複数の魔術を発動できるなんて、ただ者じゃないわ! 今の私達じゃ絶対に勝てない!」


 ローブを着た魔術師は冷静に判断し、逃げるように勧めた。


「くっ! 逃げるしかないのか……!」


「お、俺は逃げるからな!」


「私もよ!」


「ま、待ってくれ! お、俺も逃げる!!」


 多少悩みはしたものの、冒険者達は仲間を見捨て、キマドリウスに背を向けた。


「くっ……!」


 その姿に何故か、キマドリウスは唇を強く噛んだ。


「……どうして、あんたが……そんな顔をするんだ……?」


 マッキーは口から血をこぼしながら、そうキマドリウスに聞いた。


 だが、キマドリウスは仮面をつけている。

 表情が分かるはずが無い。


「……俺は仮面をつけているぞ」


「……それでも、分かるさ。……悔しいんだろ、あんた……」


「……違う。……財宝を奪われるのが悔しいだけだ。だから――」


 キマドリウスは風で3本の刃を作る。

 そしてそれを投げた――


 ――冒険者達の持つ袋へと。


「うわあぁぁ! ざ、財宝が!!」


「そんな事気にするな! 今は命が優先だろ!!」


 冒険者達は財宝をこぼしながらも走った。

 自分が生き残る為に。


「……何で、殺さなかったんだ……?」


 そんな3人を見つめるキマドリウスに、マッキーは再度聞いた。


「もうすぐ死ぬお前には関係ない」


「……そ、そうか……あんたけっこう、やさ……」


 マッキーはそう言いかけて、動かなくなった。

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