第46話 領主、幸せを掴む
彼等3人が食堂に入ると、そこにはたくさんの顔ぶれがいた。
「お前達はこの前の転職組!」
「その節はどうも、お世話になりました」
「領主様のおかげでこれからもやっていけそうです」
彼等はキマドリウスに頭を下げる。
これにはキマドリウスも恥ずかしがってしまう。
「おぉ……そうか。……ってお前達は頭のおかしい見習い大工達!」
「おかしいよりもおかし!」
「他に!」
「都会!」
「変な韻を踏むな! それにたった三文字で何故ドヤれるんだ!」
「大変そうだな……」
「ん? マッキーか。お前はツッコミが少なくて助かるよ」
「悪かったなつまらない男で」
「マッキーさんてばつまらない!」
「そう、つまらない!」
「お前達は黙れ!」
てんやわんやな食堂。
そこにはまだまだたくさんの人々がいる。
「楽しそうだのう」
「ゾレムさんも混じったらどうです?」
ゾレムに店員のホビット。
「休日はゲートボールでもせんかの?」
「いいのう」
ダンジョン受付の老人達。
「領主様、詳しくお話を聞かせて頂きたい事があるのですが」
「あ、アオイさん!? 背後に立たないでよ!」
そしてアオイ。
彼等全員がこの領地において、キマドリウスのおかげで集まり、笑っている。
それはとても幸せな事だろう。
「ちょっと! 酒足んないわよ!」
「それは酒じゃない、飲むな! 嬢ちゃん!」
「嬢ちゃんじゃないわよ! ナイスバディで超絶美人なお姉さんと呼びなさい!」
「領主様、こちらの幼女は? はっ、もしかして……」
「違う! 誤解だ!」
「そんなっ、主様」
「そのリアクション辞めてくれ!!」
ん? ……幸せな事だろう?
「おらああぁ! よし!」
「よしじゃない! 飲み終わった空き瓶を投げないでくれ!」
「なんでよ! 私に指図しないで!」
「ぐおぉ、痛い! 破片が俺に刺さったぞ!!」
「領主様、ついてませんね……」
「私悪くないからね! 近くにいたあんたが悪いんだから!」
「お前は酒を飲むな! 危な過ぎる!」
……うん。
まぁ幸せか。
幸せだよね。
少なくとも"地の文"はそう思っておきます。
◇◇◇
「はぁ……」
食堂で一悶着あった後、キマドリウスは屋敷に戻った。
そして屋敷の屋上へと上がり、一人で星空を眺めていた。
「星は綺麗だな。……どっかのアホとは違って」
きらきらと輝く星空。
それは闇夜にこぼれた一握の砂のようで美しい。
「ま、どうでもいいか。それよりも……久し振りにユカの事を話したな……」
キマドリウスは屋上で大の字になる。
すると、視界の一面に星空が広がる。
「あれから大体50年くらいか? 結構経ったよな……」
「今じゃ領主だもんな、俺」
彼は一人ごとを幾度も呟く。
「にしても次の『やりたい事』は見つからいな……」
「……もしかしたら、もう見つかってるのかも知れないけどな」
「だとしたらそれは何だろうか?」
「領地を発展させる事? ダンジョンを大きくする事? いや──」
その瞬間。
空に一筋の流れ星が見えた。
「──俺の理想郷を作る事かもな」
彼はそう言って瞳を閉じる。
「争いも少なく、モンスターと人とが手を取り合って生きていける場所……とかか」
「その為には領地を発展させなきゃいけないし、ダンジョンを大きくしなきゃいけないな……」
彼はそれ以降何を発する事は無かった。
ただただ夜風を身に浴びながら、眠りについたのだ。
「……すぅ……ぅ……」
彼の名はキマドリウス、またの名をキマ。
後に魔王と皇帝を兼任し、『魔皇帝』と呼ばれるようになる人物だ──
◇◇◇
どうも、作者の一条おかゆです。
この作品はこれにて"終了"とさせて頂きます。
短い間ですが、ご覧になって頂き大変有難う御座いました。
次回作を楽しみに!!




