第45話 領主、話し終える
「──というのが、俺と『友人』の話だ」
領主キマは話し終え「ドサッ」とソファに背中を預ける。
「……」
「……」
だが、ダンジョンコアも剣の勇者も下をうつむいたまま動かない。
「どうした二人共、反応してくれないのか?」
「……その子はその後どうなったの?」
「……死んださ、流石に」
「主様のその後に魔王になられたのですか?」
「まぁな、雑貨屋も壊れてしまったし、元の職場に戻ったんだよ」
「……あんたも苦労してんのね」
「……主様、辛い事があったらなんでも言ってくださいね」
「や、優しい……!」
(優しいのはありがたいが……ずっとこんな反応だとなんだか恥ずかしいし、困るな……)
彼としても苦渋の決断。
ダンジョンコアはともかく、正直剣の勇者にはこのまま優しいままでいて欲しい。
だがキマドリウスは、
「え? 剣の勇者さん? もしかして昔の敵の昔話が心に響いちゃった?」
剣の勇者を煽る。
「そ、そんな事ないわよ!」
「え~嘘だ~。だって涙目じゃないですか! うわ~響いっちゃった? 響いっちゃった?」
「ぐっ……!」
「剣の勇者さ~ん。情けないっすねぇ~」
ウザさ全開で煽るキマドリウス。
短気な剣の勇者がそれを見逃すはずも無く、
「黙れええええええぇぇぇぇぇぇ!!!」
キマドリウスの顎に見事なアッパーを決める。
「うぐおおおぉぉぉ!!」
(痛い……! ……だが、これで良かったんだ……)
涙を流して笑いながら、殴られるキマドリウス。
だがその表情はすぐ見えなくなる。
何故なら、
──ボゴオオォォッッ!!!
と天井に突き刺さったからだ。
「あ、主様っ!」
「おおっと……やりすぎちゃった?」
「あの話を聞いた後によくあんなパンチが放てますね」
「だって! だってあいつが煽って来るんだもん!」
見苦しい言い訳。
そんな理由で人を殴っていい訳が無い。
あまりにも幼稚過ぎる剣の勇者の態度に、ダンジョンコアはため息をつく。
そして彼女の事を無視して、首から下が「プラ~ン」となっているキマドリウスの方を向いた。
「主様、大丈夫ですか?」
「うーん、やばいかも。首が取れそう」
「喋れるなら大丈夫よ!」
「黙れ! お前のせいじゃい!」
「はぁ……仕方ないわね」
剣の勇者は天井からぶらさがるキマドリウスの足を掴む。
そして
──ズボッッ!
と引き抜いた。
「これでいいでしょって……あんたの髪ぼさぼさじゃん!」
「そりゃ天井に埋められたからな……」
「アハハハハ!!」
「暴力を振るった後に笑えるなんて、とんでもない神経してるな……。しかも微妙に笑い方が怖いんだが……」
「怖くないわよ! どこからどう見ても優しいお姉さんでしょ!」
「優しいの意味を辞書で引いてみろ」
「……また天井に刺さりたい?」
「すいませんでした」
即答!
その間実に0.2秒!!!
「分かればいいのよ分かれば。それより……これから暇?」
「ま、まぁ暇だが。どうかしたのか?」
「折角いい話聞いたんだし、飲みにでも行きたいのよ」
勇者が酒飲みでいいのか!?
というツッコミが頭をよぎるが、キマドリウスは地面に2本足で立っていたいので黙っておくことにした。
「一応聞くが、それは俺を誘っているのか?」
「そうよ!」
「うーん。しかしダンジョンコアが行けないからなぁ……」
彼もダンジョンコア一人を残して自分達だけ楽しむのは心が痛む。
しかし、
「は? 来ればいいじゃない、そこの白い子も」
「いやしかし、角も生えていて見た目が……」
「そうです。私が行けば必然的に警戒されるでしょう」
「関係ないわよ。害もなさそうだし別にいいでしょ」
「で、ですが……」
「大丈夫よ! 服着ればただの女の子だから! それに文句言ってくる奴がいたら、私がぶっ飛ばしてやるから!」
剣の勇者は笑顔でファイティングポーズを取る。
表情と動きがアンマッチな気もするが、これが彼女らしさなのだろう。
それに、
「……お前意外と優しいんだな」
「"意外と"って何よ! 私程優しい人物なんて地上にも天国にもいないわよ!」
「地獄行き確定のお前が言うのか?」
「は゛ぁ!? ぶっ〇すわよ!」
「それが問題なんじゃないのか……?」
冷静かつ的確な発言。
それには剣の勇者も「ぎくっ!」と身体を固まらせる。
しかし、知らん顔ですぐに動き出す。
「まぁいいから行きましょ!」
「……いいんでしょうか?」
「いいのよ! それに私がおごってあげるから!」
「お前の給料を俺が出している、という事を忘れるなよ」
「分かってるわよ!」
そう言いつつも、剣の勇者はダンジョンコアを連れて行こうとする。
ダンジョンコアはそれに対して、キマドリウスの方を見た。
「主様、私は……」
「あぁ、行ってきていい」
キマドリウスは首を縦に振る。
「はい。ありがとうございます」
「気にするな」
「早く行くわよー!」
そうして剣の勇者とダンジョンコア、そしてキマドリウスは宿屋一階の食堂へと向かった。




