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第43話 雑貨屋、店番を頼む

 キマドリウスとユカが出会ってから、およそ一週間。

 あれから二人は様々な場所に行った。


 ショッピングモールで買い物をしたり、近くの森でピクニックをしたり、雪祭りを見に行ったり、と二人は本当に様々な場所に行った。

 必然、二人の距離はかなり縮まっただろう。


「……で、今日はどうするのキマ?」

「今日は今から素材を買いに行かなくちゃいけないんだ」

「あたしも行っていいの?」

「いや、出来ればユカには店番を頼みたいんだ」


 店番──つまりはこの雑貨屋をユカ一人に任せる、という事。

 それはユカへの信頼があるからこそ、出来る事だろう。


 そして信頼されている事に対し、ユカが嬉しくないはずが無い。


「りょーかい! この店はあたしに任せて!」

「あぁ、くれぐれも頼んだぞ」

「うん! ……あっ、でも早めに帰って来てね」

「分かっている」


 キマドリウスは優し気な笑みをこぼすと、席から立ち上がった。

 そして、ユカ一人を置いて店を出た。


 その後。

 彼が向かった先は当然、素材を売ってくれる店だ。

 そしてこの近辺でそんな店を開いているのは、キマドリウスの友人──ノウルスだけだ。


「ノウルス、いるか?」


 店に入るなり、キマドリウスは目的の人物を呼ぶ。

 すると、時を待たずして一匹の化け物が姿を現す。


 その化け物は、足は山羊で手は人間、なのに頭は牛で身長は3m、という明らかな人外。

 だが彼こそがノウルスだ。


「おぉ、キマドリウスじゃねぇか! 何の用だ?」

「グレイトブレイダーウッドの木と、ワイルドシェイドの薬草を幾つか頼みたい」

「グレイトブレイダーウッドの木はあるんだが、ワイルドシェイドは入って来てねぇんだ」

「入荷されてないのか? この辺で取れるはずなのに……何かあったのか?」


 それ程入手難度が高い訳でも無いのに、入荷されていない。

 これには、何か訳がありそうだ。


「それがな、どうやらスノウドラゴンが最近ちょくちょくと縄張りから出て来てるみたいで、思うように採集出来ないらしいんだ」

「ほー珍しいな」

「だろ。ずっと禁域平野にこもっとけ、って感じだよな」

「まぁな」


 (にしても、スノウドラゴンか……。もしかしてユカの一件と関係が……?)


 ユカは目が覚めると禁域平野にいて、スノウドラゴンから逃れるようにしてキマドリウスの家に辿り着いたと言っていた。

 そして生き残ってるという事は、逃げ切ったという事だろう。


 だがもし、スノウドラゴンが執念深い性格なら?

 もし、スノウドラゴンがユカを探しているとしたら?


 様々な可能性がキマドリウスの頭の中を駆け巡る。

 しかし、それは長く続かない。


「ま、一週間後には魔王様が討伐に向かってくれるらしいし、それまでの辛抱だな」

「あぁ。薬草はそれからにするさ」

「じゃあ後々お前の店に運び込むからな」

「分かった。早めに頼むぞ」


 そう言ってキマドリウスはノウルスの店を出、帰路に着く。

 向かう先は当然、城下町の外れにある彼の家だ。


 まず馬車乗り場まで歩き、そこからは馬車で家の近くまで向かい、残りは徒歩。

 雪の残る平野をしばらく歩くと彼の家──のはずだった。


「なっ!? な、何が!?」


 だが、目の前にあるのはほとんど廃墟のようなボロボロの建物。

 屋根は崩れ、壁は壊れ、窓は割れている。


 だが、どうやら崩れたのはつい最近。

 そしてキマドリウスには一つの物が目に入る。

 それは『雑貨屋トラビニウス』と書かれた看板だ。


「ここは……俺の家なのか?」


 あまりの惨状に思考が追い付かない。

 だが彼の口は、勝手に一人の少女の名前を呼んでいた。


「ユカー!! ユカ、いるかーー!!」


 しかし、全く反応はない。


「くそっ! 何なんだ! 何があったんだ!」


 彼は小走りで家に近寄る。

 すると、また新しい物が目に入った。


「こ、これはっ・・・!」


 それは大小2つの足跡。

 その一つはキマドリウスの背丈ほどもある大きな足跡で、この近辺の生き物の中にこの大きさの足跡を持つ生き物は一匹しかいない。

 そしてもう一つは人間の足跡、それも成人男性よりも小さめの。


「……いやな予感しかしないな」


 キマドリウスはその足跡の先を目で追う。

 するとその先は、


「禁域平野か……。本格的に困ったな」


 考えうる限り最も最悪の場所だ。


「せめて魔王城の方に逃げてくれれば魔王軍がいるのに……」


 ユカとて城下町の大体の地理は分かっているはずだ。

 なにせこの一週間、キマドリウスと散々観光したのだから。


 だが彼女は何故か禁域平野の方へと逃げた。

 それはたまたまなのか、それとも被害を出さないようにあえてその方向に逃げたのか……。


「ユカ……」


 だが偶然か必然かなんて始めから関係ない。

 どちらにせよ彼はユカを助けに行くのだから。


「待っていろ。俺が必ず助けてやる!」


 そう意気込み、彼は走り出した──

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