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第40話 雑貨屋、提案する

「結局、あの人以降お客さん来なかったね」

「まぁ昨日は大雪だったしな、しょうがない」


 結局、ノウルス以降『雑貨屋トラビニウス』に客は来なかった。

 それ自体はしょうがないのだが……


「経営とか大丈夫なの?」

「……やばいだろうな」

「えっ!? そんなさらっと言っちゃう!?」

「慌ててもしょうがあるまい」

「確かに。じゃあ冷静に考えて……明日は頑張らないとね!」


 拳を握り意気込むユカ。

 しかし、


「いや、明日は店を開ける気はない」

「……え? なんで?」

「今朝、『やりたい事』を一緒に探してくれると言っただろう。だから明日は観光にでも行かないか?」


 意外な提案。

 堅物そうな彼の口から出てくるとは思えない一言。

 だがユカとしても、その提案は願っても見ない。


「いえーい!  行く行く!」

「なら、決まりだな」


 キマドリウスは「フッ」と笑う。

 だが、


「でもー、観光っていってもどこ行くの?」


 一言に観光と言っても、様々なものがある。

 ショッピングやグルメ、名所巡りやアミューズメント。

 それに場所だって様々だ。


 まぁ流石にキマドリウスも考えて――


「考えてないぞ」

「えぇ!?」

「ユカが一緒に探してくれるんだろ。ならその辺りは頼む」


 さも当然かのように彼は言い放つ。

 これにはユカも苦笑いを浮かべるしかない。


「はは……キマって猫系なのか俺様系なのかよく分かんないよね……」

「ん? 俺は悪魔だぞ」

「はぁ……アホ系だったか」

「違うぞアホではない! これでも悪魔魔術学院の主席合格だ!」

「いや、ベンキョー出来れば偉いって訳でもないでしょ」


 (ぐっ! たまに刺さる事言うな……)


 勉強出来る=頭がいい、ではない事くらいキマドリウスも分かっている。

 だから人間の言葉とはいえ、納得するしかない。


「……ユカの言う通りだ」

「お! キマ素直~! モテるよ~!」

「誉めているのか煽っているのかどっちなんだ……」

「どっちも!」


 ユカは両手を後ろに、満面の笑みをキマドリウスに向ける。

 だが、彼は一切の感情の揺らぎを見せない。


「せめて“煽る“のはやめてくれ」

「ふふっ、考えとく」

「……そうか」


 そう言って彼は、本を閉じた。


 ◇◇◇


「――そして俺達は2階に上がって……その後色々あって、その日を終えたんだ」


 領主キマは恥ずかしそうに顔をそらす。


「主様。『色々あった』では何も伝わりません。何があったかを具体的に教えてください」

「べ、別に何もないっ!」

「それ、恋する乙女の反応ですよ……絶対何かありましたよね」

「本当に何もない! それに話すつもりなんてない!」

「……分かりました」


 ダンジョンコアは大人しく引き下がった。

 しかし、こういった話を無理矢理聞き出そうとするオーガがこの場にはいる。


「うーん……」


 腕を組んで偉そうにしている剣の勇者だ。


 もし彼女に首をひねられたり、腕を握りつぶされようものなら、いかにキマドリウスと言えども、吐いてしまうかもしれない。

 しかし、


「……まぁ他人の秘密を無理矢理聞くほど私も野暮じゃないわよ」


 意外にも引き下がってくれた。


「……今世紀で一番驚いた」

「なに? 力ずくで聞き出して欲しいの?」

「いえ、滅相もございません剣の勇者様様」

「様が一つ多いわよ」

「いえ、これはより上位の尊敬を現しただけです」


 ダンジョンボスが勇者を"様"付けするという、明らかにおかしな力関係。

 はたから見れば、剣の勇者がダンジョンボスだと思うだろう。


 だが違うのだ。

 剣の勇者、またの名を『オーガキング』。

 彼女は残虐で暴力的で……ん? おや、誰か来たようだ。

 "地の文"ちょっと玄関見てきますね。


「良い心がけじゃない」


 ……え? う、うわああぁぁ!!

 いや、そんな! あの剣は何だ! 玄関に! 玄関に!


「有難きお言葉」


 た、助けてぇええぇぇえ!!

 うわあああぁぁぁ!!!


「じゃあ続きを話しなさい」

「分かりました」


 そうして"地の文"は知ったのでした。

 キマドリウスの行動が、どれ程賢い行動かを――

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