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第33話 領主、話し始める

 屋敷から逃げた後。

 キマドリウスが向かった先はダンジョン最下層、5階層の最深部だ。


「ダンジョンコア~剣の勇者がいじめるんだよ~」


「そうかい、主様くん」


「何か解決策を出してよ、ダンジョンコア~」


「しょうがないなぁ主様くんは。てれれっれれ~! 『諦める心』~」


 謎のやり取りをする二人。

 だが、一芝居終えると、彼等は冷静になった。


「ふぅ……にしても流石勇者だ。仲間になったとはいえ、油断は出来ないな」


「私も主様が握手した時に悟りました。『あの女に近づけば無事では済まない』と」


「そうだな、嵐の様な存在だ……いや、ハイオーガの様な存在だ」


 もし本人がこの場にいたら、「私は普通の女の子よ!」とか言って周辺の物と人を傷つけるだろう。

 それだけイカれた奴なのだ、剣の勇者は。


「はぁ……怖いからまだ帰れないし……ダンジョンコア、ダンジョンのポイントは今どれくらいある?」


「1200ポイントあります」


「じゃあ、ポイント使ってトラップの設置でもしようか」


 トラップの設置――

 それはダンジョンポイントの使い道の一つだ。


 トラップがあれば、モンスター達が戦闘をせずとも冒険者にダメージを与え、ダンジョンポイントを集めることが出来る。

 そしてそのポイントを使いまたトラップを作り……という循環を作り上げることが出来れば、大した労力もいらずにダンジョンをやっていっく事だが出来るだろう。


「どこに、どう作ろうかな~?」


 楽しそうなキマドリウス。

 だが、


「やっぱりここにいたのね」


 剣の勇者があらわれた!


「ぐっ! ここまで追って来るとは、しつこい野郎だ!」


「野郎じゃないわよ! 乙女よ、乙女!」


「おまえのような乙女がいるか!!」


「あ゛ぁ!?」


 メンチを切る自称乙女。

 キマドリウスはどうする?


 にげる

 あやまる

 どうぐ

 にげる


 戦闘のない選択肢。

 それに何故か『にげる』が二つもある。


「くっ……! こうなったら……っ!」


 だが少ない選択肢をしっかりと吟味し、


「うおおぉぉ!!」


 キマドリウスはにげだした。

 しかし、


「行かせないわよ!」


 まわりこまれてしまった。


「なにっ!?」


「驚いてんじゃないわよ、あんたが逃げれる訳ないでしょ」


「くそっ!」


「諦めて大人しくしなさい」


「助けてくれ、ダンジョンコア!」


 そう叫ぶが、ダンジョンコアはその場で死んだふりをしている。


「う、うぅ……」


 キマドリウスは諦めて、その場に大人しく正座した。


「良い心がけね。じゃあなんか適当に話でもしてくれない?」


「な、なんで!?」


「……しばらくここにいたいからよ」


「それもなんで!?」


「あんたが元魔王って事言ったら、あんたのとこのメイドに色々と問い詰められて、めんどかったのよ。だからしばらくここに避難させてよ」


 個人情報の流出、プライバシーの侵害。

 剣の勇者が行った行動はそれらに近い。


 キマドリウスも、いくら覆せない過去とは言え、自身の知られたくない事を簡単に広められて、気分がいいはずが無い。


「はぁ……お前最低だな」


「なんでよ! 仕方ないでしょ、つい喋っちゃたんだから!」


「はぁ……また言い訳か。素直に謝る事を覚えたらどうだ?」


「悪魔に謝る事を諭されるなんて……気に障るわね」


「謝るのに、人間も悪魔も関係ない」


「……前言ってた、『友人』とやらの教え?」


 宿屋で剣の勇者と再会した時、キマドリウスは剣の勇者に素直に謝った。

 その際、「その方がいいと昔友人に言われたからな」と彼が言っていたが、剣の勇者はその事を覚えていたのだろう。


「……あぁ、そうだ。よく覚えていたな」


「これでも勇者だからね、当然よ! それよりも、話の題材が決まったじゃない。その『友人』とやらについて教えてよ!」


「ぐっ……! い、いやだ……!」


「拒否できる立場にないでしょ」


「……分かりました」


 諦めて、深くうなだれるキマドリウス。


 そしてしばらくした後。

 彼は剣の勇者に「早く話さないと首が飛ぶわよ」と脅されながらも、自身の過去を語り始めた。

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