第3話 領主、ステータスを鑑定する
「では、頼んだぞマオ君」
「はは……領地を渡した翌日に去って行くなんて、いくらなんでも早すぎないか……」
「最後は母の故郷で迎えたくてな。もう寿命も長くないし、元気なうちに辿り着いておきたいのだよ」
そう言い"元"領主の老人は馬車に乗った。
「気を付けてな」
「あぁ。キマ君もわしの領地をよろしくな」
「はい」
キマドリウスの返事を聞き、老人を乗せた馬車は走り出した。
そうしてキマドリウスと老人は別れた。
その後、彼は屋敷に戻り書斎に向かった。
目的はもちろん、このダイーオの土地についての情報を得る為だ。
だから彼は部屋に入るなり、この領地についてのデータを読み漁った。
「ふーん、領土はかなりあるんだな。……にしても人口252人か……少ないな」
そしてキマドリウスがそう呟いていると、
「そうですね。ミナトクと同程度の大きさがあるのに、人口は1000分の1しかいませんからね」
急に後ろから声をかけられた。
「うおっ!」
彼が驚きながらも振り返ると、そこにいるのは黒目に黒髪ポニーテルのメイド。
アオイだ。
「人の顔を見て驚くなんて失礼な領主様ですね」
「い、いや! 何でアオイさんがここに!?」
「"元"領主様にあなたの事を頼まれたのですよ。あの方には恩もありますし、あなたが給料を払って頂ける間はお仕えいたしますので、今後とも宜しくお願いします」
アオイさんは丁寧に頭を下げた。
「まぁ俺は家事が出来ないから、してくれるのはありがたいけど……え、えっと、じゃあ宜しくなアオイさん」
キマドリウスがアオイに微笑みかけたその瞬間――
――――――――――
【名前】アオイ・サカキバラ
【種族】???
【現職業】???
【個人LV】???
【職歴】
???
【職業スキル】
???
【個人スキル】
???
――――――――――
と、情報が彼の頭の中に流れ込んできた。
「うっ……! これは『ステータス鑑定』のスキルか……っ!」
彼はこんなスキルを今まで持っていなかった。
とすれば、これはおそらく領主という職業の"職業スキル"だろう。
「大丈夫でしょうか、領主様」
「あぁ、大丈夫だよ。それより、アオイさんの名字ってサカキバラっていうんだ」
「そうです。ただ、いかに雇用主とはいえ勝手に人のステータスを覗き見るのは感心しませんね」
「ごめん……」
今のキマドリウスはレベル1だ。
だからいかに元魔王とは言え、彼は素直に謝った。
「すぐに謝るのは領主としてはいかがなものかと思いますが……人としては正しいので、不問とします」
「はは……やけに上から目線だな……」
「主を正すのもメイドの務めです。それより、『ステータス鑑定』が正常に使えるのであれば、ご自身のステータスも見てみてはいかがでしょうか?」
キマドリウスは職業スキル『ステータス鑑定』を使って、自分のステータスを確認してみた。
――――――――――
【名前】キマドリウス
【種族】悪魔
【現職業】領主LV1
【個人LV】1
【職歴】
・魔王軍兵卒LV10
・魔王軍指揮官LV10
・雑貨屋LV2
・魔王軍幹部LV10
・四天王LV10
・魔王LV10
【職業スキル】
・『ステータス鑑定』
【個人スキル】
・『全属性魔術』
・『魔法究極強化』
・『魔法鑑定』
・『魔導具鑑定』
・『軍団指揮』
・『形態変化』
・『ダンジョンの主』
――――――――――
「ふーん……」
明らかに人には見せられないステータスだ。
彼はそれを見て、領主としてやっていく上で『ステータス隠蔽』を手に入れる必要性を感じた。
「どうでしたか?」
「やっぱりレベル1だったな……はは」
適当に笑っているが、キマドリウスはこの時一つの事に気が付いた。
(俺の新たに手にした『ステータス鑑定』は職業スキルだ。つまり、"元"領主のあの老人も持っていた事になる)
「知ってか、知らずか……」