第28話 領主、戦闘を見守る
キマドリウスが隠し通路を降りた先は5階層。
現在のダンジョンの最下層だ。
そしてその最奥で、
「ダンジョンコア、状況は?」
彼は全裸の白い少女――ダンジョンコアとソファに座っている。
「現在冒険者達は2階層を攻略中です、主様」
「そうか。誰が対応に向かっている?」
「主様が鍛えたゴブリン3匹と、コボルト2匹です」
現在ダンジョンの戦力は、ゴブリン5匹とコボルト5匹だ。
その内ゴブリンの3匹が魔法を覚えているゴブリンで、冒険者4人程度なら、戦力的には申し分ない。
だから彼はこうして最奥の部屋で見守る事にしたのだ。
「その戦力なら……いけるか。よし、ダンジョンコア、見せてくれ」
「見せてますよ、既に」
……そう、何故かダンジョンコアは裸なのだ。
だがキマドリウスがそれを気にした様子は一切ない。
「そういう事じゃない。戦闘の様子を映し出してくれ」
「了解です。『監視画面』」
ダンジョンコアは詠唱と共に、指で空中に四角の枠を描く。
するとダンジョン2階層の通路の様子がそこに映し出される。
これは『監視画面』――
ダンジョンを管理するダンジョンコアが使える特殊なスキルの一つだ。
そしてその効果は簡単で『ダンジョン内の様子を視覚、聴覚的に映し出す』というものだ。
「ダンジョンボスなんだからこれくらい使いたいよなぁ~」
「魔王の時は職業スキルとして使えたんでしたっけ?」
「そうなんだよ。でもいくらダンジョンボスだからって職業が領主だと得られないんだよ、そのスキル」
「残念ですね……っと、戦闘が始まりますよ主様」
「あぁ」
二人は画面に集中する。
するとその画面の先に姿を見せるのは、剣を構えた冒険者4人とゴブリンとコボルト。
両者は今にも戦いそうな勢いだ。
そして、
「『出でよ炎、敵を倒せ』ゴブ!」
ゴブリンが詠唱し、火の玉を飛ばした事を皮切りに、戦闘が始まった。
「くっ! ゴブリンウィザードか!」
「避けろ!」
遅いながらも、正確に飛んでくる火の玉。
冒険者はそれを、
「あんな火の玉ごとき! うおぉ!」
ギリギリかわした。
「『出でよ炎……」
「先にあいつを潰せ!」
「うおおぉぉ!!」
ゴブリンウィザードを倒しに、冒険者達は走る。
だが真っ直ぐ辿り着けるわけも無く、
「行かせないコボ!」
「戦うコボ!」
コボルト2匹が立ち塞がる。
そして奥のゴブリンサポーターがそんなコボルト2匹に、
「『速き身体、頑健な肉体、強くあれ』ゴブ」
支援魔術をかけた。
「そんな魔術をかけただけのコボルト2匹で、何が出来るってんだ!」
「行くぜ、コボ!」
剣を抜く冒険者達。
だがそんな彼らにコボルト達が飛び掛かる。
「うおぉ!」
「は、早い!!」
コボルトの短剣と冒険者の剣がぶつかり、鋭い音を立てる。
しかもそれは一度ではなく、2度3度と繰り返され、冒険者は4人もいるのに防戦一方だ。
そしてそこに――
「『出でよ炎、敵を倒せ』ゴブ!」
ゴブリンの出した火の玉が襲いかかる。
そして当然。
コボルトの攻撃を守る事に集中していた冒険者達は、
「う、うわああぁぁ!!」
「ぐわああぁぁ!!」
その火の玉をもろにくらってしまう。
「へへっ、どうするゴブか?」
「こっちはまだまだ元気コボよ~」
「くそっ! ゴブリンとコボルトめ!」
「こ、こうなったら――」
残った2人の冒険者は、更に強く剣を握る。
どうやら諦めないようだ。
そして――
「「うおおおおぉぉぉぉ!!」」
無謀にも突っ込んだ。
だが勝てるはずも無い。
「くらえコボ!」
「ぐ、ぐわああぁぁ!!」
そしてコボルトの斬撃を受け、冒険者はその場に倒れた。
「へへっ、勝ったゴブ!!」
「お前達の負けゴブ!」」
「なんで負けたか、明日までに考えておくべきコボ!!」
喜ぶゴブリンとコボルト。
そんな彼らを見て、5階層のキマドリウスは、
「ダンジョンコア、彼らに声を繋げるか?」
「出来ます。『音声接続』」
ダンジョンコアは画面に軽く魔力を注ぎ、声が繋がるようにする。
そしてキマドリウスはその画面に対して、話しかけ始めた。
「おいゴブリン、コボルト、聞こえるか?」
「お! これはキマ様の声ゴブ!」
「どうしたコボか?」
「その冒険者達は回復魔術をかけて、入り口に放っておいてくれ」
「分かったゴブ!」
「了解コボ!!」
ゴブリンとコボルトは敬礼し、キマドリウスに言われた事を実行に移す。
その様子を見て、彼はようやく一息ついた。
(こいつらってなんで詠唱にも語尾をつけるんだろうな……?)
(それに最後のやり取りの時の笑い方がゲスすぎるな……)
「ふぅ……ま、いいか。今の所ダンジョンは任せられそうだな」
安心するキマドリウス。
モンスター達だけでの防衛、それはひとまずは大丈夫そうだ。
だがそれも今日までの話だ――
◆領主生活20日目
領民:261人
ダンジョン:5階層




