第25話 領主、商人のクセの強さに驚く
「え……?」
キマドリウスは目の前に光景に、ぽかんとしてしまう。
まず目を惹くのは、「パオーーーーーンッッ!!!」と鼻を上下させる巨大な象2頭。
この周辺にはほぼいない稀有な動物だ。
そして次に目を惹くのは、その象2頭に引かれたあまりにも巨大な馬車。
その馬車にはこれでもかという程の石材と木材が積まれ、象でなければ引けないだろう量が圧倒的な存在感を放っている。
「ナニコレ……?」
「頼まれていた石材と木材です」
象と馬車の主である、色黒でターバン巻いた人物――ソーマがキマドリウスに説明する。
「いや、わかるよ! ただ運び方のクセと、運んできた量がヤバすぎるだろ!」
「ありがとうございます」
「褒めてないからな!」
とは言いつつも、ソーマの仕事は早かったし資材の量も申し分ない。
はっきり言って有能だろう。
あまりにもインパクトが強すぎるが……。
「まぁいい。アオイさん、お金を渡してやってくれ」
「はい」
キマドリウスに促され、アオイは金貨の入った袋を渡す。
そしてソーマはそれを受け取り、腰のカバンに収めた。
「確認しなくて良かったのか?」
「はい。領主様の事は信用していますから」
「……お、おう」
キマドリウスは少し照れ臭そうに頬を掻く。
だが、こうも簡単に信用されるというのも、どこか気になる。
「本当に俺を信用していいのか?」
「はい。私のスキルには『人格鑑定』という物がありますので」
ソーマの言う『人格鑑定』――
これは商人や鑑定士が持つ鑑定系スキルの一種だ。
その効果は名前の通りで「相手の人格や性格を鑑定する」というものだ。
おそらくソーマは、そのスキルを用いてキマドリウスの人格を鑑定し、信用するに値する人物として判断したのだろう。
「ふーん。便利なスキルもあるものだな」
「いえいえ、領主様が新しく手に入れられたスキルには敵いませんよ」
「えっ!? どういう事だ……?」
「では私はこれで。……あっ、貨物車の方は置いておきますね」
ソーマはそう言うとキマドリウスとアオイに背を向け、2頭の象の方へと歩いていく。
「いや、ちょっと待て! 何故それを……」
と言いかけた所で、キマドリウスは自身のスキルの一つを思いだした。
それは『ステータス隠蔽』。
今朝、手に入れた事を知ったばかりの新しいスキルだ。
そしてそれを何故ソーマが知っているのか。
その事を知る為に彼が取る行動はただ一つ。
「『ステータス鑑定』!」
そう、ステータスを鑑定する事だ。
――――――――――
【名前】ソーマ・ナヴァグーラ
【種族】人間
【現職業】豪商LV???
【個人LV】???
【職歴】
???
【職業スキル】
・『人格鑑定』
・『ステータス鑑定』
???
【個人スキル】
???
――――――――――
「わーお。そういう事か……」
ソーマのステータスに浮かぶ『ステータス鑑定』の文字。
この七文字が彼の心を何よりも悲しませる。
(おそらく初めて会った瞬間から、俺が元魔王という事も筒抜けだったんだろうな……。……しかしそれでも商売を続ける、というのがいかにも商人らしいな)
弱みを握られた感覚。
そして商人という存在への再認識。
それがあるせいで、彼は去って行くソーマを追いかける事はしなかった。
「いいんですか領主様? 何やら慌てていたご様子でしたが」
「あぁ……まぁいいよ。俺が人間として正しい行いをしていればいいだけだし。はぁ……」
大きくため息をつくキマドリウス。
だが落ち込む暇は無く、
「うおおぉぉ! 資材を運べええぇぇ!!」
と、3人の大工見習いが走って来た。




