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第22話 勇者、飲み潰れる

 あれから数日。


「うわああぁぁ!! どうしてよおおぉぉ!!」


 剣の勇者は路地裏で泣き叫んでいた。


「どこに行っても帰れ、帰れ、帰れ! お別れの言葉はそれしかないの!?」


 彼女の手には剣――ではなく酒瓶があり、就活用のリクルートスーツもはだけている。

 きっとどこかで飲んで、その後この路地裏に迷い込んできたのだろう。


 ただ飲み潰れるだけならいい。

 だが、その場所が路地裏というのは問題だ。

 そして、


「あれれー。どうしたの、こんな所で」


「一人でこんな所にいちゃ、危ないぜぇ」


 二人のゴロツキが彼女に絡んで来た。


「あ!? なによ、なんか用?」


「いや、君みたいな可愛い子がこんな路地裏でどうしたのかなぁって」


「こんな所いたら襲われちゃうよぉ」


 ニヤニヤと、いやらしい笑みを浮かべるゴロツキ達。

 明らかによからぬ事を考えている。

 ……相手が剣の勇者だと知らずに。


「ねぇ、今暇なの?」


「嫌な事があったなら、聞いてあげようかぁ?」


「……」


 黙ってゴロツキ共の顔を見る剣の勇者。


「どうしたんだ?」


「もしかして恋しちゃった?」


 彼女がガン見するゴロツキ二人。

 一人はハゲで顔に傷がある男。

 もう一人はろくに髭も剃っていない汚らしい男だ。


「……不合格」


「ん?」


「何が不合格なんだ?」


 急に不合格と言われ、疑問を感じるゴロツキ共。

 始めは酒飲みの妄言かと思ったが、


「あんたらの顔面よ」


「は!?」

「なんだと!?」


「私の好みは優しい爽やか系のイケメンよ。それに王侯貴族で年が2、3個上ならベストね」


 全く当てはまらない条件。

 それにこのムカつく態度。

 ゴロツキ共の顔付きも険しくなる。


「お前みたいな酒飲みに、王侯貴族が相手してくれるわけないだろ」


「はぁ!? 何ですって!?」


「だいたい、彼氏もろくにいないからこんな路地裏で飲んでんだろ」


「うぐっ! 言っていい事実と言っちゃ悪い事実があるのよ!」


「"お前相手"になら言っていい事実だな」


「なっ!?」


 剣の勇者は煽られて、眉がピクピクと小刻みに動く。

 ぶちぎれる寸前だ。


「でも、そんなお前でも相手してやるって言ってんだよ」


「相手して"ヤル"が正しいんじゃねぇの? ハハハ!」


「ハハハハ!!」


 下らない下ネタで大笑いするゴロツキ共。

 ……それが引き金だった。


「マジでさいてーー!!」


 ――バリンッッッ!!!


 剣の勇者はハゲたゴロツキの額を殴った。

 それも酒の瓶で。


「ぐわあああぁぁぁ!!」


 額から血を流しながら、地面で転がるハゲのゴロツキ。

 自業自得とはいえ……かわいそうだ。


「女の子にいきなり下ネタなんてデリカシーなさすぎよ! そりゃモテないわよあんた達!」


「下ネタ言われただけで酒瓶で殴りつける奴の方がモテないだろ!!」


「うわああぁぁ!!」


 地獄の阿鼻叫喚。

 どうやらこの路地裏にはいるのは、酒飲み少女とゴロツキ2人ではなく、ゴロツキ3人だったようだ。


「女だからって容赦しねぇからな! てめぇマジでぶん殴ってやる!」


「あ゛ぁ!? かかって来なさいよ!」


「後で後悔するんじゃねぇぞ!」


 髭の生えたゴロツキは、上着をその場に脱ぎ捨てる。

 そして鍛えられた身体を惜しげも無く晒す。


「おぉ、結構いい身体してるじゃない。でもムキムキすぎてキモイわね」


「関係ねぇ! お前をぶん殴れればいいんだからなッ!!」


 その瞬間。

 男は大振りのパンチを、剣の勇者の顔面目がけて放つ。


「っふ!」


 だが剣の勇者は頭を左側に振り、その拳を華麗にかわす。

 そして、その勢いを活かし右拳で、


 ――ドゴッッ!!


 と、見事なクロスカウンターを決めた。


「あがっ……!」


 男は的確にアゴを殴られ、脳が揺れる。

 そして必然的に、膝からその場に崩れ落ちた。


「ふぅ……雑魚が粋がらない事ね」


「……うぐぅ……っ」


「うわあぁ! い、いてぇよぉ!」


 酔っていようと、リクルートスーツを着ていようと存在する圧倒的な実力差。

 そもそも剣の勇者に喧嘩を売ったのが間違いだろう。


「……結構手加減したはずなんだけどね。はぁ……でも、こうなると本当に困るわね」


 彼女は王に「犯罪を犯すな」と忠告されたのだ。

 今回は正当防衛(過剰防衛)で許されるかもしれないが、いつまでもこんな生活を続けるわけにはいかない。


「やっぱり犯罪者か冒険者になるしかないのかな……?」


 悲しそうに肩を落とす。


「その二択なら、冒険者かなぁ……」


 剣の勇者は、渋々と冒険者になる道を選んだ。

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