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第20話 勇者、将来を考える

「ふぅ……ここまでくれば大丈夫でしょ」


 剣の勇者は杖の勇者を地面に置き、一息つく。


「ふひっ、やっちまったね」


「うるさいわね。……でも、逃げてきたけど本当に大丈夫かしら?」


 もう既に彼女たちの酔いは醒めている。

 だからこそ今回の1件、その処遇がどうなるかが不安になるのだ。


「大丈夫大丈夫」


「本当?」


「まだ、王がもみ消してくれる……はず」


「……よね。そうよね! うん、そう! そのはず!!」


 剣の勇者は謎のガッツポーズと共に喜ぶ。

 だが将来を考えると、彼女はすぐに落ち込んだ。


「……でも、こんな生活をいつまでも続けるわけにはいかないわよね」


「いつか捕まるもんね、ふひっ」


「いやそういう話じゃなくて。金が無いのよ、金が」


「そうなの? 今まで一杯貰ったのに……」


 これでも彼女達は勇者だ。

 ダンジョンの攻略をして、財宝を手に入れているし、国からの援助金ももらっている。

 普通なら金があるはずなのだが……。


「どぶに捨てたのよ」


「ぶっっ!!」


 杖の勇者はつい噴き出した。


「ふひひひっ! なんでwwなんでよwwww」


「笑わないでよ! だって『金をどぶに捨てる』って言葉の意味が分からなかったんだもん! だから気になってやったのよ!」


「そんな理由でwwへへへっww」


 杖の勇者は腹を抱えて笑う。

 先程とは打って変わって、心底楽しそうだ。


「ちょっと! 笑い過ぎよ!」


「ごめんごめんww……で、言葉の意味は分かった?」


「もちろんよ! 『紙幣は使えなくなるけど、硬貨は使い続けられる』って事よね!!」


「あほすぎww」


「はぁ!? 私はあほじゃないわよ!」


「これであほじゃなかったら何なのww」


「もう!!」


 煽られてムカついたのか、剣の勇者はその剛腕から平手を放つ。

 彼女にとってその一撃は、友達の肩を叩く程度の考えなのだろうが……剣の勇者の強さは人間を遥かに超越している。


 この一撃が当たれば肩の骨が折れるなんてものじゃない。

 骨ごと肉が持っていかれ、確実に回復魔術直球コースだ。

 ……だが、相手は杖の勇者だ。


「『やめろ』」


 その一言で、詠唱完了。

 そして剣の勇者の平手は、肩に触れる寸前。

 空中で完全に制止する――


「え? どうしたの?」


「流石に人間に使っていい威力じゃない、ふざけるな」


「いや、軽く肩を叩こうとしただけじゃない」


「黙れスーパーウルトラヘビー級」


 きょとんとしている剣の勇者に口悪くツッコむ杖の勇者。

 あんな高威力のフレンドリーボディータッチを見た後だというのに態度が変わらないのは、防ぎきる自信があるからだろう。

 流石、彼女も勇者の一人だ。


「はぁ……こんな化け物が金を欲すなんて、嫌な予感しかしない」


「なんでよ!」


「だって、お前みたいな人里に下りて来たオーガがどうやって金を得るんだよ。悪い道しかないだろ」


「私はオーガじゃないし! それにちゃんと就職すればいいだけでしょ!」


「こんなあほの就職先なんて犯罪者か冒険者くらいしかないような……」


「そんな事ないわよ! 私だってオフィスレディーとかになれるもん!」


「じゃあなってみろ、って話」


「分かったわよ! なら今に見ときなさいよ! 私は必ず一般企業に就職して見せるからね!」


 剣の勇者は指を指しながら堂々と宣言した。

 しかし(無理だろうな)と内心思っている杖の勇者は、その宣言に「はいはい」と適当に返した。


「次会う時は私の仕事ぶりに嫉妬しない事ね!」


 そう言い残し、剣の勇者は去って行く。

 そして残された杖の勇者は、自身の将来についても軽く考えた。


「うーん。あいつは確実に犯罪者か冒険者になるとして、私はこれからどうしようか? 魔術大学の教師、どこかの研究機関……うーん」


 杖の勇者は"一応"脳みそがある、どこぞやの剣の勇者とは違って。

 それに魔術に関してはかなりの技量があるし、彼女の就職はそう難しくないだろう、どこぞやの剣の勇者は違って。


 だが就職できるからといって、誰しもが就職する訳では無い。


「金あるし引きこもるか、ふひっ」


 彼女の選んだ就職先は自宅警備員、またの名をNEET。

 もし聖騎士や賢者が親であったとしても手が付けられない、と言われている最強の職業だ。


「ふひひひっ」


 杖の勇者は自宅警備員にジョブチェンジした。

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