第16話 領主、冒険者三人組を改心させる?
「えんやこらっ!」
「よいとまけっ!」
男達が働く声が聞こえてくる。
「お、よく働いてるな」
キマドリウスが見て見ると、どうやら男達は森の方から伐採した木を建物へと運んでいるようだ。
男の人数は3人。
顔をよく見れば分かるが、彼らはキマドリウスが捕まえた冒険者達だ。
「俺はてっきり拷問でもするのかと思ってたぜ、領主様」
「そんなことする訳ないだろ、マッキー。……というかお前は何でここにいるんだ?」
様子を見にダンジョンの前に来たキマドリウスの横にはマッキーがいる。
彼は何故か宿屋に泊まっていたのだ、それもダンジョンに入らず。
「まぁまぁ、いいじゃねぇか」
「いや、お前ダンジョンボスに会いに来たんじゃないのか?」
「今、会ってるじゃねぇか」
「え……?」
さらっと言い放ったマッキーの一言に、キマドリウスは固まる。
口は半開きに、眼は点になっている。
「領主様ってダンジョンボスじゃないのか?」
「うおおぉぉ!!」
「むがっ! ……ごふっ! 口を塞ごうとするんじゃねぇ! な、何するんだ! やめろお!」
激しく揉み合う男二人。
「それを人前で言うな、マッキー! 分かったか! 分かったな!」
「分かった分かった! だから離してくれ!」
「よーし」
何が「よーし」なのかは全く理解できないが、キマドリウスは一応マッキーから手を離した。
「これは約束だからな、絶対に言わないでくれよ」
「わかってるよ。あんたには貸しがあるしな」
二人がそんな、はたから見れば男同士の痴情のもつれと、思われそうなやりとりをしていると、
「お、領主様とマッキーじゃねぇか」
絶賛内装製作中の建物からドワーフの大工、ゾレムが汗を拭いながら出てきた。
「イイテンキダナ、ゾレム」
「どうしたんだ、その急なカタコトは?」
「……すまん、つい。というかゾレムこそ、進捗はどうなんだ?」
キマドリウスの言う進捗とは、この建物の内装工事の進み具合の事だ。
もし進捗が早ければ、早々に新しい建物をキマドリウスが生やさなければならないし、遅ければ……特に何もない。
「うーん。意外とあいつらは働いてくれるし、明日明後日の間には終わりそうだな。ただ、元々俺の家にストックしてあった家具が切れてきてるから、出来れば補充してくれないか?」
「わかった。ソーマとかいう商人が今度来たときに頼んでおくよ、当然俺の支払いでな」
「わりぃな」
「気にするな」
と、話し終わると、ゾレムは建物から出てきた目的を思い出す。
そして、三人の"元"冒険者を呼んだ。
「おーい、休憩だぞー」
「ウィッス!」
「わかりました、棟梁!」
「今いきやす!」
小走りで三人の"現"大工見習いがこちらに駆け寄ってくる。
その三人とも額に汗を浮かべ、何故かまばゆい笑顔。
「あれ、こいつらこんなキャラだっけ?」
「なんか妙に気持ち悪いな……」
キマドリウスとマッキーはその様子にひきつった笑みを浮かべる。
「酷いですね、僕らは改心したんですよ」
「そう、労働という大切さを知ったのです!」
「あぁ領主様! なんと慈悲深い領主様!」
「……。やっぱり領主様がなんかしたのか?」
「俺は何もしていないぞ!」
どれだけ記憶を遡ってみても、何かをした記憶はない。
あの後、すぐにゾレムに一任したからだ。
だが、
「そんな事はありません! 領主様が我々に働く楽しみをおしてえくださったのですよ」
「そうです、そうです!」
「領主様ぁ~!」
まるで教祖のようにキマドリウスを称えている。
これは明らかにおかしい。
そうなれば必然。
疑問はゾレムへと向かう。
「……これはどうなってるんだ、ゾレム」
「知らん」
「いや、明らかにお前何かやっただろ」
「わしはただお前に言われた通りの労働条件で働かせただけだ」
「本当か?」
「本当だ。1日6時間労働だが薄給、社会保障無しで働かせておる」
「むーん」
謎の呻き声と共に悩みだすキマドリウス。
これはモンスターの労働奴隷としては正しい相場だ。
もしこんな劣悪な環境に人間が置かれたら、逃げる気力さえ失い、絶望に打ちひしがれる……とキマドリウスは思っている。
だが彼は人間の労働環境を知らないのだ。
「僕はこのままここに就職します!」
「待遇が最高です!」
「ウヒョ~い!!」
「……最悪な条件過ぎて頭がおかしくなったのか?」
「いや、頭がおかしいのは領主様だろ……」
そんなマッキーのツッコミは届かず、
「あっ、そういえばマッキー。この後いいか?」
キマドリウスは何かを思い出した。




