#16 被害者の秘密
そもそも捜査って、どんな手順を踏めばいいんだ?
「えぇと…こんな多い人数で固まっていてもやりづらいですし、分かれましょう。皆さん、お好きな所から調べて下さい。」
凄いな、ジョン。こんな時でも冷静だ。こういう時にヒステリーを起こすと色々大変らしい。冷静な方がずっと良いと思う。俺も見習わないと…。
各々が捜査しようとしている時に、それは起こった。
「うーん…。」
神久夜さんがむくりと起き上がった。昨日までの血色ではないけれども。あれ、亡くなった筈じゃ…?普通は、死んだら動かない。
「神久夜さん⁉」
「なんか騒がしいんだけど。…というか、皆どうしたの?」
「あ…気付いていませんか。神久夜さん、貴方は亡くなっています。…脈もないですし、肌も冷たいです。貴方の能力、『不死』だと思います。」
「あら、そうなの…。」
神久夜さんはすぐに理解したようだ。でも、自分が既に亡くなっているというのは辛いと思う。
「…あの、とりあえず体洗ってきて下さい。」
「あ、了解ー。血で汚れちゃったし、着替えてくるわ。」
…こういう時、この冷静さが怖いと感じる。まぁ、流石のジョンも予想外だったらしいが。
神久夜さんがさっぱりさせて戻ってきた。死んでるけど、この人の髪って本当に綺麗だよなぁ。艶があって、サラサラしてそうで。…別に、髪に拘りを持ったりはしないけれども。
「神久夜さん、髪綺麗なのね。」
「そう?特別に何かやっているわけじゃないのだけれど。」
「でもサラサラじゃないですか。羨ましいです…。」
女子達は髪の話で盛り上がっている。いや、探索しないか?
「あ、そろそろ私は他の部屋行くわね。」
「私もそっち行きます…。」
「オレも行こうかな。」
「あ、私も行きますね。」
アン達が退室した。そういえば、ジョンと別行動ってあまりなかったな。この部屋に残っているのは、俺とジャック、ヘンゼルとおとぎさん…そして神久夜さんだ。
「そういえばお腹の辺りが特に汚れていたのだけれど…ちょっと見てくれる?」
うわぁ、内蔵まで刺さってたのか…。
「…あれ、この血変よ?血液成分を調べる道具ってあるかしら?」
え、何それ。あっても俺達扱えるのか?
「あ、これがそうらしいですよ。僕調べますね。」
いやあるんかい。しかもヘンゼルって俺と同い年だよな?俺がそう考えている間にヘンゼルは調べている。そして、彼の表情が変わった。
「…え?」
「どうした?」
「…毒素が含まれています。」
「あの、“どくそ”って何ですか?」
「要するに毒だよ。毒は分かるよね?」
「ど、毒⁉」
なんで血に毒が…何処から血管に入ったんだろうか…。
「…僕、別の所探索してきます。」
ヘンゼルも退室した。
「他にここで調べられそうな物は…。」
「死亡時刻…は、本人に聞けば良いわよね。何時頃かしら?」
「いや、時間見てなかったから知らないわよ?でも時計はポケットに入れていた筈…あら、ないわ。部屋にこもっていたから、すぐ見つかる筈だけど…。」
「時計…なんで?動いているだろうから、証拠には…。」
「いいえ、襲われている途中で座り込んでしまって、その時に踏んで壊れたの。その時ポケットから出たかもしれないけれど、あれは証拠になる筈よ。」
「どんなデザインなんだ?」
「えぇと…月をモチーフにした、金と紫が混ざった感じの配色の物よ。はぁ、あれ気に入っていたのに…。」
「あの、探しましょう!」
懐中時計ってどのくらいの大きさなんだろうか…手の平サイズか?ポケットに入るくらいだし。普通に落ちているならすぐに見つかる筈だ。でも、見当たらない。物をどかしたりもしたけど、見つからない。壁の時計はまだ動いているので、証拠にはならない。
「あー、ない!」
「こっちもないです…。」
「この部屋にはないのかしら…。」
何処を探しても見つからないようだ。
「…もしかしたら、犯人が持っていったのかもね…。」
えぇ、それじゃあ、死亡推定時刻って使えないじゃん…。まぁ、その時間で止まってるなら証拠になるからな。
「…あれ、注射跡があるわね…」
「あぁこれね。持病があって、毎日注射は打ってるのよ。殺される前、持ってきてたのを打ったの。その後は…覚えてないわね。」
「ちょ、それこそ証拠じゃないですか!ちなみにその注射器って…」
「ほら、ここに…ないわね。」
「違う所に隠したんじゃない?」
「いいえ。今探してたけど、懐中時計も注射器も無かったわよね。」
「あぁ。」
「状況はかなりマズいわね。」
…どちらも見つけなきゃな。もし、証拠隠滅でもされたら…!
結局、他に得られる情報はなく、部屋を出て他を調べる事にした。
甘蜜です。最近本当寒いですよね。
このシリーズ、更新が久しぶりの気がします。もっと本文を長くしようとしましたが無理でした。なのでこの長さで投稿です。まぁ、いつも短めですが。
また暫く投稿出来ないと思います。テストが近いのと、次話全く書けていないのです。ご了承下さい。