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カムイモノ  作者: 食食食御さん
第三章【争奪戦】
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第三章 23 【協力者】ー2

「ハハッ、マジかよ、本当(ホント)かよ」


 老骨に響く“甲低い高音”に似合わぬ言葉で“興奮”と“畏怖”の念を口にするは、金剛月華会ゴミ処理屋が一人『ルゥジ・アフトマット』がその人である。


“興奮”とは素晴らしき彼の腕前。


『それにしても良い月だな』―――この白銀の合図(ひとこと)によって、カイムラ・クロノの慎重さ故の追い込みは見事に瓦解した。

 まず大樹の枝に潜んでいた(サイハラ)は白銀の一言で、レンバル・ポリオと同じく月を見上げたカイムラの頭蓋を撃ち砕く。後、一時統率の取れなくなった金剛月華会産のアンデット共の頭蓋を間髪入れず撃ち抜いて見せた。

 その手際の良さ、人質に一度として掠めなかった銃弾(こうげき)、つい被っていたニット帽を脱帽してしまう程。


“畏怖”『ルゥジ・アフトマット』より…否、同等の狙撃の腕を持っている人間が居たという事。そして――――、


「話に聞いていた魔弩(マジックボウ)とは違う……アレは“銃”だ。我々の大陸にしかない人殺しの道具…」


 こちらの大陸にも金剛月華会は拠点を設けており、こちら(大陸)産の材料や魔法を使っての軍事研究や諜報活動を行っている。因みにプレクト・ビレッジもこちら(大陸)側の人間で本部には来た事がない。

 今回の任務において本部からルゥジ達が支部に到着した際、諜報班から提供された情報には『銃に似た魔法の弩』が大陸(こちら)にある最新の武器と告げられていた。

 それがどうだ。

 しかし、最新の武器は北の小国にあるのみでエルフ国には特筆して脅威は無い。と、一応に聞かされていたが、その実―――“銃”そしてソレを巧みに扱う者がいたではないか。

 つまるところ、金剛月華会があずかり知らぬ軍備・科学力が大陸(こちら)あるという事。

 今回の作戦で死よりも重い失敗を誘発する弩級の爆弾。そして今後、金剛月華会(われわれ)において、最大の障害となるであろう存在。

 脱帽していたニット帽を被り直し、事の重大さにルゥジは頭を三度掻きつつ“(ギフト)”をおもむろに手に取った。


「面白い」


 最も注視すべき危険人物、最も自分に見合う強敵、一番に排除すべき軍事力。

 “銃”を、その利便性と凶器を、知り尽くした『ルゥジ・アフトマット』だからこそ、同一の能力を持った仕留めるべき存在を不敵に笑う。


「私はあの男を仕留める。言っておくがヌーベックに無線連絡は厳禁だぞ、傍受される可能性がある。だからお前は……――――ん?」


 当たり前のように気配のしない後輩の方へと振り返ってみれば、そこに彼の姿は無く。


「はぁ、勝手に行動しやがって………まあいい」


 気取られ、知られる事無くして任務の脅威を早々に排除すべく『ルゥジ・アフトマット』は動き出した。











「えぇっ!? 最初から気付いていた?!」


「そう目くじらを立てないでくれレンバル君。だからあの時、謝っただろ?」


 村長代理を嘯いていた男がサイハラに成敗された翌日。

 妻を人質に取られていたダファの案内の元、森の遺跡に捕らえられていた本来の村の住人をほぼ全員救出し終わり、時刻はまたもや来た時と同じく昼下がり。


「しかし、村の雑務をしていたのがエルフに化けたアンデットだったとは…」


「だったとは…じゃないよ! もう、助っ人がいるなら言ってくれればよかったのに……」


「しゃあないさ少年。助っ人のオレが来たのは、あいつが駄弁ってお前さんが覗いている時だ。ま、バレないようロー達と口裏を合わせる時間しかなかったわけよ」


 村の安全は確保されて、落ち着きを取り戻したフラテク村。今は村の葬儀の真っ最中で住民全員が出払っており、レンバルの師匠『ダファ』も葬儀に参加している。

 その為に葬儀の終わるまで一応に村を任された白銀一行は、村長代理を名乗る男が使っていたダファの家。

 両の手でどうどうと、驚愕から憤って眉間にしわを寄せている少年をローはなだめている最中である。 


「ふぁ~…おはよ。アレ? そんなに怒ってどうしたんだレンバルちゃん…てっ、誰?!」


「……村長代理はどうしたロー・ハイル?」


 強力な睡眠薬が身体から抜けたのか、はたまたうるさくて起きたのか。相も変わらず鎧姿のジェーム副隊長とナガマサ、眠り姫両名が隣の部屋からやって来た。


「変な恰好をしているな。誰だ?」


 サイハラと顔を見合わせて開口一番に悪意の無いジェームの悪態。当然、売り言葉に買い言葉という例えがあるように彼も同じくして口を開く。


「鎧着て敵陣の中爆睡してたヤツに言われたかねぇよ」


「なっ、え?!」


 表情は変わらずであったがサイハラの言葉には若干の呆れと事実が含まれていた。

 昨日の夜より時間は経過し、現在の時刻は昼下がり。今しがた起床したジェームはその言葉の妙な説得力に周囲を見渡す。


「まさかとは思うが…聞かせてくれロー・ハイル。何があったのか」


 そうして、反論はせず。まだ残る眠気の気付けとしてジェームは何があったのか聞く姿勢を取るのであった。





「えーと、つまり…フラテク村が食人男に占拠されてて、サイハラちゃんがアンデットも含め悪人を全部倒したって事?」


「その通り。褒め称えてもいいんだぜ」


 ナガマサの事実をまとめた証言に、腕を組んで鼻息をフンッと得意げに仰け反るサイハラ。


「なんか、ムカつくな」


 事実が事実である故、無下には出来ない副隊長は悪意のある悪態を尽きつつ、無辜の民を救った彼に軽い称賛として拍手を送る。


「そういえばナガマサ。お前は脱獄囚、て言ってたよな……食人する知り合いは?」


「いねぇ!!…と言いたいが、いたわ。ローちゃん“同物同治”って言葉知ってる?」


 ナガマサからの問いにローは頷き肯定。


「確か…体の悪い箇所を治すには、調子の悪いその場所と同じモノを食べるのがいい。だったか?」


「ああ。で、その考えを実行に移したのが『貝村 黒野』ってヤツだ」


ナガマサが話すには『貝村 黒野』という人間は本当にエルフと人間の混血(クォーター)だったらしい。

 しかし、肉体的な部位の顕著は無かった為にその劣等感、他のエルフを食えば皆と同じに戻れるだろうと五人ほど食い殺したところで捕まったと貝村の本人談だそうだ。


「はぁ~…ヤバイやつはどこの世界でもいるもんだな。一応聞いておくが、他にヤバイ囚人(しりあい)はいるか?」


「いるにはいるけど…心配しすぎじゃない? おれだってあの姉妹から、命からがら逃げてきたんだし」


「一応だ、一応。頭に留めておいて損は無いだろ」


「……ま、そうだな」


 ナガマサの知っている囚人は計三名。

 サイハラが仕留めた『貝村 黒野』、同じ獄に居た『黙真(モクマ) 純自(ジュンジ)』、老人の『魚見(ウオミ) 鳥光(トリミツ)』。

 どれもこれも、常軌を逸した行動ゆえに捕縛されるのが当然な人間であったとサイハラの話に全員が頷く。


「男色の強盗とマゾ嗜好の快楽殺人主義者……もうちょっとマシな人間はいないのか?」


「いねぇよ。大体ユーセラスに来る悪人は島流しにあったか、逃げてきたかの二択だからな」


「アキラ達も大変だな」


「ですね」

「だな」

「のじゃ」


 あそこもあそこで苦労をしているんだな。と、ロー達四人は星の見えぬ天井を見上げて、



『ヘプシッ!! 誰か噂してるな』



 アキラ達に同情の念を送るのであった。


「ロー・ハイル。ところでソレはなんだ?」


 濁った様な話題の後、ジェームが会話の空気を入れ替えようと指をさしたのはローの持っている一枚の紙きれ。

 話す事を思いだしたローは副隊長の問いかけに「そうだ」と相打ち、これからの動き。そして、眉唾の真実を皆に説明する事に。


「これが例の魔呪全書(スペルブック)の一ページだ」


 ジェームの任務にあまり重要視されていなかった存在は、第一印象として本当に何でもない一枚の紙きれ。


「どうしてコレが魔呪全書(スペルブック)の一枚だと?」


 副隊長の問いは当然で、また予測できる疑問。ローは得意げに紙の中央に指を置き、その理由を知らしめた。のだが、傍から見れば物書きをするのに丁度いい大きさの紙を振り回す成人男性の姿はほほえましい。


「これは…“8”か?」

 

「御明察だ、副隊長。」


 魔呪全書(スペルブック)の一ページには何も書かれていないと思っていたが、実際は紙の中央に小さく“8”と黒色で明記されていた。

 この数字の書体は、ローの持っている魔呪全書(スペルブック)最後のページに記載されているモノと同じ。


「恐らく、この数字は分かたれた魔呪全書(スペルブック)の枚数だろうと推測できる」


 だが、数字は“6”ではなく“8”。ローも改めて自身の持つ魔呪全書(スペルブック)を先程確認したが数字は変わらずで、先の結論に至ったのだ。


「だから何だというのだ? 私の役目は――――」


「―――黄金金剛石(ゴールディダイヤ)探し。しかし、現状で手掛かりは何も無い、だろ?」


 その通りだと言わんばかりに、副隊長は確信を突くローの問いにうなだれた。


「ああ、そうだ!」


「?」


 であるならばと、協力せざるおえない副隊長に重要な事を一つ聞く。


「副隊長殿はエルフ語を話せるか?」


「簡単な会話なら別に問題ない。隊長がご指南をしてくださったからな」

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