第三章 幕間EX【log.2043年1月16日19時47分47秒より】下
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「…―――以上が作戦の概要だ。何か質問は?」
「ま。別世界の事も理解したし、コレと言って聞くことはないと思う。が、だ」
「?」
「俺とアンタらが同じ目的を持っているのは分かった。しかし、その動機を知りたい。何でアンタらみたいな化け物が、子供じみた世界平和なんかを望んでいるんだ?」
「化け物とは心外だな…………我々は――――まあ、いいだろう。少し長くなるが、構わないか?」
「ああ」
「発端としては我らが神より、そうするようにと死に際の遺言を託された為。そして―――もう一つは、全ての電子機器の“勘違い”によるオーバーフロー現象と公表されている第二の2000年問題『2038年問題』を皮切りに人類の欲望が自動化され始めたからだ」
「欲望の…自動化?」
「そうだ。最近になって返却された租借地の件、憶えているか?」
「地雷原に囲まれた陸の孤島、大国の法無き見えざる避暑地、第二の刑務所島……当然だとも。アレは俺らの界隈以上に世界が驚いていたからな」
「2008年以降、何の音沙汰も無かった租借地がどうして最近になって返却させられたのか? マスメディアの観光地となったのか? それはアジア諸国の革命…もとい正しくは東系革命があったからだ。」
「…? 意味が分からんぞ。どうして、真反対の国々の革命が関係している?」
「そうだったな。お前はまだその時にこの国の者ではなかったか」
「…余計なお世話だ」
「そう目くじらを立てるな。」
「…」
「いいか? 過去、労働者の高齢化により働き手がおらずしてこの国は経済的窮地に陥っていた。極めつけには国の未来に悲観した、時の上層部がソレを後押し――――――そうして、この国の人類は緩やかに頽廃していく運命にあった。まだ僅かにいた若者の気も知らずにな」
「それで、龍宝院財閥率いる若者たちによる革命が起こったと?」
「その通り、ここだけじゃない。
対岸の国は国民の小競り合いに税を凝らして内戦にまで発展。隣の大国では国民を隷属化する事を計ったり、遠くの場所では紛争の火種を食いぶちの為にあえて撒いたりと、国の上層部に不満を持っていた者達はetc…etc…―――
―――そうとも学習せず国々はマスメディアを利用し、息のかかった者より偽りの情報を流出。『2038年問題』の対策が中途半端に追いつかなかった。と、検疫されぬ合法的な電子ウィルスを流すことでネット回線、電子機器を誤作動に見立ててショートさせ、あたかも対策ができなかったと偽装。
新たなる対策として、お手製のOSを配布し、電子系統の掌握を完了。後、自分達の意志に背かぬよう監視社会の完成という話だった」
「ハッ。じゃあ、結果として自分自身が出した偽情報で政府は身を滅ぼしたわけか」
「身内が裏切るとは毛頭思っていなかったんだろう。龍宝院家は国を影から支えつつ、あらゆる場所で暗躍していた揉め事処理屋。今の地位を捨てる愚策を取るなんてことは考えられなかった、と上層部曰く」
「………」
「そうして革命が成功したならば、世界の注目が集まるのは自明の理。――――どうなると思う?」
「どうって………自国はそうならないよう注意するとか?」
「まあ、中らずと雖も遠からずだな。
結果として、弱者からの反逆を危惧した大国は政治的避暑地でもある租借地を返却する事で革命を未然に阻止。彼等もまた龍宝院家の顧客の一つで、今ほどの公なシェアではないにせよアンドロイドを極秘に買っていたのは事実。足をすくわれる気分だったろう。
そうして偽善なる行為の裏では欲望の自動化が完成した」
「…」
「当然、租借地を利用していた面々からは非難轟轟の嵐。そこで彼等は新たなる避暑地を完成させた。夢物語など存在しない人工的に作られた望みが跳梁跋扈する場所――――君の職場にもお偉方が来たはずだ、覚えがあるだろう?」
「………嫌な思い出だ。クソッタレな少年時代さ」
「避暑地を除去した事によりマスメディアからは隠れられず、逆に代わりにと実行されたのは壁に囲まれた内側から外側への正義の行使だった。
前に利用していた法無き見えざる避暑地への干渉ではないからして、違法ではない慈善事業ならぬ偽善事業――――今や国を連ねる連合もこの悪事に加担している。
紛争地帯への物資搬入や人的災害地域への助け舟。傍から見れば正義の執行者であり、民衆の評価も得られる度し難い悪事。その裏にあるのは、幼き者の売春や麻薬取引、更には合法的な殺人と叩いても叩いても、減りはしない醜い人間の欲望の数々。
だが、壁に囲まれた安全圏から行われる慈善事業に少年兵やかわいそうな難民連中は従わざる終えない」
「つまり…」
「その全てが出来レースさ。代理戦争の概念は…聞くまでも無かったか」
「身に染みているからな」
「理念の無い正義の行使、台本のある自国の紛争地帯で行われる偽善事業、数十年前に流行った民間軍事企業産業の繰り返し。内紛による人的災害により戦争のできない国は救助の名目で向かう事の出来る政治的避暑地。汚く言うのならガス抜き場。
そこには理念も信じるモノも、人々の信仰となる象徴もない。ただあるのは人工的に形作られた欲望だけだ。―――――人間の相対的な敵は何だと思う?」
「ソレを俺に聞くのか?」
「フ…それもそうだ。人間の敵は人間でしかない、いつの時代も国もそのルールだけは変わっていない。しかし、叙事詩『ニーベルンゲンの歌』しかり、『ヘラクレスの難行』しかり、『ヤマタノオロチ伝説』しかり、人々は自分達が到底及ばぬ敵に勝つ夢物語を望んでいる。
だからこそ我々は絶対的な人間の敵を作り、人工的な欲望を破壊し、世界を一つにする。夢物語で望んだように絶対的な人間の敵を作りだし、外敵が絶対の悪だと人々で争う余裕は無くなる。
その為の魔王、その為の魔王への路」
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