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カムイモノ  作者: 食食食御さん
第三章【争奪戦】
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第三章 17 【エルフ・ノ・カルチャー】

 夕日は沈み、星々がきらめく時刻となり、エルフ国に来てから二日目の夜を白銀御一行は迎えるのであった。


「あ、見えてきましたよ!!」


 ローよりも少し前を歩くレンバルが指さす方向、無機質な電球の灯りではない焔で形作られた明かりがちらほらと。

 レンバルは喜びに肩の弓を今一度と掛けなおし、“白銀”は喜びに目を大きく、何故かナガマサはバツの悪い顔で目をそらす。

 

「ほう、あれが…!」


 ロー達がレンバルを案内人として雇った理由は幾つかある。

 一つは、文字通りに未開の地を案内する者としての役割だ。

 地図も土地勘も無いのなら、ある者を雇えばいい。そして、適任者が身内?に居た事は女王陛下の言葉通り幸運であっただろう。

 一つは、犯罪者としての彼を国に送り返す口実(わけ)

 無銭飲食でもしっかりと罪。コベルニクス周辺国の王国や帝国から流れてきた者であるなら、賠償金や釈放、移送の目途が立つというものだが、未開の地を故郷とする彼にはソレが通じず。で、あるからして、体の良い厄介払いも兼ねた案内人という理由(わけ)だ。

 最後に、毎度毎度なにも魔呪全書(スペルブック)探しの為に野宿を繰り返す訳にはいかず。

 森の中で孤立するという事は森の魔物や先のナガマサが如く、黄金金剛石(ゴールディダイヤ)魔呪全書(スペルブック)を探す“敵”に付け狙われる危険性があるだろう。

 そこで彼らが一日二日とかけて到達したのは、当初から計画していたレンバルの顔が利く第一の目的地。

 少年は大手を振って村を背景に向き直り、清く正しく礼節を尽くす。


「じゃあ、改めて!! 皆さん、ぼくの故郷『イャチェ(ヴァタグ)』へようこそ!!」











 木を隠すなら森の中、という言葉があるのように『イャチェ・ヴァタグ(エルフの村)』の造りは理に適ったモノだ。

 南下したの未開の土地はエルフ語で“ウェウワオ”と呼ばれる“巨人の大腿”の群生地。

 伝統ある村社会の風習は、所狭しと生えた“巨人の大腿(ウェウワオ)”を生活に使用しない道理はない。

 村の中央には天まで伸びる“巨人の大腿”の中身をくり抜いて出入り口は大きく、外に見張りを置ける足場を敷いた、ある種アパートのような佇まい。そして、周りには中身を材料として建設されたであろう楕円型で、地面より距離を置いた高床式の淡黄色が主な木造建築家々が建ち並んでいる。

 

「レェベラ!」


「あ、じいちゃん!!」


 恐らくはこちら(エルフ国)での名前なのだろう。

 エルフの村を先導していたレンバルに声を掛けるは、白みがかった金髪で長い耳は上向きに、黄緑色の服を着た年相応の顔と皺の老人。彼が急ぎ足にやって来る。


「イャウェモ? ベララ?」


「ウェウイャ クカリイャ、イポォセセベ………」


 駆け寄ってきた老人は、レンバルを見るや否やニュアンス的には抱き着いて心配している様子。そうして、(レンバル)との会話で若干悲しそうにうなだれるのが見て取れる。

 因みにここまでの流れ、全てエルフ語で喋っているために見て取ることしかできず。ローの今現在の所感は、


(え、全く分からん…)


 そう、誇らしげにも言える程――――いや、誇ってはいけない。

 自分だけではないだろうと彼が目配せをしてみれば、エルフであるフィリアナも聡明なニーナちゃんも炎煉もおくびには出さないが、全く新しい言葉を翻訳できず。


「え、ホント!?」


 自分自身の考えが見透かされたかと思い、ピクリと身体が動いてしまったがどうやら違うようだ。


「何かあったのか?」


 言葉が分からなくとも、今回の目的である魔呪全書(スペルブック)の手掛かりを逃さない様、行動を取らずにはいられない。

 ローが勇気の一歩を踏み出し会話に参加してみれば、言葉が分からなかったのは杞憂だった。レンバルがしっかりと現地の案内人らしく、老人の言葉を翻訳してくれたのだから。

 ※翻訳者がいるため、ここからエルフ語は自動で翻訳されます。


「レンバルよ、所でこの耳短い客人は?」


「向こうの大陸で『冒険者』ていう仕事をしているヘルさん、ルーさん、レイちゃん、エンちゃん…それと、盗人のナガマサだよ」


「盗人……ナガマサ?」


 老人の視線は近寄ってきたローにではなく、何故かバツの悪い青ざめた顔をしたナガマサを釘付けに。ロー達とレンバルは老人の突然な行動に首を傾げた。しかし、老人がナガマサの顔を覗いた途端、その理由はすぐに解った。


「あ、野菜泥棒!!」


「げぇぇぇッ!!!」


 美しい手際と言えよう。

 言葉通りの悪事を働いていたナガマサはスタンディングスタートの姿勢から足を踏み込み、その場からいち早く逃げ出した。かに思えたが、老人はソレを許さず。

 走り出した三メートルあたりでナガマサの頭に覆いかぶさり、決める御業はヘッドロック。

 こうして正当な理由で捕らえられたナガマサは、エルフの刑罰として簀巻きで“巨人の大腿(ウェウワオ)”の頂上に一日吊るされるのであった。


「少しお騒がせしたな、御客人」


 パンパンと土汚れを手で払い、連行されるナガマサを尻目に老人がこちらへと戻ってくる。


「わしはレンバルの祖父であり、この村を治める『ビィウェ・イャチェ』だ。…孫が世話になったらしいな」


「あ、ああ…はい。ロー・ハイル・ヘルシャフトです」


 イャチェの切り替えの早さに驚きつつ、驚きっぱなしは失礼にあたるとローも気持ちを切り替えて自己紹介。


「ッ?! 非対称の瞳……」


 驚いていたのはローだけではなかったようだ。長老はフィリアナを見るや否や、目を大きく見開きまじまじと彼女を見ている始末。


「な、何でしょうか?」


 百戦錬磨のフィリアナ・ルーゲル・フェンドルドもこれにはたじたじ。長老の圧には、聞き返す言葉を簡潔に述べる事が精一杯だ。

 そして、レンバルと同じ碧眼のイャチェも年甲斐の無い自分の行動を恥じ入り、深く反省。


「失礼、御客人。我らの神話には非対称の瞳(オッドアイ)を持つ同胞が出てくるので、つい見入ってしまった」


「い、いえ、誰でも物珍しいモノには目を引かれますわ」


 信奉者が信奉する存在を目の当たりにしたような村長の二、三拍子で体面が崩れる微妙な様子は見ていられず。

 どう取り繕い持ち直そうかとしていた村長と相も変わらずたじたじなフィリアナの間に両の手を鮮やかに割って入り、「ところで」と言葉尻強めでローは早々強制的に会話を進めた。


「先程レンバルが驚いていた件について、話してほしいのですが…」


 気になっていたのは彼が驚いていた会話の内容だ。

 内容自体はレンバルに直接聞けばいいのだが、もしこちら(白銀)に関係ある話ならば、先程のフィリアナへの対応もあり村長直々に事が進むはず。


「おお、そうであった。歩きながら話そう」


 目論見通り。案内人は村長の『ビィウェ・イャチェ』に代わり、同時に村長が対応をする事で村人からの“白銀”を見る視線は安心できるモノに変わった。


「今朝の落雷を憶えているか?」


「落雷…そんな事があったのですか?」


 村長が言うには、早朝に村の若い者が川へと食料を取りに行っていた時の事。突如として、快晴の空に落雷の音と光が鳴り響いたらしい。


「ああ。それで、その後に“白銀”の御客人よりも少し前…あなた方と同じ()()な怪我人が運び込まれたのだ」


 村長の目的地は案外に近く、造り自体は周辺の家々と変わらずして楕円形の高床式家屋。外から見えない様に入り口にはエスニック風な赤っぽいのれんが掛けられており、小さな丸窓からは光が漏れている。


「入るぞ、御客人」 


 村長は住人の有無を言わさず。

 『ビィウェ・イャチェ』に続き、のれんに手をかけて中へと雪崩れ込むように入れば、そこにいたのは二人の耳短。


「村ちょ………お前らは?!」


 片方はエルフの治療法を施された柔らかな草に包まれた呼吸の荒い男で、至る所に赤茶の焦げ目がついている。

 片方はその彼を看病している青鋼の鎧を着た者で、特徴的なアッシュブロンドの髪色と整った顔立ちを流れる汗は今の今まで横たわった彼を看病している証であろう。


「冒険者…“白銀”?!」


 青鋼騎士団エルフ国探索部隊副隊長『ジェーム・キク』は警戒視される突然の来訪者に、驚きを隠せないでいた。

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