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カムイモノ  作者: 食食食御さん
第二章【魔窟の主】
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第二章 28 【攻防衛戦】ー2

「のじゃゃゃゃゃッ―――――?!!!」

「おちるぅぅぅぅッ―――――!!!?」


 爆発と共に割れた地面に吸い込まれた二人。浮遊感に包まれながら、短いようで長い落下の速度に自由を取られて、


「オワッツぅ?!」

「ブクブクブクブク……」


 只今、着水。


「ぷはぁー!!!」


 落ちた先には腰までたっぷりと浸ることのできる水に満たされており、二人共は怪我をすることなく無事に落下できたようだ。

 第一に安全を確かめる為ニーナは着水していた身体を起こし周囲を見渡す。


「ここは…まさか…」


 嫌な予感――衛生的に――が背中を伝う。

 見れば、少しばかり緑がかった半円(トンネル)状の壁面と両端には作業をする者が歩く幅の短い道。辺りを照らすは、薄い明かりのランプが一定間隔で備え付けられている。水路自体はでこぼこの形で腰まで水があるのはそのせいだろう。

 おまけに彼女が浸かっている水の流れはどこか既視感のある光景―――――類似する記憶はコルコタの下水施設だ。


「スンスンスンスン……!! 大丈夫じゃ、臭いはしないの。」


 衣服、髪の毛と水浸しになった箇所を入念に調べて、不思議と異常ない事に安堵を示す。

 敵の気配や周囲に異常はなく、取りあえずは足の取られるこの場所から水路端に足を運ぶ事にした。のではあるが、ふと何か忘れている事を思い出し、もう一度と首を傾げて周囲を観察。

 ブクブクと水に浮かぶ上手く着水できずの彼を発見。


「れ、レオルゥッ――――!!??」


「ふ、深い……ブクブクブク………」


「いや、浅いから」


 溺れかけそうにあったレオルは腕を掴まれ、何となしに引き上げられる。

 彼を淡々と救助したのは、茶色毛並みの犬型獣人―――リベル・レトリックだった。


「ハァ…ハァ…た、助かりましたリベルさん」


「深いと言っても、腰までじゃし……―――ところで、おぬし何故ここに?」


「逃げ遅れて一緒に落ちたんだよ。全く、無茶が過ぎるぜあの虫ども」


 バツの悪そうに顔をしかめたリベルは、スンスンと鼻を動かして安堵と納得の表情を作る。


「どうやら、上水道施設に落ちたようだな。助かったというべきか…?」


「“上水道施設”とな?」


「ああ、コベルニクスとは同盟関係にあるって知ってるだろ? 技術提供もそのひとつさ」


 聞けば、この地下水路。洗濯、風呂に飲み水と一度使った水を浄水する機能を持った場所のようで、ニーナたち三人が落ちたここは不純物をすべて取り除いて五回と消毒、除菌された水が流れる水路らしい。

 浄水過程は計十回。その後、施設で改めて検査と消毒を行ってから食卓に出るそうだ。


「ふむ、そうか。で、出口はあるのか?」


「もちろんあるよニーナちゃん。みんなの所に急ごう」


 先程まで息を切らしていたレオルはサムズアップを繰り出して完全復活を成し遂げた。それから、水路脇に三人を連れてレオル、リベル、ニーナの順版で意気揚々と先頭を歩いていく。


「行き先はどこじゃ?」


「作業員専用の出入り口さ。ここからだと、五分もかからないよ」


「ほお、詳しいの。ここを通る事は多々あったのか」


 暗く幅の狭い道を迷いなく進むレオルは肩をすくめて、ニーナの問いを半分否定する。


「いや。通る事はなかったけど、決死隊の作戦としては視野に入っててね。その時に僕はこの道を覚えさせられてた、って訳だよ」


「まあ、結局。暗い洞窟内で挟撃されるのはまずいから、上の二ルートに道は絞られたんだけ……―――――――?」


 レオルに続いて軽口にニーナへと話しかけていたリベルは、何かに気を取られたのか後ろを振り返り唐突に歩みを止めた。


「どうした、リベル?」


「……今何か、聞こえなかったか?」


 彼の警告の顔色にニーナとレオルは耳を澄ます。


「…いや、特には―――」


「待てレオル。解を急ぐでない」


 立ち止まり聞き耳立てて、周囲の音をニーナは拾う。

 トンネルの中をさわらかに流れる水の音、揺らめく灯火がじりじりと燃える様。大雑把に聞き分けて、二通りの反響しかない空間に、


「これは……鈴の音色か?」


 リンリンと拍子を刻む鈴音が微かに響き、


「やっぱ何にも聞こえないな……。何にせよ、皆と合流―――――」


「レオル、あぶねぇッ!!」


 流血の雨音を奏でながら、リベル・レトリックの首は飛ぶ。


「くッ…!?」


 血は湧き出て天井へと吹き溜まった時に気配を感じた。瞬間、気付かぬ内―――眼前には彼女の首を奪う爪があり。

 不意を突かれた一撃をニーナはナイフを取り出し何とか鍔迫り合いて、灯る火は揺めきながらに鋼色の金切音が響き渡った。

 受け止めた爪は半透明で白の業物―――英雄の前にある一方は白く、もう片方は仕事を終えて若干の赤に染っていた。


「外シタカ……」


 防がれた敵と避けられた敵。二匹は残念そうに鈍い声で悪態をついてから、距離を取るべく水辺に跳躍。


「キキキ…“逃ガサナイ”ト、言ッタダロ?」


 真っ白な体躯に四本の腕と二つの足と、突き刺すと絡め取る事に特化した流動的な尻尾。薄暗の場所でもはっきりと分かる首を傾げるその姿形は人を模した昆虫のような怪物。


「あ、ああ……」


 何が起こったのかとレオルは混乱を覚えてしまう。水に浮かぶ“彼”であったモノは見知った仲の彼――

リベル・レトリック――の頭部だった。

 見てしまった、間近で鮮明な知人の死を。

 唐突な『死』、そしてソレはすぐ傍に。という恐怖は齢十五歳、レオル・カンベルトの体温を水辺という環境と共に寒々と徐々に奪っていく。

 身体は氷のように指一つとして動かせない。

 知人を狩り殺した怪物は隙を逃さずにと両挟みで二人を囲いジリジリと距離を詰めてくる。


「ぁ……か……」


 喉が渇いて、手先は震え、歯はガチガチと噛み合う。そうして、重く首を絞めつけられるような嗚咽感が頭の上から覆いかぶさる。


「こわい……」


「―――レオル、しっかりせいッ!!」


 怒声とは呼べぬ、しかして芯の通った鋭い声と共に、恐怖に彩られた彼の顔面へと謎の液体が浴びせられる。


「ごッ……!! キッツ、何これ?!」


「“気付け”じゃ。飛ぶぞ」


「え………おわああぁッッッ―――――!?」


 言葉通りに、文字通りにと“白銀の英雄”が一人、ニーナ・レイオールドは彼を抱えて薄暗闇へと飛び立った。











(ここまで来ればよいか……)


 水の流れに沿って到着したのは、落ちた穴からの光源は届かないトンネルのかなり奥深く。

 入念に周囲を観察し、安全である事を確信した彼女は壁伝いに跳躍するのを止めて浅く作られた水路中央で抱える彼と足を下ろす。


「無事かレオル? ここまで来れば―――――」


「ゴメン、動けなかった。油断してた…」


 面持ちの陰る彼の開口一番は自分自身を責める言葉で、白銀の彼女は意外なソレに面を喰らってしまった。


「…………むむむ」 


 なので、口を噤んで暫くと考えた後。

 ニーナは“口”を使ってではなく、“身体”を―――首を振って彼の責を正論で真っ向から否定する。


「いや、主のせいでないぞレオル。敵に気付かず、リベルを死なせてしまったのは“英雄”ともてはやされたこの妾じゃ。」


 そう英雄の一人である彼女があの鈴の音を聞き逃さなければ、こうはならなかった――――ならなかったのであれば今頃三人で戦っている頃合いだろう。


「でも、僕が油断してた所為で……」


 ニーナの言に食い下がらない彼の両肩を掴み、金の瞳に姿を見据えて、もう一度彼の言葉を否定する。


「知人が目の前で死ぬのは初めてだったのじゃろう? 仕方ない、動けなくなるのは当然にょ…」


「あ、噛んだ。」


「噛んどらんわッ!!」


 折角の慰めはプンスカと頬を膨らませるニーナ自身がちょっとのヘマで終了させた。すると、レオルは調子を取り戻したようで深く深呼吸し、新鮮な空気を肺に送って吐き出し終える。

 

「さて、落ち着いたようだし時間もないので簡潔に聞くぞ。今持っているモノとお主の“(ギフト)”、この二つを教えてくれ。」


 レオルの様を見たニーナは周囲の音を過敏に警戒しつつ、敵の攻略法を考査する。

 

(私の感知をすり抜けた姿の見えぬあやつら、そして()()()()……失態を自身で拭えぬ歯がゆい所ではあるが、同じ姿を消す力を持つレオルの助力が必要かの)


 アグァン変異体の二匹が自身の姿を消す方法、生体感知等のスキルを潜り抜けたのは未だ不明。ではあるがニーナのセンスに引っかからない以上、魔法やスキル、アイテム使用ではない“(ギフト)”なのは確か。

 となれば、まず確認するのは自分らの持つ戦術からだ。


「…? うん、わかった。」


 レオルの装備は隊の皆が装着している軍服ではない、例えるのなら武闘派(モンク)の恰好。ゆったりとしたオレンジ(せん)の黒いズボンと半袖の服で、隊の皆とわずかに類似する装備があるとすれば、それは腰にある小さな雑嚢だろう。


「魔弩が一つと魔晶石が二つ。先端のバレルは<火球(ファイア・ボール)>と<電矢(ライトニング・ボルト)>で、後はあるのは回復薬が三つかな」


 魔法を使わないレオルにとってはごく標準的な装備で、戦術を吟味するニーナの考えた攻略法に見合うモノは二つ。


「そうか。ところでバレルの魔法を魔晶石に写す事は可能か? それとその魔晶石を砕いて使用することはできるのか?」


「前者は出来ない事は無いけど。砕いて…って、具体的には?」


「…例えば、込めた魔法で<爆発(エイヴァ)>を使わずして広範囲に爆発を起こすとか……」


 暗殺、斥候を旨とした“白銀”の彼女、ニーナ・レイオールドには範囲殲滅の(すべ)は少なく、もし使う事になればこの上水道施設は大変なことになるだろう――――今の時点でも、大変ではあるのだが。付け加えて、彼女の術は有効な手立てではない。

 

「うん。できるよ」


「では、<火球(ファイア・ボール)>を込めてくれ。」


 彼女の指示に、レオルは軽く頷いて即席に魔法の呪文字を写しにかかる。

 魔晶石の扱いはゲーム内で魔力を回復する程度の存在。そして、一手勝つる為には()()()()が良い。


「後は“存在希釈”についてじゃが……――――来よったぞ、簡潔に話せレオル。」


リン、リンと音が聞こえて確信した。コレは位置を探る敵のソナー音だと。

 かなり奥く深くに来たというのにもう追いつかれたが、今だ(さえず)り程度の鈴音で少しばかりの猶予はある。


「えっと…姿形をほぼ完全に消せはするけど、流石に着水したりしたら“跡”が残る。かな」


「クックック…それだけわかれば十分じゃ。」


 一手、二手と勝利への道筋は揃い踏み。


「死ななくてもよかったリベルの仇を取るぞ」


「わ、分かった。」


 相手の情報が少ないという悪しき状況ではあるが、おおよその見当はついており勝機はあり。


「では、レオルよ。暗殺の心得を教えてやろう」











 リーン、リーンと間隔狭く、鈴音が大きく響いている。

 かなり距離が近くなったようでレオルにも確認できるその音は間近にあり。


「来るぞ。レオルは向こうを、私はあっちを見るのじゃ」


 流れゆく水の方角にレオルは目を向けて、ニーナはその反対の怪物が来るであろう方向に武器を構える。


「―――ッ?!! 上じゃ、避けいッ」


 音が止んで間もなく、頭上付近に半透明で白の尻尾が待ち構えている。


「くっ…!」


「ニーナちゃん!!」


 二人を突き刺そうとした尾、彼女の気付きでギリギリにレオルは避けたが、スンでの所にもう一尾。初撃、追撃の敵のコンビネーションはニーナの右腕を掠め取る。


「大丈夫じゃ、ただのかすり傷…」


 ではなかった。

 半液体の彼女の身体に傷をつけるのは、生半な切れ味でもないし物理攻撃でもない、恐らくは魔法の攻撃。そして、


(傷が治らん。透明になる以外<調教師(クルカティッカ)>のギフトをも持っておるのか……?!)


 粘液の身体にある傷は塞がらず、右腕から今は赤く見える血がぽたぽたとにじみ出て流れゆく。


「ニーナちゃん、左だ!!」


 避けた先に待ち構えるのは風景に溶け込まずの爪だけが浮き彫りあった魔虫。どうやら血の滲んだ魔法の爪は、攻撃時にそのまま姿を消すことができない様子だ。


「……っ」


 両手を振り上げ、袖口にあった暗器(ナイフ)を取り出し、いつものように受け止める―――――はずであったのだが、右腕の負傷は意外にも深く、思うように動かずで片腕のみでは姿勢が崩れた。


「今ダ、ヌーグ」


「キキキキキ」


 避けた先での挟撃、狙いをつけた虫二匹が崩れた彼女の首を抉り取らんとするも、


「………避ケタカ」


「ダガ、深手ダ」


 狙いが明確であれば避ける事は容易い。首を狙っているというなら小さくしゃがんで転べばいい。更にと、尻尾での突き刺しを回避する事は叶わず。

 右足の太もも、左の脇腹を抉られる傷は臓物のはみ出る所業。なのだが、代わりにと彼女の体液が止めどなくゆっくりと流れ出る。

 

「…オ前、人間デハナイナ」


「だったらどうした、ぬーぐとやら?」


 怪我の箇所を片手で押さえ、常人では立つ事さえままならない深手を負っているのにも関わらず、目の前に立つ少女にヌーグは多少の驚愕を覚えるのみ。


「ソレモソウダ」


 距離を取ったウーバとヌーグはじわじわと白い身体を消してゆく。一瞬と足元の水が消えたかと思えば、またぞろ姿を消し始めた。


「また消えおった」


「イヤ、消エテイナイ。」


 眼前と後方に今度こそ逃がすまいと、迫る八本の爪。

 人間でないニーナを強敵と認識し、先に潰さんとする心得は良し。


「レオル今じゃ」


 だからこそ読むことができた。

 挟撃に二匹は満身創痍の自身を狩り殺すだろうと、ここに()()()()()()()と予期できた。


「ナ――――ッ?!!」


 薄暗闇に散らばるは、キラキラ光る石の粉。気配と姿を希釈して、狙いをつけるは十五の彼。


「<火球(ファイア・ボール)>」


 振りまかれた魔晶石は夜空に輝く星のように、煌めき、輝き、そうして爆発。


「クゥ……」


 広範囲に渡る炎の爆発を怪物二体は何とか防ぐも、その姿は浮き彫りに元の白色が付く。


「暗殺は気付かれず仕留める事」


 ウーバの目の前にある水が沈んだかと思えば、仕留めそこなった餓鬼が姿を現す。手に持つのは<電矢(ライトニング・ボルト)>を装着した魔弩。

 ゼロ距離射程に構えられたソレはどうあがいても避けれない。


「そして、相手が複数ならば同時に射殺す」


 ヌーグを仕留めるは長く細い特別な暗器(はり)。この距離であるのなら、たとえ負傷していたとしても手を向けるだけで相手は死ぬ。

 言葉通りに魔弩を構えて引き金を、彼女は暗器を手に振るい。


「何カ、忘レテイナイカ?――――ヤレ」


「<爆発(エイヴァ)>」











「ヨクヤッタ、ヌーグ」


「味方を犠牲に、だと……」


 来た方角へと飛ばされて大の字に転がる重症ともいえる火傷を負ったレオル。彼は勝っていた、引き金を引けば終わっていたのに。と、自身のやるせなさを一言にレオルの意識はこと切れる。


「所詮、我ラハ使イ魔。命令ヲ完遂スル為ナラ、多少ノ自己犠牲ハ承知ノ上ヨ」


 ウーバの方も深手を負っており、盾にした三本の腕は崩れて落ちる。


「我ラ相手ニヨクヤッタ。ダガ、コレデトドメ………フン、生キテイタカ。オマエモシブトイナ」


 ズブズブと水をかき分ける足取りは重く、身体のほぼ半分が融解し始めている人間ではない少女。英雄である矜持故か、ウーバの目の前に合いまみえ、最後のあがきにレオルを背にして彼を守ろうとしている。


「ソノ重症、言葉ヲ交ワス気力モナイダロウ。ダガ、()()()()()、ダ」

 

 ウーバの透明化が始まる。足を流れゆく水をゆっくりと吸い上げるその様は、()()()()()()()


「サンカヨウ…だったかの」


「ア?」


 半身が解け始めている少女に、まだ口が聞けたのかと関心はするが確実に仕留めるべく、透明化は止まらない。


「ロー様の言っていた珍しい白色の花の名前でな。なんと、水に濡れれば半透明になるそうじゃ」


「ムゥッッッ!!!?」


 瞬間、ウーバの身体は硬直し、蝕まれる。


「水を吸い、透過するその姿――――お前のギフトはその花の応用・進化型。付け加えて魔法もスキルも通さぬ厄介なモノと見た」


「コレハ………?!!」


 透き通りゆく身体に揺蕩うは至極色の液体。


「そして、目の前で消える瞬間に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その二つ出来事で見当は確信に変わった。」


 その一滴一滴は自我を持っているかのようで、体の隅々に即座に広がる。


「オマエハ…オマエノ正体ハ、粘液生物(スライム)!!!?」


 今、ウーバは目の前の人間ではないこの怪物の正体を、術中にすでにはまっている事を確信した。流れゆく水――――つまりは、ニーナ・レイオールドの猛毒の体液が流れに沿って含まれているという事。


「そうじゃ。であるのなら、透明にあるお前達を倒すのにはこの痛い方法しかない。と私は覚悟を決めた」


「マサカ…、今マデ受ケテイタ怪我ハ……」 


「ワザとじゃ……と、言いたい所じゃが主らの姿は本当に見えなんだ。良くやったよ、お主らは」


 ふー、とため息をついておどけるニーナ。

 命令の完了ならず、ウーバの意識はギフトによって完遂される。


「ウオオオオオオオォォォッッッ!!!!」


 強制された意志で、ウーバは文字通り牙をむく。が、


「最後のあがきか…じゃがもう遅い」

 

 猛毒で仕留めるのみが彼女の手段ではない。彼女の一部を取り込んでしまったという事は内側から攻撃されてしまうのは当然の道理。

 右手人差し指をくいっと翻し、号令はいともたやすく下される。


串刺死にな(ツェペシュ)


 気付いた時にはもう遅く、ウーバの身体は内から外へと串刺に毒の魔槍が抉り出て。

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