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カムイモノ  作者: 食食食御さん
第二章【魔窟の主】
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第二章 25 【シー・プラネットの能力】ー2

(くそッ………アグァンに付与されてたのと同じのかよ……)


 状況最悪、怪我も治らず(自動回復せず)、身体の状態は文字通りにズタボロ。

 恐るべき水圧によってガラス張りの喫茶処(カフェ)に吹き飛ばされた獄炎炎煉(カレン)は、打ち砕いた石畳と大雑把に割られたガラス片、その雑な凶器二つを体全体で真に受けてしまった。

 

「カハッ…!!」


 指一つ、身体をちょいとでも動かそうとすれば自然と、激痛と共に鉄の味がする深紅の血液を吐き出してしまう。どう動こうがソレは変わらず、海水で濡れてしまった体は動けば動くほど熱と意識が奪われるいく。

 ――――――――だからどうしたというのだ。


「ま、だ……だァッ!!」


 精一杯のやせ我慢で立ち上がり、手に馴染んだ身の丈以上もある『鬼王の鉄槌』を握りしめる。感覚を確かめる――――――よし、いける。

 血反吐を吐いたから、()()()()()大怪我(ダメージ)を負ったから、身体を動かさない。という“勝利しない”選択肢は彼女に、彼女らには()()

 これは獄炎炎煉(かのじょ)のみに限らず、彼女ら三人のNPCならば、そう結論に至って歩みを進めるのだから。


「スゥー……フゥー………」


 一つ数えて息を吸う。


 二つ数えて息を吐く。


 三つ数えて深呼吸。―――――さて、準備は出来た。


 足に力を籠め、出血で倒れないよう神経を尖らせて、『勝利』へと彼女は歩んでいく。 











「覚悟はいいかッ!?―――――――オレに殺される覚悟はなァッ!!!」


 腰に下げた全ての瓶の内、半分を空にして、自身に完全な防壁を張ったノバン・シェンドは攻勢に移る。

 手に持つのは決死隊と同じ武器である『魔弩』。込められた魔法は第三級魔法<衝撃(ヴィツィ)>というモノで、効力は相手を吹き飛ばす程度の<衝撃>を放つ事ができる。

 サタナス・ロドスでは、距離を取って体勢を立て直すのに使われていた魔法ではあるが、ギフト持ちの彼にとっては相性最高の持てる武器で、最も殺傷能力の高い凶器となるのだ。


「動くなよー、狙いがそれる」


 一、二、三、四、五回と、ノバン・シェンドは自身を覆う海水のベールに魔弩の引き金を引いて、<衝撃(ヴィツィ)>を発動。

 ()()()()()()()()()の魔法。それを五度と蓄えた海水の圧力は脅威で、勿論の事<シー・プラネット>は弾き返すのと逆の事も出来る。

 衝撃を溜めに溜めた海水。コレをノバン・シェンドは角砂糖を一つまみするかの様に、右手人差し指と親指を浮かぶ海水へと入れ、つまみ取るように引き絞った。

 

「“固定を解除”だッ」


 つままれて小さな棘となった海水は目の端で追うのが精一杯の速度で飛来する。

 水の刃が向かう先は同じくギフト持ちである彼――アキラ・トシカワ――の頭蓋に。無力な魔法使い(ウィザード)よりも戦えるとノバンは分析し、優先的に彼を狙う。


「<パルプ・フィクション・ガム>!!」


 と、まあ、ここまではアキラの予想通り。魔法が無意味な以上、ギフト持ちの自身を狙ってくるだろうとアキラは(あらかじ)め、破壊された大盾を再度と歯車の食い込んだ鋼色の腕で分解済み。それから、手にあった盾の一部分を再構築する事で分厚い大盾を前方に構えれたのだ。


「チィッ、盾が邪魔だな…」


 飛来する水の刃の力を受け止めた大盾は破壊されるも、鋭き水刃はあらぬ場所を貫いてしまいアキラの防御は成功する。


「よし。フィリアナさん、援護をお願いしますッ!!」


 予想の通りに事は進み、喜びたい所。ではあるが、物凄い剣幕でオレンジ服の囚人は第二射、第三射と倍の<衝撃>をもってこちらを狙い、撃ち殺さんとしているのが見えた。


「はい、<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>!」


 詠唱と共に『精霊王の杖』を振りかざし、狙いを付けた箇所へと杖の先端を向けて焔色の球体を発射。すると、地面に着弾した球体は一瞬で魔法陣を描きなぞり、火炎の柱が噴出。

 彼女が使用した<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>は、第三級魔法<火の魔法陣(ファイア・サークル)>の上位魔法であり、階級は第五級魔法だ。

 その魔法で狙うはアキラ・トシカワとノバン・シェンドの両名がにらみを利かせる地面。撃ち込まれた<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>で作りだした火炎の柱は、ごうごうと燃え盛る。

 

「流石はアダマンタイト級冒険者――――“白銀”の魔法使い(ウィザード)。<火の魔法陣(ファイア・サークル)>……いや、その上位魔法を使っての時間稼ぎか」


 両者の間に構築した火柱は攻撃ではなく目くらましとして利用した。それにより、アキラが装備を整える猶予を作りだすことができた。しかし、

 

(難しいわね……、手数を渋るというのは………)


 悔しながらに頭を回し、次を考える“白銀”の彼女――フィリアナ・ルーゲル・フェンドルド――が優位な魔法を出し渋るのには、もちろんのこと理由(わけ)がある。

 

 それは、彼女が範囲魔法をもっとも得意とする…というより、特化した魔法使い(ウィザード)だからだ。

 

 近距離、中距離、遠距離と攻撃方法が大まかに揃っているローのチームこと“白銀”。

 範囲攻撃系のスキルや武器は一応に、炎煉やローが持っている。だがしかし、純粋な魔法範囲攻撃は無く、アイテムに頼るのも(ロー)にとっては気が引ける案件。――――MP・SP・HPが全回復するアイテムは最後まで温存するタイプなのです。

 故にフィリアナが最高位魔法職【偉大なる魔導師(グランド・ウィザード)】を受け持っているのだ。


「お怪我は?!」


「大丈夫です―――――それで、どうしますか?」


 鋼色で半透明の腕によって手に馴染む槍を形成するアキラ。彼と合流し、囚人――ノバン・シェンド――を倒す算段を僅かな時間で話し合う。

 話し合いの結果、フィリアナの選択肢はとても少なかった。

 固定された海水で魔法が全て掻き消されるのなら召喚魔法は無駄。より優位な魔法は範囲攻撃であり、使おうとするのならば、囚人一人を倒す為にユーセラスを崩壊させることになるだろう。

 つまり、彼女自身の攻撃は通らず、低級魔法でのサポートに徹するのが現状での最善策であろう。


「恐らくですが、私の持つ全ての魔法はあの囚人には効かないでしょう。第九級魔法である<ヴァン・ル・テューヘン>が破られてしまった以上、そう確信するしかありません」


「だ、第九級魔法……そのようなモノもあるのですね………」


 驚きと感心の感情を隠しきれないアキラは、フィリアナの魔法知識にとても興味を引かれそうになってしまう。が、状況が状況であった為にすぐさま正気に立ち戻る。


「そうなれば自分のギフトが勝利の要となりますか………考えがあります。それは―――――」


『アキラ!!』


「む、戻ってきたか三人共。ちょうどよかった」


 吹き飛ばされたハハルとモタノを救助していたナータ、セシリア、ペントラスが二人を安全な場所に移動しておいたと報告。後に、彼の作戦を事細かに耳打ちでフィリアナ達は聞くことに。

 

「……理解はしました―――」


 結論からして仮定を含めてはいるものの、良い考えであるが彼自身がもっとも危険な立ち位置にある。

 

「………ですが、アキラさん。自慢じゃありませんが、私の魔法は耐性の無い者全てを焼き尽くしますよ?」


 聞いた限りだと、サポートに徹するフィリアナ自身も気が引ける作戦。しかし、彼は首を横に振って彼女の忠告を意とせず。


「大丈夫です、フィリアナさんが心配しているようなことにはなりません。貴方は、<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>での追い込みに専念を」


「………気は乗りませんが、分かりました」


 フィリアナを納得させ、戻ってきた三人に倒れたトヨギとスズカイを避難させるように指示を出す。皆が作戦通りに動こうとした時、『丁度良く』と言えばよいのだろうか。

 

「密やかなお話中失礼。だがよー…どんな魔法であれ、ギフトであれ、作戦であれ………()()だって言ってんだろ?!」


 巨大な火柱は飛翔する海水により音もなく掻き消され、金髪の囚人が再度現れてしまう。


「各自散開!! 言った通りに役目をこなせ!!」


『了解ッ!』











 固定された海水は魔法の効果を全て打ち消す。そうであるなら、魔法が触れなければよいとアキラ、フィリアナは二手に分かれ、ノバンの狙いが定まらない様に挟み込む。

 炎煉は瀕死にハハル、モタノ、トヨギ、スズカイ、彼等の怪我は治らず。安全な場所に移動させる以上、今はフィリアナとアキラの二人でこの強敵を倒さなければならない。


「<パルプ・フィクション・ガム>ッ!!」


 槍を片手に走りながら、彼が半透明の腕で形成するのは『魔弩』。続いて腰にある雑嚢から先端部分と燃料である魔晶石を取り出して装着。続いて、バレル先端に数ミリ程度の鋼球をすっぽりとセット。

 備えられた魔法はヤツと同じ<衝撃(ヴィツィ)>ではある。が、魔弩の肝となるバレル部分には少し手を加えており、<衝撃>が範囲的に広がるのではなく一点に集中するようになっている。

 要約すると、より銃に近づいたモノ。ソレを構え、狙いを定め、迷いなく彼は引き金を引く。


「おっと…?!」


 まさに銃弾の勢いで飛翔する鋼球に驚きはするが、浮かぶ海水を侍らせる囚人に傷をつけること叶わず。


「ハハッ。魔法も物理も効かねぇぜ?」


 アキラの魔弩はヤツに余裕を与え、更には衝撃(ちから)も与えてしまい、水刃は牙をむく。


「まずはお前だ……返すぞ。」


 風を切る音と速度で来たる水刃。避けはしたが、左腕、脇腹、右太ももの全てに刃は触れて、彼の肉を削ぎ落す。

 幸運な事に致命的な一撃を受けず、作戦は一歩前進できた。


「クッ………今です!!」


 無詠唱に扱う魔法は詠唱したモノよりも威力は半減し、緊急用くらいにしか扱われない。だが、無詠唱の利点もしっかりとある。

 

 一つは次の魔法までの冷却時間(クールタイム)の短さ。

 一つは詠唱しない事により次に来る魔法を悟られない事。

 一つは予備動作なしで発動できる点だ。

 

 三点を踏まえ、ノバンを囲むようにフィリアナが発動させたのは<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>。予備動作が無く、冷却時間(クールタイム)が短いことにより、この魔法は連発できる。

 

「上位の魔法だろうと、かき消せない道理はない――――<シー・プラネット>ッ!!」


 余裕綽々。目を離していた翡翠色のエルフだろうと、彼は固定した海水に指を触れて魔法陣の描かれた地面に海水を放った。


「見つけたぜ」


 目論見通り、火炎の柱は消え去り、エルフを見つけた。残る動作は、魔弩による<衝撃>を海水に溜め、解除するのみ。


「固定をかい――――ッ?!」


 解除をする直前、指先が海水に触れていたことにより気付くことができた。


「…………外したか」


 後ろを振り返れば、魔弩を構えたアキラ・トシカワがそこにいた。

 彼が不意を突いて放っていたのは、<パルプ・フィクション・ガム>よって散弾みたくバラバラになった鋼球だ。

 ノバンが気づくことで第二のベールに包まれた。


(あ、危なかった。()()()()()()()ヤラレテイタ……しかしッ!!)


 あらゆる魔法の効果を打ち消し、あらゆる衝撃を吸収し、カウンターとして放つことのできる無敵の(ギフト)<シー・プラネット>。だが、ただ一つ…彼のギフトには、ただのひとつだけ弱点があった。

 彼という人間性を半分削って、獲得した彼の力。

 弱点とは彼の見る視線ではなく、()()()()。彼が、来たる攻撃を気付かなければ、認識しなければ、その攻撃を弾いたりかき消すことは不可能。


「バラバラになった鋼球というのは、いただけないな?」


 今度は外さず、自分自身を挟み込む二人に向かって散弾であったアキラ・トシカワの攻撃。ギリギリの眼前まで迫った鋼球を手で触れる事により、海水ごと挟み込む二人へ狙いを付けた。


「今度は外さない。固定した海水の中にあるバラバラになった鋼球、これにちょっとだ。海水に包まれたこれらに、ちょいとづつ<衝撃(ヴィツィ)>を加える」


 ノバンはおもむろに魔弩を構え、あらぬところにある固定された海水へと<衝撃(ヴィツィ)>を放つ。

 固定された海水が(ギフト)で繋がっている場合、与えられた衝撃は共有される。そして、その衝撃は指で移動することができ、なおかつ中にある物質に付与する事が可能。


「そんでもって、分かんねーように角度を調節して……固定を解除だッ」


 散弾となった鋼球は別段に全て放たなければならないという訳ではない。トヨギとスズカイを撃ち抜いたように、海水の固定された一部を解除すれば、それはまさしく“弾”となる。

 二人に動く気配はなし。

 一人は足を負傷して、もう一人は何かを待っているようだが関係ない。迫りゆく弾丸は、肉を削ぎ落し倒すべく向かっているのだから。


「今ですッ!」 


 何かを待っているのは事実であったが、少しばかりの誤差があった。


「な、爆発ッ?!!」


 待ち構えるはアキラとフィリアナの両名。彼の合図により、地面に手を着き無詠唱で彼女は囚人の足元へと()()()()()()()の爆発を起こし、弾丸はその熱風にあおられ、速度を失う。


(本命はコッチか……だが、攻撃を認識している以上、この破片は俺に届くことはない)


 <シー・プラネット>は認識している攻撃を全て受け止める事が可能。

 それにより呆気なく、爆発により飛び散る破片を防がれてしまった翡翠色のエルフは苦い顔をするが、間髪入れずに<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>でノバンを囲むように発動させ、目くらましとしてもう一度利用した。


「一度見た魔法なんぞ、対処は容易よ」


 浮かぶ海水に<衝撃(ヴィツィ)>を撃ち込み、魔法陣に放つことで炎を鎮火。


「次は…おっと、危ない」


 空中に固定され、ノバンの周りを浮かぶ海水に撃ち込まれるは先程と同じ鋼球。見れば、あの翡翠色のエルフが魔弩を構えているではないか。そして、



『フィリアナさんを援護しろッ!!』



 アキラの隊―――ペントラスを筆頭にナータ、セシリアがノバンを援護として魔弩で<火球(ファイア・ボール)>を撃ちこんでくる。


「効かぬものを理解せずに何発も撃ちこんでくる。というのは癪に障るな…」


 衝撃は受けた。ムカついたというのなら、倒せばよい。


「皆さん、あいつに魔法は効きません。ですので、この鋼球をお使いください!!」


 フィリアナから渡したのは鋼球の入った巾着袋。それにより、彼等三人の手に鋼球は行き渡り、ノバンを倒すべく取り囲む。

 敵を倒すべく魔弩の標準を各々が合わせるが、もう遅かった。


「消し飛べ、固定を解……あ?」


 ノバン・シェンド――――彼自身、観察眼は良くはないが何か決定的な違和感に()()()()()。自身を取り囲む連中、見渡せば一人姿が無い。


(あのギフト持ちはどこに……ん?)


 自身が纏う海水のベールに、赤いシミがペタリペタリと付着している。


(まさかッ!!?)


 取り囲む連中に向けていた意識を一瞬だけ真上に向けた―――――――大当たり。


「ぐぅ、く、ぐぐぐぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!!」


 気が付けば黒色の槍が眼前に迫っており、ノバン・シェンドは間一髪に両の手を犠牲に耐えている。

 

(いけるッ!!)


 意識外からの攻撃、ギフト<シー・プラネット>は海水に触れていなければ、感知することができない。だからこそアキラはソレを読んで、この作戦に出たのだ。

 フィリアナが発現させた<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>は目くらましの用途もあったが、同時にアキラ・トシカワを上空へと巻き上げていた。

 慢心するノバンの意識を地上の彼等へと向け、浮遊の魔法で敵へと落ちる機会を窺う。


「か、がぁああああああああっっっッッッッ……!!!」


 囚人は膝を付き、駄目押しとアキラはギフトの腕を使ってがれきをかき分け槍を捻じ込む。


「くたばれぇッ!!!」


「…い、や…だねッ―――<シー・プラネット>オォッ!!」


 両の手を突き刺され、上空へと意識を向けられたことでノバン・シェンドは首の皮一枚つながった。

 頭上にあった海水のベール全ての“固定を解除”したことにより、差し迫った槍の衝撃をそのまま返すことができたのだ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………弱点は克服できる。オレの<シー・プラネット>無敵だ!!―――――そしてぇッ!!」


 頭上は丸裸になるがもう関係ない。見える敵はすべてそろい、避けれず逃げきれない攻撃を当てればよい。


「打撃、刺突という無数の“衝撃”を受けたのなら、そのまま反かえす事が可能!! “固定を解除”スルッッ!!!」


 “固定の解除”は掛け声でも、意識の一つでもよい。全方位、全方向へと固定を解除し、脅威である水圧と瓦礫を交えた攻撃を放った。

 先程の様に柔なモノじゃあない、全ての破片が必殺の一撃を持つ。


「勝ったッ!!」





「いいえ、貴方の負けです。魔法は既に、」


 確信を持ち、そう発言するのは翡翠色のエルフ―――――フィリアナ・ルーゲル・フェンドルド。と、


「そして<パルプ・フィクション・ガム>も既に発動している」


 黒髪の若き隊長――――アキラ・トシカワ。


(な)


 固定を解除した海水が放たれる寸前、ノバンはこの目でしっかりと理解した。いや、してしまった。

 

(こ、これはあの時、フィリアナとか言うエルフが爆発させた魔法陣?!)


 見えたのは、瓦礫となった石畳が再構築される瞬間。魔力が通っていなければ、それは無機物であり

<パルプ・フィクション・ガム>は既に触れていた。


(ま、まさか…まさか()()をやるつもりかァッッ?!!)


 固定を解除された。という事は、飛んでいく海水ただの液体であり、もう一度固定をするのなら自身の指先で触れなければならない。


(や、ヤバい!!――――防がなくてはッッ)


 温度の急激な変化というのは時として、多大なるエネルギーを生み出す結果を残す。

 フィリアナが石畳の瓦礫に仕込ませていたのは第五級魔法<火炎の魔法陣(フレア・サークル)>。火炎の柱の温度は優に数千度を超える。

 それが水の中で燃え滾るのだ。結果、巨大な水蒸気爆発となる。





「やりましたねフィリアナさん!!」


「ええ、私達の勝利―――――」


 飛来する海水は巻き上げられ、何とか無傷?で勝利を収めることができた。








「いいや………エブ、ゴハァ…ゴエェ………」


 束の間の勝利を心の底から喜ぶ彼等であったが、煙に覆われた敵の声にはフィリアナを含め、驚愕に目を疑わずにはいられなかった。


「こ、幸運だった……左半身と右手の中指以外を持ってかれたが、半分あった海水で防げたことは幸運だった」


 自身が幸運であると言葉を噛み締める。ノバン・シェンドの左半身は焼けただれ、左腕は消し飛び、血まみれであるはずなのに、ヤツは海水を纏いまだ生きていた。


「今度は…こんどこそは外さねぇ……純粋に、固定した海水のみで殺してやる!!」


 腰にあったもう半分。ノバン・シェンドはソレを使って全方位に純粋な海水のみの攻撃を構える。


「<シー・プラネット>オォッッ!!―――――こていをかいじ………」


「オイ」











(な、何が起こった……?)


 何故かは知らないが、自分は今石畳の地面へと突っ伏している。撒き散らした海水が傷にしみわたり、いい塩梅として意識を覚醒させるに至った。


「ウグッ…?!」


 左足が激痛と言う名の悲鳴と上げて、足の一部が焼ける様な感覚に襲われる。


「……オレは一体?」


 残った右手に力を振り絞り、顔と身体を起こしたら、いや、と思い出した。

 右足と頭を二発同時に殴られて蹴られたのだ。



「覚悟はいいかッ?………オレにぶっ飛ばされる覚悟はな。」



 先程とは違うが身の丈以上の金槌を構え、汗混じりに血みどろとなった顔を拭う鬼の女がそこにはいた。


「ま、まてぇッ?!」


 獄炎炎煉(カレン)に忠告は効かず。

 手にある金槌は硬質的で、先程あった芸術品の様なモノとは明らかに違う。特徴として、彼女が両手に持ち替え、柄の部分を捻る事により金槌は猛々しい怒りの咆哮を上げる。

 咆哮とは例えたが、魔法文明が発達したこの世界ではそう言い表すことしかできない為。

 正しくは、震わせ、唸るエンジン音。柄を捻って金槌は形状を変化させ、後部からは勢いをつける為に火が激しく噴き出ている。



「カッ飛べぇぇッッッッッ!!!!」



 炎煉の振るうは必滅の一撃。くらう者は抵抗する間もなく、文字通りに()()()()()()()


 ノバン・シェンド―――ギフト名<シー・プラネット>。

 

 炎煉の一撃により、行方不明及び死亡。アキラの隊は完全に勝利を収めることができた。

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