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ラストレイン〜その一〜
「さようなら」
そう呟いて、彼女–––––––沙織は僕の目の前から消えた。
本来の居場所へ戻ったのだ。
さっきまで二人で雨を避けていた傘に、僕だけが包まれている。
雨で煙る街の風景に、君の残り香を探すけど、ペトリコールに阻まれて、見つけられない。
こんな雨に濡れてしまったら、あの子が風邪を引いてしまうかもしれない。
本当はあの小さな背中を追いかけて、抱きしめて、瞳を閉じて、君だけを感じていたかった。
そんなこともする暇もないほどの一刹那の間に、沙織は目の前から消えてしまった。




