第20話_scene5:神様達
俗世惑星から遠く離れた宇宙の銀河を航行する宇宙船の中で、嘗てミコと闘い語らい共闘もした61体の神様達が眠っている。彼等彼女達はミコの消還に伴いアパートに訪れ自分達を呼出した、ヒカリと云う名の少女と其の友達2名から全てを聞かされた後、俗世惑星を飛出して恒星間旅行規模の宇宙探検に出ることを決めたのだ。今は皆でコールドスリープ夢の中。然し転んでも神様と呼ばれた者達、夢を見ると云っても、そんな単純な話じゃ無い。何と神様達は俗世惑星の意思にリーン・ウェーダと交渉・アクセスして手に入れたミコの人生情報を、夢を見る回路に組込んで夢の中でミコの人生を追体験、即ちミコになりきって人生をなぞっているのである。人の人生を勝手に覗き見るだけに留まらず、其れをトレースする等、人が聞けば非難するだろうが此の連中は『The 神様』、人間の枠には収まらない思考と権利の持主達。故に放っとくのが一番賢明なのである。勝手気侭なのは何時もの事だ。
其れに、見ている夢が心地いい物だとは誰も一言も云っていない。実は今宇宙船が航行している銀河に差掛かった時から神様達が見ているのは、ミコの人生で一番苛烈な人生二周目、まだ39代目レインの頃、冬夏戦国時代に暴虐の限りを尽くした国殺しのエピソードだったからだ。敵対国家の民とは云え、女子供男老人問わず全ての民衆に遠慮する事無く暴力を行使し、悲鳴と涙を酒の肴と云わんばかりに堪能するミコの記録は枯れた感性の神様達をも一律平等に恐怖せしめた。ミコが何も清廉だけでは無いと云う事をすっかり失念していた(むしろ失念したかった)神様達にとっては、予想斜め上の危険球。其れをマシンガンで撃たれるかの様に何度も受ける。精神迫害、否、精神拷問にも近い時間なのだ。精神鍛錬で済まなかった事を、今更悔んだ処で遅し。此の夢は途中で起きる事も出来ない。自業自得を堪能中だ。
まあ、苛烈なのは其処くらい。人生三周目ミコ=R=フローレセンスの頃になれば少しは楽しめる事になる。神様達も其れを分っていたので、其れ迄の辛抱として割切って苦しんでいた。然う云う処は流石である。
果て無き宇宙旅行に於いて、楽しみ方は色々だ。星景色や宇宙の神秘よりも夢見る事を選ぶ者も居る。神様達61名は変わらない筈だった自分達を変えてしまったミコに思いを馳せながら、夢に現を抜かし続けた――。