第2話_再出現したミコが選んだのは…
シャーロックとクララの結婚式から数日後。新玉の月の1日。
ミコはポスティオ郊外の雪原に立っていた。正確には『現れた』だ。影帽子が保管している影で作った道具のひとつ、黒い切符を利用した時空跳躍だ。それなりの時間を『条件』として消費するのと引き換えに、どこでも任意の『行き先』に移動することができる代物だ。ただし『条件』として消費する時間は基本的にミコが切符を使わずに『行き先』まで移動した場合にかかる時間以上の長さが必要になる。だがそれ以上に消えてしまえば『行き先』に現れるまでの間は完全に世界から消失しているので絶対に捕まらないという利点がある。実質時間移動できるというのも利点。
ミコは携帯電話の日付を確認する。ちゃんと指定した新玉の月の1日。新年の元旦だ。
同時に周囲も見渡す。これも指定した通り、ポスティオ近郊の原っぱの真ん中。これから本格的な冬になると予想通り、辺り一面雪だらけだ。一番近くの道に出るまでも結構かかりそうである。ならば。
「たまには道のない旅をしますか。都に行ったせいか、自然が恋しいわ。ちゃんと追いかけてこられるかしらね。ふふっ」
ミコは不敵な一人言を雪天に呟くと、携帯電話をがま口チャックの中へとしまい、どこへともなく歩き出した。
一歩一歩と、雪原に足跡を残して。森の中へ。山の奥へと。