第2話_神様達の帰り道
イトムラサキの式場を後にした落とヤエの二人は、雪が降る中番傘をさしながら歩いていた。断じて相合傘ではない。一人ひとつの番傘をさしていた。
歩きながら、落が溜息をつきながら愚痴をこぼす。
「はあ〜、ミコちゃんいなかったやん。せっかく手がかり見つけた思たのに、無駄足やったな」
「そうね、追跡チームの面目丸つぶれ。てか色んな意味でムカつくわ。リベンジしてやろうって意気込んでいたのに、ものの見事に肩透かし。あああ敗北感がたまってくぅ〜」
ミコを仲間にしたかったという落とは対照的なヤエのミコに対する感情。とここで、落が仰天の一言を発する。
「今日の偽名はヤエだったわな、希。ほんまお前さんは嘘つきやねえ」
「いいでしょ。それがわたしのアイデンティティ。嘘ハッタリ騙しなんでもござれの一筋縄ではいかない女神。それがわたし、希=ニックネームよ」
「あそこに行ったんも、ほんとはあの子らが祝の名前を口にしてたのを感知したって理由なんやけどな。ほんま、誤魔化すのがうますぎるんちゃう?」
落のへりくだった指摘にも希は応じない。むしろそれを褒め詞と言わんばかりに威張り散らしながら喋る。大事にしている紫色のセミロングの髪がその際靡き舞い踊る。
「あんたはコント勝負に負けて賭けた設計図を盗まれた。そりゃ相方にもしたいでしょうよ。でもわたしは頭脳戦で負けたのに設計図も取られず見逃されたのよ? あんな悔しい思いは神になってからはじめてだったわよ! 絶対やり返してやるわ。帳と整の情報探索チームから名前を巫=R=フローレセンスに改名したことも知らされているし……逃がすもんですか!」
「設計図使うてくれたらすぐ居場所わかるんやけどな。なかなかミコちゃん使うてくれへんし」
「それでも痕跡を完全抹消はしていないわ。必ず捕まえてみせるわよ。まずは、他の追跡チームへの連絡ね」
「せやな」
暗闇の神、落=パーフェクトハーモニィ。
粋の神、希=ニックネーム。
ミコの行方を追う神々の手は届かずとも確実に、ミコの背後を追いかけ、そして近づいていた……。