第11話_4本目(祝の指摘と翠の驚愕)
4本目
・ミコ コスト残数17→66 手札3枚 ボツボックスのカード10枚アイコン数27
ロストホールのカード16枚(メイク11,コマ5) ストックプールのカード1枚
・翠 コスト残数2→18 手札2枚 ボツボックスのカード11枚アイコン数30
ロストホールのカード8枚(メイク8,コマ0) ストックプールのカード7枚
遂に始まった4本目。先ずは審判役2名の「ドロータイム!」の掛け声に合わせ、翠、ミコ共々規定枚数分カードを引く。翠は1枚。ミコは3枚。翠は勿論イカサマでサーチドローし、最も必要とされるカード、コマカード転コスト1の『無茶振り悪友ベルガデル』を手札に加え3枚。ミコは矢張りイカサマの証拠を掴ませないまま3枚引き6枚となった。
ドロータイムが終わった事を確認した天と希は続けて声を張り上げる。
「メイクタイム!」と。
すると瞬時に翠が動いた。ミコの“急いでない主義”に乗っ掛かり隙を突き付け上がるってな具合に手札からメイクカードを使用した。3本目にサーチしてきたコストリカバリ用カード。
「コスト0、代償条件付きメイクカード『残業休息――真夜中の癒し満天の星空』を使うわ。条件は『残り手札のコスト数が手札の枚数以下であること』。此れは泥棒ミコさんにも見せて確認してもらうわ。ミューの残り2枚の手札はコスト1メイクカード『窮地に燃えるタイプの作家』と転コスト1のコマカード『無茶振りする悪友ベルガデル』よ。条件満たしているわよね?」
「そうですね翠様」「其の通りよ」「文句の着けようが無いわ」
ミコと審判役2名が同意する。翠は得意気に続ける。
「此れに因りプラニスフィアで消えている恒星の光は封印している分を除いて全て輝きを取り戻す! ミューの使えるコスト総数も18から56に回復するのだ」
「ほう……やりますね。翠様」
「更に今見せたコスト1メイクカード『窮地に燃えるタイプの作家』発動! 手札を全てロストホールに捨てる代わりにミューのボツボックスの残りアイコン数分、9枚山札からドローさせてもらうわ。いいわね?」
「ちゃんと手札捨てたらね」
「ふ……ふふ。ありがと♪」翠は天と希を介さずミコとのやりとりを重視する体で手札を一度全てロストホールに捨て、例の如くイカサマサーチドロー。勝負を決するカードを抜いて抜いて抜きまくった。此の4本目で決着を着ける為のカードを。余すことなく手元に揃えた。
其れも此れも千里眼持ちの扉を始めとする神様応援団のミコの手札盗視透視情報の御陰。メイクカードは謎だが、コマカードの様子は筒抜け。ミコが今手札に持っている2枚のコマカードとその総アイコン数――翠は勝ちを確信した!
「コスト4メイクカード『無理矢理4コマにしました』使用! お互いのプレイヤーは手札のコマカードを全てロストホールに捨てて此の本のショウタイムで起承転結出せる様に好きにコマカードを選んで4枚手札に加えられる。さあ、手早く処理と行きましょうか」
翠が促すとミコも頷き、審判の許可も降りたので翠とミコは手札からコマカードを捨て、山札から4枚のコマカードをサーチして手札に加えた。翠にとって重要なのはコマカードを4枚手札に揃える事では無い。ミコの手札に在るコマカードを捨てさせて、ロストホールを肥やす事が大事だったのだ。ロストホールはストックプールと違い相手の情報を大っぴらに確認出来る。条件が整った事を改めて確認した翠は「く……くっくっくっ」と顔を俯せ、誰にもその表情見せずに、怪しく嗤う。
そして其の侭ゲームエリアの床面こと水面から発生する霧の様に、勝利宣言を発声した。
漸く表を上げた翠は余裕たっぷりにゆっくりと手札から1枚のメイクカードを見せる。
「ミューの勝ちね、泥棒ミコさん。このカード、コスト13メイクカード『原稿は落ちた』でキミの……いえ貴女の負けは決まったわ」
「おや? わたしの負け? もう? ここで? それ、どんな効果のメイクカードだったかしらね」
翠の勝利宣言にも未だ恍ける返事を返すミコ。時間稼ぎしても無駄よ――“急がない”がモットーのミコ張りに余裕綽々な状態の翠は意地悪な口ぶりでカードの効果を説明する。
「『原稿は落ちた』はね、此の本でのショウタイムでミューが魅せるコマカード全てのFPを−15減算する代わりに、今直ぐ貴女のロストホールに在るコマカード全てをボツボックスに送れるのよ。たったひとつ、貴女に有利な条件付きで」
「あら……何が有利なのかしら?」
ミコはまるで空気が読めない女を装うかの様な純朴さで訊く。翠は口元を歪ませて答える。
「此のカードでロストホールからボツボックスに送っても、敗北条件に関するアイコン数は半分切り捨てにされるって点。だからわたしは先に『無理矢理4コマにしました』を使って貴女のロストホールにコマカードを入れさせた――此れ以上の説明が要る? 泥棒ミコさん」
「なるほどね。わたしがロストホールに送らされたカードは『愛を貫く一途な漢・ジン』と『月下の歌姫フィルエール』の2枚。アイコン数は『ジン』が起承転『フィルエール』が起承結。両方とも3合わせて6。送り先のロストホールに今まで送っていったカードたちのアイコン総数は19。合計25。アイコン数のカウントを切り捨て半分で12にされるとは言え今のわたしのボツボックスアイコン数は27。納得。Just39、そのカードを使われたらわたしの負けか」
「然う云う事♪」
「しゃああああっ!」ミコが敗北する事を理解した瞬間、神様応援団は一斉に歓喜の雄叫びを上げた。そして「翠! 翠!」と翠コールも起こる。其れは負けられない闘い且つ極限にまで至るハイレベルなイカサマ合戦を含め此のゲーム勝負を制した翠への、仲間達からの最高の贈り物。既に審判役である天と希も拳を振り上げ翠コールをやっている。中立の筈の審判役にあるまじき行為だが、ミコより翠を取る事は周知の事実なので誰も気にしなかった。
ゲームエリアの大ホールに響き渡る翠コール。其れですっかり気を良くした翠は未だカードは使わずに、ミコに最後の挨拶と御節介な嫌味忠告を告げた。
「貴女はあの時3本目、ミューのコストが2になった時に勝負を決めとくべきだったのよ。其れが貴女の最大の失敗。泥棒ミコさん。でも其れを差し引いても此れだけ白熱したゲームにしたのよね……流石だったわよ。ミコ=R=フローレセンス」
翠は得意自慢のドヤ顔でミコの健闘を称える。すると背後から「うんうん」と其れに同調する声がした。祝の声だ。翠は其の名前通り、翠の勝利に対する祝の辞だと思っていたのだが……。
其の後続け様に彼女が発した詞を聞いて、耳を疑った。
「さすがミコおねーちゃん。せーせー言いながらも勝負を急がず楽しんで堂々としてる。やっぱちがうねー。わたしも遊んで欲しーなー」
他の神様仲間達は呆然と聞き流していた。が人一倍首も頭も回る翠は、祝の伝えんとする真意を読み取ってしまったのだ。
(せーせー? 堂々? ま、ままままさか……ミコは正々堂々イカサマ無しでやってたって云ってるの?)
此の瞬間、今にもカードを出し使おうとしていた翠の手が停まる。
其れは此の本も又、長く永く時間がかかる事への前触れであった。
ゲームは未だ、終っていない――。
この度は愚者ぐしゃなわたくしの作品を読んでいただき、心より感謝申し上げます。
さて、本日も無事第11話を章ごとに分割してサブタイトル付けて無事投稿完了しました。
昨日の10話で神様達が60体集結しゲームも始まりました。本日11話からはそのゲーム本番真っ直中の話となっております。
10話のラストでも触れましたが、互いが同時にコンボを決めまくるスピーディな展開!
翠様の詞を借りるならまさに「イカサマ合戦」と言えるでしょう。でも祝ちゃんの一言で…勝負はどうなる? どうなるのでしょうね?(作者はわかってんだろ煽ってんじゃねーよというツッコミを期待しちゃうドM作者。おお…ora)
そんなファニータイムでのゲーム対決、決着がつく12話も読んでいただければ幸いです。
相当愚者ぐしゃな作品ですが、みなさんの才能・感性・能力でなにか感じてもらえるものがありましたらこれ以上嬉しいことはありません。
一日1話のペースでチャプター・章ごとに分割してUPしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
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