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川淵の向こうへと  作者: リュウ・鮫島
32/33

5-6

「そう。その、まさかさ」

「行くの? あそこへ」

 優香は耕平の言わんとしている事を、早々に察したようだ。


「川は全てを知っている、なんちゃってね」

「うん! みんなで行こうよ。親戚の家があるから何人でも

泊まれるわ」

「お、それはイイネー」


「…私、行かない」

 盛り上がっている二人に対して、水を差すように言った。

「なんだよ。麻梨、行こうぜ」

「麻梨、どうしたの? 夏休みは一緒に田舎で過ごそうって話してた

じゃない。行ってみようよ」

「…だって」

 まだ気分が乗らないのか、珍しく言葉少なげだ。


「興味深いとは思わないか? 閉ざされた10年の謎が今、解き明か

されるかも知れないんだぞ。それに休みの予定が、そこなら同じ

なんだから別に問題ないじゃんか」


「…旅行の目的が変わったわ」

「目的って?」

 意外な言葉が返ってきたので目を丸くする二人。


「…! あっ、そっか。沢本くん、ちょっと耳貸して」

「ん? 何」

「あのね、ごにょ…ごにょ…ごにょ」

「何、二人で内緒話ししてんのよー」

「…と言うわけなの」

「ははーん、なるほどね」


 耕平は腕を組み直し暫く考えた末、顔を上げ麻梨に言った。

「麻梨。お前、ラグビー部の三枝さえぐさ先輩って知ってるか?」


「いきなり何よ。知ってるわよ。三枝先輩っていったら容姿端麗、

頭脳明晰おまけにスポーツ万能で、絵に描いたような理想形…

ま、女子で知らないのはよっぽどのモグリか用務員のオバサンくらい

…あれ? 用務員にオバサンなんて、いたっけ? ま、いいや。

とにかく私も敵が多すぎて、ちょっと出遅れてるって感じかしら」

 やっと興味深い話しに触れられたのだろう、早口で捲くし立てる

ように言った。


「その女子の憧れの的、三枝先輩が行くって言ったら、どうする?」

「どこに?」

「旅行にさ」

「行くわけないじゃない! 耕平なんかとは違うんだから」

「行くさ」

「どうして言い切れるわけ?」

「先輩もミステリークラブの部員だからだ」

「ええっ? だって…」

 思いもよらぬ台詞が帰ってきて、今度は麻梨が目を丸くする。


「そう、本業…つまりラグビー部の方が忙しくて、ほとんど顔出して

いないけどね。でも三年生だし、この前の大会が最後だったのは

知ってるだろう? だから夏休み中は、もう練習も無いし、せめて

ミステリークラブの課題くらいはやりたいって漏らしてたよ」

「課題って?」


「夏休みの間に、身の回りに起きた怪奇体験などをレポートにして

提出するんだ」

「…それでも行くとは限らないわ」

「俺と先輩の繋がりを侮っちゃーいけないな。なんつっても家が近い

こともあってガキの頃からの腐れ縁だもんね。理由を話せば、

きっと仲間に入ってくれる。今回のレポートの件だって連絡を

取り合ったし…どうよ? 少しは信じたか?」


「なーんだー、そうだったのー? それならそうと、もっと早く

言ってよー」

 まん丸だった麻梨の目の形が変わり、輝きさえ加わった。


「おおっ、麻梨が豹変したぞ」

「耕平くーん、私たち友達だったよねー」

 猫なで声で耕平に擦り寄ってくる。

「ヤバっ! ちょっと作戦、誤ったか?」

「やっぱ私、ミステリークラブに入ったのは間違ってなかったって

事よねー?」


「でも良かった。麻梨が行かないって言った時は、どうしようかと

思っちゃったもの」

 安心した優香も笑顔で答える。

「何、言ってんのよ、私たちは三位一体でしょ? あっ、これからは

四位一体か」

「なんだよ? それは」

「じゃ、そうと決まったらさ、こんな所早く出て旅行の計画立て

ようよ。ねぇー、耕平くぅーん。いつ三枝先輩、紹介してくれんの?」


「あ、そうだ! 俺、この後、先輩に連絡入れとかなきゃ」

 とっさに麻梨の質問をかわす。

「もぉ! ぶー、ぶーっ」

 ふくれる麻梨を尻目に耕平と優香は、裏階段の方向へ向かって

ゆっくりと視線を移した。


「あ…!」

「あれ?」

「何?」

 3人の口から、それぞれ短い言葉が発せられた。



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