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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第六章 遠征に縁あり
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第92話 聖霊

「……いや、指しか動かないんだが」

「「……は?」」


 ここで彼女らが敵意むき出しで俺に襲いかかってきたら、全てを捨てて転移魔法を使い、下に居る皆と一緒にここから脱出するという、逃げの一手しかない。

 もっとも、下にはレオとかいうアホみたいな強さを持つ敵がいるので、それも難しいかもしれないが。


「……本当にピクリとも動かないのですか?」

「本当じゃな?」


 彼女らはニヤニヤしながら一歩、また一歩と近づいてくる。俺は動けないので、回避手段を取るとしても転がることしかできない。


「契約の儀だっけか、俺が立ち上がらなきゃ駄目なのか?」

「フフフ……」

「がおー……」

「ぶっ飛ばすぞお前ら」


 と、強気な発言をしているが、俺は指先すら動かすことが億劫であるため、そんなことはまず不可能である。魔法を使えばまた話は別だが。


「おっと、忘れてました。カチャカチャと邪魔なものがまだ付いていましたね」

「おおう、完全に忘れておったわ」


 かちゃかちゃ、とは出会った頃から彼女たちに付けられていた首輪である。それは初めて会った頃からからずっと赤い光を発しており、真ん中についているランプはまるで学校の非常サイレンのように見える。


「さあ、さっさと済ませましょう。契約の仕方はご存知ですね?」

「知らん。さっさと教えてくれ」

「こ、こやつ、召喚士の癖にそれを知らぬのか……なら説明してやろう! 未来の我が主よ!」


 我が主なんて呼ばれると、何だか女の子を侍らせる貴族な気分になる。こんなことには慣れていないので少々複雑な気分だ。

 俺が何を契約するのかは分からないが、流れに乗っていれば直ぐに分かるようになるだろう。


「まずは召喚魔法陣を展開してください」

「こうか?」


 現在俺は召喚魔法陣を二つ所有しており、片方は魔物の素材などを入れる倉庫、もう片方は大切な道具やお金、武器などを入れている。

 どちらを開けばいいのか分からなかったが、とりあえず倉庫の機能を持つ魔法陣を指先から展開する。


 ――が、彼女たちの顔色はどうにも優れない。


「お主……これはちょっとやめて欲しいのじゃ……」

「魔物のにおいがぷんぷんしますよ。我らが契約するというのにナメてるのでしょうか」

「……ダメか?」


 二人は激しく頷く。というか、魔物の匂いなんてあったのか。魔法陣の中で臭いが充満していたなどとは微塵も思っていなかった。道具入れておけば良しであったので、非常に驚きである。


「新しいのつくれと?」

「なははっ!お主、今魔法陣が二つもあるではないか! もう片方を開ければよかろう! 第一、魔法陣を増やすのは簡単ではないのだぞ?」

「最初魔法陣を展開するのに2000、それからは5000、10000、20000と消費魔力はどんどん増えていきます」

「お主は知っているだろうが、あの魔王であっても8000が最大値なのじゃ。そう簡単には……」

「《顕現せよ》……これでいいか」


 俺の残り魔力は12500であったのでギリギリ使える。魔力の回復は、暇過ぎて馬車の中で創ったスキルで補給すればいい。節約したつもりは無いのだが、攻撃手段に乏しかったため、現在俺の体はボロボロでひどい様である。


「つぅ――」


 魔法陣を新たに作り出し、体内の魔力をほぼ空にしてしまったため、ただでさえ重い身体が更に重くなる。俺が地面に沈まないのが不思議なくらいの重圧感であった。当然だが本当に重力が強くなっているわけではないので沈みはしないが。


「「…………」」

「さっさと、済ませるぞ」


 ちょっとだけドヤ顔で言ったものの、自らの姿勢に気がついて逆に哀しくなってしまった。ゴロリンした体勢で言っても何もカッコ良くはない。


「なんというか……おかしな主人に使えそうになりそうじゃな」

「我々も驚きでいっぱいです。お腹ぱんぱんです」

「――さっさと教えてくれ」


 和やかな雰囲気であったが、下から戦闘の余波であろう揺れと衝撃音がゴロリンした体全体で感じ取った。これはアルトやレムが未だに俺のために戦っている何よりの証拠でもある。体勢が体勢だが、俺は催促するように横になっている状態で急ぎ口調で語りかける。


「で、では、始めましょうか」

「お主、立たんか。我らもなかなかきつい中だっているのだぞ?」

「いや……動けないんだが」

「本当に動けないようですね。くすくすです」

「お主も全力だったんじゃな ナハハハハ」


 彼女たちは俺の意見を無視しして強引に俺を持ち上げる。俺の体や喉から悲鳴が上がるが、彼女たちには予想通り届かない。


「さて、契約の儀を始めるとしようかの」

「行きますよ? 貴方はびしっと、はい。と答えるだけでいいのですからね?」

「……わかったよ」


 体力的に余裕が出てきたためか、詐欺師だったらどうしようかと思ってしまった。

 昔に親父が言っていたが、契約だけはそう簡単にはしていけない。しっかりと紙をみるんだ。と言ってたような気がする。これって詐欺られてるのだろうか。


 二人は俺を引っ張り回しながら、すぐ側にある白い魔法陣の上に乗ると、その陣は光を帯び、轟轟と音を上げる。


「「《我ら、双子座のジェミニ。共に主との契約を求む》」」

「はい」

「いやいや!? まだ早いのじゃよ?!」

「がびーんです。驚きを隠せません。ゴホン……もう一度いきましょう」


 吹く風が木枯らしのように冷たい気がする。白い魔法陣も輝きが消えてしまった。かなりロスタイムである。これは俺の焦りなのだろうか? 説明も足りなかったような気もするが。


 気を取り直して再び魔法陣は輝きだし、突風が吹き荒れる。そして再び彼女たちは言葉を紡いだ。


「「《我ら双子座のジェミニ。共に主との契約を望む》」」

「…………」


 もう同じミスはしない。かなり恥ずかしかったのでもう二度とその頼んだ動作はやれと言われるまではやらないだろう。

 そんなことを考えていると、魔法陣の半分だけがキラキラと黄金に光る。横目に見ていると再び彼女達は言葉を紡ぎ始めた。


「「《ここに契約のあるじと成る者に問う。汝、我らと対等な関係を望むか?》」」

「…………」


 俺は困ったように視線を彼女に向けて送る。再び間違えたくはないのだ。――どうやら言っていいようだな。首を縦に動かし、早くしろと言いたげな視線を送ってきた。


「ああ。望む」


 その言葉を放った途端、大きな魔法陣が全てを金色に染まる。そして締めとばかりに二人が言葉を放つ。


「「《我ら、ここに契約したり》!! 」」


 魔法陣が一際大きく輝く。そのまま陣はだんだんと小さくなり、俺の足元で収束していく。

 それとも連携するように、二人はうっすらと光の粒子になって虚空に消えていく。


「お前ら一体……」

「とりあえず主殿、よろしくなのじゃ」

「マスター。これからふわふわとした関係でよろしくお願いしますね」


 そのまま閃光に包まれながら彼女たちは消えていった。足元で黄金に輝く魔法陣ですら消えてしまっている。もう何がなんだか分からないが、俺は支えがなくなってしまったため足下から崩れ落ちてしまう。慣れない魔法纏の雷を使ってしまった後遺症である。


「っつ!?……あいつら……」


 手を支えにすることすら不可能で、倒れ込むように思いっきり地面に顔面からぶつかってしまう。筋肉痛も相まって凄まじく痛い。


「何が何だか分からなかったが……早くみんなを助けに行かないといけねぇ――」

(まぁ待て、落ち着くのじゃ)

(すとっぷです)


 脳内に直接二つの声が響く。少し驚いたが、気のせいだろう。魔力不足ではないが、幻聴はよくある事だ。今優先すべきことはとりあえず魔法陣作成で消費した魔力の回復である。


「《体魔変換》!」


 このスキルの効果は体力を魔力ことが出来る。ステータスで確認しつつ変換を行わないと、体力がゼロになってしまうのでよく確認してから行わないといけない。

 因みに変換レートは一対一なので体力1につき、魔力が1だけ回復する仕組みだ。


 現在残り体力は2300ほどしかないので、倉庫の魔法陣からポーションを取り出して飲んで、回復。

 買っといてよかった。

 味はミント風味の水。風味だけミントで結局はお水である。

 美味しくはないが全て飲み干し、回復した分も全て魔力へ変換した。ポーションの効果もあってか、足の痛みはかなり減った。これで歩く事ぐらいはできる。


(お、おーい主殿?)

(ぺしぺし、聞こえないふりですか?)

「気のせいじゃ……ない?」


 下へと転移魔法を使って移動しようとしたが、やっと声に気がついた。何度も語りかけてきたのは先ほどの彼女たちで気のせいではないらしい。


(主殿、放置はちょっと苦手なのじゃ)

(ぷんすこです。気がつかないとはどういうコトですか?)

「いやいや、頭に直接話しかけるのもどうかと思うが」


 周りに誰もいないのにツッコミを入れる俺はなかなかおかしい人に思えるのではないだろうか。女神との会話を思い出す。――そうなってくると、言葉はわがわざ口に出さなくてもいいかもしれないな。


(とりあえずじゃ、我らを召喚してくれぬか?)

(流石は三つ目の魔法陣です。とてもほわほわして心地がいいのですが、いまはマスターの仲間の一大事です。我らも手助けします)

(お前らの名前を呼べばいいのか?勝手にイメージが流れてきたんだが)

(どうやら伝わったようじゃな。そのとおりじゃ)

(早くしないと間に合わなくなりますよ、マスター)


 以心伝心とはこの事なのだろうか。とりあえず流れてきたイメージを元に召喚陣を展開する。


「出てこい。ソラ、ファラ」


 その言葉を放った途端、アイテムボックスとは違う黄金の魔法陣が俺の手のひらから展開される。そこから「とうっ!」と元気な声をあげて飛び出てきたのは二つの影。


「ふう、無事召喚できたみたいですね。それと普通に真名で呼ぶとは――てれてれです」

「本当はそうやって真名を晒すのはやめて欲しいのじゃが――まぁいいかの」

「真名って何――なるほどな」


 真名とは何かと問いただそうとすると、どこからか脳内にイメージが伝わってきて、だいたい理解できた。


 真名とは、ソラ、ファラ、という一人一つの個体名であり、真名でない方が双子座ジェミニと呼ぶらしい。

 聖霊ということを露見させないために名前は基本的に二人合わせてジェミニと呼んだ方が良いらしいが――俺はソラとファラと呼ぶ方が呼びやすいので普通に真名で彼女らのことを呼ぼうと思う。


「って、その格好……」

「ふふん、驚きましたか?」

「なかなかいい着心地じゃの!」


 彼女たちの服装は戦った時の服装からがらりと変わっており、当時は二人とも黒いフードローブに、赤い首輪をしていたのだ。下着を着ていたかどうかも不明だ。


 そして今。彼女たちの服装は、魔法学園で一般的な冬服とされる、紺のブレザースカートである。

 首元にあった装飾はチョーカーであったのか、赤かった装飾品は黒に色が変わっていた。

 ここでやっと判別がついたが、右向きにサイドテールを作り、キリリとした表情をしているのがファラ。少し古風な話し方をする女の子である。

 そして左向きにサイドテールを作っているのがソラ。効果音を口に出す女の子である。どこかのほほんとしている。


「さて、マスター。早速我らの力、あの聖霊王子(笑)に見せて差し上げましょう」

「散々馬鹿にしてきおって……主殿、さっさと潰しに逝くぞ!」

「お前らがどうしてその格好になったのかちょっと気になるが……後ででもいいか。今は皆が優先だ。いくぞ」

「あっ、忘れておった。ちょっと待ってくれぬか?」


 突然ファラが俺を差し止める。なぜ止めたのか聞きたかったが、彼女たちは俺が質問するよりも先に行動を行う。

「「電磁撃マグネティックボルト!」」


 二人の萌え袖から放たれた青白い稲妻はくねくねと光を屈折させながら機械の元へ真っ直ぐ向かっていき――


「なっ――」


 ズドォォォォン! と機械は周りのものをすべて飲み込まんと凄まじい衝撃波と轟音を響かせながら爆発する。突然何事かと思えば、再び答えは先に巡ってきた。


「これはな、何だか知らぬが相当レオが大事にしていた機械らしいのじゃ」

「あんなドエム野郎の大事なものなら壊すだけです。ずどーんと」

「……お前らって案外冷酷なんだな。さて、いくぞ」

「「了解です(じゃ)!」」


 ~~~~~~


 そんな事があって、現在に至る。


「……皆、遅くなって本当にごめんな。やっと回復役が来たぞ」

「全く一人で試練を超えて契約してくるとは……恐れ入ります」

「おい、ソラ、ファラ、あいつを片付けろ。俺はアルトと皆に回復魔法を掛けるッ!!」

「了解した、主殿!」

「了解しました。マスター」

「あはは……ユウ……しっかりと助けに来てくれたんだね……」


 脚に力を込め、一足飛びで急速にアルトまで飛ぶ。

 さらにほぼ同時に後ろの二人もレオに向けて積年の恨みが溜まっているかのような笑顔を浮かべ、飛びかかる。


「ほう、これはこれは」

「へぇ、お前も疲弊してるんだな」

「それは勘違いですよ――ッ!?」


 レオの速さは凄まじいことにはかわりないが、俺が目視できるまで遅くなっていた。アルトと皆が相当頑張ってくれたらしいな。


 彼の横を通り抜けようとしたため、裏拳の要領で拳が飛んでくるが、それよりも疾く青白い雷光が彼を焼き尽くす。


「主殿には触れささぬぞ?」

「これまでの屈辱。たっぷりと返してあげますっ!!」

「ぐ、ジェミニ――ッ!」


 雷撃に気づけず被弾してしまったため、俺への攻撃を中断し、大きく後ろへ下がる。

 やっとの事で怪我の具合が一番酷いアルトの元へ辿り着き、回復魔法を掛け始めた途端、聖霊たちは更に驚くべき光景を作り出す。


「ぬっふっふ……契約した当初に与えられる、一生で二回しか出来ない主想創造マスタークリエイトをどっちも使ってしまったが……」

「これはなかなかカッコイイ武器ですね。マスターの世界へ行ってみたいです。ばきゅーん」


 二人は大きく下がったレオに向かい、左右対象のカッコイイポーズを決める。両手に持っている武器は――


「拳、銃?」

「ナハハ!さて、ゆくぞ?」

「バンバン行きますよ? 銃だけに」

「クフ、クフフ……何ですか? 武器、なのでしょうか。そんな形状は見たことがありま――!?」


 パスっ! と軽い音がした。その形は昔友達から無理やり押し付けられたエアガンであった。見るのも久しぶりだが、銃口から射出させられたのはプラスチック玉ではなく、高密度の魔力の弾丸であったのだ。


 その込められているであろう威力に恐れをなしたのか、一瞬だけ真面目な表情を作り、霞むような速度で銃弾を回避する。あいつ、まだ本気を出してないってか……


「……魔力を打ち出す道具ですか。そこの転がっている彼も使ってましたが、それとはちょっと違うようですね」

「ぬっふっふ……昔話というやつが面白いうえに、こんなものまで隠し持ってるとはな……」

「やはり、あのマスターを選んで正解だったようですね。ばきゅーん」

「クフ、フフフ、――彼からも姫と同じ匂いを感じますね……こんな状況になるなんて夢にも思いませんでしたよ……!しかも最弱である貴方達が私に力の四割も解放させるなんて……!」

「主殿が居ない状態で、我らが勝てるわけなかろう」

「ですが、今は違います。マスターががっつり魔力をくれるので」


 彼は彼なりに喜んでいる……のか? 全くもってあいつの感情が良く分からない。まぁ分かる必要もないとは思うが。


「アルト、こんなになるまで頑張ってくれてありがとな……」


 俺はアルトをゆっくりと抱き上げつつ、聖属性の回復魔法を掛け続ける。彼女は特に怪我の状態が酷いもので、誰よりも頑張ってくれたのが痛いほどにわかる。

 しばらく二人の様子を見つつ、魔法をかけつづけているとアルトが震えながらを開く。


「ユウなら……助けてくれるって……信じてたから、ね。他のみんなも、回復してあげて? 僕は……もう大丈夫……!」

「……分かった。俺のためにありがとな。アルト」


 少々心配だが、急いでレムとシーナ、そしてドリュードの元へ向かう。全員の意識が戻って立てるようになったら急いで転移だ。ここに居座る理由はもう無いのだから。


「――帰還命令、ですか。仕方ありませんねッ!!」

 気絶しているレムたちに回復魔法をかけている途中で、レオはこれまでで一番の輝きを持つ魔力を腕に纏とい、そのまま――塔の床に叩きつける。


「ク、フフフッ……っ!! 」

「「ッ!?」」


 口元を三日月型に歪めながらも、彼はその拳を中心としてこの塔そのものを破壊してしまうような激しい爆砕音と立っていられないような強い揺れを発生させた。


 あまりの破壊力に空間全体が震えているかのような錯覚を覚えたが、変化はこれだけでは済まなかった。


「申し訳ありませんが貴方達は……」


 レオは血塗られた腕を引き抜いて満足気な笑みを浮かべると、内ポケットから水晶玉取り出し、それもまた床に叩きつけて、割った。


「この塔と共に消えていただきます。姫の予測通り、ここに来て正解でした。あの機械は壊されたようですが――まぁいいでしょう。新しいのを作れば」

 

 ガラガラと音を立てて、天井、そして床に亀裂が走り、塔が崩壊間近とばかりにぐらりぐらりと傾き、大きく揺れ始める。まさかとは思うが、あいつはワンパンチでこの塔自体を壊したのか?!


「殺せなかったのは非常に残念ですが、……想具そうぐの封印がかかっていましてね。姫の命令もあり、お暇させて頂きます」

「あやつ逃げるつもりか!」

「……変ですよファラ。魔法が……」

「使えない……のか? 回復魔法も全然起動してくれない……?」


 シーナに掛けていた回復魔法は、俺が魔力切れであるかのように発動せず、まさに魔法という概念がない元の世界で呪文を唱えているかのような錯覚を覚えた。


「もしこの絶望的状況から抜け出たとしても……いえ、これ以上は語らないでおきましょうか。クフフ、フフ――」


 そう言い放つと彼は煙に包まれ、そのまま気配はなくなった。グラグラと揺れるため、それに目を覚まさせられたのか、ドリュードは首を振った後、ゆっくりと体を起こす。


「ぁ……ってあいつ……は? これ……どうなって……」

「とりあえず、お前はいくらか回復したからシーナを背負ってくれ。レムは俺が背負う」

「ちょ……ちょっと待ってくれ? いま、何が起きてる?」

「ソラ、ファラ、アルトを頼む。」

「「了解!」」

「なぁ、なにがどうなって――」

「今から説明する。よく聞け。あれは多分魔法を封じる煙そうとしか考えられねぇ。で、問題のこの揺れは……塔が崩壊し始めてる証拠だろうな。レオのパンチ一発で限界を迎えやがった」

「……うそだろ」


 ドリュードの絶望的な声がはっきりと俺には伝わった。帰るまでが……遠征か。


ご高覧感謝です♪

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