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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第六章 遠征に縁あり
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第82話 遠征ライフその4

「……転移魔法……ないんですけど」

「……は?」


 ドリュードは何行ってんだコイツ という視線を向けてくるが今の俺はそんなことがどうでもいいように思えた。


 おかしい。何度見直しても転移魔法が無い。先程は確実に発動して、そのおかげでここまで逃げきれたので、数秒前まではあったはずだ。

 だか、今はない。流石に疑問がありすぎるので、共有することにしよう。

 それが出来る。そう、現代っ子ならね。


「おい、対象の魔法を一生使えなくさせる魔法とか聞いた事あるか?」

「そ、そんな魔法は聞いたことないが……お前、まさか……ただでさえ使えるやつが少ない転移魔法使えなくなったとかいわねぇよな?」

「…………」

「その無言はイエスってことだよな?! あいつにはそんな魔法があるのか?!」


 ギャーギャーと彼は騒いでいるが、どうせ失った魔法は魔法創造スペルクリエイトにより創り出せるのだ。

 確信は持てないが、そう慌てることはない。

 それにしても、先のアルトの姉だ。彼女の強さの底がしれない。

 ただでさえ、アルト以上の魔力や威圧感が悠々とした状態で感じられるうえ、挙句には魔法を使えなくする魔法持ちだと? あんなのとは二度と対面したくないものだ。


 思い返せば、気になるのは物が意思を持って勝手に彼女へ動いていったあの魔法だ。石だけに。


「ユウ、お前はなにを考えてんだ?」

「分かるだろ? あのバケモンのことだよ」


 気を取り直して、“没収”との言葉を彼女が放った途端、俺の手の中にある転移石が命を与えられたかのようひとりでに動き出して彼女の手の内へと向かっていったのだ。


「お、おーい。聞こえるか?少年?」

「なんだよ? お前はこっから出て野宿でもしてればいいだろ?」

「理不尽。つめてぇ……このダンジョンの方があったけえよ……」


 言動がちょっと辛辣過ぎたかと思ったが、何故かこいつには許されるような気がする。アルトたちが彼に向けて好き放題言っていた理由が今分かった気がした。


「どうせならもっと安全なところで寝かせてくれよ?! 一応言うがここダンジョンだぞ?!」

「転移石使えばいいだろうが。って取られたのか。無くても生徒達から変な視線を浴びながら、ダンジョンから出ればいいだろう?」


 ここは安全が確保されたダンジョンである。

 こんなところに大人がいる状況を例えるなら、狭い公園でいい歳したお兄さんが小さい滑り台や、小さいブランコで楽しそうに遊んでいるようなものである。

 世間から見たら不審者認定はされなくても、確実に変な目で見られることになるのだろう。


「いや、オレも変な視線で見られたくないからお断りだ。断固反対!」

「……分かったよ。一個だけ転移石やるから明日手紙に書いてる場所を絶対に教えろよ? 教えなかったらもう一回あそこに送ってやるからな?」

「お前の場合本気で送るからこええよ……オレは助かったといえるのだろうか……」


 どんよりとした表情でドリュードは俺が投げた転移石を受け取る。

 この転移石は魔法陣に隠していたもの、なおかつ学園のもの使用なので、転移出来る距離はそこまで広くない。


 しかし、これで脱出は出来るだろう。

 感謝して欲しいものだ。もともと俺が手紙を読めばこんなことにはならなかったのだが、それは禁句である。


「じゃあな。明日のおおよそ八の鐘の時にここで集合だ。教えなきゃ魔界へ送るからな」

「げっ、あそこ魔界だったのかよ。道理で敵の強さがおかしいと……」

「これだけやってやったんだ。約束は守れよな?」


 流石にこいつの目の前で魔法創造スペルクリエイトは使いたくない。

 意外と鋭い一面もあるので警戒するに越したことはない。


 転移魔法そのものを消されるのは、魔法を消す魔法があるに違いないだろう。

 流石にその魔法に対策するスキルを創っておかなければすべての魔法を消されることもありえる。時間があったら創っておこうか。


 物質創造マテリアルクリエイトにより、新たな転移石を創りながら俺は彼女たちの元へ戻る。

 ああ、転移するために石を作り出さなくてはいけなくなってしまったため、消費魔力が上がってしまった。


 この恨み、いつか晴らさせてもらおう。

 げんなりとした表情でダンジョン入口に向かう。流石に出口まで直接転移すれば、なぜこんな状況で、など、ぽろぽろと言われそうなので、少しだけ入口からは距離を開けることにした。



 ~~~~~~


「おっユウが帰ってきたな!」

「あはは! げっそりじゃない!」

「な、なにがあったんですの……?」


 歩いてダンジョンを出れば、リンクス達のメンバーも既に帰ってきていた。

 というか、遠征メンバーの全員がバーベキューをしている。

 炎の元は炭火ならぬ、火の魔力が込められた赤い石、火石である。

 リンクスはタオルをねじりハチマキのようにし、頭につけている。

 ダンジョン攻略より完全にこっちが目的のような気がしてきた。見るからに彼らの目の色が違い、バーベキューに積極的である。


「誰か攻略を終えたのか?」

「いや? 誰も攻略できてないぞ? いつもこんな感じだ!」

「さて? 楽しみましょう!」


 リンクスもミリュも皆良い笑顔である。このダンジョンの攻略が目的だったはずなのに、攻略出来なかった……という重々しい雰囲気はどこにも感じられなかった。実はこっちが目的かこいつら。


「うわっははは!! もっと酒もってこんかい!!」

「ちょっと先生! 飲みすぎですよ?!」


 生徒が必死に先生を羽交い締めしている。やはりこの人はお酒好きなようだ。

 今の状態からこの人のタイプは酔いやすく冷めやすいタイプだろう。明日には二日酔いになってそうだな。

 先生でお酒を飲むツッコミはもう入れない。異世界の文化なのだろう。


「ユウ!お帰りっ!」


 アルトはお肉が刺さっている串を両手に持ちながら俺に話しかけてくれた。超ご機嫌である。


「これおいしーよ! はい! 片方あげるね?」

「お、おう。ありがとなアルト」

「うん!」


 アルトは他の生徒に呼ばれ、去っていった。久しぶりにあれだけご機嫌な彼女を見た気がする。

 アルトの姉に関して言う気は更に失せてしまった。いったいどのタイミングで伝えればいいんだろうか。


 わいわいとした人混みから離れようとしていたが、ある光景に思わず足を止める。

 その光景はレムによるものだ。


「次……ください」

「レムちゃんもう食べたの?! あれ結構量があったんだけど?!」


 緑の髪、ハーミルはレムの食べる早さに驚愕している。レムはおっとりとした表情を崩さず、あっという間に串に刺さっている具材を胃袋へ送り込む。

 お腹がいっぱいになった様子はまだ微塵も見せない。

 やはり彼女は食に関わると完全に人見知りが消える。ただ、食事が終わると元に戻る。これを彼女の人見知り克服のために利用できないものか。


「……! ゆう……おかえりです!」

「ただいまレム。美味しそうに食べてて何よりだ」


 俺を認識すると小走りで駆けてくる。かなりの量をたべていたはずだが、全く持って重さを感じさせない軽い走りであった。


「ゆう……? それ食べないの……?」


 どうやら目的は俺が手にもつ串お肉のようだ。やはり食べることが本当に好きなのだろう。

 連続して色々ありすぎて困っていたので、とりあえず持っている串をレムに渡すことにした。


「……くれるの?」


 きらきらと目を輝かせながらレムは紙のお皿とフォークを何処からともなく取り出す。二つとも持ってたのかよ。どれだけこの獲物をロックオンしていたのか。


「ちょっとこれ貸してみな? お皿は持ってろよ」

「うん……!」


 俺は二又のフォークもどきを使い、刺さっている肉などをお皿の上に落としていく。

 レムはその落ちる様子すら大変興味深いようで、更に目を輝かせ、皿に落ちていく具材が動かなくなるその瞬間まで見届けていた。

 食に対する熱意が激しく伝わった瞬間であった。


 最後の具を落とし終えると、レムは相変わらずうっとりとした表情でお肉、そしてお野菜を見つめている。そんな感動するものなのか……?


「ゆう……ありがとう……!」

「気にすんなって。ほら。これ返すぞ」


 俺はフォークもどき……もうフォークでいいや。それを彼女に返す。しかし、彼女の両手はお皿の下にあり、動かない。ん? フォークいらないのか?


「ゆう……手が空いてないから……食べさせて?」

「……お前は誰からそんなことを教わったんだ?」


 俺を覆っていたのほほんとした雰囲気が一瞬で霧散した。この手順は完全にシーナが得意とする手順である事は最近知ったのだ。

 彼女の場所を探知し、その方向を向けば、リンクスのパーティにいた藍色の髪の女の子と椅子に座りながら、ちびちびとお酒のようなものを飲んでいる。

 未成年飲酒はいけません。おそらくジュース類だとは思うが、あの二人の雰囲気がこことは違い、かなり大人っぽいものなのでお酒だと思ってしまった。


 シーナはこちらの視線に気がつくと、俺たちに向かい無表情のまま、ぐっ と親指を立てて 決まったな。

 といいたいばかりの視線を俺たちにぶつける。

 藍色の髪の生徒はこのことを完全にスルーしていた

 まず、なにが決まったのかは俺にはさっぱりである。


「ゆう……ちょうだい?」


 いろいろ勘違いさせそうな上目遣いで俺を見ている。何処かの女神の上目遣いとは違う美しさがあった。


「はぁぁ……負けたよ」


 俺は結局のレムの上目遣いに負けてしまい、フォークで肉を突き刺し、レムの口元へ運ぶ。

 レムは幸せそうな表情のままパクリの肉を一口。さらに頬を緩ませた。


「おいしいですっ……ゆうっ!」

「そりゃよかった」


 シーナは再び無表情のまま、藍色の髪の生徒と会話を再開し始めた。彼女らがどんな関係にあるのか全くわからないが、渋そうで深そうな関係であるような気がした。


 離れ際にもう一度、ネギマのような串を貰い、今度こそ人目のない場所へ移動する。

 木に寄りかかりピーマンのような硬さで、かぼちゃのような甘さの焼かれたものを食べながら俺は先のことを考える。


「明日こそ、噂の塔までの道が見える……はずだよな?」


 今日は一日目にして、バグとも言える者に出会ってしまった。彼女は恐らく勇者より強い。

 あれで手を抜いていたのだがら、本気を出したらこの土地は消滅するんじゃないだろうか?


「あんな馬鹿みたいな力が振るわれたら、間違いなく想像もできないような魔法を使う、といった目的は果たせなくなるだろうな」


 勇者、姫君、元魔王。どれも彼らの目的を遮ってしまったなら、俺は文字通り社会から消させられるだろう。

 安定した生活を送るためには力が必要なのだ。

 ある程度の力があれば、この世界では上に立てる。

 力無きものは、蹴落されるだけだ。


「もっと、強くならないとな。そのために必要な第一段階は……すぐそこだ」


 力を得られるともあの二つの声は言っていた。このチャンスを逃すわけにはいかない。絶対に俺は攻略してやるさ。


 串に刺さった最後のお肉を食べ終えたあと、俺は今もっとも取るべき行動取ることに決める。それは――


「お風呂。作らないとな」


 この世にはしばらくお風呂に入らなくても大丈夫なように、“清潔石”という、色々な汚れを水を使わずに、魔法で落としてくれる素晴らしい石がある。

 しかし、もともとの世界の俺はお風呂に毎日のように入っていたため、水で体の汚れを落とさないと気が済まない。


「土魔法で五右衛門風呂を作り、水魔法で水を張り、火魔法で温める。よし、これでいこう」


 先程の力を得るために塔を攻略する決意を決めた場所からさらに離れた場所にて、身を清潔にする目的のため俺は嬉々として動き出した。


 俺はある程度力をつけている。まだまだ伸びるはずだ。

 勇者だろうが、魔王だろうが、何だろうが、俺の目的の邪魔をするならぶっ飛ばすだけさ。


ご高覧感謝です♪

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