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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第五章 学園
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第68話 大切なモノ

シーナ視点です



 私は急いでいた。大切なあの石は学園に頼んでしっかりと保存してもらっている。

 なぜなら私が持ち歩くよりその方が安全性が高いから。

 ――安全だと、思ってた。完全に油断していた。あの石がどれだけ価値があるのか私は甘く見ていた。


 授業中にも関わらずファンファンと危険を知らせるサイレンが鳴り響く。

私は驚いて魔法の制御を誤り教科書などをバタバタと落としてしまった。


 訓練じゃ、ない?!

 先生は焦ったようすで書いていたペンを教壇に叩きつけるように置くと、


「――!? 生徒の皆さん!取り敢えずこの部屋から出てはいけませんよ!!」


 と慌てた様子で先生は扉に向かって走り出した。

 学園には貴重品を管理してくれる場所があるけど、私のあの石は特別貴重なものだ。

隠された場所に隠されているから大丈夫だとは思うけど,落ち着かない。


嫌な想像が次々と展開され心が重くなる。そして、それはすぐに限界に達し、意識せずに身体は動きだした。


「あれが、盗まれてしまうっ!!」


 もしあの石が無くなってしまったら、なんて考えた途端、私の体は自然に動く。

想像通りなんてなりたくない。あれのお陰でどれだけの修羅場をのりこえてきたか。


「嫌だっ……!実力があるおかげで、せっかく友達が……できたのに……」


 私は走る。貴重品をあらかじめ渡す際に、もし盗まれる可能性がある時に学園側が行う対処の話は話は聞いていた。


シャッターが下ろされ、その通り抜ける道が隠されていることも話し合っていたので、ある程度は分かっている


「っ!」


 私はシャッターの真ん中にある見えにくい扉を体当たりして押し開ける。

 バタン!と音がなり、無事通過できた。説明通り、シャッターには行き止まりと思わせるため、通り抜けのための隠し扉にはカモフラージュが施してあるが用意してあるらしい。

 ただ、急いでいる私にとっては鬱陶しいことこの上ない。

 開けて再び走っても シャッターがあり、みたび走ってもシャッター、シャッター、シャッター――ああもう!急いでいるのに!!


「邪魔あぁぁっ!!」


 私はいつの間にか叫んでいた。叫ぶと同時に意識せずに大量の魔力が込められた風の刃がシャッターを破壊する。ズズズと少しずつズレていく。だけど私には待っている時間はない。


「てやぁぁっ!!」


 私は少しずつズレていくシャッターの上半分を蹴りとばす。無属性の身体強化も当然忘れていない。


 バタァァン!と大きな音が辺りに木霊するが、私には知ったことではない。

 あの石だけは、あの石だけは絶対に取られてはいけない!!


 そう思いながら地下へと向かう隠された階段を目指す。嫌な予感は留まらない。寧ろ溢れていくようだ。


 シェルターを破壊しながら私は階段があるハッチが閉まっていることを祈っていたが、私の勘違いであって欲しいという祈りは神様に届かなかった。


「そ……んなっ?!」


 階段が隠されているハッチは無理やり破壊されていた。明らかにあの石を狙ってきている?!

 嫌だ、あの石はお母さんから貰った大切な物、それに力を得るための――


「絶対に渡さないっ!!」


 私は暗い階段を飛び越え、石が保存されている元へ急いだ――


「うぁぁっ!!」「きゃぁぁあっ!!」


 先生たちの悲鳴が暗い部屋で木霊する。普通ならお化け屋敷みたいに思えて怖がったりするんだろうけど私はそれどころじゃない。

 暗い廊下の端で少しだけ盛り上がっている部分が在る。恐らく人だと思う。


「あぁ……ああぁっ?!」

「先生が……怯えている?!」


 私は駆けながら人影を見つめると、先生ということが分かり、その先生が私を見ているだけで激しく怯えたことから,恐らく恐慌状態という事を察する。

 この廊下に入った頃から感じる激しい魔力の気配。

恐らく相手はなかなか手強い相手はず。


「どんな相手でも渡さない!!」


 私は決意を胸に、石が隠されている扉の入口へ手をかけた。ゴゴゴとゆっくり扉が開く。元々鍵を開けずにハッチが開けられると自動的に警報がなるようになっている。それほど重要な場所に隠してあったのに、何故ここまで気がつかれなかったのか。


 扉を開けると奥に黒光りで、ブリリアントカットが施されている見ているだけで引き込まれそうな石が――男の手に握られていた。それを見ただけで私はほぼ無意識で意図せずに


「かえせぇぇぇっ!!」


 黒光りの宝玉をイメージし、闘技大会でユウナミと戦った時に使ったあの魔法を発動するが――出来ない?!


「っおっと、危ない危ない。持ち主がここまでくるなんてなぁ」


 細身というほど細身ではないが、フードを被っているこの長身の男は私の大切なモノに何かの装置をつけているせいで、あの魔法が発動できないことを知る。そしてその石から微かにだが、はっきりと声が聞こえた。


『タ……ケ……テ』


 その声が聞こえた瞬間、私の中の何かがプツリと切れる音がしたような気がした。


『 「あああああああああっ!!!」』


 石と私の意志が混ざりあい、別のものが私の中で大きくなっていく。だけど、今回は飲まれない。私にはこの力を使ってあいつから石を取り戻さなくてはいけない!!


「そのぃしをぉ返せぇぇ!!」


 私は黒い風を纏いながらしっかりと発言し、更に普通の状態なら絶対に出せないくらいの威力を込めた《風刃ウインドカッター》を放つ。こいつを殺すため!!


「うおっと?!この宝石に装置を付けているのに悪魔を起こしちゃうか。まったく。どんたけそいつと気が合うんだよ」


 男は悪態を吐きながら魔法を次々と回避していく。なんで当たらない? なんで当たらない? なんで当たらない?答えは私の魔法は本気じゃない。まだ早くなれるから。まだ速くなれるから。まだ疾くなれるから。


「こんなのは、本気じゃないいいいっっ!!」

「まだ加速するのかよ?! お前の体が持たないぞ?!」


 男はフードに黒い風の刃がヒットし、フードはちぎれてなくなる。そう!もっと速くなれる!


「あはハ!!ソう!こノ疾さ!コの力!こレでアいつヲ――!!」


 その時、私の中で何かが大きく脈打つ。力が、抜けていく。頼もしかった意識が薄れていく。

 その瞬間。


「かふっ?!」


 私は大きく咳き込むと鉄臭い味が口の中で広がり、吐き出す。ビタビタと地面に垂れるものは、赤黒い血だ。


「なんでっ私はまだ……まだ……」

「おふー、あぶねぇあぶねぇ」


 私は地面に足をつくと意識が黒く滲む。だけど、まだ、こんなやつに渡せない!


「ぁぁぁぁっ!!」


 片方の目を思いっきり開いて私は大量に《風刃ウインドカッター》を放つ。


「こいつ! もうそんなことが出来る状態じゃねぇだろっ」


 驚いてるけど、避ける。よけていく。

 すると男は急にこんなことを言ってくる。


「お嬢ちゃん。この宝石ちょっとかりるだけだからさぁ。貸してくれよ。多分返すからさ」


 貸すだって?! ふざけるな……! この石を貸すなど誰が許したって私が許さない。中にいる精霊とも契約したんだ。


「返せっ……!私はその石の中にいる精霊と契約した!返してもらわなくては……困るッ!!」


 更に私は魔力を絞り更に量を増やした風刃を男に向け、本気で殺すつもりで放つ。が当たらない。いくら量を増やしても..当たらない。だけど、あれは渡さない。どんなに実力差があったって渡さない!!


「精霊ねぇ……を使いこなせるなんて……な。体を乗っ取られて終……お嬢……立派な……だねぇ」


 音が途切れ途切れに聞こえてくるが、言いたいことわかる。私なんて褒めなくていい。私なんてどうでもいい。でもそれは、それだけは返せ!!


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇっ!!」


 でも私は叫ぶ。この命がなくなろうとも。あれだけは他人になんて渡したくない!!

 体力、集中力、全ての力を結集させて刃を放っていく。吐血したのだからもう立っているのも限界だがこんなところで私が倒れるわけには行かない。

 全てを振り絞って魔法を打ち続けていると再び男が話しかけてくる。私にはただの黒いシルエットにしか見えないけど。


「ああ!思い出した!その魔法!お嬢ちゃんギルドから逃げたしたと思えばこんなところにいたのか!いま躍起になってギルドがこの魔法学園に交渉してると思ったらこんな理由が」


「黙れぇぇぇぇえっ!!!!!」


 その言葉が私の意識を再びはっきりとさせた。ギルド本部はロクな場所ではないこと。それとこいつはもともとの私と同じく、ギルド本部のすて駒ということ。


 何かの限界を超えたようで何処からともなく魔力が溢れ出てくる。使い過ぎてリミッターが弾け飛んだのか、それは分からないが好機。私はこの一撃に全てを込める!!


 私は杖に全てを込め、刃のカタチをつくる。そして――直接っっ!


「はぁ、まったく大人のいうことはしっかり聞けよな?」


 男の初めての反撃。私の全てを込めた一撃は簡単にそらされてしまう。このままじゃ反撃が――


「あれ……足が……体が……動かない……」


 長方形の物体が大剣へと変化する。

 ああ。これを食らったら、またあそこに連れて行れていかれる……のかな。


「オレにも事情はあるんだ。許せよ!!」


 私は思い出す。ギルド本部に憧れたあの日。ギルド本部に失望したあの日。そしてそれに全てを壊されたあの日。この人は私を殺す気がないのはわかっている。この後は運ばれてまたあそこだ。


「ああまた……あそこになんか……行きたくないよ……」


 私は全てを捨てたのだ。これが代償かな

 私はそう思ってゆっくりと目を閉じ、衝撃に備える。



 ――がその衝撃は甲高い音に阻まれ、いつまで経っても来ない。な……んで?


 私はゆっくりと目を開けると……灰色の髪の少女が不思議な形をした剣で男の攻撃を受け止めていた。

 私はなにが何だか分からなかったが、この一言で全てを思い出す。


「行かせないよ。まだ君のことわからないから」


 ああ、この声は私の友達であり人として見てくれて、友達である。アルトだ。


「驚いた……闘技大会では見ていたが……俺の一撃を止めるとは」


「アル……ト」


「さて人間。覚悟はいいかな?」

「お前も人間だろうが……っお嬢さん!!」


 そのあと、私は安心したのか暗い暗い場所へ落とされていった。

 目が覚めたらギルド本部以外の場所であって欲しいかな。

ご高覧感謝です♪

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