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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第五章 学園
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第66話 初授業&初遅刻

「遅刻か?……遅刻だよな」

 

 ご飯を食べ終わり、気配探知によるアルトとレムの位置による把握を試みると、すでに教室らしき部屋で動きがない。

 この事から考えるに、確実に遅刻だろう。


「初日から遅刻か。あいつら許さねぇ」


 俺は言い訳を考えながら彼女らがいる空間へと向けて歩く。夢の世界で会話をしていたため遅れたました。と正直に話しても危ない人 扱いされて終わりだろう。召喚士サマナーであるその上不名誉なものがつくなんてお断りである。……寝坊でいいか。


 俺はゆっくりといつものスピードで歩く。

 こんなところで慌てる俺ではない。

 ゆっくりと外観を眺めながら歩いていると聞いたこのある声が耳に届く。男の声だ。

 校舎の受付で話し込んでいる。


「あぁ、もう!だーからーあの召喚士サマナーの保護者だっつうの!」

「認められません。そもそもギルドカードすら提示しないってどういうことですか? 逆に憲兵呼びますよ?」

「おいおい……そ……そりゃこまるねぇ……」


 何故か召喚士サマナーと言う言葉が出ていたが多分別人だろう。召喚士サマナーなんて勇者とは違い普通のクラスなのだから。

 なので俺は階段のある方向へ向けて直進する事にした。


「なんでわからないかなぁ……この顔見たことある――っとぉ!少年!! イイところへ来た!!」

「ぐぇっ」


 後ろを素通りしようとしたが見事に襟首を掴まれて引き込まれる。遅刻しているんだが。


「何しやがる」

「ナミカゼさん?この方は知り合いですか?」

「俺は知――「ってるよなぁ? 当然だよなぁ? なんたって保護者だもんなぁ」らない」


 事務員さんにこいつのことを知らないと伝えたかったが、完全に邪魔されてしまった。

 まぁいいや。さっさと教室に行かないとな。


「まてまてまてまて少年。ちょっとこっちへ来い」

「次はなんだよ……」


 俺達はくるりと回転させられると事務員さんに背中を見せる形になった。そして闘技場で出会ったこいつは俺にヒソヒソと耳打ちをする。


「ここはさ、助けてくれると思って……お願い! 少年!」

「なぜ俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ。そもそもお前の名前すら教えてもらってないのに助けろとはよく言えたものだな。」

「おっと? 少年意外と冷たい人?おじさん泣いちゃうよ?」

「さようなら。もう目の前に来ないでください」


 こいつと話していても平行線だ。いつまで経っても合わない。そう思い俺は肩にかけられていた手を無理矢理外し、教室へといそ


「分かった! 分かったよ!後で俺の正体教えてやるからさ!!」

「ぐぇっ、今すぐ教えろよ」


 げなかった。再び襟首を掴まれたからである。

 転移で逃げてやろう。コイツに付き合っている時間はない。遅刻はとっくにしているが。


「転「頼むよ、な?」……はぁぁ、その奇妙な武器を退けろ。それなら考えてやるよ。わかってると思うが、それは脅しだぞお前」

「……恩にきる」


 あんなに否定していたのに、頼むの一言で俺が折れてしまったのは二つ理由がある。まずは一つ目に彼の雰囲気がとてつもなく重いものに感じたこと。何かのしっかりとした意思を感じたことにある。


 二つ目に俺を奮い立たせる程の本気の殺意を感じとったことにあるためだ。長方形で拳銃を二倍に膨れ上がらせた形をしている武具を俺の首に押し付けられているためである。下手したら死ぬだろうな。


 こいつの威圧感は勇者に及ばないものの、凄まじい威圧が俺だけに向けられたことから相当な実力者というのがわかる。


「後で教えなきゃ殺すぞ」

「……へいへい、まったく本当に召喚士サマナーか……?こっちが殺意与えたのにそっちもそっちでやべぇな……」


 俺もお返しとばかりに睨みつける。

 この男は相変わらず軽く流している。だが手を肩に回しているが相変わず首元で長方形のものを押し付けられているので、いつでも俺を殺す事ができるのでまだ油断はできない。


「あ、あのー、どうしましたか?」


 事務員さんが心配そうな声をかける。怪しい人に生徒が話しかけられているのだ。普通そうなるよな?

 するとこの意味不明な軽い男は即座に即座に長方形の銃のようなものを服の内へしまい、軽々しい奴に豹変する。


「ふははー……さぁ!少年!いってやれ!」

「まったくこいつは……事務員さん。こいつは大丈夫だ。何かあったらギルドまで通報してくれても構わない。殺す依頼は俺が直々だしとくからさ」

「こ、殺すって――まぁそこまでいうなら」

「たすかった!じゃ俺は用事あるんでな!じゃあな!!」


 そういって彼は早足で去っていった。気配探知に常時映り込む(うにマーカーを付けたので、彼が怪しい行動をしたならば俺は転移を使ってでも止めるつもりだ。学園の信用はバカにならないからな。


「そ、そういえばナミカゼさん。授業は……?」

「あっ……」


 さっきまで考えていたのに忘れていた。

 信頼を得るにはこういう所がしっかりしていなくては……って遅刻じゃねぇか俺。


「ちょっとお腹が痛くて」

「そ、そうですか。はやく戻ってくださいね」


 だよな。早く戻らなくては。

 今更ながら転移を使わない理由は一度行ったことある場所ではないと行けないからである。

 脅迫される前はちょっと遠回りしようとしてたのだ。それほどまで逃げたかったのだが……まぁいいや。


「……少しだけ急ぐか」


 慌てすぎないのも駄目なのだな。と自分で考えながら俺階段へ、教室へと足を進めた。




 ~~~~~


「さて、理由を説明していただきましよう。どういうことですか?」

「変な人に絡まれて――」

「口をしっかり正してくださいね?分かりましたね?では、理由を聞きましょう」

「変な人に絡まれ――」

「それは先程聞きましたし、そもそも学園の守りは万全ですし、不審者が現れることはありません。言い訳するにしても、もう少し真面目な理由を考えてきてくるべきです」


 俺がメガネのイケメン男の先生に怒られていると、クラスの中からクスクスと笑い声が聞こえる。昔の俺だったら顔を真っ赤にしているところだろうが、今の俺は召喚士サマナーという重荷を背負っている。この世界に来て、数々のくすくす笑いを受けてきたのだ。これぐらいの事は慣れたものだ。


「あちゃー、やっぱり……寝坊かぁ」

「全然慌てたようすガありません……」

「遅い」


 アルト、レム、シーナは近くの席にすわっている。

 シーナとは仲良く慣れた……のか?

 この教室の内装はどちらかというと講義に使われる部屋のように、机が壇上から扇状に開いている形だ。人数がやはり多いためこちらの方がいいのだろう。

 色々な罵り声、召喚士サマナーに対する色々な煽りを無視し俺は適当に流す。


「……まったく。好きな席に座ってください。それと授業内容は友達から聞いてください」


 アルトたちに向かって俺は歩く。それにしても友達……ねぇ?仲良くできそうなのはどうにも居なさそうだ。ぱっと見て殆どが蔑みの目やら何やらで友達もいう以前にいじめ対象だろうなこれ。

 ……遅刻してしまったのも痛いが。


「おはよ!ユウ!」

「おはようです……ゆう」

「おはようユウナミ。今日もいい天気ですね」


 俺は彼女たちに笑顔で挨拶を返す。今ある関係を大切にしないとな。


「おはよう。三人とも」






 今回の授業内容は魔物の生態についてだ。AランクとかSランクとかの魔物については教科書の最後を覗いても全く書かれていなかった。

 天災級だし仕方ないのかもしれないが。


「――の時の、このゴブリンの反応は……」


 初日ということもあり、至って単純明快で板書を取る気にもならない。この授業に意味を求める方が難しいぐらいだ。

 まぁ戦闘経験がない人達に向けなのだろうな。俺が基準と考えるのもおかしいが。

 最初の授業がこれであったので少しがっくりしてしまった。

 レムは真面目に板書を羽ペンを使いノートに写している。彼女は本当に真面目な子だ。

 ……問題なのはこのSSランカーと魔王にである。


 ふわふわと風を匠に扱いながら何ら隠す気もなく羽ペン、ノート、その他もろもろを浮かばせて魔力制御の練習をしているシーナ。


「ユウナミ。なにか不思議なことでもありましたか?」


 俺からしたらその行動を授業中に隠さず行っていることが不思議でしょうがない。なぜ先生も注意しないのか。

 周りの生徒は真面目なのにコイツだけ遊んでいる。その勇気もなかなかだ。空気読めって言われそうだが。


「えへへ……ゆう……これおいしーよ……」


 この魔王は静かなこのホールで俺の名前出すならまだしも――いや、よくはないが、寝言というのが問題だ。彼女はこのとおり眠っている。

 授業中寝てしまうのは仕方ないが、寝言はまずい。

 彼女が使ったカルマートを使いたかったが、どの属性でも合わず、発動できなかった。

 やはりこの魔王はいろいろな意味で只者ではない。


 ゴーン、ゴーンと鐘が鳴る。計十回。

 俺は何にもせずに初日の授業が終わってしまった。板書をとったりもしていない。

 鐘の音によりアルトは起き、シーナは魔法を中断する。

「起立」と言う声で皆が席から立ち上がり、挨拶を行った。

 どこの世界もこの挨拶をするものなのだな、とすこし感動した俺がいた。



 次の授業中は魔法術基礎。この授業はとても面白いもので気持ち悪い生物が出てきても俺の興味は失せなかった。ただ、問題が出来るとはいっていない。

 シーナもアルトも相変わらずであり、これは学校来ている意味ないだろうと思うほどだった。レムを見習って欲しい。


 のほほんとした雰囲気の中、気配探知によるマーカーにある変化が起こり、俺はそれを見逃さなかった。ある変化とはその者が戦闘態勢に移行したことである。魔力反応が極端に上がる。


「野郎――何しやがった?」


 そう呟いたと同時にファンファンとけたたましい音でサイレンが響き、部屋の窓が突然ガラガラ音を立て、とシャッターで覆われる。


「ん、何ぃ……?」

「これは……?!」

「うるさいです。授業の邪魔……」


 シーナは魔法を強制終了し、アルトは眠りから覚める。生徒達はが慌てたようすで席から立ち上がったりしているが、レムは全く気にする素振りを見せない。たくましさを感じた俺であった。


「まさかっ!! 生徒の皆さん!取り敢えずこの部屋から出てはいけませんよ!!」


 そういってメガネ先生は扉を勢い良くあけて外に出ていく。すごく焦っている表情だったな。


「まずい、盗賊が狙うのは間違いなく――! あれが盗まれてしまうっ!!」


 シーナも青ざめた表情で机を飛び越え、出口へ向かい外に出てしまう。

 あの野郎ほんとに何しやがったんだ。大丈夫っていってしまったし、責任取れとか言われたら初日退学は免れないな……早々に俺が止めなきゃダメなのか?


「ああ。面倒臭い。もっと警戒しとけばよかったよ」


 俺の後悔混じりの声はサイレンによりかき消されてしまった。


凄まじい勢いで評価とブックマークが増えています!!

アクセス数も凄く増えて嬉しい限りです!


ご高覧感謝です♪

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