第65話 学園生活の始まりでも俺は俺
今回からは会話による一行開けはやめます。
見やすいと思いましたがこちらの方がいいかもしれないと思いまして...
なぜ俺が部屋に入る前にがたりと音が鳴ったのか。
考えられる理由とすれば、教科書を運ぶためにマスターキーのようなものを使った用務員がいた、もしくは風によって何かが落ちたかのどちらか。
「驚いたが……まぁ入っても大丈夫だよな」
俺は問答無用で学生証をドアノブの真下にある読み取り機にかざす。
ピッという機械音が聞こえてガチャリと鍵が開く音がした。魔法学園はこんなにもハイテクノロジーなのだ。
ドアノブに手をかけた瞬間、再びドタドタと何かが慌てて走り回っている音が聞こえる。強盗か? いやそれは無いか。ここまで硬いセキュリティなのだ。
気配探知では気配を感じないので気配を遮断するスキルを持っているのだろうか。
……こんなことを考えてるとだんだん強盗に思えてきた。
「さて、気配遮断を使ってるんだから余程警戒してるんだろうな」
俺は勢いをつけて扉を開ける。
部屋の内装はとても綺麗なままでなにより。
全体的にホテルのような設備一式だ。ベットに俺の身体が吸い込まれそうになったが、侵入者を思い出し思いとどまる。
俺は風呂場を覗き、人がいないことをしっかりと確認する。
「窓は鍵がしまっている。風呂場には窓が無い。となるとこの部屋にいるな。さて、何処にいるのかな?」
教科書が置いてあるであろうベット付近の机を調べるとしっかりと置いてあった。荒らされてはいないようだ。
次だ。タンスの中を調べる。
隠れるとなれば次はベットの下だな。
「……こんにちは」
「はぁぁぁ……どうやって入ってきやがった、シーナ」
制服姿で体育座りをしているシーナがそこにいた。
俺はなぜコイツにつけられてるんだよ。
「取り敢えずここから出ろ。まったく、今日の内に色々ありすぎる……」
「ん」
シーナを見ないようそっぽ向きながらベットへと座り込む。見ないようにした理由は……まぁそれだ。pn2が見えそうであったためだ。まだ思春期なんだ察してくれ。
シーナは俺の隣に座り込むと、なにかを言いたげにして、もじもじしていた。
「んで? どうしたんだ?」
「あのですね。……正直に話します。教科書を借りに来ました」
「…………」
どうやら正直に話せないようだ。俺の経験上、目を背けて話す、声が震えていることから彼女が嘘をついていることは明らかだ。
「言えないなら帰ってくれ。ここは男子寮だぞ?女子が来ていいところじゃない」
するとシーナはこっちの方向に風を切りながら首をこちらに向ける。こちらへ向くスピードはなかなかだ。
「おき……」
「は?」
「……お仕置きは?」
「……は?」
「私は貴方に嫌なことをした。貴方のお仕置きを受ける義務がある。私の家族はいつもそうしてきた」
何を言っているんだこいつは。身の危険を感じる。
というか、彼女の家庭はどうなっているのだろうか?大変虐待感あふれる気がするのだが。
「なら、もうこの部屋には来ないでくれ。」
「なっ……?!そういうお仕置きはお断りですもっと――」
そういうお仕置き?何か知らんが苦しめなくてはお仕置きではないだろう。最後の方は聞こえなったが、危ない雰囲気しかしない。
「なので!」
「帰ってくれ。転移」
「!?――くっ!ユウナミ! 覚えて」
光に包まれ彼女は消えていった。
男友達が、欲しいな。と切実に感じるこの頃。
もちろん危険な意味ではない。これは断言しておこう。
しかしよくよく考えてみれば、俺が気軽に話せる男友達と言えばリンクスしかいない。
しかしリンクスは俺が予想するに女子生徒やミリュに占領される事だろう。
……作らなけば。
それに俺はボッチに耐えられる気がしない。この世界に来る前には、学校で友達は少なかったものの話せる相手がいたから良かったが、こちらではいないと行っていい。話せる人すらだ。
分からない場面において色々な場所で助けてくれる男友達がほしいな。アルトなどには言えないこともたくさんあったしな。アレも含めて。
俺には創る魔法があるが、それで友達を創る、なんて案を思いついたが、そんなのは友情じゃない気がしてお断りだ。
その余裕がいつまで続くのかは分からないが。
「はぁぁぁ……なぜこんな緊張しなくちゃいけないんだ。入りたくて入ったんだろう?」
そんなことを悶々とベットで横になりながら考えているとピンポーンと玄関からチャイムがなる。
……凄いなこの学園。まんまホテルじゃないか。
「ユウー? ご飯食べに行こー?」
聞こえてくるのはアルトの声。クラスが同じでよかったな。俺。
俺は身体を起こし扉を開け、この世界で信頼できる二人とご飯を食べに行く。さてご飯はどんな内容なのだろうか。
この時なぜアルトが男子寮に来ているか俺に考える余地はなかった。
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まさに異世界での食事という感じだった。食堂で頼むのは同じだが、見たこともない食料だらけであった。
肉のようなものは味は美味しかったが、問題なのはご飯を含め、すべてが青い色ということだ。
その色によって、そんなに多くは食べられない。
しかし、食事代は無料にしてくれるということなのでこれは学園側の戦略だろう。
これが逆飯テロというやつだろう
レムは恐ろしい勢いで食べ続けていた。色は関係ないらしい。
「お腹一杯、です!」
「僕も……もういいかな」
「逆の意味でな……」
レムは満足いくまで食べていた。勿論味はおいしいものには変わりはないのだが……
色が気に入らないだけでここまで食欲減衰効果があるとは。
ダイエットしたいなら、まずは水色のカレーライスから始めてみるといいかもしれない。
「レム、アルト。明日俺は授業に出るつもりだが……お前らはどうする?」
「僕はユウが行くなら行くよ!」
「ワタシも行きます……!」
「そうか。……一応聞くが、レムのクラスって同じだよな?」
レムは正直俺達より結構年下だ。別クラスになることが予想できる……よな?
「多分同じクラスだと思います……この学校は完全に実力を求める……らしいです」
現代社会と似たような感じか。だからあんな面倒臭い検査をやった理由にもこれが出てくるか。
ふるいにかけるとはよく言ったものだ。
「だからワタシ、頑張って二人についていきます……!!」
「レムは真面目だねー……」
「それがレムのいいところだよな」
撫でたくなったがなんとか理性により逆の手で抑える。この癖は治さなくては
「んじゃ、そろそろ寝るか」
「寝坊したら起こしてあげるよ!」
「ワタシも……です!!」
なんとも助かることだ。俺はかなり寝てしまうのでやはり彼女たちに頼りっきりな部分がある。守るためには、しっかりしないとな。
「いや、大丈夫だ。お前らは時間がきたら先に教室に行っててくれ。多分起きると思うが」
「本当に大丈夫……?」
「ゆう本当に起きるの……遅いから」
なんとも耳の痛い話である。遅いのは事実だが理由は二度寝してしまうからであって……って心の中での言い訳はやめるか。
「大丈夫だ。俺も明日しっかり起きるために寝るか」
そうして俺達はトレーを片付けたりしてそれぞれの部屋に戻っていく。
俺の部屋はやはり落ち着かない。
「うーん、枕が違うと眠れないんだよな俺」
最近気づいた事で、枕が変わるとだいたいあの夢を見る。片方は○○なのじゃの口調の女の子。片方は人形のように淡々と喋るあの夢だ。
「少し予習しておこうか……な?」
暗くなった部屋はロウソクをつけなければ暗いままだが、俺にはあの石がある。
「……あの場所で転生してラッキーだったのか?」
転生したての頃に何度も見た、洞窟を薄く照らしていたあの光る石を創る。
物質創造はかなり使い勝手が良い。いつかのオリハルコンやらも創り出して見たいものだ。ファンタジーな世界とはいえ、あるのかどうだかは不明だが。
俺は机に向かい、魔法陣から全ての教科書を取り出す。召喚士の良い所はほんとにこれだけだよな。
「……算術? は数学か。でもこれ本当に基礎からだな。ここは予習しなくても大丈夫だろう」
ある程度見終えたら俺はスペースを確保するため再び陣の中へ元に戻す。……文術?多分これは国語だろう。戻そう。さて次は……
「魔法全般入門、ね。これは気になるな」
ペラペラとめくっていくと魔法陣、魔法薬、元の世界では決して味わえない沢山の情報があった。
だが
「こんな植物しらねぇよ。なんだこれ……魔術語? 図書館で見かけたよな……それになんだこいつ、誰だよ」
完全に知らない情報ばっかりであり、殆ど理解できなかった。そしてそれが災いとなり、俺はここで大きなミスを犯す。
「……あぁこの人物がこーやったと――」
ゴーンと鐘が響く。三回。おおよそ午前三時である。
あたりは真夜中なので完全に夜ふかしである。
「――寝なければ」
俺は光る石、教科書類を全て魔法陣ヘ投げ込み急いで布団の中へ入った。早く眠らなければ。
「初遅刻おめでとうございます。ぱちぱち」
「我らの予測だぞ?わかっておるよな?」
「――少し急げば大丈夫だ」
枕が違うとやはりこいつらと会うのは確定なようだ
。宿屋で枕を買っておけばよかった。
「さて……今回呼んだ理由は他でもありません」
「お主、あの魔王の娘に面白い話をしたらしいな」
「そんなことまでわかるのかよ」
ストーキング関連の身の危険を感じる。シーナのようなストーカーではないのか?いや、それは彼女に失礼か。
それにしても不審だよな。声しか聞こえないし。
「ぷんすこ、失礼なことを考えていませんか?」
「……気のせいだ」
「そうですか。ではがんがん話して貰いましましょう今回は」
「寝かせんぞ?」
こいつら寝かせないの意味を履き違えてるんじゃないか? 遅刻したらこいつらのせいにしてやろう……
「最速で語るから覚悟しろよ?」
自身の魔力が全く感じられないので転移魔法は無駄だ。なので俺はしっかりと言う事を聞き、最速で寝るルートを辿ることにした。
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混濁とした意識が浮上してくる。俺は遠足が楽しみで早く起きてしまうやつである。
なら、時間は間に合っているはずだろう。
「いまは――何時だ?」
時計はないが取り敢えずさっさと顔を洗い、就寝着……まぁいつもの服だが、それから制服に着替えて登校の準備を済ませる。
下の階から全く話し声が聞こえない。どうやらしっかりと早起きできたようだ。
「さてゆっくりとご飯をたべるかな」
俺は余裕な表情で階段を降りる途中に鐘が鳴る。
学校の始業時刻は八の鐘。そして今鳴った回数は――
「八回……だと?七回のはずだろ? まぁ気のせいだろう。あー、寝ぼけてるのか俺。しっかりと飯を食べてゆっくりと目を覚まさせるか」
そう言って俺はがらがらの食堂で食券のボタンを押し、料理ロボットへ手渡した。
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見事乗っていました!!!
流石に5度見してしまいました
皆様に見てもらえてとてつもなく嬉しいです!!
これからもどうぞよろしくお願いします!
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