第62話 魔法学園 編入審査 魔法クラス編
俺の背の二倍ぐらいある白塗りの大きい門。
周りは五メートル程の大きさの壁に囲まれている。
どちらかというと城壁のような印象を受ける。
「お……大きい……です」
レムは想像よりはるかに大きい門に少し驚いたようだ。俺も実際はかなり驚いているが。
「大丈夫だよレムちゃん。俺がついてるからな」
生徒であろう男はレムに肩を回す。
変幻をしてるのでいまはただの獣耳がない青目銀髪の子だ。
そしてレムの反応はというと
「……触らないでください……」
そう言って彼女は俺の後ろへと逃げる。可哀想に……肩を回されたレムが。
俺はレムを撫でながらアルトを待つ。
「この召喚士……殺す」とか聞こえたが無視だ。アルトは期待からか、到着してからというもの興奮気味で、ずっとぴょんぴょんと跳ねている。彼女もやる気十分らしい。
「わぁぁ、これ本当に学校かな? かな?」
「本当にわからなくなりそうだな。期待してるのは分かるが落ち着け」
「……学園……恋愛……遠足……三人で……ふふふ」
アルトは魔法を唱えるように何かを呟きながら笑顔を浮かべている。ああこれは手に負えない時のアルトだ。あの訓練漬けの二週間でよく分かっている。
「えー!今から移動するのでしっかりと新入生はついてきてください!!」
「ユウっ!いこいこ!」
「ゆう……いこ?」
「おまえら落ち着けよ?」
俺は微笑みを浮かべながら二人に引っ張られて俺はいつの間にか開門したあいた扉の奥を目指し、中へ足をすすめる。
他の人間から見れば美少女二人に引っ張られる編入生の中で最弱の男だと思われてることだろう。イカサマで優勝したと思われてるからな……なんかいい予感がしない。
目の前に見えた来たのは大きな建物。どうやらこの中で色々と検査やらテストやらをやるらしい。
「戦士クラスはこちらにきてくださーい!!」
「レム。いってこい。何かあったらすぐ念話で呼べよ?」
「大丈夫だよ。いつでも返事はできるからね?」
「少し怖いけど……いってきますです!!」
俺達はレムを撫で、見送った。彼女はレベルも上がったし、それに経験もたくさん積んだ。気配探知にレベル50以上の人間が引っかかったら警告のなるフィルタを掛けているが、今のところ、それにひっかかるような人間はいないので一応安心だ。
これもだが、あまりに大きすぎる実力差がある場合や、気配遮断を持っていると引っかからないらしい。
まぁこの学園は全体的にレベルが低そうだし大丈夫……か?
「えーとここでは魔法クラスのテストを行います!筆記の方はあちらの女の人の所へついていってください!編入関係の方は俺についていってくださいね!」
そういうと、数十人いた生徒は半分くらのが筆記らしく扉の向こうへ消えていった。
残る生徒は実技で入るのか。まぁ検査ってだけだし俺達は落ちることが無いだろう。ある意味気は楽だ。
神殿のような柱が林立する廊下をしばらく歩く、と奥にひとつの扉が見えた。
教会などでよく見る両開きの扉である。実際には教会に行ったことはない。そういうイメージだ。
「はい。ここで検査を致します!部屋から名前を呼ばれたら入ってください!では全員終わるまでしばらくゆっくりしてください」
今いるホールの様な部屋はソファーとか売店等が常設されてあった。まるで県のスポーツ会場のような場所だな。
俺は遠慮なくソファーに座り込み、アルトも隣に座る。アルトが何か話したげなので俺はこちらから話を振ることにする。
「アルト?どうしたん「ねぇねぇ!アルトちゃん、だよね?」……」
女子生徒に完全に邪魔されてしまった。俺は仕方なく口を閉じる。アルトは呼ばれてこっちを見たが、突然の来訪者に邪魔されたため、生徒の方へ向く。
「そうですけど、それがなにか?」
アルトは淡々と述べた。女子生徒は反応が嬉しい様でニコッと笑いながらアルトに向けて話しだす。
「やっぱり!!闘技大会みてたよーっ!かっこよかったなぁ」
「そう?ありがとっ!!」
アルトも笑顔で返すが俺はどうしたらいいんだこの状況。他人を貫き通すか……?
「でもさー……アルトちゃん、この人に変な魔道具使われたんだよね。それも無理やり。ホントに最低」
そこで俺にくるか。予想だにしてなかったな。完全に寝てるふりしてたつもりだったのに
「あのね? ユウはそんなことは「次ー!メルさん!!」んだよ?」
「あっ。私行ってくるね!!Sランクで合いましょ!」
あれは完全に聞いてなかったな。タイミングが悪い。
「なんでみんなユウの事が……」
「気にするな。いつものことだ。」
俺はアルトを撫でる。って俺無意識にやってるのか?! ラノベ主人公になったつもりはないんだが……ってどうでもいいか。
この癖は挑発癖より先行して直さなくては。
俺は引き攣った表情を隠しながらアルトを撫でていると、彼女は目を細めて心地よさそうにする。
この行動が大きく学園生活に影響があることは確実だろう。目をつぶっているのに視線を感じる。
「次ー!アルトさん!!」
「いってくるね?」
「おう、行ってこい」
少し残念そうな表情を浮かべながらアルトは扉の向こうへ消える。どんな検査をしたか後で聞こうか。
しばらくたつとアルトが疲れた表情で戻ってくる。
「何やったんだ?」
「魔力量検査だよ?どれだけ魔力をそれに込められるのかっていう感じかな」
「へぇ、普通に込めればいいんだよな?」
「次ー!ユウ ナミカゼさん!」
っと、俺が呼ばれたようだ。俺は立ち上がり、どんな試験なのか考える。さてどんな検査何だろうか。
「ユウ、しっかりやらないとDになっちゃうから気をつけてね?真面目にね?」
「適当にやってくるよ」
「ちょっと待ってね?真、面、目、に、や、っ、て、ね? 同じクラスになるとして計算してるんだから!」
威圧感を込めながら彼女話す。この時の適当は適度にのほうだ。最後の計算は良く分からないか何か計算しているんだろう。
「わ、わかったよ。行ってくる」
俺は少し怯んでしまったが足を進め、扉を開ける。
扉の向こうも似たような広場であり、左右を見ると大きな柱がたくさん建っている。まるでギリシャの柱だな。この空間は扉一枚で隔たれているとは思えないほど神秘的だった。奥にはギルドでみたような水晶が空中に浮かんでいた。
その周りには囲うように椅子に座っている偉そうな人達。この人達が検査員か?
「それに触り、全力で魔力を込めなさい。まずは魔力量検査です。さぁどうぞ」
全力本当に込めていいんだろうか。壊れそうな気がするが。
「本当に全力で込めていいのか? 古そうだし壊れそうだが?賠償金とかは払わんぞ?」
俺はどうせ合格することは確実なのでタメ口だ。どこからか、こいつらからも蔑みの意志が伝わってくる。俺は会社員じゃない。なので賠償金も払わないことを伝えた。しかもよく見れば小さく亀裂が入っていた。誰か落としたか?
「ふ、ははははははっ!!何を言うかこの召喚士は!!」
「くくくくっ!!今時の召喚士は礼儀も知らないとはな」
「壊れることは有りません。そもそもそんな莫大な魔力を貴方から感じません。私もはエルフですし」
色々と笑われているがこのおばさんがエルフとはな。いろいろ夢が壊れたな。未だに美しいと感じたのは闘技大会で見かけたエルフだけである。
「まぁ壊れないなら……いいか」
「早くしろ。時間おしてるんだ」
何処か怒気を含んだ口調で年老いた教師が催促する。
俺もさっさと終わらせて、初めての寮生活というものを味わいたい為、水晶を五割ぐらいの魔力を手に纏い、触れる。
数秒後、現在の状況判断変わらず。
魔力は一秒に100程度と、地味に吸われていく。……これっていつになったら終わるんだろうか。水晶に変化はない。
助けを求めるようにエルフのおばさんを見ると
「なっ……?!」
駄目だ。驚いていてこちらを見やしない。
他のお偉いさんを見てみても表情に何ら変化はない。
うーん、いつ終わればいいんだろうな。
そんなことを考えていたら水晶に変化が起こる。
ピシリ……と亀裂がさらに大きくなる。
「お、亀裂がはいったぞ? 辞めた方がいいか?」
俺は警告の為にお偉いさん達に余裕な表情で話しかける。
すると
「ふははは、そんなことはありえんわ。第一お前魔力をしっかりと扱えているのか? 魔力を感じないぞ?」
それは俺が無駄に魔力を放出しないよう、体から魔力を出さないようにしっかりとコントロールしている訳だが……まぁ言っても信用性はゼロだろう。
エルフのおばさんはまだなにかブツブツ呟いている。
亀裂が入ったということは、これを壊すのがSクラスか? なら話は早いな。
「まぁ、賠償金とかは無いだろう。やるか」
五割から九割へ徐々にギアを上げ、力を込めていく。何故十割にしないというと、魔力のコントロールがまだ甘いからだ。
九割までは身体から放出せず、しっかりと循環させることが出来るが、十割になるとコントロールが少し緩くなり、無駄に放出してしまうことがある。
なので少しだけ抑えている。
「さて……これで!」
俺は魔力が九割に達したと同時にミシミシと嫌な音がたった事をしっかりと耳にした。いけそうだな。
そして、バキィィンと内側から破裂した。
破片はガラスのような音をたてて地面に落ちる。
ちょっとだけドヤ顔をつくり俺はお偉いさん方のほうを見ると
「「…………」」
先ほど表情のまま、青く固まっていた。まさか最弱の俺がSクラス並の魔力を持っていたなんて思っていなかったからだろう。
「これで終わりだろ?んじゃ戻るわ」
どうせアルトはSクラスだろう。俺も話せるような人が欲しいところだ。未来予知は確定じゃないんだ。きっとそうだ。
俺はそんなことを思いながら部屋を後にした。
「ユウ?どうだった?!」
アルトはソファーから消えたと思ったらいつの間にか目の前にいた。凄まじいスピードだ。
「ああ。無事壊した。多分俺もSクラスだろう。」
「そっかぁ!!壊したのね!これでユウも――えっ?」
「えっ?」
俺は不意に聞き返す。周りからの視線が再び俺に集中する。何処か有り得ないという視線だ。
まぁ、召喚士だからな。
「ユウ、あれどんな事があっても壊れない水晶なんだよ?クラス関係無しに」
「……どんな事があっても?」
「あっても!」
俺は再びしでかしてしまったようだ。
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