第57話 闘技大会 後日
一体突然現れて怒って……何なんだこいつら。
最初に話した人は青髪のロングの女の子
次は薄い赤のショートヘア、これも女の子。
最後に茶色で短髪の男の子……?いや、女の子か? まぁこの際男の娘でいいか。どちらにせよ勇者はロリコンに違いないだろう。口には出せないが。
「誰だお前ら」
「その前に私達のサンガに何かいうことはないわけ?!」
「少しも罪を認めませんね貴方って人は!! 潰してあげましょうか?!」
「ちょっとその言い草はないよ」
いきなり三人から話かけられて何も聞き取れなかった。流れから察するに勇者に毒を与えたから怒っているようだな。
勿論反省する気はゼロだ。そもそも状態異常を引き起こす魔法が禁止とは誰も言っていない。
「煩いです。ゆう……まだ起きたばかり」
初めてレムが怒った表情を見た。背中に九尾の亡霊が見えたような気がする。レムってこんな怖かったっけ。
しかしそれに対応するように取り巻き三人が反論してくるが――それを許さない者がいた。
何かが外れた魔王様である。
「すぅぅぅ、あのさぁ!!」
「?!」「?!」「?!」
アルトは息を吸うと、凄まじい速度で話し出した。ここから完全に魔王のターンである。
「ユウが起きたんだからあの人の所に帰れば?! そんなにいちゃいちゃしていている相手なんだから今すぐ会いに行けばいいよね?! それともユウにでも気があるの?それはないかー!君たちあんな人をお兄ちゃんとか御主人様とか呼んじゃったりしてるもんねー!あんな人を選ぶ時点で君たちの見る目がないことは確実だし、そもそも勇者だか三ツ星だか知らないけど、強さにしか良いところがないあの人を選ぶとかやっぱり小さくて弱い君達にはお似合いだよね! それにさ、罪を認めろっていうけど状態異常を与えることは禁止されてない、敬遠されるだけだし、よってユウが悪いことをしたわけじゃないよ? やっぱり小さい体だと頭も弱いんだねー!あっ君たちの小さい体で僕は思うんだけどさ、君たちそんな体してどうしたの? ちっとも成長してないの?それで僕と設定と同じ年なの?そんなわけないよねー? でもなんでそんなに小さくて弾力も無さそうな胸部しているのかな?あっ!あの人の趣味がそんな趣味だからか!だからそんなに小さくて弱い君達が仲間として認められたんだね!そうだ!どうせなら君達のバスト、ウエスト、ヒップ、体重、身長等のサイズを上から下まで全部、全て、なにもかも一つずつ口に出して言ってあげようか!うんそうしよう! んじゃまずはそこの小さな青髪!バストからんぐっ?」
「おいもうやめろ。いろんな意味で身の危険を感じる」
アルトの物凄い弾丸トーク、話になっていないが、それを中断させるため、俺は布団から抜け出し無理やりアルトの口を抑える。これ以上は不味い。
最初からアウトの様な気がするが、体系の時点で既に止めるべきであった。さらに勇者まで貶し始めた。もうこれはドクターストップだろう。
行動に出るのが少し遅かったような気もするが気のせいだ。逃げる準備をしておこう。
「んー! ん ! ん ! ん!!」
「あ……あると」
俺が無理やり彼女を押さえつけ、レムが怒りの表情からとてつもなく困った表情をする。
見たくないがちらっと三人を見ると
「お兄ちゃんを……」
「御主人様を……」
「サンガを……」
『『『馬鹿にするなぁァァァァァァァァァっ!!』』』
三人で合計したらあの勇者の魔法を放つ前の状態に近い。相当やばいな。まぁ逃げるが。
『『『しねぇぇぇぇぇえっ!!』』』
彼女らはそれぞれ武器をとり俺らに飛びか――れなかった。
その前に俺はレムの手をつかみ転移魔法を発動して逃げたからだ。
以外とギリギリだったな。危ない危ない。
移動先はいつもの宿屋である。
もう暫くギルドには顔向けできないだろう。だけども人の噂も七十五日っていうし半年ぐらい待てば忘れてくれるはずだ。
光が収まり、見慣れた部屋の中の移動が完了した。
アルトの口を抑えてた手を離し、俺達は緊張から開放される。
「ぷはっ、ユウー、なんで止めたの?」
「いやあれは止めるだろう。勇者をいじり始めてからちょっと危ないとは思ってたが」
「あると……カッコ良かった……!」
「レム、あんなことを話す子になってはいけないぞ? 体型なんて人それぞれなんだ。小さくたって大きくたって個人なんだから気にすることはない」
「むぅぅ、んじゃさ、ユウはどっちが好きかな? 小さい方がいい? 大きい方がいい?」
アルトは黒い笑顔で俺に詰め寄る。地雷踏んだなこれ。レムも興味深そうに俺をジッと見つめる。
因みにこれは俺の予測だが、あの三人の 平均 より現在のレムの方が大きい。それに成長したら確実にレムの方が大きくなるだろう。何とはいわない。
って誰に話してるんだ俺は。
「ふふふ?どっち?」
「……どっち?」
ここは彼女らの期待どおりに答えなきゃ未来の関係が危うい。しっかりと強調して答えよう。
「絶対あいつらより大きい方がいい。これ以上話させるなよ?俺の年齢差十七歳だからな?」
絶対というところがミソだ。これによりあいつらには何ら興味が無いということが分かるだろう。
年を出したということは察してくれ。俺はまだ女性経験なんてないんだ。バカにしないでくれ。
冷静に判断が出来ると、この修羅場でも駆け抜ける事ができる。焦らないことは重要だ。
「ふふふ、ユウ純粋だねー……」
「ゆう……じゅんすい? だねー」
アルトは先程の黒い気配ではなく、どこか和やかな雰囲気になった。切り抜けられたようだ。
レムはまだ純粋の意味が分かってないらしい。教えなくていいだろう。まだその時ではない。
ゴーン、ゴーンと鐘が鳴る。合計七回。辺りは暗い。もうそんな時間か。俺は結構気絶していたらしい。
どうせ優勝はあの三ツ星であろう。聞く気もおきない。
そんなとことを考えていたらぎゅぅぅ~とレムのお腹がなる。
「ふふふ、レムお腹すいたんだね?」
「うんっ……!」
「そろそろ食堂が開く頃だし、いくか」
レムは恥ずかしそうにしながらついていく。
アルトは何やらガッツポーズをしていたが気にしなくていいだろう。
~~~~~~
ご飯を食べ終え、部屋に戻る。レムは本当はアルトの部屋で一緒に寝るのだが、ちょっと用事があるため来てもらった。勿論アルトも付いてきた。
俺はベットに座っている。
「さて、レム。強くなりたいんだよな?」
椅子に座っているレムはこくこくと頷く。アルトは俺の隣に座り、傍観を決めるようだ。
「ならステータスを見ていいか?」
「ゆうなら……いいよ」
少し恥ずかしそうな顔をして俯く。
アルトの時もこうやって恥ずかしそうにしてたな。なんでだ? 警戒はするのわかるが。
「レム。大丈夫だよ。ユウも体重とかは見れないって言ってたし」
あの時の質問である「僕、太ってるの?」と聞かれた意味がやっとわかった気がする。勿論アルトは太ってなどいない。相変わらずの完璧プロポーションである。
「なら……よかったです」
レムは安堵の表情を浮かべると上目遣いで俺を見る。どうやら心から許可してくれたようだ。
「んじゃいくぞ?《観察眼」
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ステータス
名前 レム レベル23 クラス 獣戦士
年齢 12
性別 女
HP(体力) 780
MP (魔力)200
ATK(攻撃力) 700
DEF (守備力)350
DEX(器用さ) 480
AGI(敏捷性)750
INT(知力)250
LUK(運)3
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所持魔法
無属性魔法 レベル2
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所持スキル
獣化 レベル2
九尾開放 レベル0(獣化レベル5以上で開放)
体術 レベル3
爪術 レベル3
念話 レベル1
空き
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と、このような感じになっている。
魔法は身体強化を使っていたら覚えたという感じだろうか?
「レム? 無理して変幻しなくていいんだぞ?」
俺は獣人は魔法が苦手、もしくは使えないということは本で読んだ。
その代わり、AGIとATKが優れているらしい。
魔法が苦手ということは使用をし続けることは辛いだろう。俺はそう考えたので解除を進める――が。
「ゆうもあるとも……人間の姿の方が好き、でしょ?」
と言っている。やはりこれも貴族の影響なのか?
「俺は本来のレムの姿がいいよ。アルトだって、ホントは魔族の魔王ってことは聞いたよな?」
聞いてなかったらどうしようって思ったが不安はすぐになくなる。
「うん、聞いた。すごい……びっくりだったけど……」
「答えづらかったら答えなくてもいいが、どっちのアルトが好きだ?」
考えを察してくれたようで、アルトは変身を解く。黒い羽、赤と青のオッドアイ、そして灰黒色の髪。初めて会った時と同じ姿だ。
「こっちのあるとの方が……あんしん」
騙し合うより本当の姿で語り合う方が信頼感が掴めるということだろう。
「僕も本当の姿のレムがいいかな」
「と、いうことだ。勿論俺はどっちも本当の姿の方が好きだぞ?」
「っ!」
特に深い意味はない。恋愛的な感情でもない。
するとレムは納得したように変幻を解く。
ぼふんと小さな煙がたって消える。煙が晴れた後に見えるのは、綺麗な銀髪、頭にはピコンと動く狐の耳。肌は先程より白く尻尾は……九本か。まさか本当に九尾とはな。
「これがワタシですっ……」
レムは覚悟を決めて尻尾までだしたようだ。
「レム可愛いっ!!」
アルトはベットから立ち上がりレムに飛び込む。
確かに俺も もふもふ したかったが流石にセクハラとか言われたら……困るよな。
後で触らせてもらおうとしよう。怒られるかもだが。
それとこの世界では獣人と人間は仲が悪いらしい。闘技というスポーツにより国々が仲良くなってく……はずだが人間は差別的な想像があるため中々上手くいかないようだ。
「さて、レム。これをお前に授ける。使いこなせるかはお前次第だ」
俺は彼女の肩を触ると、 能力創造により 《空中歩行》を与えた。彼女なら敏捷性を生かして上手く使いこなしてくれるはずだ。
「なに……これっ?!」
ステータスを見たようで、レムは激しく驚く。
アルトは興味深そうな目で見ていた。
「スキルは文字通りだ。使いこなせれば、相当強くなれるだろう」
「ありがとう……ゆう……っ!!」
レムは少し涙目になりながら感謝する。どこか神秘的だ。救ってあげて良かった。
「さて、魔法学園が始まるまであと二週間か」
「僕は何年ぶりだろうなぁ……」
「学校なんて……初めてです……!」
ここで俺はひとつの提案をする。
「なぁ、レムの修行がてらもう一回魔界に行かないか? 今の俺じゃ正直まだあいつに勝てないし、皆を守るために、強くなりたい」
「ワタシも、強くなりたいです……」
レムも同意する
「二人とも……うん!! 明日から、頑張ろ!!」
アルトも考えた表情を浮かべたが直ぐに笑顔で答えた。
既に学校へ編入する準備は整っている。
俺は新たな魔法の手がかりを探し、それと同時にアルトの本を見つけるため学園へ、
アルトは二つの魔導書を探すため学園へ、
レムは強くなるために学園へ。
二人はそれぞれの思いを抱えながら部屋を出ていった。
闘技大会が終わった今。俺は勇者との実力差をしっかりと感じた。
このままでは勝てない。これは確実だ。
もっと、もっと強くならないとな。
こうして俺は新たな目標ができた。最弱のクラスだろうが関係ない。
いつか勇者も……負かしてやるよ。
アップして半年にもなって気が付きましたが、57話と58話が順番が逆になっていました。大変申し訳ありません。2016/05/12修正しました。
ご高覧感謝です♪




