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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第四章 闘技大会
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第50話 買い物の日

 鐘の音が身体と頭に響き俺は混濁していた意識を覚ます。

 鐘の音は三回しか聞こえなかったが、先程は五回であったので数回は聞き逃したのだろう。


「二度寝しちゃったのか……っ てなんで俺はベットに? 確かソファーで――」


「お、おはよユウ」


 こいつまた夜這いしにきたのか。ドキドキするからやめて欲しいものだ。俺はまだ彼女すらできた事ないんだぞ。


「お……おはようございます、ゆう……さん……」


 隣には狐の子がいた。名前聞いてなかった。


「お前らなんの真似だ?」


 自分でいうのもなんだが、俺は年頃の男の子だ。こんなことをされてドキドキしない訳が無い。


「挟むようにいったのはあると……「だめだよ?」あるとは何も言ってない、です」


 少々狐の彼女がきちんと喋ることに驚いてしまったが、現在、美少女二人にサンドイッチされている。

 この人系はどうやらアルトの発想のようだ。また、呼び捨てで呼びあっていることから相当仲良くなったのだろう。

 幾らかだが彼女の怯えがなくなって良かった。


 だが一つ、わからないことがある。


「どうやって俺はここに来たんだ? ソファーで寝てたはずだが――」


「ユウ……自分でこっちに来たのに覚えてないの?」

「凄く……凄かった、ですよ……?」


 アルトはニヤニヤしながらこちらをじっと見て、狐の子は耳まて真っ赤にしながら話す。

 俺は何をやったんだ?


 首を横にしてじーっとアルトをみる。

 じぃーっと俺を見つめ返してくる。

 恥ずかしくなって俺は先に目をそらした。

 負けた。

 隣にいる狐の子を見る。布団にくるまっている。

 目どころか顔も見れなさそうだ。


 挟まれている俺は取り敢えず のそのそ と彼女達から抜け出る。


「えっと……今何時だ?」


「うーんとね?今は七の鐘を過ぎたところだね」


 俺は二時間も寝てしまったのか、何をやってたのかさっぱり思い出せないなぜここにいるのかも。


「んじゃご飯に行くか」


 それを聞いた途端、狐の子はピン!と布団から獣耳を立ててすぐさま動きベットから抜け出し、俺の前に現れる。

 なるほどな、食いしん坊だなこいつ


「僕もお腹すいてきたなぁ、今日のご飯なんだろーね」


 アルトも よいしょっと 声を出しベットから出る。

 この宿は完全に気まぐれランチだ。無論美味しいので言うことはない。わかめは要らないです。


 おっとまた忘れるところだった。


「そういえばお前、なんて名前なんだ?」


「ワタシ?」


「ふふふー……言っていいよー!」


 アルトは何処か喜びの表情で満ちている。

 仲良くなったのは羨ましいな。

 お別れするのは辛くなりそうだが。


「ワタシは……レム。あるとが……付けてくれたです……!」


「ふふふー可愛い名前でしょ?この子にぴったりだよね!」


「いい名前を貰ったな。似合ってるぞレム」


「えへへ」


 俺はレムの頭を撫でているとアルトも のしのし と近づいてきた。名前は思い出したくないとかそういうのもあるだろうし、無駄に突っ込まないほうが無難だろうな。


「僕もっ!名前を考えたのは僕だよ?」


 そういって彼女は俺にさらに近づく。色々ドキッとしてしまう。


「恥ずかしくないのか?」


「ユウだから、いいんだよ?」


 捉え方を間違えると大変だ。冷静になれ俺。さらにドキドキしてしまったがアルトの髪を優しく撫でると気持ちよさそうにしていた。


「あると……やっぱり恋……!!」


「違うぞ。これはだな、勘違いを呼び寄せる悪い事だ。こんなことやっちゃだめだぞ?」


「ちっ、まだ堕ちない……なら次は六番目の方法なら」


 レムにはこんな勘違いを催しそうな言動をしないように注意する。

 アルトはなにかぼそぼそと言っているがスルーしておこう。


「んじゃ、行くか。ご飯に」


「おー……!!」

「おーっ!」


 ~~~~




 予想通りレムは大食いだったようで、“俺の”倍は食べていた。アルトは「太るよ?」等注意していたがお構いなしだ。本人いわく


「明日食べられないかも、しれないので、いっぱい食べておきたいんです……」


 と意見に流されない強さがあったのでアルトも素直に手を引いた。この様子だと直ぐに太りそう――おっと危ない。セーフだな。


 闘技大会では今は本戦が始まっている。

 青年枠とは違い大人なので激しい戦いが繰り広げられているだろう。

 全く興味はないが。

 なによりアルトより強い人はそうそう現れない筈だ。現れたらかなりまずい事になりそうだけどな。


 取り敢えず今日の目的は彼女の服、学校へ行くための準備といったところだろう。俺はともかく、アルト達は入学に何の問題もないのだ。

 それに、優先すべきなのは彼女の服だよな。雑巾のようなボロボロな服だと周りの目線も痛そうだ。


 そういうわけで。やってきました服屋さん。


 周りの目が怖いので今の彼女には俺が着ていた黒いローブを渡してある。匂いを嗅がれていたが消臭の加護があるので臭くはない、はずだ。そう信じたい。


「ユウはここで待っててね?」


 店の外で留守番である。番とは言わないかもしれないが留守番である。下着も買うらしいので逆について行けなさそうだ。


「本当に私がこんなに綺麗な物を買っていいんでしょうか?」


「レムレム可愛いんだから、きっと似合うよーっ!」


「ありがとう……あると!!」


 二人で仲良く店に入っていく。再び仲がよくて羨ましくなった。断じてロリコンではない。


 俺もアルトも、時間がくれば彼女とお別れしなくてはいけない。やっぱりそのことは今の俺に出来るのだろうか? 俺たちはしっかりと別れられるかどうか心配である。


 ~~~~



 あれからおおよそ三十分。俺は暇で暇でしょうがなかった。さらに時間がかかると思い、人気のない路地裏に移動し、魔法創造スペルクリエイトを行った。


 が、辺りが衝撃波により大変な事になってしまった。衝撃波の威力は昔の魔法創造スペルクリエイトのレベルが1であったときより遥かに強くなっていた。

 どうやらレベルが上がると衝撃波が弱くなり、創造しやすくなるのではなく、強くなるようだ。


 狭い路地裏で創ってしまったものなので異常事態であると思われて憲兵が来た。敏感に察知し、逃れたがこの機会を糧に街の中ではもう魔法を創らないことにしよう。

 気分は新たな魔法を創れて嬉しいが、街での使用は厳禁だと言うことがわかり、微妙な気分になっている。


 ちなみに今回創った魔法は“状態解除ディスペル”、“無属性魔法”だ。これ以上は衝撃波により色々な所が壊れれそう、かつ憲兵が来たので諦めた、

 またこれらは魔法創造自体ののレベルが上がったことにより使えるようになったものだ。


 魔法を創るのにも制限があり、レベル1で攻撃魔法、移動魔法、回復魔法などが限界だったが、レベル2になると、状態異常バットステータスを回復する魔法、無属性による攻撃、支援魔法などの自身の強化などが可能になった。

 また昔創り出した聖属性は回復系の魔法が多いものの、状態を解除する魔法はなかった。


 俺が魔力を循環させ、身体能力を底上げするのは魔法ではなく、ただの技術らしい。

 自身を強化する魔法は闘技大会でアルトが使用した魔法の類だろう。筋肉痛は確実にくるのは本能で察した。


 そうして憲兵たちにバレずに逃げ切ったあと元の服屋さんへ戻るが、彼女達はまだ中にいる。


 かれこれ四十分ぐらいだろうか。俺は魔力を身体に循環させて、アルトのように無駄が無い魔力循環を練習していたら二人が戻ってきた。


「ユウ!次の店行くからこれよろしくね!」


 両手に持った大量の紙袋、そして荷物を無理やり渡される。

 これ一個5000Gとしても……30万はとんだだろこれ。



 召喚魔法陣に次々に放りこんでいきながら、お金に危機感を感じた俺であったが彼女達の笑顔を見れたことで、彼女達のためにお金を使うことを決めた。


 笑顔。プライスレス。


 勿論、この服のお代は全て俺持ちである。

 賞金はないが、素材を売ったお金がある。頼むお金。もってくれ。



 ~~~~


 それからはお代は勿論俺持ちでお昼ご飯をカフェテリアの様な場所で食べた。

 すごく美味しかったが、もう時間は午後三時過ぎ。少し遅めだ。


 お昼ご飯を食べたあとは俺も混ざって学校への編入準備のための制服、用品買いなどであっという間に夜になってしまった。


 最後に所持金を見てみると、40万Gだった。この前は俺は、蜘蛛の素材を売ったお金で確実に100万はあったのだが……。


 だが、それに見合うかなり充実した時間だった。


 宙に浮いている蛍のような光を眺めつつ、俺たちは夜の街を歩く。

 イルミネーションも魔法とはやはり異世界すごい。


「ふふふ……今日は楽しかったなぁ」


「はいっとっても、楽しかった……ですっ!!」


「だな……」


 傍からみたら家族の様に思えるだろう。

 夜の街をレムを挟んで並んで歩いていく。


 とても暖かい雰囲気だ。この時間が続けばどれだけいいことか。


「ゆう、あると、一緒に手……つなご?」


 ああ。なんか子供を可愛がる親の気持ちがいま凄くわかった気がする。なんて可愛いんだ。


「ふふふ、勿論いいよー」


「ああ」


 レムは左に俺、右にアルトの手を繋ぎ、幸せな雰囲気を出していた。


 が一とつのつの事件がおこる。


 ドンっ とレムが何かにぶつかる。


「きゃっ」


 そして、ぽとっと何かが落ちる音。

 ぶつかったのは人だ。俺達はのほほんとし過ぎて気がつかなかったようだ。



「おい、くそガキ……」


 どこかで聞いたことある声。


「お前ら、アニキのアイスクリームになにしてくれてんだ?ちょっとツラかせや」


 そんなことをいうものだから、俺たちはレムを立たせたあと――


「おい、てめぇら?」

「うちの子になにしてるのかな?」



 逆にキレた。


ご高覧感謝です♪

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