第45 話 闘技大会青年枠 表彰式
「お、おい。なんで召喚士がアルトちゃんを背負ってるんだ?」
「そもそも戦いはどうなったんだ?」
やはりざわつく。なにせ空間が割れるどころか、俺達が出てきて、なおかつ戦闘相手を背負っているのだから疑問の一つや二つがあっても仕方ない。
なぜ俺が彼女を背負っているのかというと、こんな理由かある。
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辺りが閃光で包まれる前に俺は少しだけ彼女の刃をずらし、直撃を免れた。彼女はただただ破壊力で押し潰そうとしてきたのでこちらは技で相手を超える。
柔をもって剛を制すだな。
完全に受け流したつもりだったんだが、凄まじいエネルギーの奔流により、俺もかなりダメージを受け十メートルほど吹き飛んでしまい、無様にもゴロゴロと転がった。
しばらく無音が続き、やっとのこと俺がふらふらと立ち上がるとアルトから乾いた笑い声が聞こえた。
「……あはは、このぼくが……打ち合いでまけるなんて……考えられないよ……」
やった俺がいうのもあれだが、彼女は無事だよな?
これで精神ダメージ変換なんて無かった、なんて言われたら色々宜しくない。主に俺の精神面が。
「はぁ……いてて、アルト……無事だよ……な?」
俺の魔法纏はアルトからのダメージ、試合が終わったと思った開放感から集中力が途切れたため、解けてしまった。
「はぁはぁ……無事だよー。変換なかったら不味かったかなこれっ、ふふふ……未だに動けないや。僕びっくりだよ」
そう言って体をごろりとうごいて仰向けにする。
身体は無事であるようだ。とりあえず一安心だ。
俺は身体に鞭をうち、彼女まで足を必死に動かす。
筋肉痛とアルトのダメージが影響して、立ちあがるだけでもかなり辛い。
なおかつ、アルトを倒した今現在でも空間からの魔力吸収は続いている。残り魔力は1000を切り、頭痛も起こり始めた。早く出して欲しいところだ。
俺はフラフラと歩いていきアルトに手を出す。
「ほらよっ、掴め」
「ありがとっ……よいしょっと……」
アルトは体を起こし、俺の手をつかみ立ちあがる。
この途中引っ張られて俺も倒れかけたのは内緒だ。
「んで?どうやったら出れる?転移も使えないし……もう戦う気はないぞ」
俺はとにかくここから出たいことを伝える。やれるだけやったので、負けてももういい気分になってしまった。
「僕は全力でやって負けたから……この勝負はユウの勝ち。だから帰ったら僕は降参するよ」
「それはどっちでもいいがどうやったら出れるんだ? 流石にきつくなってきたぞ」
残り魔力は先程より凄まじいスピードで減っていくのは彼女の自己再生に利用されているから なのだろう。
「あっ、そうだったね。ごめんごめん」
彼女はもう自らの頭をこつんとやるほど体力は回復している。俺は吸い取られているのでどんどん消費しているが。
「それじゃあさちょっと後ろ向いて?」
「……おう」
なにをするのか分からないがとりあえず従うことにする。
すると彼女は変身魔法を使ったようで、雰囲気が更に優しいものへと変わる。
そして、背中が急に重くなる感覚。それが俺のバランスを崩す。
「おいっ、ふらふらなんだから本気で倒れかけたぞ」
「えへへ……」
アルトは急に背中に飛び乗った。本当に転びそうになったが、何とか耐えた。彼女は軽いのだが、弱っている足腰は悲鳴を上げる。体感では凄まじく重い。魔力消費の為、倦怠感も重なっているからだろう。
「……降りろ。俺はもう体力無いんだよ」
「くっつかないと帰れませーん!」
「…………」
嘘か本当か分からないがとりあえず我慢しよう。
なぜコイツはこんなにも元気なのか。
悪い気分ではないが、とりあえず状況が状況であり、体力的にしんどい。
すると背中に乗った彼女は何らかの魔法を使った。すぐに変化が起こり俺の周りが光る。この魔法は見たことあるな。
「お前の転移はできるんだな。俺のは出来なかったのに……」
「僕の空間だからねー」
どこか自慢げな声をききながら俺達は光に包まれた。
すると転移した先は会場ではなく、トンネルのような暗い通路だった。奥に光が差し込んでいるが、あの場所へ向かえばいいんだろうか?見た限り七十メートルはありそうだが。
「あそこから元の空間に戻れるよ。遠いけど頑張ってね!」
「ならもう降りろ。こんな長い距離を担いで歩きたくないんだ」
「僕が嫌いなの?」
「そういうわけじゃないが……ああもう、わかったよ、これは俺の負けだ」
「ふふふ……」
結局俺が折れた。そしてゆっくりと歩いていき、現在に至る
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「もう降ろす。問答無用だ」
「えっ?!話せばわかるよね?!」
「どこの大臣だよ。てか何でそんなこと知ってるんだ」
俺は無理やり彼女を振り落とす。すると彼女は「むー」と声をあげ不機嫌ながら降りた。
『えーと……お二人さん?試合は……』
テュエル姫が試合の結果を聞きたそうにしている。
観客はざわついたり、俺を中傷しているがそんなものは無視する。
「えっとね?僕の負けだよ。僕降参」
その声が響くと会場が更にざわつく。
外は暗いし早く眠りにつきたいところだ。
『……嘘でしょ?』
姫様。素がでてる。 観客は相変わらず召喚士のイカサマコールだ。
「ほんと。だから早く結果を理解できてない人達に教えてあげてね?」
姫君は相当考えたあと、結論を出す。
『……認める訳にはいかない。ユウ ナミカゼ。お前をルール外魔道具使用の罪として、失格とする。アルト、お前が優勝だ』
「まじで?」
「ええええええっ?!」
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それからというもの表彰式があり、身体が痛い中なので見に行く気には慣れなかったが、アルトの晴れ姿なのでこっそりとテュエルの部屋にて見守らせてもらった。ミリュの質問の嵐は 疲れたから後で の一点張りでなんとか誤魔化す。
クラス 召喚士の優勝者は一人しかいないらしく、失格により五十年ぶりの優勝ならずだとか言ってたような気もするが至極どうでもいい。
お金の為に出たのに貰えなかったのでテンションはだだ下がりだ。
三位は竜人のライガーだ。彼は治療中のため、俺の失格のため三位決定戦はしなかったそうだ。これを聞いてリンクスはすごく安心していた。
二位はイケメンのリンクス、
判定に相当不服があるようだが、それは俺も同じだ。ああ賞金が。
そして一位はお馴染みアルトさん。
彼女もずっと困惑気味な表情を浮かべていたが、俺は何とか観客も選手もいない場所で彼女を説得して、表彰式に出るように伝えた。それと俺が罵られたとしても人々に手を出さない事を約束してもらった。気持ちは本当に嬉しかったが。
魔力不足で回らない頭を必死に回したからさらに疲れた。
授与式の前にリンクスとミリュがいろいろ聞いて来たがどれこもれもアルトの本性に迫るため、いろいろ嘘をつき、適当にはぐらかしたが、二人ともはてなマークしか浮かべてなかった。仕方ない。
それとアルトの魔法学校編入の件だが、彼女は俺が入ることを知ると彼女もすぐさま入ることを決意した。
しかし、この決勝での失格という判断を下されて、俺が魔法学園に入れるかどうかと言われたら怪しいものがある。試合後の会議で俺はどうなるか決められるらしい。いい結果を祈るばかりである。受験かよ。
そう言えば彼女は 全魔法を知るもの の称号があると聞いたことがある。学校行く意味ないだろうな。
それを聞いた仲の良いミリュとリンクスは俺の時よりずっと喜んでいた。
あだ名で呼びあっているくらいだもんな。
そんなこんなで喜んでいるとテュエルが来て「いつまでいるんだ。さっさと出ていけ。あ、ユウ ナミカゼ お前は残れ」と言われたのでアルトたちはゴミを回収しつつも素早く出て行く。リンクスとミリュの顔が青かったがそれは姫の部屋だと知らなかったからだろう。
どんまい。
「んで、なんすかお姫様」
「……すまなかった」
誰もいなくなったVIPルームで姫に思いっきり頭を下げられた。まだ少しだけ不機嫌であったので俺はこんなことを言った。
「悪いと思ってるなら……金くれ。俺はこの為に出たんだよな」
「それ……は」
にやけながらいったものの、裏では貰えたりしないかなと思っていたりする。
「冗談だ。また会えたら用意してくれ。おっとと忘れてた。魔法学園の権利はなんとか保持しといてくれよ? あそこには行きたい理由があるんだ」
「……それぐらいでお前の気が済むなら……任せろ。私の権限を使い、なんとか保持してみよう」
「ホントは金が欲しいんだがな」
そう言って俺は部屋から出ていく。多分彼女とはもう会う機会は、ないよな?
それと明日からは闘技大会一般枠。しかし、それを観戦しにいくなど自ら墓穴を掘ることはしない。騒がれるのがオチだ。
それに、俺には未だに気がかりなことがある。
奴隷の彼女の事だ。
宿でグチグチ言われながらご飯を食べ、ベットで横になりゆっくりと考えていたらコンコンと音がした。
「ユウ? 起きてるよね? いいかな?」
アルトのようだ。断る理由もないので鍵を開ける。
「どうしたんだんだ? こんな時間に」
こんな時間にとは言ってもまだ十の鐘がなった時刻。つまりほぼ午後十時だ。
「なんかさ、ユウ……なにかに悩んでない?」
アルトはいきなりこんなことを聞いてくるので少し驚いてしまったが、俺は今考えている事をを彼女に話す。
「……奴隷ってどう思う?」
そう言うとアルトは目を見開いて、逆に質問を返してきた。
「あっ、そっちなのね……てっきり闘技大会で悩みが――って、あの子のこと?」
あの子とは闘技大会の竜人と戦っていた奴隷の子だ。
「勘違いするなよ? あの子が好きな訳じゃない。奴隷という立場が良く分からないだけだ」
俺は先に小さい子には興味がないことを伝える。
すると彼女は「そっかぁ……」と安心した声をだし、俺かベット横になっていたベットへと腰掛ける。
「僕は、人間のこういうところが嫌いなんだ。一人一人の強さは関係なく、数で押して自らが強いように魅せる。一人一人の実力が大したことないのにね」
アルトは壁を見つめながら話す。アルトもアルトで思うところがあるようだ。
「でもね、ユウにはそういう気持ちは感じない。魅せようともしない。ただ受け止め、流し、返すだけ。でもやるときはやる。僕を助けてくれたみたいに、ね?」
アルトを見ると少し頬を桃色に染めながら語る。
「そりゃ俺の責任でもあるからな」
召喚士狩りの件であろう。間に合ってよかったと心から思う。
「ふふふ、話がそれたけど、僕は奴隷については認めたくないかな。救ってあげたとしてもその後の事も考えると――」
「なるほどな」
俺はいま一番考えとしてまとまっていることを話すことを決める。アルトなら、理解してくれると信じて。
「なぁ。俺があの奴隷を救うっていったらどうする?」
俺は天井を向きながら言う。彼女は否定するのだろうか
「……ユウは救ったあとどうするの?」
「俺がギルドへ登録させ、奴隷という立場から脱却させる。こんな感じか? 俺は召喚士だが、人間だ。一応それくらいはできるはずだろ?」
「ユウは優しいね」
「あの子は戦闘は出来るらしいから一応銭は稼げるだろうし、一人でも生きていけるだろう。という考えだが、どう思う?」
「……そんなに奴隷を救いたいんだね。でも、戦いになるよ? しかも相手は貴族。人間の敵意がユウに向くのは間違いないし」
「アルト。いつの時代だって記録に残らない殺人がある。俺もその一例に加わるだけだ」
俺は笑いながら何とも酷いことを言う。だけれどもアルトはそれを聞いてなにか安心したような表情をしてこういった。
「ユウ……本当は魔族じゃないの?」
アルトは笑いながら言うが俺は真面目に答える。
「心はそうだろうな。俺は守ると決めたものは全力で守るし、どうでもいいものは放っておく。これだけだ。あの奴隷は、守るべきって俺の別の部分が訴えかけているような気もするしな。俺は本能の赴くままに動く。世界はあんまり縛られてないしな」
「ふふふ……ユウはやっぱりユウだね……ねぇ、もし僕がまた、危険な時はさ、助けて……くれる?」
「当たり前だろ?命掛けてもいいぞ?」
これは大袈裟ではない。本気だ。
彼女はこうやって悩んだ時は相談に乗ってくれたり、励ましてくれる。どれだけ彼女の存在が俺にとってどれだけ大きいことか。
「っ!!」
彼女は目を大きく見開いたあと俺に向かって一番の笑顔でこう言った。
「ユウっ……ありがとね!」
「ああ。気にすんな」
しかしその笑顔も長くは持たない。突然アルトは俯く。
「?どうした?」
「……あのさ、ユウはいつも平常心を保っているっていうけど、僕はそうじゃないと思う。なんか最近、あの奴隷子を見てから君の様子がおかしいよ?」
確かにそのとおりであった。タンスに足の小指をぶつけたり、机の角に足の小指をぶつけたりしたことが多くなっている。ほんの一日だけだが。
「……だから僕はさ、思うんだ。あの小さい子にさ、恋してない?」
「っておい、俺はロリコンかよ」
こんなことを言ってくるものだから俺は心の中でづっこけつつ、即答で答える。心で思ったことをそのままに。
「ただ、……昔の俺と似ているような気がした……だけだ」
「ユウの……昔?」
俺は蘇る黒歴史を首を振って払い、アルトを部屋へと戻るように伝える。
「さて、もう寝るぞ? 明日から……情報収集だ」
「……うん。分かった。お休みユウ」
彼女が部屋から出たあと、あの貴族の周り、それ自体の情報収集のためにどのような手段を取るか考えていた。
ご高覧感謝です♪




