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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第四章 闘技大会
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第43話 闘技大会2日目 決勝 ユウvsアルト

 現在の時間帯は先程の鐘の音が七回鳴ったことから、午後七時ぐらいと予想できる。空は完全に真っ暗だ。


 いま俺は部屋から出て、会場内の通路を歩いている。考えていることは彼女に対する戦法である。


 彼女は先読み能力は俺なんかと比べてずば抜けて高く、そして移動速度、魔法の展開の速さといい、何もせずやられてしまうかもしれない。


 おまけにあの伝説級の武器を所持している。

 精神ダメージ変換とはいえ、まともに喰らえば一瞬で気絶してしまいそうだ。


 俺が勝つためには彼女が驚くようなことをしなくてはいけない。


「風魔法縛りっていうのが痛い……って縛らなくてもいいのか?」


 俺は思い出す。シーナとの戦いで竜巻に入っていたときは魔力反応が全く感じられなかったこと。

 風魔法の竜巻を作り、その中で戦えば魔法の使用はバレないんじゃないか?


 と考えたが、俺が使った《風巻き》は体感で三十秒ごとに魔力を60消費する。一秒につき魔力を2を消費すると考えていいだろう。俺の魔力が異常にあるとはいえ極端に長い時間使えるものではない。


 やはり風魔法と刀だけで何とかするべきか。

 できるとは思えないが。


 悶々と考えていると試合会場の入口が見えた。


 俺は足を止め、深呼吸する。


「すーはぁぁ……少しは緊張してるみたいだな俺も」


 ()()()()の状態で勝てる見込みは三割といったところか?

 奥の手はあるっていえばあるんだがそれを使うと後々酷い筋肉痛が襲いかかってくる。


 ここ数日、一人で訓練している時に使っているが相変わらず筋肉痛を伴う。

 今でも少し痛いが戦闘に影響はないと思う。


 俺は頬を軽く両手で叩き、気合を入れた。


「賞金は、渡さないぞ?魔王様」


 そう言って俺は足を会場へ向けた。


 ~~~~


『さあああっ!! 青年枠決勝!! 長らくお待たせしました!! 』


『わぁぁぁぁぁっ!!!』


「きたね。ユウ」


 アルトはニコニコしながら俺に声をかける。


「正直負ける確率の方がデカイが、やれるだけやるさ」


 俺は彼女から溢れ出る色々なオーラを受け流し答えた。


 並の人間ならこの時点で彼女に呑まれそうだ。

 が、俺は違う。こんなところで呑まれるために気合を入れ直した訳じゃない。


「ユウ、僕ねずー……っと待ってたよ?ユウと戦えることを」


「……言ってたもんな。俺は何としても回避したかったが」


「ふふふ、僕はね。この200年負けてないよ?そもそもユウみたいな人は居なかったしね?」


 あのステータスは年齢詐欺だったのな。それは置いといて彼女はその強大さからとても退屈していたらしい。


「なら、俺がそれに終止符を射ってやるよ。お前の一強は俺が超える」


 挑発するのはいいが内容が内容だ。俺はそんな強くないってミリュに発言したばかりなのに、恥ずかしくなってきた。


 反応というと、彼女から放たれる圧力がさらに強まり、辺りからは地響きのような重々しい音が聞こえ始め、さらに彼女の周りでは小さな石が浮いている。なんとも少年漫画のような光景だ。


 空気がビリビリと張り詰める。まるで相手は爆発寸前の核爆弾のようだ。


「ふふふ、流石ユウ。僕を目の前にして挑発出来るなんてね」


 癖なので気にしないでください。とはいえない。

 あれだけかっこいいこと言ったのに撤回するのは男として、いや人間としてまずいと思う。


「出来る限りの事はするさ」


 色んな意味を含めて俺はこう言い放った。

 そしてギアを戦闘へと移行していく。


 体に魔力を流し、出来る限りの身体強化を行う。


 魔法纏 が出来るようになってから、魔力による身体強化が出来た。身体強化は魔力を血液と共に流すイメージだ。筋力も魔力により強大化ができるため、この方法は積極的に使っていきたい。それに、放出しなければ魔力は減らないのでエコであるとも言える。


 この魔力による身体強化の使いすぎは筋肉痛のもとだが、これができるようになってからかなり俺はランクアップしたと思う。


「へぇ、流石だよユウ。この時点でもう僕に追いつくなんてね」


「……どうかな」


『――だろうっ!! それでは両者気合十分!!試合――』


 全く実況聞いていなかったがまぁいいよな。


 俺はあらゆる雑念を捨て、最初から鞘をから抜いてある刀を再び取り出す。

 アルトは刀を黒い霧から取り出す。


 互いに無言。開始の一言を待つ。


「…………」

「…………」




『開始ぃぃっ!!』


 開始と同時に俺は魔法を――


「ふっ!」

「くっ!!」


 魔法を中断し、刀で防御に徹する。


 アルトは一瞬で肉薄すると、これまでに見たことないくらい速く、無駄のない動きで横凪の一閃を放つ。

 しかし真っ直ぐだったのでギリギリ対応できた。


「ぐぅぅ……!」


 斬撃が凄まじく重い。衝撃により俺の手の痺れが引き起こされるが、彼女は躊躇なく上段からの振りおろしへと連撃を叩き込んでくる。

 これもなんとか俺は刀を横にする事で何とか免れた。

 

「いきなり飛ばしすぎだろっ!」


 刀は剣のように程硬くない。これは切断の得物だ。このような防御はできる限りしない方がいいだろう。折れても文句はいえないくらい間違った使い方である。


「ほらほらほら!!」


 連続して刀同士なぶつかり合い、火花が舞う。

 彼女の攻撃は竜の一撃より重く、獣の一撃より疾い。

 目で見ては間に合わない。どこに攻撃を行うかの気配も感じとっでどこを狙ってくるか予測しないとすぐに切りつけられてしまうだろう。


 防戦一方。なんとかこの状況を変えるには、魔法しかないっ!!


 俺は迫り来る剣戟を受け止めながら足元に向けて魔法を放つ。


「っ《風巻き》っ!!」


 今回の風巻きは規模を小さくして、足元をすくうための小さな竜巻を作り上げた。


「へぇ」


 アルトは驚きバランスをほんの少しだけ崩した。

 俺はこの隙を逃がさず最速で蹴りを放つ。もちろん本気である。

 昔、元の世界で女を殴るなとはいわれてるが、この状況ではそんな余裕はない。


 体制を崩している状況でも彼女は刀で防御したのだが、衝撃を流しきれず、彼女とは三メートルほど距離が空く。


「今度はこっちだ」


 全力で指から幾つもの風の弾丸を放つ魔法、風弾エアバレットを放ちながら、できる限り速く近づく。


 足元もすくえたように、アルトはどこか油断をしている。勝率が高い上に決めたいところだ。

 俺の 風弾 を軽々と回避するアルトはひょいひょいと体を動かしているものの、一歩も動いていないことからやはりまだ油断している。


 気配を遮断しながら俺はアルトに横凪の一撃をあたえ――っ


「甘いよ」


 られなかった。金属がぶつかり合う高い音と、衝撃波により風が巻き起こって髪を揺らす。


 ニッとわらって彼女は攻撃を刀で受け流す。しかし俺もそれで止まるつもりはない。


「まだだっ」


 一つ一つ全力で刃を振り抜き、彼女に連撃を与える。がどれも受け流したり防御したりで彼女にダメージは与えられない。


 だか俺は先にダメージを与えたというアドバンテージがある。


 不意に俺は先程アルトを蹴った足を軽く上げる。

 するとアルトは凄まじい速さで反応し、蹴りを迎撃しようとするがそれは俺の狙い通りだ。蹴ると見せかけたフェイントである。


「かかったな」

「っ!?」


 俺は足を斬撃が通るルートから逃がし、回避する。

 アルトはバランスを崩し、一世一代のチャンスだ。

 大袈裟かもしれないが。


「《滅閃》っ!!」


 刀が灰色の光を帯び加速、アルトに猛襲する。

 彼女が初めて見せた焦りの表情がやけに明瞭に写った――のに。


 俺は手応えを感じることはなかった。


 攻撃を当てたと思ったのに、刃が触れた部分から彼女の姿が消えていく。


 考えられることは二つ。一つ目は、これは分身のようなもの。

 二つ目は空振りした俺はとてつもなく大きな隙があること。


「くそっ……!」


 刹那、俺は振り抜いた勢いのまま全力で横に駆ける。後方から激しい魔力の気配。

 あっという間に黒い風が辺りを蹂躙し、闘技会場に炸裂音を響かせながら深い爪痕を残していく。このままではあれに飲み込まれるな。


「横回避はだめか」


 俺はそのままジャンプし、風の波を超えて回避する。


 そして着地すると程前方に無傷のアルトが腕を前に出しながら佇んでいた。魔法をいつでも放てるってことかよっ!?


 回避も間に合わず、彼女掌からは桃色の霧が大量に吹き出る。


 思わず吸ってしまい、クラっとする感覚が身体を支配し、視界はぶらつく。


「毒かよおい……《風巻き》」


 俺は風で霧を吹き飛ばすが吸ってしまったためフラフラする。


 魔法創造で解毒魔法を創って解毒しなきゃまずいか?


 そんなことを考えているとアルトから話かけられる。


「この霧は毒じゃないから安心してね。でも、それより、ユウ最高だよ! いざというためにとっておいた回避手段をもう使わせるなんてね!! それどころか敏感に僕の 精神喰い(マインドイーター)をよけちゃうなんてもう最高だよ……!!」


 完全に戦闘狂のゲス顔だ。なぜかいつもより可愛いく見える。

 ってそんなことはどうでもいい。


 彼女は完全にモードに入った。もう軽々しいフェイントは効かないだろう

 そんなことを考えていても何故か彼女に惹かれる。急にどうしたんだ俺。


 それも嘘かもしれないので魔法創造スペルクリエイトにより解毒魔法を創りたいのだが、集中できない。オマケに普通の魔法も使えない。


 アルトは首を振ってその表情を戻した。

 現在の状況を確認すると、彼女が何らかの魔法を使い、それにより俺はくらくらして魔法が使えない。恐らく桃色の煙を吸ったためだろう。


 刀を構えながら、逆の腕をこちらに向けて魔法を維持しているようなので、俺がくらくらしてても攻撃すれば、迎撃はできない筈なのでチャンス……いや、無理か。あの状況で防御してくるアルトだ。きっと回避できるだろう。


 しかし彼女は直ぐには動きそうにない。腕をこちらに向けたままだ。


 この頃合を見計らい、俺は刀を変えることにする。折れたら不味いからな。


 刀を魔法陣に投げ入れ別の刀を取り出す。蜘蛛の戦いの時に使ったあの残骸だ。伝説級の武器に失礼かもしれないが。


 と考えていてもやはり彼女が気になる。動作、行動、仕草すべてが。


 この感覚は一度あったな。


 ……ああ勘違いなんてこりごりだ。もう二度と思い出したくない。


 俺は俺なのだ。それ以上でもそれ以下でもない。


 俺の座右の銘は

「この世の出来事はすべて気の所為で済む」だよ。冷静になれ。俺。


 すると頭がスッキリして頭の中のもやもやとしたものがすっと抜けていくような気がした。


 アルトを見る。再び驚いた表情。

 可愛いけど別に何とも思わない。


 元の俺に戻ったようだ。魔力の流れをしっかりと感じる。


 魔法も使えるな。


「っ?! 自分一人の力で僕の魅了魔法を解くなんてっ……この状態異常は効かないのかな。はぁ……」


 どうやら先程は魅了魔法のようだ。

 そんな魔法もあるのかよ。異世界すごいな。


 アルトは考えた仕草の後、真面目な表情をし俺に向かってこういった。


「ユウ。僕の本気。受け止めてね?」



 俺は人差し指をくいくいと曲げ挑発する。


「ふふふ……ユウは耐えられるかなー? 」


 アルトが笑った後、何かを呟いたが聞こえなかった。


 呟いた途端アルトから俺でも失神しそうな魔力、が辺りを包み



 俺は暗闇へと飲み込まれた。


高覧感謝です♪

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