第37話 闘技大会2日目 決勝 5.9戦? 嫌われ者vs伝説の種族
俺は転移を使い、アルトの所へ行く準備をする。
俺が突然魔法を使用し、しかも足元から勢いよく光が放たれたとなれば、当然ミリュとリンクスは驚く。
「何、その魔法?」
「ユウ、君は召喚士だよね?」
「ちょっと世界から嫌われてくるよ」
そういって俺はアルトの元へと急ぐ。
なかなか格好いいこといったと同時に恥ずかしくなってきたのは俺だけの秘密だ。
転移による光が収まり、俺は冷戦の場へと赴く。
やはり見ているのと実際にその場所にいるのでは圧力が違った。
その竜人の圧力と、アルトの威圧感により、エメラは怯えて腰を抜かしていた。
「ユウ?!」
「転移石まで使って、そこまで我に会いたかったか? 人間よ」
アルトは殺気を解いて驚き、厳つい竜人は突然の来訪に興味が湧いたようだ。アルトの敵である彼に興味を抱かれたってなんにも嬉しくないんだがな。
「黙れよ蜥蜴もどき。お前みたいな雑魚に用はねぇよ」
実際はこの冷戦を止めに来たのだが、それを言うよりあえてコイツの事を無視するのが良いと感じたので、俺は「お前に用無し」ということを伝える。
口調と言動からこいつはプライドが異様に高いということが理解出来たので、彼の種族である 竜人 を馬鹿にすればさらに効果はてきめんだろう。
『おい!?召喚士?!』
テュエルが実況のマイクを使い俺を止めようとするが無駄だ。もう振り返ることはできない。
「なにっ?……お前は聖騎士のような超人的なクラスかと思えば……召喚士か!! クッハハハッ!! とんだ馬鹿もいたもんだハッ!!」
蜥蜴もどきが喋ってるが無視だ。とりあえずアルトに部屋に戻れということを伝えなくては。こんなところで喧嘩が始まってしまったなら彼女が人間の天敵である魔族である、ということがバレてしまうかもしれないからな。
召喚士ってだけで笑われるのはなんとも悲しいが、それはそれである。
「アルト。お前は人気がある、そして人望がある。それを今落とすことはないだろ? 相手は伝説の種族だ。手を出せばお前が悪い立場に行くことになる。俺と同じ待遇はお前には味わわせたくないんだよ」
「でも……っ……あいつら竜人はっ……おとーさんとおかーさんを……!」
その内容は初耳であったので非常気になったが、ここで俺が抑えなくては被害が出る。我慢だ。
なんとか反論できないかと脳内をフル回転させれば、俺はとっておきの言葉を思いつき、彼女の耳元でこそこそと話す。
(あいつらは伝説の種族とか大層な二つ名がある。伝説の存在なんて会えないのが普通なんだ。生存確認なんて出来ないんだから、こちらが後で誰にも知られないように隠れてあいつを殺ればいい。真実はどうであれ、真相に気づかれなきゃ問題ない)
「それって?――ユウっ!最悪だよもうっ!」
そんなことを言っているが、アルトは頬を薄いピンクに染めて笑顔になっていた。俺が言っていることは立派な暗殺で、叱られるべきことなのだが、魔族だから受け入れられるのだろうか? いや、これ族への偏見だよな。口に出してはいけない。
(とりあえずだ。お前の人気者なんだ。嫌われ者の汚名を着なくていいだろう?)
「ユウ、ありがとう。んじゃ部屋でね!」
そういってアルトは会場から出て行く。
すると
『『『BOOOOOOOO!!』』
これまでにないくらいの凄まじいブーイングが上がる。会場が割れんばかりの声が響き渡り、この場所にいる全員の怒りを買ったようだ。アルトがこうならなかったので、俺の作戦は成功とも言える。
会場の怒りの内容といったら、竜人に対する無礼、最弱者が人気者のアルトと話したこと、そして竜人に向けて悪態を吐き、しかも無視し続けたこと。
これぐらいか?
俺は飛んでくるゴミ等を回避しながら竜人に向けて一言。とモーション
「お前に俺は倒せない」
ニッと歯を見せながら最弱のクラスにも勝てないということを伝えれば、相手からは笑顔が一瞬で消え、殺意ともいえる重い重圧感が一気にのしかかる。
「死ね」
ライガーが青筋を浮かべながら、いつの間にか手に纏っている炎を俺に向け、魔法を発動するため魔法名を言う。
「竜滅f「そこまでだぁぁぁぁっ!!!!」……チッ……」
叫び声と共に空から降ってきたのは女の子だ。
親方!空から! の状態とはこのような状態の事をいうのだろう。異世界でから一度は見るとは思っていたが、ここまで早い段階で見れるとは思わなかった。
「邪魔者は、消す。《竜滅炎波》」
高密度の炎の竜が空に向けて放たれる。近くにいるだけで火傷しそうだ。
炎の竜は無粋な空からの来訪者襲いかっていく。そこに自費等はなかった。
が。
「うおおおおりゃぁぁっ!!」
先程まで頭をしたにしつつも落下していたのだが、くるりと姿勢を変え、まるでライダーキックを空中から差し込むが如く、可愛い声を上げて彼女はさらに加速していき、炎の竜へと衝突する。
消失したのは――炎竜であった。彼女の空中からの一撃が、炎を貫いて竜人と俺の間に向けて突っ込んでくる。
「なっ?!」
ライガーは驚いたが、ピクリとも動きはしない。無論俺もだが。
そして、地上近くになるとキックの体制解いて、少女は地面にふわりと着地する。
降ってきた女の子は、遊撃士のような格好のテュエルであった。先ほど実況していたのだが、事態が事態なので乱入してしたらしい。
もう口調といい、色んな意味で姫とは呼べなさそうだ。
「さて召喚士、そして竜人様。そこまでにしてもらおう。これ以上やるなら私が相手になるぞ」
関係性を知られないため俺のことを召喚士と呼んでいるようにしていた。
それとこれは意外な助け舟である。
戦うと思っていたが、戦わなくてすみそうだ。
「くっ、こいつとは戦えるのだからそれまで待ってやろう。ただし条件がある」
ここで条件をだすか。この蜥蜴。どっちが上だか分かってるのか?
「条件とは俺が、この召喚士と戦うときに精神ダメージに変換する魔法を解いてもらおう。この条件が呑めない場合、竜人族全員でここを支配させてもらおう。丁度住む場所にも飽きたからな。」
「なっ……竜人族全員だと!?」
ここで族を使うようだ。
そういってライガーは得意気な顔をする。
後ろ盾が恐ろしいため、いくら姫とえど俺の味方は無理なような気がしてきた。
ここで観客達は――
「姫様っ!! この条件に悪条件はないですよ!!」
「召喚士が死んだってだれも悲しみませんし!!」
「こんな礼儀も知らないやつの穢らわしい命で竜人様と私達が救われるんですよ!!」
と、やたら俺がディスられてるが条件を呑むことを進める。
姫もいろいろ考えた末、渋々承諾した。
「ふ、流石は 闘魔姫 か?なかなか話が分かるな」
「止めてくれ」
なんかかっこいい二つ名がでたな。まぁいいや。
激しいブーイングに押され、俺は早足で戻ることにした。
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「大丈夫?! なにかされた?!」
戻った途端アルトに声をかけられた。まるでお母さんだな……いったら一言ふたこと言われそうだが。
「いや、なにもされてない。アルトも我慢してくれてありがとな」
「ん!ん!」
アルト少しだけ屈んで頭を出す。撫でて欲しいのか?
次は子供みたいだが、やはり可愛い。
俺の撫でよりリンクスが撫でた方がいいと思うが、まぁいいか。
そう思い、彼女を優しく撫でる。
その様子を見ていたふたりは――
「……あの二人できてるの?」
「……できてるんじゃないか?」
ニヤニヤ、ボソボソとしながら二人で話していた。
アルトに失礼だろ。
そんなことをしながら部屋にいると再びテュエルの元気な声が響く。
「さぁぁっ!気を取直して次の試合に行きましょう!!」
相変わらずの盛り上がりだ。そしてこの実況している姫様は、ただ姫様ではないらしい。闘魔姫なんて恰好いい二つ名前……いや厨二か?
そんなことを考えながら七試合目まで時間は流れる。
次の試合はリンクスだ。同じ部屋に居るんだから応援ぐらいしてやろう。
「適当にやってこい。リンクス」
「リン! ファイト!」
「私の分までおねがいね?リンクス!」
「ありがとう。絶対勝ってくる。」
相手のクラスは不明だが、男で槍をつかっている。武器的には不利だが何とかやってくれるだろう。
「リンクス、あんたなら出来るよね」
ミリュがそんなことを呟いていた。
なにか隠し玉があるらしい。期待してもいいようだな。
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『さぁぁぁって!次の試合は魔法学校の狂犬リンクス!vsこちらもサイバルの狂犬といわれるダリヤンだ!!』
ドックファイトか? まったく犬要素がどちらにも見当たらないけどな。
「頑張れっー!リンクスっー!」
ミリュが全力で応援している。アルトも盛り上がっているようだ。
俺は先程まで蜥蜴もどきの対処法を考案していたが後ででいいか。どんな試合になるのか少し気になるし、見ていようか。
「よろしくお願いします」
リンクスは丁寧に挨拶する。
すると相手も丁寧に挨拶を返す。
なんか似た者同士だな
『試合! 開始っ!!』
テュエルが手を振り下ろし、試合が開始する。
最初に動いたのはもちろん双剣で、武器だけなら身軽なリンクスだ。
相手もそれと同時に動く。
双剣は一撃が軽い、槍と比べてリーチが圧倒的に短いが、手数は多い。なので双剣は懐に入り込むのが重要だ。
がこの相手は簡単には懐には入れさせない。
「はああっ!」
ダリヤンはスピードに追いつけないと考えリンクスが通るであろう場所へ先に予想して、槍を穿つ。
先に一手を取られたリンクスは串刺しなりそうになったが、逸らしたり回避したりで何とかその状況は超えられた。
リンクスは一旦離れそしてすぐ近づき、武芸を使う。
「《旋風脚》!」
ただのキックではなく、武芸によって加速されたキックだ。
武芸とは魔力を使わないようなもので、スキルのように常時発動もしないものだ。
魔力を消費しない魔法のようなものと考えていいだろう。ただし超常現象を起こすのではなく、通常のキックから威力増加、加速などのメリットを乗せるものが武芸である。
最近、アルトの技で 月閃 というものがあったが、あれも武芸の一種である。俺からみたら剣圧を飛ばす時点で超常現象だが。
視線を戻すとリンクスの蹴りは見事槍越しに当たったようだ。
食らったと見せかけて、すぐに槍の三連撃。リンクスもそれは読んでいたようで、三回とも逸らしてすぐさまカウンターの横凪の一撃を浴びせる。
お互いに戦闘慣れしている感じだな。
「ぐぅぅっ!!」
衝撃にダリアンがうめき声をあげ、観客は歓声を上げる。リンクスもいい流れだ。
動かないダリアンを見て隙を見つけたのか、突進する。
その様子をみてダリアンはニヤリと笑い、双剣を同時に突き刺そうとする攻撃を槍で逸らし、そのまま逸らされたことにより隙だらけとなってしまったリンクスの身体へ攻撃を叩き込む。この時は精神ダメージ変換なので死にはしないが、普通だったら貫通だろう。
「うぁっ!?」
会場の床を勢い良く地面を滑るが、場外になることは無かった。
が、彼も槍の一撃によるダメージが大きく立ち上がれない。
「くそっ……」
くらくらする頭に鞭をうち、再び状況を確認する。
目の前にダリアンがいた。槍を両手で構え突き刺すようだ。
「動けええっ!!!」
無理やり体を動かして何とか槍を回避する。
がバランスが崩れ再びしゃがみこむ。
「くそっ、だが次は外さん!」
リンクスが動けないと思っているのだろう。次はあちらが突進してくる。
「もう使うしかない。ここで失敗したら俺の負けだ。集中しろ」
フラフラと立あがり、集中力、魔力を高める。
相手はこのまま突進してくる。先程とは真逆の流れだ。
「相手は突進してくるから……練習通りにっ!!」
しっかりと目を開き、相手の動きを、気配を視る。
「ここだぁぁぁぁぁっ!!」
相手が勝利を確信したそのとき、少しだけスピード、力が緩む。このタイミングで、リンクスは片方の短剣で槍を払い、もう片方の短剣で突き刺す。双剣だからできるカウンター技である。
「うおおおおおおおっっっ!!」
バリバリと精神ダメージに変換された効果音が聞こえる。確実にダメージは与えている証拠でもある。
ダリアンは槍を離し、自らの体を刺している短剣を抜こうとした途端意識を失った。
ダリアンは倒れ、リンクスもしゃがみこむ。
『うおおおおおおおおおっ!!』
観客が歓声を上げた。勝負は決まったようだ。
『勝者ぁっっ!リンクス=バトラーぁぁっ!』
リンクスはこちらの部屋に向かい震える腕を必死で振る。
「やったぁぁぁぁ!!リンクスぅぅぅぅ!!」
「やったぁぁぁ!」
アルトとミリュが互いに手を取り合い、ジャンプしあっている。
頑張った彼に俺は賞賛を送るため手を振り返した。
するとリンクスは心からの笑顔を見せる。
まだ試合は決勝とはいえ一回戦。
昼休憩が終われば、俺の番である。そしてその相手は、風魔法使いの、彼女である。
ご高覧感謝です♪




