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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第三章 人間の創造者と魔族の魔王様
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第27話 創る日

「つぅ……もう少し手加減してくれると嬉しかったんだが」


 頬を抑えながら俺はご立腹なアルトに話し掛ける。首が吹っ飛ぶかと思ったよ。


 結局飛ばされている途中で転移魔法を使用し、なんとかこの場所に帰ってきた。今度は行き先をしっかりと指定して、今いる場所は宿のエントランスである。



「ふんっ! 知らない!」


 アルトはぷいっと不機嫌なようすで食堂へと進んでいった。吹っ飛ばして心配したのか、彼女自身も外に出ていたので案外優しい魔王様であった。


 俺といえば先程朝食にサンドイッチを食べきったので大丈夫だが、ちょっと寂しい気も気がする。


「シーナ、だっけか? おかげで今日はギルドに行けなさそうだな……あ、そういえば俺自身のレベルも上がったし、魔法とかスキルを創れる限り創っておこうか」


 そういって嬉々として部屋に戻る。


「はぁぁ……まず最初に何を創ろうか」

 

 大きく息を吐き、誰も居なくなった部屋で気分を切り替えて、まず考えついたのは最近創り出した刀についてだ。刀を武具として使えれば魔法が封じられても戦えるだろう。


「決まれば話は早い《能力創造スキルクリエイト》!」


 ステータスを確認してみれば、スキルを付与できる空きは枠は二つほどあった。十レベル上げてスキルの空き枠が一つ増えることから、蜘蛛たちとの戦闘で俺は二十レベルも上がったらしい。数百ほど倒したので妥当ともいえる。


 今回能力創造で創ったのは《刀術》。刀の扱いが上手くなりたいので積極的に創る気分になった。


 また、魔法創造スペルクリエイトは外にて使用しなくてはいけない。召喚士狩りの一件で分かったが、衝撃波の嵐が巻き起こるのだ。部屋の中で魔法を引き起こしたならば大変なことになってしまう。


 刀の素振りついでにも外に出ることにする。シーナは怖いが、魔法を創るワクワクの方が大きいのだ。


「転移っ!」


 光に包まれ昨日蜘蛛と戦闘した北の森へと向かった。

 今日は何もないといいが。


 ――何も無いな。目を開くと、ただただ、木々が生い茂っている森だった。動物の気配も多数察知できた。取り敢えず転移魔法おかげで移動は非常に楽になった。


「さっそくはじめようか。《魔法創造スペルクリエイト》!」


 今回創る魔法は火魔法と、水魔法だ。

 理由は生活に役に立ちそうな感じがするから、である。

 それにしても水魔法は特に欲しいよな。水分無ければ生物は死滅するのだ。分析する魔法よりよほど重要だ。


「っとと、相変わらず魔力の渦が巻起こるな。どうにかならないものか……」


 戦闘、非戦闘問わずに巻き起こる旋風は正直うざいったらありはしない。

 渦が収まれば力がつく感覚。しっかり出来たようだ。

 もう一回だな。


 再び創り、終える。


「……ふぅ、やっぱり連続は体に負担がかかるな。それに元の世界でこんなこと行うたら大変な事に――ん?」


 気配探知を起動させなくても、幾分かは生物発する音などからの物体の位置が分かるようになってきた。

 しかし真後ろから雰囲気は感じたことのないものである。振り向くと――


「ギャァッ!」


 これはこれは……ゴブリンであった。異世界において、スライム並に有名な生物、ゴブリン。

 緑色の肌にぼろきれの布を着ていおり、武器として棍棒もっている。

 討伐すればお金が貰える魔物だ。


「おおっゴブリンだ」


「ギャっ!」


 棍棒を振りかぶり襲いかかってくる。なんか色々感動だ。例えるならペットの犬が投げたボールを持ってきたかのような、ジーンとくるものがある。


 当然振り下ろされた棍棒をやすやすと受けるほど甘い人間ではない。狙う位置は低かったので、棍棒ごと蹴り飛とばし、魔法陣から刀を取り出す。


「さぁ、刀術スキルと俺のお金の糧となってくれ」


 ~~~~~~


 ゴブリンは勿論血を流すし、小型だが人間の形だ。

 初めて刀で切ったときは肉を切っている感覚で、ついつい気持ち悪くなってしまったが、調子に乗ってゴブリンの巣に突撃したらもうその気持ち悪さは忘れてしまった。


 理由は余りにもゴブリンが多すぎるうえ、こちらは一人なのに集中砲火をしてくるためである。巣攻めした俺も悪いんだが、相手は三百匹以上はいたな。


「うっ、匂いが凄いな」


 全滅させた巣の中で、ついつい気持ち悪くなる。これが死臭か。


「暴れすぎた。取り敢えずこれを埋めよう」


 討伐を証明する部位、ゴブリンの指は二つ目の素材回収用のゴチャゴチャした魔法陣に入れてある。魔法陣は二つ作ってあるので、きったないものと、綺麗なものとで分けられるようにしてある。

 ゴブリンの指は討伐した証になるので、これをギルドへ提出すれば、その討伐数に見合った報酬が貰える。


 もう数百匹と狩り尽くし、その狩った分だけ数百個とゴブリンの指を切り取ってきのだ。これだけ見ればもう見たくないという気持ちは分かるだろうか。


 それと、素材格納庫用として二つ目の魔法陣を創ろうとしたのは、ついさっきの出来事である。


 ゴブリンの指が刀を取り出した拍子にピョコっと出てくるのは間違いなく恐ろしいので、二つ目の召喚魔方陣を作ることに至った。

 その魔方陣を作る際に消費した魔力は5000程度で、前回消費した魔力より3000も多い。

 魔法陣を増やす事に消費する魔力も多くなるのだろう。


 指を切り取ったゴブリンのボスらしき死骸を物質創造マテリアルクリエイトで土を創り、埋める。

 匂いが身体にこびりついたかもしれない。お風呂に直接転移するか。


 ゴブリンの巣の中では炎の制御、刀術、水魔法等を駆使して戦ったので、魔法レベルと俺自身のレベルは一つづつ、刀術スキルのレベルは二つほど上がった。低レベル狩りに近かったので、充分すぎる結果である。


 既に日は傾いて、見た感じでは午後四時時頃だ。


「さて……帰ろう」


 ~~~~~~


 直接男湯に転移した。ここで女湯に転移する可能性もあるので「男湯」としっかり指定しておいた。


 誰もいない事をいいことに、湯船に浸かっていながら魔法を使っているとある事に気がつく。


「なるほど、水魔法はやはり水が近くにあると使用する魔力がかなり減るな。それと雷系魔法は俺には感電しないと」


 水源が近くに存在する場合、その水源を媒体として水属性魔法を使用すると、使用魔力が四分の一程にまで減る。

 また、天雷を水中で発動しても俺にはピリピリとした感覚は感じられなかったため、自分の放った魔法では感電しない事が分かった。


「ちょっとのぼせちゃったか……?」


 フラフラしながら着替え、お風呂場を後にする。


 ご飯はまだ先だろう。取り敢えず部屋に戻ろう。

 部屋に戻る最中におばさんに話し掛ける。


「ご飯が出来たら起こしてください」


「ふふ、わかりました」


 おばさんは快く許可してくれた。


 フラフラしながら部屋に入っていく。誰もいない。


「さて、闘技大会……賞金でるよな?」


 こんなことを呟きながら俺は寝る。

 次は起こしてくれるので、しっかりと起きるつもりだ。


 そういえばアルトとは今日怒られたっきりで会わなかったな。どうしたのだろうか。


 ~~~~~~


「んじゃ……そういうことだからよろしくねっ!」


「こ、困りますよ?! 第一、貴方が居なかったらこの国はっ!」

「大丈夫!あの子ならやってくれるよー私が二番目に信用してるからね」


 僕はぽわぽわとした、ユウに出会ってから何度も味わっている甘くて不思議な気分に陥っていると、必死で魔族の若人も反論してきた。


「アルト様。急に帰ってきたと思ったらそういう事を仰られても困ります。まず、人間界で何があったんですか? 人間なんかと一緒にいるなんて……民が知れば貴方の信用は地に落ちますよ!?」


 名も知らない魔族はここ最近、僕を魔王の座から落とそうと必死な魔族だ。まぁ譲る気ないけどね。


「ユウは人間 なんか じゃゃないよ。あの子は差別をしないし、なにより僕を一人として見てくれてるんだ。皆とは違って……ね?」


 嫌味を含めて話した。すると当てはまる点が多いためか、反論する声は聞こえない。しかし、ある老輩の魔族だけは、唯一僕に口を挟んできた。


「しかし、人間ですぞ。我々に害しか与えない者共です。アルト様もよくご存知なはずですが?」



 その事を言われると、ふっと昔のことを思い出す。血潮で赤黒く染まった記憶で、人間から勇者と讃えられた人物が、小さな僕に手を伸ばすその光景を。


 不意に震える肩を抑える。そういえば、この右肩にはあの勇者に触られ、汚された。父を殺したあの手で。

 視界が狭まる。ふわふわした雰囲気は一気に絶対零度のように冷たく僕を冷やす。触れないで、触らないで……っ!!


「ですのでアルト様、人間とは……」

「黙って、黙ってよ!!」


 思わず魔力で吹き飛ばしてしまう。

 老輩の魔族は障壁を貼って耐えていたようだけど、幹部以外の兵は吹っ飛ばされたみたい。


 またやっちゃった。


「……アルト様、魔力を抑えてください」


 彼は落ち着けるように僕に促すけど、逆にいらいらするだけだ。


「……しばらくたったらまた帰ってくる。何かあったら魔法便で伝えてね」


 転移魔法を使う。お母さんがくれた、世界で本当に少ない人しか使えない魔法。


「っ!! アルト様!! アルト様ぁぁ!!」


 僕は無視して魔法を使う。あれ……なんで泣いてるのかな……僕……


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 コンコンと響く。


「ご飯ができましたよ」


 よし。無事に起きれたようだ。ここまでは完璧。


「ああ。分かった。今行く」


 足音が遠のいていく。よし、夢ではないな。

 体を起こし、ベットから出ようとしたその時、ソファの近くで光の粒子が集まっている光景が目に映る。


「……ん?」


 光の中からでてきたのはアルトだ。


「えぐっ……ぐすっ……」


 泣いているようだ。ちょっと待ってくれ。なんかやったか俺。


「……大丈夫か?」


 取り敢えず声を掛ける。


「ゆう……ぅ!ゆうううっ……っ!」

「どうした?」


 アルトは俺の元へ飛び込んでくる。突然の事なので全く対応出来なかった。


「ゆう……ゆうぅ……」


 ギリギリで受け止めたが、彼女は俺の名前を何度も呼ぶだけで、質問には答えなかった。誘拐の時のように相当まいっているようだ。


 取り敢えず、撫でてあげることが有効ということが分かっているので、優しく撫でる。かなりドキドキしているが鼓動が聞こえないことを祈ろう。


「ゆぅ……ゆう……」


 取り敢えず泣き止むまで俺は撫でて上げることにした。


 彼女になにがあったんだ……?


ご高覧感謝です♪

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