第219話 休暇三日目 深夜の告白
夕たちが部屋を出て行って数分後、静寂に包まれたその部屋に、メイド服を身に纏う灰色の髪の女性と、フリフリのドレスを身につけたラクナがどこか緊張気味な表情で揃って入る。
相も変わらず裸エプロンの格好で、お茶をちびちび飲むハウルは、待っていたと言わんばかりの表情で彼らを見る。
「座って頂戴」
彼らは返事をせず、少し硬い動きのまま、夕たちが座っていた同じ席に着き、これから話されるであろう内容を待つ。
しかし、灰色の髪の女性はどこかぼーっと窓を眺めており、心ここに在らずといったようすであった。
「さてと、貴方たちはナミカゼ ユウという人物についてどれだけ情報を集めてくれたのかしら?」
「は、はいっお父さん、これが――」
ラクナから手渡されたファイルをパラパラとめくり、ハウルは無表情のまま読み終える。
その際に彼の顔はピクリとも動かず、重々しい雰囲気が空間をじりじりと伝う。
「……闘技大会でも不正を行った形跡は無し。竜人の里でも覚醒した魔族を追い詰めた。万能薬を二回使用しても体に悪影響は出ていない。それに……召喚士であるのに、馬鹿げた戦闘力、そして、全属性魔術師と同様に多属性の魔法が使える。これに書いてあることは間違いないのね?」
「はい、自分――じゃなくて、私は彼が竜人様の里にいる間、ずっと観察してたので、間違いないと思います」
「ここ最近は見失ったとは聞いていたけど……さっきの話を聞く限り筋は通ってるわね。……わざわざありがとラクナちゃん。友情を壊すようなことしてごめんなさいね」
「それは多分、大丈夫です。私のこんな姿を見ても……お父さんが七魔衆の一人と分かっても……それでも、慌てないナミカゼ君なら、大丈夫です」
「信じてるのね。はぁ――あたしが何だか悪役みたいだわ」
ハウルは軽いため息を吐くと、手に持っていたファイルをいつの間にか隣にいた執事に渡し、再びカップに入った液体を豪快に飲み干す。
「でもね、召喚士としても、黒髪なんて外見からしても、彼はアタシたちと同じく、異端の存在よ。だから、国に関わらないと言えども、いずれ敵に回った時のことを考えなきゃダメ。何度も言うけど、人は完全に信用しちゃだめよ」
そう言い放つと視線は横へと移り、女性特有の柔らかな膨らみを持つ、メイド服の姿の人物へと目を向ける。
「さて、次は貴方の報告を聞きたいのだけど」
ハウルに話かけられてもなお、彼女は変わらずぼーっと窓の向こうの夜景を見つめているが、数秒した後、やっと話しかけられていることに気がつく。
「なんですか? お父様」
「……貴方の、報告を、聞きたいのだけど?」
「――そうだったのですね。 ナミカゼ ユウ君に関して、ですか。ええ。彼は……カッコ良かったですよ」
「あら?」
ラクナが動揺したようすで隣を見れば、両手で顔を抑え、少々赤身を帯びた頬が確認できた。
照れたようすで話す彼女は、夕がハウルの部屋に来る途中でレイピアを構えて襲いかかってきたその人物である。当然その事を知らないラクナは心配そうな表情を浮かべる。
「えっと、お父さん、メアにもナミカゼ君のことを調べさせてたんですか?」
「保険のつもりだったのだけど……このようすを見るに、貴方も黒髪ちゃんを気に入っちゃったらしいわね」
「力、魔力、そして私に触れても魅了されないほど強い精神力……! 恐らく、アレが私の求めた王子様なのですよ!」
「……メアちゃん? 貴方は黒髪ちゃんに惚れてるのかしら?」
「いいえ、違いますお父様。私は彼の圧倒的な力に対して尊敬しているだけですよ。正直なところ、彼の性格はよく分かりませんが、顔がちょっと地味なので私的には好ましくありませんね」
席を立ち、紺色の瞳を輝かせながら熱弁するメイド服姿のメアを見て、ラクナはまた始まったと言いたげな表情で嘆息する。
「ねぇメア、最近君と対等に戦える人が居なかったからって、ナミカゼ君に当たるのはどうかと思うよ?」
「お兄ちゃんは勉強ばっかりで強さを求めなさすぎなの! それに……あの人には私なんて手も足も出なかった。凄く……強かった」
「あ、メアちゃん、廊下に結界を貼ったのも、黒髪ちゃんがぼーっとしてたのは貴方のせいかしら? てっきりアルトちゃんが貼ったのかと思ってたのだけども」
「黒髪の王子様を呼び出すのに最適でしたので、勝手に使いました、申し訳ございません……しかし、それのおかげで多くのことが分かりました」
「多くのこと?」
「そうですね。あの空間にいなければ、恐らくお父様でも、お兄ちゃんでも把握出来なかったと思います」
「……へぇ、あたしでも見きれないことかしら?」
「ええ。闇属性魔法使いの繋がり、というのでしょうか。そのようなものを感じました。瞳の色で判断できた部分もあったのですが――」
胸を張って喜んだようすをあらわにしながらも、愉悦感に満たされたような満足気な雰囲気を出す彼女は、口を大きく歪めつつ、指を振りながらこう言った。
「彼は、体と精神の魔族化が進んでいますよ。凄まじい力を手に入れて、その代償として彼は何を捨てるつもりでしょう……ああ、気になりますね……!」
~~~~~~
俺はアルトとレムと別れてからというもの、部屋に戻って、おんぶで運んできたミカヅキをベットに寝かせた。
寝る前だというのに多数のことをやり遂げ、結局疲れてしまった俺は、考えた挙句ソファーの上で寝ることにした。
シングルベッドなのが悪いんだ。無理やり入ろうとしても、彼の両翼が面積をとるのでなかなか厳しい一面もある。
「っていうけど、ソファーも一級品か。ラクナの父さんのハウルさんも、世界では随分高い位に居るらしいし、当然っていえば、当然なのか――」
「ふぃー、ただいまなのじゃー」
「いっぱい楽しめました。有難うございます、ユウ」
「ふぉ、ほ……」
ガチャりと扉を開ける音の鳴った方を向けば、満足気な表情を見せて聖霊であるソラとファラ、そして披露しきった執事姿で大量の荷物を持たされていたプニプニが帰ってきた。かなり夜更けまで遊んでいたようである。
彼のようすを見るに、荷物持ちとして大活躍したことがよく分かる。
「ユウ様の苦労がよく分かりましたぞ……」
「その歳で女の子とデート出来たんだろ? 良かったじゃんか」
「ふぉほう……なんというポジティブ思考……」
「さて、土産じゃ。有難く受け取るが良い」
「ビシッと我とファラの二人で選びましたよ」
そう言い放つと、二人はプニプニが両手に持つ紙袋を勢いよく漁る。どうやら彼女らはお土産としてなにか買ってきてくれたらしい。
ワクワクしながら待っていると――
「これじゃ!」
「……」
「わーいと喜んでいいのですよ?」
彼女らが袋から取り出したのはよく分からないワッペン。恐らく布製の、子供の洋服に付いているようなそれである。模様は黄色のバッテンが大きく書かれている。この点においてもやはり子供っぽい。
……で? なんですかこれ。
「なにやら骨董市で勧められての!」
「無料だというので、お土産にバッチリかと!」
「お土産には嬉しいけどな……」
「きっとお似合いですぞ!」
彼女たちが俺のためを思ってくれた気持ちは嬉しいが、流石に反応に困る。なにこれ、どうしろってんだ。
「あー……うん。ありがとな」
「あんまり嬉しく無さそうじゃなー」
「気持ちは嬉しいが、どうしようかとな」
「是非制服の胸元にでも」
「変な目で見られるぞ……だけど、ありがとな」
「「はーい」」
とりあえず対処法は後で考えるとして、これはアイテムボックスの魔法陣に入れておこう。
時計をチラリと見れば、おおよそ夜の十二時。元高校生の俺でもお休みタイムだ。
「俺はもう寝るぞ……」
「うぬ、我らもそう言おうと思っていたのじゃ」
「では、先に失礼します。おやすみなさい、ユウ」
「お休みなのじゃ」
「今日は大変ありがとうございました、ユウ様」
既にクローゼットから取り出してあった掛け布団を敷きながらそういうと、彼女たちもそれぞれ挨拶をしながら消えていった。プニプニは手に持った荷物を持ったままで。
「荷物持ちながら戻ることも出来るのな……」
呟きながらソファーに横たわり、掛け布団を頭まで被ってふと考える。彼女ら 聖霊 とは一体何なのだろうかと。
魔物を討伐した際には恐れのような感情が彼女らから伝わってきたため、曖昧にしてしまったが、疑問点がいくら何でも多過ぎる。
そもそも、この世界での契約という存在は、アルトとテュエルが竜人の里に行く前に交わしたような、口約束では済まない重々しいものであると思っている。
「ソラ、ファラ、起きてるか? お前らは――俺と何に関して契約したんだ?」
(……寝るところじゃ。それを……今聞くかの)
(しかし、明後日と言ってしまいましたからね。きっちりと約束は守らなくては)
(そうじゃ、な。これだけ優しい主殿なのじゃ。件の儀式の事を聞いても……恐らくはな)
(では、顕界させて下さい、ユウ)
寝る前の軽い会話にしようと思っていたのだが、なにやら覚悟を決めたような淡々とした声が帰ってきたので、自然と目が覚めてしまう。
「いいぞ。出てきてくれ」
ソファーから起き上がり、掌から黄金の魔法陣を展開した。ピカピカ光っているので、思わず目が眩む。
「さて、まずは何から話そうかの」
「プニプニはそっちが言いたいことを全部知ってるのか?」
「ええ。知っていますよ。だからこそ、我らをきらきらした尊敬の眼差しで見るのです」
あの爺さんスライムは、実のところ全てを知っていたようで、あえて何も話さなかったらしい。空気が読めるのか読めないのかはっきりして欲しいところだが。
「そっか。なら、お前らについて説明してくれないか?」
「承った。まずは我ら聖霊についてじゃ。――まず、我ら聖霊という存在は、召喚士の使い魔として最高位の存在とされているのじゃよ」
「マスターも知っているかもしれませんが、上から我ら聖霊、精霊、幻獣、魔物、という順で格付けがガッチリ決まっております。当然上の方が力や魔力はずば抜けて高いです」
「まぁこの程度は基本的に本に書いてあるような情報じゃな」
どこかで聞いたことがあるような気もするが、そういうことらしい。使い魔ということならば、偵察がお手の物なのも納得がいく。マシニカルのギルド本部を攻める時には彼女たちの情報操作には特に助けられた。
「次に聖霊とはなんぞや、との事ですが、我らは世界で十二人しか居ない存在であることはご存知ですね。他に我らの特権として、マスターの同意がなくても自身の魔力を使い、この世に限界できる“自己顕界”、そして“主想創造”という能力が一度だけ使えることがあります」
「我らは双子座じゃから二回使えたが、一度目は想具に、二度目はこの学園の服に使ってしまったのじゃよ。それと、いつも顕界に許可を求める理由は、主の同意を得れば魔力を消費しなくて済むからなのじゃ」
どうやら俺の許可なく、勝手に抜け出すことが出来る理由の一つに、自己顕界といった能力があるようだ。
主想創造についてだが、使った当初当時彼女らに伝えたとおり、怒る気は全くない。
「双子座、十二人の聖霊――あ、ってことは、もしかして聖霊は星座に関係しているのか?」
「我らの情報にちょっぴり齟齬があるかもしれませんが、恐らくはそのような関係と考えていいと思います」
「聖霊は全部で十二人、我ら双子座の他に、山羊座、水瓶座、魚座、牡羊座、牡牛座」
「蟹座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、そして、ご存知の獅子座がそれぞれ特別な魔法を持ち、ドドンと存在しています」
全て元の世界でどこか聞いたことがあるようなイントネーションだった。それなら、やはり彼女たちは星座に関係したという説は正しいのだろう。
元の世界とこの世界の共通点が星座とは、なんともロマン溢れるものだ。
「さて、ここからがマスターの知りたがっていた部分です。ファラ、ビシッとお願いします」
「うぬ。――我ら聖霊はな、あの茶髪の生徒会長が言ったように、願いを叶えることができる存在じゃ。……戦いに勝ち、天に供物として我らを捧げることによって、その権利を得られる」
「供、物?」
「そうです。少し言い方は悪いのですが、我らは元よりマスターにガンガン使い潰される運命にあります」
「そもそも、我ら聖霊に人としての権利なんて無いのじゃよ。我らが生を受け、顕界出来ている間に聖霊の試練に打ち勝てる者を探し出す。生き延びるためにはそれだけで精一杯なのじゃ。契約できなかった者は戦いに参加するどころの話では無いのじゃからな」
「だから、我らは本当に運が良かったんです。こんなに類を見ないほど、凄く優しいマスターに出会えたのですから」
どうやらこの話題は俺が想像していたよりも遥かに重い話であったようだ。
聖霊という存在は、主人のいない顕界状態において、常に体の構成要素である魔力を使うため、一秒でも早く召喚士との契約を終えて生命の維持を行わなくてはならない。
ファラの言った通り、己の魔力が尽きてしまうということは、聖霊にとっての死を意味する。なので、性格の良い、容姿の良い、魔力の質が良い、などの優れた召喚士を選んでいる時間なんて当然ない。どんな召喚士であれ、契約できなければ死んでしまうのだから。
関連して、ソラが言った“使い潰される存在”というのは、その“弱点”を理解している召喚士が聖霊に対する言動を表している。
先ほど考えた通り、聖霊は召喚士無しでは生きていけないため、どんな無茶でも、どんな危険な事でも、従わなければならない。契約を破棄させられてしまえば、それ即ち死を意味するためだ。
だから、どんな命令でも、従うしかない。
「聖霊って、なんなんだよ……理不尽過過ぎるにも程があるっての……」
願いを叶える戦に負けようが勝とうが、その前に召喚士と契約出来たかどうかですら、最終的な結末に変わりはない。
「……どんな状況に置かれたって、我らは主殿とこの世界が好きじゃ。一分でも、一秒でも長く存在していたい」
「我も、ずっと、ずーっと、そうして居たいんですよ。――しかし、我らは……聖霊です。マスターの願いを叶えるために、全力を尽くす。尽くさなくてはいけないのです。折角頂いた命ですが、これは我らが生まれた使命。契約してくれたマスターのために、願いを叶えさせるという、プレゼントを送りたいのです」
なんと返事をすればいいのかまるで分からなかった。
彼女たちは夢で語りかける頃からずっと、俺に献身するつもりで話しかけ、契約を行ったのだろう。
「我らは聖なる霊。人間としての模範であり、理想像として女神様に作られたのじゃよ。以上でこれが聖霊という存在についてじゃな。どうじゃ? お主は我らに関して甘すぎた。これからはもう道具のように使って構わぬ」
「ええ。それをしっかり覚悟してこの話をしましたので。次は願いを叶える戦いについて話を――」
「――もういいよ。お前らについてはよく分かった」
「……そうですか」
これまでで見たことがないほど感情が読み取れない無表情で、ソラは返事をし、ファラは黙り込んでじっと俺を見る。
その目にはもはや今までの生き生きとした輝きはなかった。
「で……なんだよ、その目は」
この言葉で、ピクンと、二人が震えた。無表情の盾に亀裂が走り、悲しげな陰影が目に宿る。僅かに伝わってきた感情は深く暗い、悲しみ。
――が、そんなこと俺が知ったことか。
「なぁ、お前ら聖霊は何でもするんだろ?」
「ええ。マスターがそう言うなら」
「当然じゃ。主殿が最優先なのじゃからな」
「なら――」
亀裂は大きくなり、彼女らの肩は軽く震えて、二人の下瞼には溢れんばかりの雫が溜まっているのが見えた。
彼女らは聖霊で、何でもいうことを聞いてくれる都合のいい道具。戦いに勝てば彼女たちを生贄に願いが叶う。
「ソラ、ファラ。……今日から聖霊じゃなくて人間としての扱うからな。そっちも順応してくれよ」
「「……えっ」」
「なに、そう難しい事じゃない。俺が二人にお願いするのは、今日話したことも、聖霊の使命なんてモノも、さっぱり忘れて、いつも通り生活して、いつも通り明るく振る舞って欲しい。ただこれだけだよ」
――ソラとファラを道具として使うなんてのは言語道断だ。俺は彼女らと今の関係のままがいいんだ。かなり、我儘だよな。
「あ、主殿? それってどう事なのじゃ!? ちゃんと今の話を理解していたのかの!?」
「 マスターは道具として我らを使い潰してよい立場なのですよ!?」
「なんで俺がそんな事しなきゃならないんだっての。明日から話しかけるのが気まずくなるだろうなぁって、配慮が分からないか?」
「「っ――!?」」
気がつけば彼女らは互いに息を飲み、盾は完全に壊れてしまっていた。表情は双子のようにピッタリで、食いしばったような顔つきで、涙が出そうになるのを辛うじて堪えているかのようなようすである。
「なに泣きそうになってんだよ。別に聖霊がどうとかこうとかなんて俺には関係ないんだっての。分かるだろ? 異世界人なんだ。普通の価値観とは違うんだ。何なら抱きしめてやろうか――って――」
ほんとに、冗談のつもりだった。彼女らなら顔を真っ赤にして拒否するかと思っていた。
――が、実際は予想とは真逆のことが起こった。両手を広げて抱きしめてやろう、というポージングを取っていたのだが、彼女らは嗚咽しながらゆっくりと俺の片手をそれぞれ掴み、倒れかかってきたのだ。
ソファに座っていたから良かったものの、立っている状態で下手をしたら、圧力に負けて折れていたかもしれない。
「あるじっ……あるじどのは……ばかじゃよ……どうしようもなくばかで、ばかで、ばかあるじなのじゃぁぁぁ……!」
「ますたーはあほですっ、すかぽんたんですっ、とんちんかんですっ……! われら、せいれいを、ひととみとめるなんて……ぐのこっちょうでずっ」
「泣きながら貶すんじゃねぇよ……返答に困っちまうっての。あー、ほら、静かにしないとミカヅキが起きるからさ」
美少女二人に泣きながら抱きつかれて、嬉しいような、どうしようかと考えてしまうような、微妙な気分である。この状況でも俺はドキドキしてしまうあたり、結局異性経験のレベルが低いという結論に落ち着いてしまうのだ。
「なんだか、なぁ」
「ばかぁ……っばかなのじゃぁっ……!!」
「あほですっ……まずだーはあほなのでずっ……!!」
次は胴体にしがみつかれたので、恐らく心臓の鼓動の早さもバレてしまっているだろう。
少しだけ自由が効くようになった両手で彼女らの背中を赤子をあやす様に叩く。
願いを叶える戦いがあるってことは、俺もいつか生徒会長のウィンと戦わなければいけない日が来るのだろう。
(イベントがないのも寂しいが、面倒事も嫌なんだよなぁ)
そんなことを考えながら、彼女たちをあやしていると寝てしまったのか、声は聞こえなくなり、抵抗感もなくなった。
「お休み、ソラ、ファラ」
七魔衆、円卓の騎士、そして聖霊関連や、アルトとソプラノの現状。
最近になってやっと見えてきた人間界の実情に、いくらか巻き込まれているような気もするが、この世界だって不変じゃないのだ。
――なにせ、人間界で一分経つごとに、魔界では六十秒が経過してるのだから。
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