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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第十章 バケーション
214/300

第214話 休暇三日目 初めてのでーと

 周りを見渡す。目の前を通り過ぎるほとんどの人々は頭にケモミミを取り付けたり、悪魔の尻尾を付けたりと仮装をしており、とても楽しそうな表情を浮かべていた。

 対して俺は複雑な気分のままラクナの豪邸の門の外に立たされて人を待っている。服装はいまだに魔法学園の制服である。元の世界の学校の制服は余程のことがない限り、着ることはないだろう。


 気分がごちゃごちゃな理由の一つに、初めて“デートという名目”で女の子と出かけるというビッグイベントがあるからだ。初めてサイバルでアルトと一緒に買い出しに出かけたのは友達感覚に近かったので、あれはノーカウントである。

 これからすることは根本から意識が違うデートなのだから。


「とはいっても……レムはまだ十二歳だもんなぁ。果たして今からのお出かけイベントをデートといっていいのかどうか……」


 彼女の年齢を元の世界で例えると小学校の最高学年程度である。まだ『パパと結婚するー!』がギリギリ許される年齢であろう。獣人と人間の違いはあるものの、子供の反抗期もこの辺で見られるはず。


 ということはだ。彼女は精神的にまだ成熟しておらず、一時の感情に流されていることが考えられる。俺を想ってくれる気持ちはありがたいが、それはまだ友愛と恋愛の区別が付いていないためだろう。

 だからレムの考えるデートとは、俺が考えているような男女関係のデートではなく、親交を深めるための手段であり、男女の関係が存在しえない“でーと”なのだ。決して、他意を持ってはいけない純情なものである。

 それを分かっていて、アルトは俺とレムがデートすることを許したのだろうか。


「その話が起こった理由もな……」


 ふと思い出す。レムが顔を真っ赤にしながら必死で俺を説得しようとしている光景が脳裏に浮かび上がってきた。


 ~~~~~~


『わ、ワタシと……でーと、してくださいッ!!』

『おっけい、デートな……ん? デート?』


 頭の中が真っ白なまま気軽に受けてしまったが、なんだかとんでもない単語だった気がする。

 アルト、ニヤニヤしているお前からの説明を求めたい。


『ふふっ、頑張ったね!』

『あるとぉ……っ』


 真っ白なケモミミまで薄いピンクに染めながらレムは早足でアルトの背中に逃げてしまった。変幻で本当に耳が隠れているのか怪しくなるほど、恥ずかしくなっている事は一目で分かった。


『で、そこでニヤついてるアルトさん。説明してくれるよな?』

『ふふっ、これはレムが説明することかな?』

『はい……恥ずかしいけど……頑張る、です』


 全ての事情を知ってるであろうアルトは笑顔でレムを俺の前に送り出す。なんだか俺が子供を返した代わりにお金を請求する誘拐犯のような、悪いことをしている気分になってくる。

 相変わらず彼女は頬も耳もピンクに染まっており、視線は横を向けていて口元を隠していた。

 ……このあざとい動きは誰から習ったのだろう。完璧に男性が好む計算がされているように思えた。年下なのにドキッとしてしまうほど、究極に可愛らしい。


『あの、あのっ……しーなが、ゆうとの距離を近くするためにはでーとが必要っていってたですっ! ワタシもでーとがどういうものなのかは分かってるはず……です。でも、それでもワタシはでーとがしたいですっ!』

『デートが距離を近くするってのは間違ってないと思うけどな――』


 ここで俺はレムと一緒に過ごした記憶を探す。初めての出会い、アルトと一緒だった。遠征、アルトと一緒。獣人界、一緒、一緒――


『あ、あれ……?』


 二人きりの時。何分間だあれ。獣人界で話した時のほんの少しじゃないか。


 彼女は奴隷扱いを受けていたということもあり、人間に対して未だに恐怖感が拭えていないし、人との親交に関して奥手であることも分かっていた。しかし、その事が分かっているのに俺から彼女に何かしてあげられただろうか。

 俺とアルトとレムは常に一緒に居たが、レム個人に対してはサービスを全く出来ていなかった気がする。結構長い間一緒にいたのにも関わらず。


『えっと……なん、ですか?』

『よし、デートしよう。今日しよう』

『今日、って……ぇっ、いいんですか!? ワタシは今すぐにでも……したい、ですけど……っ』

『ああ。構わないよ。俺も身支度整えてから行こうか』

『良かったね!』

『わぁっ……! 二人とも、ありがとうございますですっ!』


 ぱぁぁっと効果音が聞こえるような笑顔の眩しさにつられてこちらも笑顔を返し、頭を撫でる。

 しかしよく考えてみれば、先ほど魔族の軍人と人間の嫁さんと話していたこともあるし、レムに対して幾分か冷たかった気もする。

 彼女はまだ十二歳だ。なのに俺は何度彼女に寂しい思いをさせていたのだろう。笑顔で返しているが、凄まじい罪悪感に押しつぶされそうである。


『えっと、集合はらくなの家の門の前で十時にお願い、しますっ!』

『いまは……七時か。了解だ』

『ふふっ、最高のデートにしてあげるからね!』


 恐らくアルトもレムに対して、俺の気持ちに似た何らかの感情を持っていたのだろう。非常に協力的だった。


 わりと早朝だが、起きるのも早かったので、現在が最も目が覚めている時間でもある。


『あ、そうだ。アルトはどうするんだ?』

『ボク? えっと……丁度いい機会だし、さっきの魔族の人たちに話を聞いてこようかなって思ってるんだ。魔界の今も知りたいしね』

『そうか、分かった』


 これに対して深く詮索することは出来なかった。下手をすれば地雷を踏みかねないし、彼女の姉、ソプラノに関わると非常に不安定になってしまうためだ。

 いつか必ず聞かなければいけない時が来るだろうが、いまは――無理だ。


『さってと! レムの初デートなんだからこのために用意したやつを使う時だよ!』

『はいっ、頑張るですっ!』

『じゃ、また後でな』


 手を振りながら見送り、最後にこんな念話が飛んできた。


(次はボクともデート、してね?)

(いまからレムとデートなんだが。――それと、今回の件でアルトは……全部分かってたのか?)


 アルトはレムが考えている“でーと”は恋人同士が行う“デート”でないことが分かっている。

 彼女は俺とアルトが接吻してしまったことも見ていたし、行為に及んでいないとはいえ、朝一緒に寝ているのも見ていた。極めて恥ずかしいのだが。


(さぁ……なんのことかなぁ)

(まぁいいや。そっちも気をつけてな)

(ユウとのデートが終わるまで死ぬわけには――ッ!)

(それ死亡フラグな。まぁなんかあったら連絡してくれ)

(うんっ、わかったよ! ありがと! そっちもね!)

(了解だ。オーバー)

(あ、さっきの返答無いってことはするってことだよね! おーばー!)

(言わせんな。オーバー)


 念話を終え、一息つく。身だしなみに関しては、今着ている魔法学園の制服には清潔石という万能アイテムを使い、綺麗に。俺の体はこの部屋に取り付けられたシャワーを浴びてこちらも綺麗な状態でデートに望むつもりだが……


『ポケットに入れっぱなしのイヤホンみたいに、もうめちゃくちゃ……複雑だ』


 自分のコメントに失笑しながらしみじみと呟く。俺はアルトに告白し、キスまでした。今でも彼女の事を好きであると胸を張って言える。


 今から楽しむのはデートではなく“でーと”である、ということはレムも俺もお互いに分かっているはずなのだがな……。


『浮気じゃないよな? これ』


 アルトの方も容認しているのでこの点は良いが、一人も抱いたことが無い小心者の俺に、彼女がいるのに他の女の子とデートという罪悪感が、以外に重くのしかかる。

 普通にお出かけなら俺も気にせず行けるのだが――やっぱり、真っ正面から言われた言葉って、重いな。お出かけも、今から行うデートもやることはそう変わらないんだけれども、精神的な面で極大な違いがある


『こんなんだから、俺はシャナクに馬鹿にされるんだよな。あいつなら俺を巻き込んで余裕でダブルデートしそうなもんだけども』


 反論は、なかった。返事もなかった。本当にシャナクは俺の中にいるのだろうか。


 まぁ……俺もレムも楽しんでデート出来ればそれでいいよな?


 ~~~~~~


 懐中時計が示した時刻は午前九時五十分。絶対に遅れてはいけないという意識があったので三十分前から待ち続けている。意味の差異はあるとはいえ、デートはデートだ。しかも……初だし。

 レムも俺も絶対にいい思い出にしておきたい。万に一つもないが、彼女も俺に対して本当の恋の意味で想っているならば――


「ははっ、だったらどうすんだろうな。俺は」


 妄想に対して真剣に考えてしまう。このまま頑張ってハーレム王にでも成れればいいが、如何せん俺のいまの性格では確実に不可能である。

 二人とも同じく平等に愛せればいいが、レムもまだ幼い部分からアルトに愛が寄るような気もする。最近のレムへの態度が何よりの証拠だ。


「異世界に来てこんな幸せな悩みを抱えるなんてな。女神サマに感謝を――あ」


 悩みはまた新たな悩みを産む。

 俺がギルド本部で地獄から開放された理由の一つに女神サマの献身があった。俺はシャーリンのおかげで今を生きているのだが、第二の女神がいうに、壮絶な処分を受けているとのこと。


「……そこまでして、俺を助けたかったのか? それとも、何としてもソプラノを倒して欲しかったのか?」


 空を見上げても返答は返ってこない。物質創造マテリアルクリエイトなどの想像魔法クリエイトマジックはなくなったものの、これまで生き延びられたのはほぼ彼女の恩恵のおかげだ。


「周りの人に支えられてんのに俺は――」


 ここで、気配探知のマーカーにこちらに向かってくる動きがある。レムであった。急いで準備したのか、彼女の移動速度は速めであった。


「……こんな暗い顔じゃ折角のデートが台無しだ。いっぱい楽しませられるように頑張らないとな……!」


 両頬を軽く叩いて気合を入れ直し――たつもりだったのだが、途端にドキドキし始めた。


 女の子とデート。初めてのデート。その単語が俺の頭を反芻する。しかし、このデートは、レムの恋心には何ら関係がないのだ。これだけは理解しておくんだ、俺よ。

 ()()彼女はそのデートの意味が理解出来ていない……はずだ。


 相手が年上であれ、年下であれ、経験が無い俺は彼女が近づいてくることに鼓動の早さが高まっていくことを感じていた。


 そして――


「ああ、完全に忘れてた。今はヘイローウィン、だったよな」

「――ごめんなさいです。遅くなりました……っ!」


 駆け足でついに彼女は俺の元まで来る。


 精一杯頑張ったであろう彼女が今着ている()()は、一つの芸術作品であると胸を張って言えるほど、最高に似合っていた。似合い過ぎていた。ビバ狐子、と叫びたいぐらいに。


 ただ、彼女着ているもの。それは――


「――巫女服?」

「は、はいですっ! ゆうもミコ服、知ってるですね」


 白くてフワフワしている尻尾は九つ全て外に出ており、白い耳はわずかに桃色に染まっている。

 そしてなにより、彼女が着ている衣装が俺でも知っている巫女服だったという驚きだ。

 その要因もあってか、体の中の緊張はすべて去っていった。


 サラサラの銀髪に負けない、眩しくて白い白衣に、真っ赤な緋袴。足元には少々歩きづらそうな草履を履いており、背中には九つの狐の尻尾。頭には狐耳。

 完璧に、俺の想像した通りの狐巫女がここにいる。


「どう、ですか? に、似合ってる……ですか?」


 小さな狐巫女となったレムはくるりと一回転したのち、俺の顔を見上げる。そんなことをされれば、俺の感想はただ一つのみ。


「可愛すぎだろ――」

「っぅ――!?」

「っと、本音が。似合ってるよ、レム」

「ぅ、ぅぅっ……本音とか言わないでくださいっ……すっごく、恥ずかしいです……」


 なんとか表情を崩さず伝えられたが、言葉を伝える恥ずかしさに声が震えていたかもしれない。

 アニメで可愛らしく書かれるような狐巫女が顔を真っ赤にしながら俺の目の前に立っている。その感動でもうお腹いっぱいである。


「ゆゆゆ、うも……似合ってるですよ!!」

「ありがとさん。俺はどこぞの制服だけどな。じゃ、今日は楽しもうか」


 笑顔で手を差し伸べる。草履を履いたことはないが、歩きずらそうなのでとりあえず、だ。決して他意はない……はず。


「……はいっ! 宜しくお願いしますですっ!」


 手を繋いで、ついにデートが始まる。

 いや、レムからしたら“でーと”なのだろうが、俺からしたら初デートだ。俺はちゃんと男を魅せられるのだろうか。

 ……がんばろう。目指せいい男。


 ~~~~~~


「じゃ、今日は楽しもうか」

「はいっ! よろしくお願いしますですっ!」


 笑顔でゆうの手がワタシの手に触れる。彼からワタシに触れてくれることは久しぶりな気がした。


(……あったかい)


 いつもと違う格好。いつもと違う感情。いつもと違う雰囲気。でもゆうはいつも通り優しい。

 繋がれた手から、彼の体温と優しい気持ちが伝わってくる。


(やっぱりワタシの手よりも……かたい。でも、こんな気持ちで男の人に触れられたのは初めて、かな)


 まるで本当のカップルのように、手を繋いで祭りの中心へと向かっていく。


 ヘイローウィンは、仮装の祭典。悪魔を追い払う祭り。

 周りがどれだけ奇抜な格好をしていようとも、ここでは気にされることはない。

 人間さんとは姿が違う獣人さんでも、魔族さんでも、変幻の魔法を使わないで気楽に楽しめる唯一のお祭り。だから沢山の人々が来るの。


 緊張しながらそうやって、ゆうに伝えると納得したような表情を作り、頭を撫でてくれた。


「レムは物知りだな。流石は俺よりテストの点数が上だ」

「それはゆうの努力不足、です」

「こりゃ手厳しい。間違ってないだけ何も言い返せないな」


 頭を撫でられて、尻尾が勝手に動く。気持ちいい。嬉しい。もっとして欲しい。


 あるとは、いっつもこうやってゆうを独り占めしてたのかな。ちょっと羨ましいな。


「出店周りしようか。小腹も空いてくる頃だろうしさ」


 なんの目的もなく出店や露店を歩きまわる。沢山のアクセサリーや、知らない食べ物がいっぱいで、ゆうはとっても楽しそうだった。そんな彼を見ることが、嬉しかった。

 ワタシが、彼を嬉しくさせてると思うと、胸がキュンとした。

 ここからだったかもしれない。ゆうを見る目が変わっちゃったのが。


「リンゴ飴かと思ったら全部カボチャ味じゃねぇかこれ……とんだトラップだな」

「ワタシ、初めてこれ食べたですっ!」

「そか。美味いか?」

「はいっ!」

「なら良かった」


 いつも食べるものより、何もかも数倍以上に美味しかった。でも、こんなに美味しい食べ物なのに、こんなに楽しい気分なのに、ワタシはヘイローウィンに夢中になれなかった。


「巫女服だし、こんなの似合うかもな――うん。バッチリだ。可愛いぞ」

「そんなに可愛い可愛い言わないでくださいっ……!!」


 ゆうは綺麗なお花の頭飾りを買ってくれた。ワタシに似合うといって、彼が()()()()()に選んでくれたものだった。すっごく……嬉しかった。また、繋ぐ手に力が入る。

 もっと、強く繋がりを感じて、もっとずっと、一緒に居たい。


「ルミナのゆるキャラ……センスねぇ……」

「かわいいですっ!」

「まじで!?」


 何をしても、何を食べても、ワタシはヘイローウィンの楽しさより、最終的にはゆうに意識が向いてしまう。

 いつもなら、食べることが好きで好きで堪らないのに、いまは彼と一緒にいる時間の方が何倍も、何十倍も嬉しい。


 なんでだろう。


「お昼はどうする?」

「なんでも、嬉しいです!」


 遅めのお昼はゆうが“ヤキソバ”と呼んでいた食べ物だった。本当の名前は違うみたいだけど、彼はヤキソバと呼んでいたから、ワタシもそう呼ぶことにした。

 こんな僅かな共通点でも、一緒っていわれてすっごく、嬉しかった。


 今までと違う。何でだろう。


「じゃ、アルトへのお土産にこれ買ってくか」

「なら……ワタシはこれをユウに買ってあげる、です」

「いいのか? 今回は全部俺が出す約束だろ?」

「お金払ってくれるより、もっと一緒に居てくれた方が嬉しい、ですよ?」

「……そうか。ありがとな。レム」


 頭を撫でられ、名前を呼んでくれるたびに、心の中に嬉しさが溢れる。レムって名前は、ゆうとあるとがつけてくれた名前だ。

 ワタシのためを想ってつけてくれた名前。ワタシがワタシであるための名前。そう考えると、顔が熱くなってきた。


 なんで、だろう。


 気がつけば空は茜色に染まっており、周りをよく見れば、男女が手を組んで歩いているところもいっぱい見られた。


「ゆう、ワタシも……手だけじゃなくて……腕、組んでほしい、です」

「恥ずかしいんだけど……まぁいいか」


 ゆうは少しだけ視線をそらしたけど、結局腕を組んでくれた。当然今までよりも距離近い。彼の匂いが近い。ベッドで体が熱くなっちゃったみたいに、ドキドキがもっと強くなる。


「――あっ、ゆうもドキドキ、してるですか?」

「バレたか。顔には出してないつもりだったんだけどな」

「ふふっ、ワタシも、ゆうと一緒だと、なんだかドキドキする、です」

「そうか」


 彼の返事代わりの笑顔は夕焼けみたいに眩しい。


 ――だけど、ここでポケットから終わりを告げる、最悪の連絡が届いてしまった。


「帰りたくない、です」

「その気持ちも分かるけどな……ほら、ラクナの連絡が来たし、丁度いい時間帯だろ?」

「嫌ですっ! もっとゆうと一緒に――」

「……俺もだが、また明日があるだろ?」


 楽しい時間は一瞬で終わってしまう。夢見心地だったワタシの気持ちは、冷たい夜を運ぶ風に吹かれ、霧散させられてしまった。


「明日じゃ、ダメなんですっ! 明日じゃ……だめなんですよ……」

「レム……」


 あるととの約束。それはゆうを一日貸してくれるけど、明日はあるとに一日貸さなくてはいけないというもの。ゆうはモノじゃないってわかってる。だけど……だけど!!


「ゆう……お願いします」

「そ、そういわれても……」

『わぁぁぁぁッ!! どいてくれぇぇぇ!』


 声が聞こえたのは左から。細い路地裏だった。奥からは物を乱暴に倒すような轟音があり、それは徐々に近づいて――


「レムッ!!」


 気がつけばワタシはゆうの腕の中。

 一緒に乱暴に硬い地面に転がったけどそれほど痛くない。むしろ、彼との距離が最高に近くて……ドキドキが止まらない。


「ゆ、う?」

「どんな道路表記あれば馬車で裏路地走ろうと思うんだよ……」


 馬車を引っ張ってたのは――あれ? 人間、さん?


第18話を修正し、魔封香、失意の棍という魔道具について解説を加えました。申し訳ございません。


ご高覧感謝です♪

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