第21話 初めての依頼任務
俺は現在、依頼の薬草はどのような物かを調べに来ていた。……が、今見ている本は薬草の本ではなく、クラス別の特殊能力についての本だ。
「えっと……召喚士は、四十ページか」
書いてあるのが異世界の言語でも、女神の試練で叩き込まれたため、英語を読むような感覚でスラスラと読める。勉強し直しなんて言われたらもう本を読む気にすらなれないだろう。
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召喚士
精霊や、契約した魔物を駆使して戦うクラス。
召喚する前には契約した対象の住処である器、召喚魔法陣を作らなくてはいけないため、契約以前に大量の魔力を必要とするが、サーヴァントは非常に強大である。
また、魔法陣を作っていても、契約できる精霊や魔物を入れない場合には、擬似アイテムボックスとして使うことも可能である
またアイテムボックスとして使っていた魔法陣にサーヴァントが入る場合、中に入っているアイテムは全て失われる。
どれだけ魔力の優れた者が召喚魔法陣を作ろうともら生涯で三枠が限界だといわれている。
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……たったこれだけか。次ページは召喚の起こし方などが書いてある。
どうやら召喚魔法陣を作っても無駄なことは一つもないようで、召喚獣のような生物を所持していなくても、魔法陣を収納スペースに利用できるらしい。
本を読んで早速実践してみたくなったので、試してみてもいいのだろう。どれだけ魔法陣に物が入るかは分からないが、荷物を持つ手間が省ける利点がある。召喚士にもほかのクラスに負けない事はあるようだ。成長値は他クラスの半分以下らしいんだが。
荷物を持つ必要がないと分かった時から、俺は召喚士で良かったと初めて思った。少しだけテンションが上がる。
「えっと……こんな感じか?《顕現せよ》」
片手で本を抑えながら、もう片方の腕を前に押し出して手を開く。
かなり恥ずかしいポージングだなと考えていると、突然虚空から魔力を吸われる感覚が体全体に感じられる。
まるで持続的に魂を抜き取られるような気分である。少々気持ちが悪い。
数秒間驚くほど大量に魔力を吸われると、うっすらと白い幾何学模様の魔法陣が俺の手のひらの前に現れた。この魔法陣が召喚魔法陣、兼アイテムボックスというものだろう。
吸われた魔力はおおよそ2000ぐらいか?
手に持っていた本を見ると、余談が書いてあり、契約した魔物や精霊が入ると、そのものに対応した色になるらしい。魔物なら青、精霊ならその属性を得意とする色に対応しているとのこと。
少々時間を使ってしまったが、とても有意義な時間だったな。
いつでもどこでも物を取り出せる どこでもポケット が使えることはかなりのアドバンテージだ。何だかんだで異世界特有のアイテム、どこでもアイテムボックスゲットである。
こう考えてみれば、召喚士っていいじゃないか!
世間一般の召喚士は召喚魔法陣を作り出すために、能力値をあげ、レベルを上げなければならないのだが、余りにも嫌われたクラスのため、そこまでのレベルが到達しないのがほとんどであるらしい。タダでさえ能力値伸びず、なおかつ途中まで介護してもらわなければ戦闘すらままならない。これかクラス最弱と呼ばれる由縁――らしい。
感嘆していると、肩を何者かに とんとん と叩かれる。
「ユウ、薬草の本は見つかったの?」
アルトだ。もう依頼をこなしてきたのだろうか。
「よっす。そっちはなんか依頼を終えたのか?」
「いやーまだだよー? だから一緒にいこーかなって……」
って行ってなかったのか。
「そっちの依頼はなんだ?」
「薬草収集だよ?」
「ああ……だから一緒に行こうって言ってたのか」
「えっと……だめ、かな?」
特に断る理由がないな、むしろ助かる。
「是非頼むよ。魔王サマ?」
俺は笑いながらからかう。
「ふふーん 任せなさいっ!」
アルトはドンと胸を叩き、了解の意を示す。仲間がいるならば完遂速度も上がるだろう。
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今俺たちがいる場所は先程いた街、サイバルから少し北にある、大きな森にいる。
俺は北の森……と呼んでいるが、実際は別に呼び方があるらしい。
それとアルトは二人きりの時には変幻の魔法を完全にを解くようにするらしく、完成された美しさがそばにある。我は眼福なり。
「え、えっと、なにかな? 僕の顔になにかついてる?」
「あ、悪いな。見惚れてた」
「ふぇっ!?」
「三割方冗談だ」
「な、なーんだぁ……ってもう七割は?」
「察しろ」
変身を解いていても羽は見えないが、一応見えないだけで存在はするとのこと。聞いてみると魔族の翼や尻尾は耐久力が著しく低いため、弱点として隠しているらしい。
「もうばかっ……」
彼女は赤い顔をしてぼそっと何かを呟いたようだが、俺は《観察眼》の運用に集中していたので返事はしなかった。
「しかし、エンカウントもしないとは」
この森は緑色の体表をした小鬼の敵、通称ゴブリンと呼ばれる魔物や、森の狼ことフォレストウルフなどのEランクモンスターの縄張りなのだが、一度たりとも遭遇しなかった。だれかが狩り尽くしたのだろうか。
「……っとあれは依頼品の一種かな?」
アルトが指さす方向に向けて《観察眼》を使うと、依頼品の薬草であると分かった。どうやらその通りのようだ。
俺たちはそんなこんなでスキルを使って素早く回収していき、配布された袋に押し込んでいった。
互いに、累計の薬草の数が九十を超えようとした時に、俺の《気配探知》に警戒対象として引っかかる魔物がいた。
「……?」
「ん、どうしたの?」
俺の《気配探知》に警告と共に引っかかるのは50以上の魔物か人間だけ。そしてこの反応からするとレベルは100を超えているだろう。
意識を集中すると今までに感じた中で一番強い気配だった。おそらく相手は魔物。しかし、寝ているのか全く動かない。
「こっちには行かない方がよさそうだ」
「おっとと……確かにそうみたいだね」
アルトも気配を感じ取ったのか同意を示す。
触らぬ神に祟なし。俺たちは遠回りして薬草を採取していった。
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ない。残り一個がない。後一つなんだがその一つが何処にもない。物質創造で薬草を作り出せばいいのだが、まだ彼女にその魔法を見せるつもりはない。
「あそこにわんさか薬草が生えてるんだよな」
一応あるっていえばあるんだが、100レベル超の魔物の下に……沢山ある。魔物がまるで薬草を守っているかのような雰囲気である。
ま
「見つからないねー………」
既にアルトはもう百個すべて袋に押し込めていて、あとは受付に渡すだけである。
帰るように促したが、一緒に探してくれるらしい。
「まさか宝探しでよくあるこの事態に遭遇するとは」
「もう突っ込んじゃう?ついでに倒しちゃう?」
「日もくれてきたし、なんとか草だけでも回収したいな」
「んじゃちゃっちゃといこっ!」
そう話した結果、俺たちは強い気配の主の元へ早足で向かうと、その強そうな魔物に近づくたび、空気が張り詰めていくような気がした。
まるで魔界を思い出すかのような雰囲気が俺の警戒度をを鋭くしていく。
「特に何もいないな。なら今のうち――」
警戒しながらも、念願の薬草を手にとろうとしたその途中で――
「……急にか」
「?!」
一瞬で、数十匹という蜘蛛型の魔物達が突然俺の逃げ道を完全に塞ぐように囲みはじめた。まるでドーナツの穴の中にいる気分だ。
比喩ではなく、本当に100レベル超の魔物に俺たちは囲まれてしまった。
「まんまと……罠に引っかかったわけか……」
「ユウ……どういうこと?!」
「あの気配を出してたのはただの囮で……こいつらが本物だ」
木の上から落ちてきたのは、一体一体が俺より大きい蜘蛛であった。
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名称 アーミースパイダー レベル101 虫族
HP 7500/7500 MP 30/30
弱点属性 火、風
備考
名前の通り、軍隊の様な統率性を持つ。リーダーは数十体から数百体までの大規模な蜘蛛軍隊を従えるが、一歩も動けない。
名称 アーミースパイダーリーダー レベル120 虫族
HP 6000/10000 MP 50/60
弱点属性 火、風
備考
HPが半分以下になると脱皮をはじめる。
脱皮をされると敏捷性と攻撃力があがり、防御力が下がる。
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