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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第九章 裏の世界と表の世界
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結成

 時刻はお昼過ぎ。

 未だに日は高く登っているが、この場所は樹海となっており、あまり日差しが入らない。

 また、彼女との集合場所は光が差し込みにくい、なおかつ山の中であるということもあり、寒さはなかなか厳しいものであった。


「シーナを信じてきたわけだが……あいつギルド本部に所属してるとか言ってなかったっけ?」

「大丈夫だよ! ボクがユウを守るからね!」

「ワタシも守る、です!」

「……頑張るよ俺も」


 どうしても頼りにされなくて悲しいところだが、いずれはカッコイイところを見せたいところだ。


 改めて周りを見渡しても、気配探知を使用してみても、シーナの姿は現れない。

 ギルド本部のこっ酷さは相当なものであるため、もしかしたら彼女も利用されているのではないだろうか。


(まぁ、その可能性は有り得るじゃろうな。それと突然悪いんじゃが、そろそろ出してくれんかの?)

(またか)

(聖霊は気まぐれなんです。それと、この付近にいる精霊達にもささっと挨拶ぐらいはしたいところです)


 こいつらは空気を読めるのか読めないのか微妙にわからない。

 彼女らの目的はさておき、偵察という名目で外に出しておくのも悪くないかもしれない。


「出てこい」


 魔法陣と二人の姿をイメージしながら右手を前に出すと、金色の魔法陣が投影される。

 虚空に作られた陣から元気よく飛び出すのは黒髪のサイドテールを靡かせる二人の伝説の聖霊。


「じゃーん、何だか久しぶりの登場です」

「なはは!シャバの空気は旨いのぉ! おっ!アルト、レム! 久しいな!」

「あれ? 突然召喚してどうしたの? 敵が近くにいるとか?」

「久しぶり、です」


 突然召喚させたため、彼女達をビックリさせてしまった。

 アルトは敵を警戒して辺りを見回し、レムは緊張しているような声を上げた。

 少しぐらい言っておけばよかったか。


「いや、こいつらには偵察をお願いしようと思ってな」

「ぬっふっふ、我らに出来ぬ偵察なぞあるか? いや、ない!」

「ここには精霊達に用事がありましたし、タイミングはバッチリです」

「そういえば、ゆうは精霊さんたちに案内された……でした」


 遠征の目的とは違ったが、空中に浮かぶ塔に行く際に、案内してもらったのがここに滞在する精霊たちだ。精霊と精霊、話し言葉ではなかなか判別がつきにくい。


 ちびっこい精霊達は塔から追い出された、と言っていたような気もするため、彼女らの精霊達に行う用事は少々時間がかかりそうだ。何をするのかは至って不明だが。


「では、偵察ついでにちょっと行ってくるのじゃ!」

「何かあったらビュンっと飛んで伝えますので」

「う、うん。行ってらっしゃい」


 そういって二人は喜々とした表情で森の奥へと全力疾走していった。

 アルトは展開のスピードについていけないのか、ひきつった表情で見送っていた。レムは声をかける時間もなく、彼女らは消えていったため、ちょっと寂しそうな顔をしていた。


 それにしてもあいつら自由すぎるだろ……聖霊という枠組みでは無かったら、鳥のように自由気ままに飛んで行きそうだ。


「あれ? プニプニは?」

「召喚はしてないな」

「何でしない……ですか?」

「特に理由はないが……召喚する理由も特にないしな」

(ふぉほ!? 某も出してくれると!?)


 何故だか驚いているプニプニは置いといて、レムは先程にも増して寂しそうな顔をしている。

 彼女は竜人の里でもプニプニを抱いて持ち歩いていたため、人形のような立場の相手が欲しいようだ。


「ユウ、出してもらっていいかな? ボク、昔は適当にあしらってたけどまだちゃんと話してないし」

「アルトがそういうなら召喚するか」


 特に反対意見は無いため、召喚することを決めた。

 なぜこんなことを聞くのかというと、あのスライムを初めて見た時には全裸のオッサンだったからだ。女の子達には特に全裸は目に毒なので、一応覚悟はして欲しかったのだ。


(プニプニ、召喚するから全裸は止めろよ)

(ふぉほ!! もちろんでございます!)


 喜びの声で先ほどと同じように魔法陣を顕現させると、青い魔法陣が出現した。

 やはり、聖霊との区別は色的な意味でもハッキリしているらしい。


「プニー!」


 シャボン液のような七色の姿で魔法陣から出現するスライム。彼の今の形状は饅頭の形をしている。こいつ絶対子供受けを狙ったな。


「ホントに色彩豊か……です」

「ねぇ、君。突然だけどなんか特技ない?」

「プニプニ!!」


 アルトがまるで威圧するように、そしてどこか確かめるように質問をすると、カラフルなスライムは快い鳴き声で答えた。


 何をするのかと思えば、体の粘液を伸ばして大きめの石を吸収し、その後蛍光灯のように明るい光を発する。

 まるで、飲み込んだら美味しすぎて光るようすを表現したかのようだ。漫画の影響だろうか。


「プー!」


 鳴き声ととともに一際強く発光すると、火山が噴石を放出するかのように先ほど吸収した石を二つ空中に吐き出す。

 その後スライムはどこか面積が小さくなった気がするが、デロデロに溶けていて、原型が無くなっていた。例えるなら地面に落ちた溶けたアイスである。

 石を二つ放出した……ってことは?


「うん、やっぱりね」

「えっと、どういうこと……ですか?」

「少しだけ物質創造マテリアルクリエイトには似てるんだが……」

(ふぉほ……老体には少々堪ますな)


 アルトはうんうんと頷きながら腕を組む。彼女の予想通りだったようだ。何を考えているのかは知らないが、博学過ぎやしないか……?


「スライムは分裂が出来ることは知ってるよね? 長生きしたスライムはその分裂の応用が出来るようになって、この複製コピーっていう技能になるんだ」

「熟練の技……ですか?」

「プニー……」


 コピーなんてかなりチートな技能じゃないか? 物質創造マテリアルクリエイトと同じぐらい……いや、もっと酷いかもしれない。素材を知らなくても創れるのだから。


「でも、このようすだと連発は無理そうだね」

「……溶けてます」


 視線をドロドロになってしまったスライムに移すと、彼のようすはまるで体全体で息をするかのように体を上下させていた。

 面積が小さくなったのは明らかであり、体力的に辛そうだ。


「ユウ、戻してあげたら? 流石にこの状態で話を聞くのは可哀想になってきたよ」

「レムもそれでいいか?」

「たしかに可哀想なので戻してあげてあげてください……です」

(ふぉほ……優しいお二方です)


 テレパシーのように聞こえてきた声もなかなか辛そうであった。なにもそこまで全力を出さなくても良かったとは思うが、それも彼なりの誠意だったのだろうな。

 それと、物質創造マテリアルクリエイトに近い事ができるようになった事は有難い。なんとも汎用性が高そうだ。


 彼を魔法陣に戻すとタイミングを図ったかのように念話が届いてくる。恐らくシーナからだ。


(ご無事ですか?!)

(無事だよー!)

(しーなも大丈夫ですか? ねんわが届かなかった……です )

(良かった……呼び出したのにも関わらず、連絡が遅れてしまい申し訳ありません。今から向かいますので)


 レムの言ったとおり、こちらに着いてから数回程度彼女に連絡を取ろうとしたのだが、どれも一向に応答してくれなかったのだ。

 そのため、ギルドの手が彼女にも回って何らかの指示を受けているんじゃないか、とついつい疑ってしまう。


「っと、お待たせしました」

「しーな!」

「早いな」

「繰り返しになりますが遅れて申し訳ないです」


 相変わらず無表情な彼女を真正面から見据えるのは久しぶりだ。背丈はレムよりは高いもの、彼女の背丈が伸びたとは思えなかった。


「ねぇシーナ、なんで遅かったの?」

「私にもギルドからの詮索があり、対応していたらこの時間です。知り合いと思われていたので、なかなか振り切れず……」


 その質問は問われるであろうと予想していたのか、返事は早かった。

 確かに彼女の当時の状況で逃げてしまったなら、関与がある無いにも関わらず逮捕だろう。


 こうなってくると冒険家ギルド本部は本当に俺達を社会から抹殺する気であると確信が持てる。

 たった三人を社会から消すのはどうってことないのか。恐ろしい。


「まぁ、そっちも無事でよかったよ」

「とりあえず、順を追って説明します。最初に、貴方達はギルド本部からの招待の文通を受取りましたか?」

「……」


 手紙のその後を知っている二人から半目で睨みつけられる。受け取ったには受け取ったんだけど、な……。

 その二人の反応から察したのか、シーナも無表情になり、冷たい口調で声をかけてきた。


「貴方、何をしたんですか?」

「……捨てたよ」

「ゆうは燃やした、です」

「……はぁ。ギルドの誘いが来てる時点で貴方は監視されているんですよ?」


 冷たい口調から、呆れたような表情に変わり、頭を抑える。

 気配探知には反応が無かったし、まさかいるとは思わないだろう。


「貴方達がドワーフの里に向かったことは、監視員が報告に行っているあいだであったから行き先はバレていないはずですが……」

「でもボク達はどっちにしろ招待には応えなかったと思うよ。めんどくさいし、ギルド本部なんて危ないところにはいかないもん」

「ワタシも、怖い人はいや……です」

「貴方達、ギルドを見くびりすぎていませんか?」


 彼女は同じ表情のまま俺達を見る。


 これまでの会話からドワーフ達も、ドリュードも、そしてシーナでさえ畏怖しているギルドは相当恐ろしいものであることが嫌でもわかる。

 しかしながら、どうにも実感がわかないのだ。百聞は一見にしかずっていうしな。


「うーん、なんか……ね? 皆さ、見えもしない相手に怯えてるんじゃないかな?」

「見えない相手……ですか?」

「うん。ギルドが怖いっていうけどさ、実際何がそんな怖いのかがちょっと良くわかんない。確かにドリュードは人質が取られてるって理由があって従ってるけど、シーナはなんかあるの? 」

「……私はそこまで強くないんです。上には上がいるし、ギルド本部には私が数十人いても勝てないような相手もいます。目的を達成する前に命を失うような真似はしたくないんです」

「なるほどな」


 俯きつつ彼女は下唇を噛みながら悔しそうなようすを見せる。

 どうしても勝てない相手がギルド側に付いているため、彼女も従うしかないという事だろう。

 わかり易く捉えれば小学生のイジメ問題に近い。


 あのギルドにおいて、実力ヒエラルキーが下である者は、上の者には逆らえない。

 馬鹿みたいに突撃して喧嘩両成敗、となればいいのだが、噂のギルドだ。ヒエラルキーが上のものに必ず有利になってしまうだろう。

 その挙句この隠蔽力だ。殺人事件があっても世には出さない力は働くはずだ。

 なおかつ、ドワーフ達によれば『世間体は良い』らしい。ギルドの中には味方なんてあってないようなものだ。


 十の強者を使って百の弱者をコントロールする。完全なる絶対王政だが、ここで一つ疑問が湧く。


「ここまで奴隷のように使われるが、その全員で反抗を起こす気にならないのか? ここまで強引なギルドへの勧誘があるんだ。俺みたいに無理やり入らされたっていう人もいるはずだろ?」

「たしかに、です。皆で協力して頑張れば、強いひとは倒せるはず……ですよね?」

「協力する人がいれば、ですね。そのような発想を思いつく人々は幾人もいます。ですが、一度たりとも行動にまで踏み切れたことはありません。何故だと思いますか?」

「弱い人のグループの中にも強い人のグループ、しかもその上の方に通じてる人がいるから、だね」

「正解です。ついでに、報酬目当てでギルドの仲間を売る人も多々存在しますね。よって、ギルド内部でそのような仲間を作ることはほぼ不可能となります」

「っ……ひどい……」


 レムは息を飲み、アルトは困ったような表情をする。

 なるほど、上も腐っているが下も腐食されていたということか。

 ギルドのネットワークの外から強者をぶつければいいが、実力がある者は全てギルドに吸収されている。

 こうなったら第三勢力である魔族、もしくは獣人に協力を願うぐらいしか対処法はないだろう。


「ギルドに冠してはざっとこんなものです。次に、学園のリンクス=バトラー、ミリュ=バルゾディアが誘拐された件です」

「っ、誘拐って本当……ですか?!」

「ええ、本当です。ナミカゼと、その仲間に会ったならまずこれを見せろとの指令を受けました。見ますか?」


 そう言ってシーナが取り出したのは、キーホルダーの懐中電灯のような魔道具。見るということで、プロジェクターのようなものだろうか?


「……映像投射機、ね。他には機能はなさそうだ。見せてくれ」

「了解しました」


 観察眼サーチアイを使って、こちらの情報があちらに伝わらないことを確認した後、彼女は周りと比べ一際幹の大きい木に向かい魔道具から光を投射する。

 その魔道具は予想通りプロジェクターの役割を担っていたものであったが――


『お前らっ! ここはギルドなんだろ!? こんなことして本部が黙ってると思うか!?』

『残念ながら、ここがギルドの本部だ。お前らは、いまをもってか社会から抹殺されたんだぞ?』

『まぁ、分かんねぇだろうがな!はははっ!!』

『ふざけんじゃねぇ!!さっさとこっから解放しやがれよ!!』


 映し出されたのは暗く廃棄された研究所のような雰囲気を持った場所。

 平均的な男性の背丈より大きく古い機材が沢山あるボロボロの空間の中で、粗末な松明に照らされた先に、リンクスとミリュは両手を手錠で縛られていた。


「どこのテロリストだよこれは……」

「リンクスさん!? ミリュさん!?」

「っ……!?」

『黙れよ糞ガキ』

『ぐはっ!?』

『リンクスっ!?』

『お嬢ちゃんは、口を割ってくれるよな……?』

『嫌ぁぁぁ――!?』


 映像には動けないリンクスに、熟練の冒険家の鋭い蹴りが鳩尾にめり込み、ミリュにはスタンガンのような魔道具を当てられ、痛みと痺れに震える二人が生々しく映し出されていた。


『ユウ ナミカゼ、アルト、レムパーティのみなさーん! あんたらがさっさと来ないと、大切なお友達が死んじゃうよぉ?』

『げほっげほっ……はぁっ……だめだっ……』

『きちゃ……だめっ……』

『早く来ないと男は死んじゃうよぉ?まぁ、女は生きるとはいえ、かわいそうな姿で一生を終えることになるだろうけどねぇ?』

『どちらにせよ俺らを敵に回したってのは変わらないわけだ』

『と、言うわけでだ。さっさとギルド本部がある機械の街、マシニカルに来ないとどうなるかって話だな。まぁ、これを見ようが見てまいが俺達には何ら関係もないんだがな』

『詳しくはギルド本部にて話しましょう? 来なきゃ、ね?』


 映像の中の連中は笑いながらフェードアウトしていき、ぷっつりと映像は途切れて魔道具から出ていた光も細くなっていき、消えてしまった。


「これがギルドです。納得していただけまし――っ!?」

「上等だよギルド組合。ここまでやるなら俺も好き勝手潰させてもらうとしようか……! 」

「へぇ、人間の癖してボクの知り合いに手を出すとはいい度胸じゃん……!」

「……許せません」


 俺達が放出する怒りの気力と魔力で木とトレントの魔物がざわめき出すが、そんなことは知ったことではない。

 これからの行動の指針は決まった。ギルド本部を潰す。ただこれだけだ。


「落ち着いてください皆さん! 正面から行ったって勝てる相手じゃありません!」

「ああ、そりゃ正面からなら勝てないだろうな」


 人殺しはしない、なんて甘い次元の世界では無いことがやっと身を持ってわかった。この世界は、実力が無ければ生きていけない弱肉強食の世界。

 そして、力を示さなければ、戦闘の抑止力となる強さも認められないのだ。弱いものは食糧と見られる。


 もちろんのことそれは当然ではあるが、俺はそれを回避してきた。目立ちたくないという甘い理由で。


 だが、今回のような舐められた行動を取られるなら俺は――


「落ち着いてくださいユウナミ。これはギルドの罠ですよ」

「なら、シーナはなんでこれを見せてくれたのかな? ボク達がこれを見て平常でいられると思った?」

「……現在把握を素早く知るためにはこれが一番手っ取り早い方法であったんです! ですから――」

「まぁどうであれ、おかげで腹は決まった。落ち着いて考えられているのかどうかは分からないが、準備を入念にして万全な状態で、ギルドに行くぞ?」

「っ!? 危険です! もっとほかに方法が!」

「でも、他にどうやって助ければいい、ですか?」


 レムの問いにシーナは口ごもる。

 恐らく、その作戦会議のために俺達を呼び出した事もあるだろう。

 しかし、彼女のプランは大いに崩れ、今に至る。


 俺達はこう見えて負けず嫌いなのだ。


「俺がどれだけ弱かろうが、逃げ足だけには自信があるんでな。リンクスとミリュを奪い去って逃げ帰ってやる。もちろん、ギルドのセキュリティの甘さをバカにしつつ、な」

「ボクはユウが行かなくても行く。この魔王の彼氏の数少ない友達を誘拐されたんだ。これで助けなかったら、魔族の信義に反するよ」

「え、それって俺の友達がすくないってこと――」

「ワタシは、二人を守って、リンクスさんとミリュさんもまもる……です!」

「……相手はギルドですよ? 世界中の精鋭が集まっています。いくら魔王がいるとはいえ勝てないでしょう。それでも正面から戦うんですか?」


 シーナの問に、俺は笑顔で否定する。

 こちらの世界から見たら俺は異世界人だ。

 だが、そのお陰でこの世界の人物が思い浮かばないような作戦が組み立てられる。


「正面から行ったって数で押されるだけだ。だから俺は周りから攻めていく。まずは、あいつらが持っている情報の正誤を混乱させる。これで多少の時間稼ぎは出来るはずだ」


 そうして心の中で聖霊たちの名前を呼ぶと、待っていました! と言わんばかりに高い樹木から二人同時に飛び降りてくる。

 もちろん着地時にはポーズを決めて。


「ソラ、ファラ。ギルド本部がある街、マシニカルって知ってるか?」

「ふっ、当然なのじゃ。ここの首都じゃぞ?」

「我らの期待がビンビン伝わってきます。いつになくやる気ですね」

「ああ。それと変幻は使えるな?」

「「当然!!」」


 目を輝かせてソラとファラが髪色と目の色を変え、茶色のトレンチコートを纏う。まさに探偵といった装いだ。

 この服を纏いつつ、彼女らが知らない者と話すと、その話し相手は彼女らに関する記憶が曖昧になるらしい。

 なので竜人との会話が自然に出来ていたのだ。


「マシニカルの国民――できればギルドに所属している奴らがいいな。そいつらに伝える嘘の情報を、自然に、流してくれ。内容は追って知らせる」

「おお! なんとも楽しそうなお願いじゃな!」

「ぜひ承りましょう! 」

「着いたら連絡をくれよ。情報は念話で送る」

「了解なのじゃ!」

「了解しました!」


 そう言って、ソラとファラはジャンプして視界から消えた。

 彼女らはガセ情報を流すスパイとして動いてもらう。


 作戦その一、シーナとの会話出たヒエラルキーの下の部分にいる報告員を利用して、情報を錯乱させる。これでリンクス達の時間稼ぎにはなるはずだ。


「ユウがやる気になったね! いいねっ! 凄くいいよ!」

「はりきってる……です!」

「とりあえず、俺達はドワーフの里で装備を整えさせてもらおう。――っとそうだな。シーナも来るか?」

「……えっと、その……本当にやる気ですか? 相手はギルド本部――」

「やるぞ? まぁ怖いなら参加しなくてもいい。シーナも身の安全を確保してくれ。ただ、俺達の情報は流さないでくれよ?」


 ここはあえて挑発するように応答する。

 すると、シーナは大きく目を見開いた後、フッと柔らかい笑みを浮かべる。

 予想通りだ。


「……貴方達は本当に異質ですね。ギルドで言われていた通りです。……こうなったら私も仲間に入れてください。私だって、ギルドに対していろいろ溜まっているんです。それとも、参加するにはこの理由じゃ不純でしょうか?」

「ううん! そんなことないって!」

「ふふ、しーなも、やる気になった、です!」


 どうやら彼女も俺達に感化させられて、ギルドと勝負をすることを心に決めたようだ。


 ここで自然と四人で手を合わせて見つめ合う。


「目標、リンクスとミリュの救出で」

「え? ギルドも潰しちゃうよね?」

「さっきゆうもいってた、です」

「忘れたとは言わせませんよ?」

「……ち、ちょっと先の事考えてただけだよ!! 目標は全員無事に完遂することだ! いいな!!」

「「「おおーっ!!」」」


 こうして、小さなギルド本部崩壊因子は結成された。

 幾つもあるパラレルワールドがあっても、未来が俺という因子で一つだけで左右できるなら、この位のことはどうってこと無いよな。


高覧感謝です♪

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