表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七罪の召喚士  作者: 空想人間
第八章 身分と種族と個人と
159/300

裸のスライム

 テュエルに秘薬を無理やり飲ませると、無垢な笑顔を浮かべていた表情が早送りでも見てるかのように子供っぽい顔つきからどんどんこわばっていく。そして、大人っぽくなっていく。


 数秒と立たずにシャッキリとしたいつもの凛々しい彼女に戻ると、その次はどんどん顔色を変化させて赤くしていく。なんとも忙しい人である。


 その色は朱色を超えて地獄の炎のような紅になり、こちらをチラリ、そしてレムをチラり、そして竜人のお偉いさんの二人をちらりと見ると――


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 今現在、彼女の身体は悪魔を憑かせた為かなり弱っており、ボロボロであるのだ。

 だが動き始めると、その弱りを感じさせないくらい敏捷な動きで部屋にある窓を腕をクロスさせて破壊した後、叫びながら外へ消えていった。どこかカッコイイ。


「あの人間……思いっきり窓を破壊して飛び降りていったぞ……」

「そうだな。どうやら薬の効果があったみたいだ。ありがとう」

「いやそれはいいのじゃが、あやつは――」

「人間そういう時もあるらしいから気にしない気にしない! ね、ユウ!」

「えと……てゅえるはほっとくん……ですか?」

「なんか元気そうだったし大丈夫だろう。カシア。もうここに用事はないよな?」

「あ、ああ。本当は見学すべきとこがもっとあったんだが、この状況じゃあな……」


 今現在この里は何者かによって操られた竜人たち自ら壊してしまってしまい、色々な場所が壊れてしまった。

 しかし魔族が倒されると同時に正気に戻った彼らもすぐに回復し、里の修繕作業に精を出している。それもなかなかの罪悪感を抱えながらだ。


「そういえばさ、なんで竜人達はこんなことしたの? ボク殺さないようにしっかり手を抜いたんだよ?」

「ああ、だからそこまで大きな怪我ではなかったのじゃな。それと、原因については――」

「我が話そう」


 ここで精神が幼いテュエルにデレデレだった竜人の長の白髪G、もといトノ様が一歩前に出て威圧感を放ちながら俺達を見る。

 レムはその威圧感にトラウマが触れたのか、少々怯えながらアルトの後ろに隠れる。


「ねぇ、レム怖がってるんだけど。そうやって怖がらせて有利に立とうとするの止めてくれない?」

「……薄々感じていたが、貴様のその目。その態度。やはりどこかで見たことあるな。それも憎たらしい魔族のものに似ている」

「落ち着け落ち着け。魔族云々は置いといて竜人の長さんよ、説明してくれるんだろう?」


 アルトとトノがバチバチと火花を散らすように鋭い視線がぶつかり合う。


 しかしここで喧嘩になるのは何としても止めなくてはいけない。片方は魔王って言われるほどの実力の持ち主だし、もう片方は八つ当たりで山を壊すほどの化け物だ。

 ぶつかり合ってしまったらどうなる事か予想もしたくない。


「父上も落ち着くのじゃ! これ以外にもこやつらに説明することは沢山あるじゃろう!!」

「……ふん。命拾いしたな」

「ふんっ!」


 互いに睨みつけあっていた視線を外し、何とか無事に収めることが出来た。

 この別種族嫌悪はどうにかならないものだろうか。

 とりあえず不機嫌だとあまり芳しくないため、彼女に念話で「トカゲの野郎なんて気にするなよ」と伝えておく。

 あいにく俺は彼女の味方なんでね。


「……あの魔族は、悪魔を使いこなしていた。我ら竜人は下級ではあったものの体を乗っ取れる程の悪魔を憑けられたのだ」

「ん? まず悪魔ってなんだ? 絵本でよく見る三叉フォーク持っててるやつか」

「ワタシも……あんまり知らないです」

「悪魔とは、この世の裏側に住んでるともいわれる生物――かの?」

「恐らく。私も少しは頭に入っております」


 カシアが真面目な表情をして話に乗ってくる。

 生物かどうかは微妙なラインなようだ。

 それと世界の裏側って言うが別の国があることのそのままの意味ではない。

 次元を超えた場所に位置する空間、でいいのだろうか?


「あの魔族は倒した│竜人《同士》をわざと殺さずに、こちらの世界まで空間をつなげて下級の悪魔を取り憑かせたようだ」

「と、言うことは魔印が刻まれたのですね?」

「……ああ。勿論この里にはそのことに関して四の五の言う者はいないと思うが、これから先も辛い思いをさせるだろう」

「まいん? 地雷……って訳ではなさそうだよな」

「悪魔をその身に宿しちゃうと、これから先も同じ取り憑かれた悪魔が憑きやすくなっちゃうんだ。その証が魔印。でも基本的にその悪魔の所有物であるって印だから、他の悪魔からは狙われにくくなるんだよ。ただ――」

「通常の娘にしてはずいぶん詳しいな。だが、その通りだ。魔印は悪魔を呼び寄せる不吉なものとして全世界に知られている。実際は真逆だが、世間的にも辛いものがあるだろう」


 アルト先生は悪魔に関しても精通していた。色んなことを知っていて、知識の底が見えない。この世界の殆どのことを知っているんじゃないだろうか?

 知らないことといえば、世界の法則からズレたソプラノ関連であるし……ん?


「テュエルもか?」

「じゃろうな。それに関しても心に傷になるじゃろう」

「ならシーナもか?」

「……いつも、首裏を抑えてました。しーなもあるかも……です」

「魔印の出来る位置に規則性などはないが、一度憑かれたら必ずできるものだ」


 火傷みたいな跡なのだろうか。見せるのは女性でも男性でもそんなものは出来ていたらショックだろう。現代社会ならモラハラと見られるかもしれないしな。


「そっかよく分かったよ」

「では。人数の都合上見送る者も少ないが、我が見送りの任を受けよう。この里を助けた人物に他ならないのだからな」

(ならアルトと仲良くしろよ……)

「…………」


 言葉には出せなかったが、魔族と竜人では遺伝子的に嫌うようになっているのかもしれないな。

 アルトもイラッとしている表情を必死で隠していた。


「話し込んじゃったな。帰るか」

「先に向かって行ってくれ。我らも用意があるものでな」

「期待するが良い!!」


 そう言って二人は部屋から出ていった。

 今部屋には人間の遠征メンバーしかいない。


「カシア。生徒の集合と姫様の連れ出し。任せたからな」

「……ああ。その穴の空いた貴様がやってもどうにもならないのは分かる。任せておけ」


 そう言ってカシアも続けて部屋から出ていく。隠れてずっと回復魔法をかけ続けていたのだが、未だに肉体が回復しない。どうにかならないものか。


「栄養不足だよな。これ」

「ゆう。これ、らくなが置いていきました」


 そういって近くの棚の上から取ってきたのは透明な便に入っている毒々しい色をしたポーション。

 開けてみると、下水のような匂いがする。特別性であるほどポーションは不味いのだろうか? 獣人界でも酷かったしな。


「……後で飲むか」

「いま飲も? 身体は大事だよ?」

「ふふ、今飲む。です」

「……確実に不味いだろこれ」


 二人も同じ感想を抱いたのか、黒い笑顔を浮かべながら俺に迫ってくる。こいつら俺の吹き出すリアクションを見たいだけではないのだろうか。

 二人から距離をとるために一歩引くと、あることを思い出す。


「あ、ソラとファラをしらないか?」

「うへへ――ってあれ? 戻してないの?」

「ワタシ達はゆうが倒れてる時にはなした……です」

「……多分戻ってきてないと思うんだが。あいつら一体どこに――」


 試しに気配探知を使ってみると、結果はすぐに出た。

 そしてその三つの気配は高速で接近している。


「い、い、か、げ、ん、に!!」

「バシッと観念してください!!」

「プ二ィイッ!!」


 いくつもの足音がこちらの部屋に迫ってくると共に、赤色のスライムが全力でこちらに向かって近づいてきた。


「プニプニ!!」

「怪我人に突っ込もうとするなよ」


 こちらに飛びかかってくることが予想されたので手を前に出しておいたら、その位置を狙ったかのように突進。

 片手に思いっ切り絡みつく。


「……またお前かカラフルスライム」

「プ二二!!」

「ゆう、それって里に来る前に投げたスライムさんじゃ――」

「あれ? まだ死んでなかったんだ?」

「二プ?!」


 アルトの黒いオーラを体全体で感じ取ったようで、人の頭くらいの大きさがあるスライムが赤色から青色に変わり恐怖を現した後、ぐるりと俺の体を回って背中に隠れる。明らかに俺を盾にしている。


「ぜぇ……ぜぇ……」

「やっと、追いついたのじゃ……」


 百メートルを全力で走ってきたかのようにものすごい息の荒い二人は膝に手を当てて息を整えつつも、俺の後ろにいるであろうスライムを睨みつけるように見ている。


「さっきから息が荒かったけどこの子追いかけてたのね。ボクも誘ってくれればあっという間だったのに……ね?」

「プニ!?」

「え、えっと、どうしたん……ですか?」


 レムが困惑の表情のまま聖霊たちに話しかけると、何事も無かったかのよう背筋を伸ばしてびしっと俺の方を指さす。


「そのスライムが!」

「マス――じゃなくてユウの仲間になりたいとぶつぶつ言っています!」

「ほう? 俺の仲間になりたいと? サンドバッグ的な意味でか?」

「プニプニ……プニ?!」

「どこから音が出てるのか気になる……です」

「へぇ、解剖していいよってことかな!」


 どうやらこの場所に七色スライムの仲間はいないようである。

 異世界といえばゴブリンにスライムという未知の生物。正直仲間にするのもいいと思ってしまったが魔物は魔物――


「っ……」

「ぬ? 魔力をすいと……って」

「このスライムやっと牙を……み……せ……て」

「えっ」

「えぇ……」


 急激な脱力感に襲われたかと思ったら、魔力をスライムに吸われてしまったようだ。こいつはやはり魔物だからやっぱり倒して――


 と、ここでずっしりとした重みと、人のような身体の硬い感触が離れるような気がした。

 まるでおんぶしていた人間を下ろしていたような開放感が背中にある。

 スライムの液体によりベタついた液体の感覚は既にない。


 後ろを振り向いたその瞬間に皆が絶句した意味が分かった。


「この某めも! 腹心として、貴方様のそばにおいてほしいのです! どうか、この通り!」


 見えたのは()()の70代くらいの男性。歳はとっているが、俺以上に鍛えられた身体であり、白髪の男性が土下座していた。


 いろいろ突っ込むところはあるが、とりあえず全裸である。

 アルトは無言でレムの両目を隠した。そして魔王様の顔は完全に死んだような表情であった――


「な、な、な?!」

「なにをしているのです――!」

「ふぉぅ!動かないでくださいッ!! いま!それがしは全裸!!まっぱです!!」

「ッ――!?」


 赤面しているソラ、ファラの投げかけた言葉を遮るように、土下座しながら言葉を放つ全裸の男性。

 それは見ればわかるが、間違えようもなく歩くわいせつ物である。どうすんだこれ。

 聖霊二人は電撃でも走ったかのようにプルプル震えながら戦慄しているが、アルトと俺はもう突っ込む気分ですらない。


「なにが――起こったんですか?」

「レム!? 気にするでない!! こやつはただの変態――」

「ふぉほ!ならば説明しなくてはなりませぬ!!」

「説明はいいからとさっさと何か着てください――」

「今や昔、小さく暗い山小屋があり、そこにあるスライムが」

「中略なのじゃ!!」

「と、言うわけで某はユウ様の記憶から、アルト様と互いに助け合い、時にはぶつかりあっても仲直りするその絆に感服致しており、その最高の伉儷の仲を最後まで見届けるのが執事の役目であると感じたしだいでごさいます!」

「!? 伉儷?!」

「お、おう?」

「あるとっ、ゆうっ、ずるいです! ワタシも混ぜてください……っ」

「あ、貴方! まだユウとアルトはもっと甘々まで、そんな関係じゃない!!」

「そそそそそ、そうだよ!!ってええ?!」

「何を恥ずかしがっておるのだアルト! この変態に察されて良いのか?!」


 土下座のまま語り始めようとしたのでファラが中略の口を挟むと、用意していたかのように語り継ぐこの変態は凄まじい継続力をお持ちしているようだ。


 俺とレム以外 伉儷 という言葉の意味を知っているようで言葉を知っている者の全員が顔を真っ赤にしながら、全裸で土下座している変態に反論する。


 だんだんこの場も暖まってきました。


「というわけでユウ様、某に契約の機を!」

「ゆ、ユウ! 人の上に立つなら執事は必要だよね!!」

「ア、アルト!? もう一度考えるのじゃ!?」

「がーん、 一番影響力のある人が引き込まれた?!」

「うぅ……みえないです……」


 アルトが顔を真っ赤にしながら俺をキラキラした目で見つめる。

 なんだか分からないが、変態かどうかは置いといてスライムを仲間に入れるのは賛成である。なぜなら元の世界では絶対に見れない生物だからだ。ペット的な立ち位置であるが。


「ユウ!! お主はどう思うのじゃ?!」

「私達とそこら辺にいるスライム! どっちが大切ですか?!」

「そりゃお前らだが、何をそんなにお前らは拒否する理由があるんだ?」

「「ほっ……」」

「ちっ」

「今舌打ちが聞こえたんだが。どこぞのクソジジイから」


 ソラとファラが何故拒否しているのかが分からない。

 仲間?が増えることは別に悪いことではないと思うのだが……


「ただでさえ我らの魔法陣は10000も魔力を使って開放したのじゃ! 次に新しい魔法陣を創り出すには20000使うのじゃぞ!?」

「幾らユウとはいえ、そんなばかみたいな魔力は……」

「ああ、今はないな」

「じゃろう?!」

「体魔変換を使えば可能だ」

「?!」

「一時的に魔力の限度を超えることは可能だ。ただ、余った分漏れまくるがな。その一瞬を狙うしかない」

「ふぉ!では!?」


 全裸のおっさんが凄まじい勢いと形相でこちらを見上げる。そのこちらを見る目は見開いていて血走っている。正直怖い。

 しかし、これをよく思わない者もいるのが事実だ。


「いやいやいや! ちょっと待つのじゃ!! 魔法陣は使用する魔力によって住み心地が違うのじゃ!」

「それが可能だとしてもです! 我らが質の低い魔法陣の中で、この変態がぴかぴかの魔法陣のなかにいるのですか? 我らの方が古参なんですよ?」

「引っ越せばいいだろ?そんなに嫌なんだ?」

「同じ召喚士を主とするものにおいて、スライムと聖霊を掛け持ちするのはどうかと」

「というか嫌なのじゃ。ユウの意識がコイツに向くのが――」

「ファラ!?」

「さっきのやっぱなし!!」

「へぇ君達聖霊も、ボクのユウを、狙ってるの?」


 アルトがニヤニヤしながら焦っている聖霊ふたりに話しかけると、彼女達は赤面するのではなく、顔を青くした。


「そそ、そういう意味ではないのじゃ!!」

「ただユウを召喚士として慕っているだけです! 決してアルトから取ろうという気持ちなんてありません……!」


 気のいい上司と部下の関係みたいなものだろうか。

 アルトの気持ちを完全に察した二人が顔を青くしたのは彼女に対する恐ろしさのためだろう。そんなことはしないと思うのだが、俺からしても威圧されたらすくんでしまうかもしれない。さすが魔王。


「で、どーするの?」

「どちらにせよ、いますぐ魔法陣の中へ突っ込むのはムリだ。ソラとファラを移動させてから契約だな。移動の仕方はよく分からないが」

「あるとーっ! いいかげん離して欲しいっ!!」

「あっ」


 アルトも外されるとは思わなかったのか素っ頓狂な声を上げると、レムが遂にアルトの目隠しを外し周りを見渡す。

 見渡してしまったのだ。


「…………」

「…………」


 レムの顔がどんどん真っ赤になっていき、その小さな拳が握りしめらめていく。

 小さな子供相手には流石に不味いと思ったのか、変態の方からぼふんと煙が出現し姿を隠すと、スライムの形状に戻る。

 そしてソラとファラもやってしまったと言いたげな顔をしている。


「……裸の人がいた……ですよね?」

「ぷにーぷにー」

「え? なんのこと?」

「さ、最初からここにはこのスライムしかいなかったのじゃ」

「はらはら、全くレムは何を見たのでしょうか?」

「目をつぶってたから幻覚でも見たんだろ? それと、顔真っ赤だぞ」

「え、えっと……それにおじさんの声がしたような気が……します」


 再びシャボン玉の液のような色をしたスライムに戻ると、何事も無かったかのように俺の足元へ。


「プニプニ!」

「……連れてくか。ソラとファラも住み心地いい方に引っ越せるんだからいいだろ?」

「はぁぁ……なら、我らを放置しないと誓えるなら許そう」

「スライムより我らを大切に。これが我らの答えです」

「おいおい、それくらい当然だろ? 」

「聖霊なのにユウのこと全然わかってないね。ぷぷぷ」

「ゆうは……そんなことしません!」


 少々照れくさいが皆からこう言われるのは少々嬉しい気がする。


「契約は後でだが……宜しくな、虹色のスライム君」

「プニー!!」


 ゲル状の魔物が頬を――というか身体をピンク色に染めて照れくささを表しているのはなかなか滑稽だ。人の言葉も理解できるみたいだし、ほかの魔物とは何が違うのだろうな。性癖も含めて。


「えっと、仲間ってことですか?」

「一応そのつもりだが、嫌か?」

「そんなことないです! ただ、名前を決めないと呼びずらい……です」

「こやつの名前なんてプニプニ言ってるのじゃから、プニプニでええじゃろ」

「ぷにぷにスライム状態なら可愛げがあるのですが、中身となると……」

「それいいかもな。それと全裸のおっさんなんていなかったぞ」

「プニプニ……! 可愛いですっ!」


 ファラの付けた名前の裏には少々皮肉が混じっている気がするが、表面上はなかなか可愛げのある名前なので、プニプニという名前にすることに決めた。スライムも形を変えて〇の形を取っている。形状変化も可能か。


 アルトも笑顔でいるし、レムも賛成の声を上げた。半数一致で決まりだろう。

 名前を付けてペットを飼う気分である。

 繰り返しになるが、中身なんて知らない。


「決まりだな――って結構時間取っちゃったな」


 懐中時計を取り出して確認すると、先程から十五分程経過していた。生徒達や姫様を待たせているかもしれない。


「それと、ソラとファラ。今回も助けられた。ありがとな」

「ふん!さっさと戻すのじゃ。そろそろ魔力がつきそうなのでな」

「どこぞのマスターがふらっと気絶したおかげで戻れなかったんですよ」

「悪かったな」


 苦笑いしながらそう返すと、柔らかい笑顔を浮かべてソラとファラは虚空に消えて魔法陣の中へ戻っていった。


「プニプニはどうやって運ぶ?」

「ワタシが……もちます!」

「いや、歩かせようよ。レムに何かあったら大変だし。プニプニ変態だし」

「それがいい。安全第一だ」

「プニプニは危ない……ですか?」

「「……いろんな意味でね」」


 そうしてアルト顔を見合わせてセリフを同時に言った後にプニプニがちょっと悲しそうな色を表したが特に反応するには至らなかった。


 ~~~~~~


 外に出て集合場所に戻ると、テュエルが顔を真っ赤にして「おおおお……遅かったな!!」と平常を装っていたのが印象的であった。

 可哀想なので全員がその場で察して触れないでおいてあげた。


 帰ってきた時に生徒達の反応は、やれ風穴だ、やれ竜人様だ、やれ勇者だ、と話題に尽きず適当に返していたら竜人の催促により無理やり押し返されながらの帰投ということになった。

それと勇者は竜人の里の復興の手伝いをするらしく、後ほど戻るとか。


 転移を使うわけには行かず、ワイバーンでのんびりと帰るということであったが、帰り際には花火のような魔法が空に咲いてとても綺麗な見送りを受けた。おそらくあの二人の見送りだろうが、その時は半分は酔って気持ち悪くなっていたのがとても無念であった。


 なおプニプニは透明化ができるという事で背中にくっついてきて貰った。


 これでやっと竜人とおさらばだ。もうしばらく彼らとは会いたくないものだ。


これでこの章は終わりになります!


戦闘シーンを少々変えてみたのはいいですが、短くなってしまいました。難しい……


今年中にあと1話更新したいところです。


高覧感謝です♪



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ