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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第七章 心の距離感
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決断

「そんなもんなのか? 双子座」


 夕達から少し離れた場所に、精霊達と召喚士は戦っていた。その場所では様々なな場所に大きな破裂跡があり、激戦の様子がうかがえる。また、クレーターのと同じ数だけある大きな水溜りも目立つ。


「くっ、こやつもまたおかしな召喚士じゃの……」

「まささか我々がここまでぐいぐい押されるとは……」


 今のところ相手の召喚士は無傷であり、戦っている聖霊たちは傷だらけのボロボロ。どちらが有利な戦況であるのかは一目瞭然だ。

 召喚士と聖霊。なおかつ二体一であるのに勝てない状況に置かれているのは、魔法の相性の悪さにある。


「土属性だけなら我らが有利だったんじゃかの」

「ここまでドロドロの水属性が厄介であったとは思いませんでした」


 長年の間、磁力魔法で生きてきたソラとファラにとっては、土属性による魔法はその中にある砂鉄を操作して魔法を破壊する、という高等な手段が取れるために相手の攻撃は無力化できると思っていた。しかし今の状況は全くの逆。


「ボクはあらかじめ双子座の使う魔法、弱点を徹底的に調べたからな。これぐらいの対策は当然」


 彼の対策とは水属性と地属性を合わせて泥水のように操作をする事により、磁力魔法の効果を弱めるという手段。

 高速で飛来する魔法に対して、一瞬の間に砂鉄とただの土を判別するのは凄まじい集中力を要するにも関わらず、水属性を合わせて不規則な動きを見極める、なおかつ水と土、土と砂鉄を判別する手間を増やすことを必要とした複合魔法に対して、彼女達は想像以上の苦戦を強いられていた。


「さて、どうしましょうかファラ。このままではマスターの元へ向かわせないための ちょっぴり足止め が限界ですよ」

「承知しておるわ。だが我らにはまだ手段はあるじゃろ?」


 ビリビリと指先から青白い雷を見せびらかす彼女に対して、ソラは疑問の表情を浮かべる。なぜならその魔法を使用した時も無効化されたため、手段とは思えないからだ。


「ふふん、まだ分からないようじゃの。周りを見よ」

「周りといってもどろどろの水溜りしかありませんが……あっ」

「分かったかソラよ。この勝負、わんちゃんあるかもしれんぞ」

「マスターの世界の言葉ですね。では、ビシッと決めて見せましょう!」


 そういって再び二丁の拳銃を構える二人に対して相手はにやりと笑みを浮かべた。戦う気力が落ちていない事に対しての喜びかどうなのかは読み取れない。


「なにを相談したのか分からないけど……君達が勝てる確率なんてない。 निगल पियर्स 《地牙波(ガイアウェイブ)》!!」


 相変わらず何を言っているのか分からない詠唱とともに魔法が展開される。引き起こされた魔法は凄まじい勢いで子供の両手幅はありそうな太い針が吹き出してくるというもの。それがなかなかのスピード近づいてくる魔法であるが、この程度なら対処は可能である。


「ゆくぞ!」

「どんと任せておいてください」


 いつもの通り左右に分かれて魔法の攻撃を躱す。回避の仕方は同じであるため、相手もそれを予測していた。


「甘い!」


 相手は魔法を操作して針を二つに分けて二人を追いかける。攻撃は未だ聖霊たちに追いついていためチャンスだ。


「「《磁電撃マグネティックボルト》」!!」

「っと、どこを狙ってる――」


 体を軽くかがめて稲妻を回避し、余裕な表情を浮かべる召喚士を見て彼がこちらの魔法を外したと確信しているのが分かった。油断があるなら事は進ませやすい。


「ここじゃ!」

「びりびりしてください」

「――っぅ?!」


 水溜りの中心にいる召喚士は、聖霊が狙っていたとおりに動いてくれて電撃が水溜りの水面を走り、身体に走ると、バリバリとした音と共にうめき声が聞こえる。二人は作戦の成功を確信し、回避行動を中断して攻撃魔法に集中しようとする。


「っし! 決まったのじゃ! もっと魔力を――」

「――ファラっ!?」


 雷撃が通ったのにも関わらず相手の魔法は止まらない。

 完全に雷撃が通ったと思っていたため、魔法も霧散すると考えていたファラは、魔法から逃げる足を止めて

 魔法に集中しようとする。そのために


「ぐあっ――?!」

「ふぅー、痛かった……なっ!!」

「……!」


 土属性魔法により大きく上に飛ばされるのは他でもないファラ。そのようすに驚愕する暇を与えずに召喚士は追加で攻撃魔法を更にソラへと発動させる。地面から腕のようなものを生やし、その拳で相手を吹っ飛ばすという魔法だ。


「ぐぬぅ……!」

「つつ……!」


 どちらもほぼ直撃に近かったが、なんとか骨折などの被害は抑えられた。しかし、とても大きなダメージを受けたことには変わりがない。


 二人は引かれ合うように、そして同時に相手と相手の魔法から距離を取る。結果的に先程より悪い状況となってしまった。


「いてて……さてどうしましょうか」

「これは、本格的にまずいのぉ」

「まさか水を伝ってくるとは。予想外だったよ」


 笑いながら水溜りから出てくる。未だに相手の召喚士は帯電しているものの、相手は全くダメージを受けていない。ということは電撃が効果が無いということだ。


 聖霊たちはこの手立てが防がれたことにより、相手が一歩近くたびに勝てそうにないという気持ちが強まっていき、一歩下がる。


「もう終わりなら、決めるぞ?」


 そう言い放つと相手の魔力はこれまでに無いくらい高まる。威力の高い魔法によって勝負を決めにかかるようだ。その高まりを感じ取ってソラとファラは全力で魔法を防ぐために防御の魔法をしようとしたその時


「「「?!」」」


 ドゴゴゴォォッ!と大きな揺れが音と共に全てを飲み込む。 突然の揺れにお互いにバランスと集中が崩れてしまい、魔力は霧散して魔法を起動することが出来なかった。


「なんじゃ?!」

「グラグラ……ですね」

「おっと、この魔力は……」


 バランスを取ろうとふらふらしながら魔力を感じ取った召喚士は、この揺れを起こしている原因となっていることは魔法によるものだと感じ取った。それは聖霊たちも同じであり、叩かれた衝撃波のようで、暴力的な魔力の奔流を受けている。


「ピスケス!」


 バランスをとった相手は魔法で作った壁に向かって大声をあげる。その声に含まれているのは撤退というものであった。


「どこいくのじゃ!」

「悪いけど逃げさせてもらう。あんなでかい魔力、ここで爆発させたらダンジョンごとなくなるな。あにいくまだ死ぬわけには行かないんでね」


 彼が話終わると図ったように辺りに亀裂が走り、地割れが起こる。ダンジョン自体が魔力に怯えているかのようだ。


「次はもっと楽しませてくれよ!双子座!」


 そう言い放つと転移石を使って光となって消失していく。ここから消えていった召喚士に、突然の揺れ。思わぬところからの助けにソラとファラは唖然となっていた。


「って、ぼーっとしている場合ではありませんね」

「そ、そうじゃレムは――!」


 その途端に壁が盛大な音を立てて破裂する。ダンジョンが揺れる音に負けじと大きな音であったので、二人は驚いて壁から離れる。コツコツと軽いような重いような足音を立ててゆっくりと煙を払いながら出てきたのは、無傷のレムだった。


「ソラさん?! ファラさん?! 大丈夫ですか?!」

「おお、そっちは無事じゃったか!」

「ぴんぴんでなによりです」


 急いで駆け寄ろうとしたレムであったが、揺れにより若干バランスを崩して、二人に寄りかかる形になる。寄りかかられるほうは怪我をしているので、痛みを我慢した表情を浮かべる。


「ぃっ?!」

「ゃっ?!」

「……?」

「なんでもない……のじゃ」

「それより、レムは大丈夫でしたか? 変なところ触られませんでしたか?」


 痛みを我慢したために変な声が出てしまった二人だが、レムが無傷の理由を問う。聖霊は契約者以外には興味を持たないために、なぜ無傷なのかが気になったためだ。

 する彼女は俯いてぼそぼそと話し始める。その雰囲気からは悔しさが伝わってきた。


「じつは……聖霊さんを倒して、先にご飯ゆうとあるとの場所へいこうとしたです。ですが……攻撃が一度も与えられませんでした……」

「うぬぅ、お主もあしらわれたようじゃの」

「なんだが……こっちの動きがずっとあっちに分かってるような動きでした。私の拳を全部受け止められて……」


 レムの悔しそうなようすは雰囲気だけではなく表情にも出ていて、口元をきゅっと縛っていた。


「認めたくないが、我らと同じ聖霊なのじゃ。そう落ち込むことは無い」

「私たちは人間にここまでやられてしまいましたしね……ぼろぼろです」


 苦笑いしながらレムをなでる聖霊たちは彼女の気持ちが良さそうな表情に癒されていたが、我に返れといわんばかりの直下型の揺れが空間全体に襲いかかり、バランスを崩しかける。


「いかんいかん。こんなことをしている場合ではなかったの……」

「レムののほほんさは癒しです。我らの宝です」

「??」

「さぁ、急いで我が主殿の元へ急がなければ」

「ざざっとノイズがかかってますが、生きているので多分大丈夫なはずです」


 彼女達聖霊は生体反応により主の安否が確認できる。勿論探知範囲の限度はあるが、ノイズがかかる理由はその場所の魔力密度の濃いためだ。


「さぁ、急ぎましょう」

「無事であるといいがの」

「ゆう、あると……」


 そう言い残して彼女達は荒れ果てた戦場跡から去っていき、夕とアルトがいる場所へと駆けて行った。




 しばらく走っていると地面は穴だらけ、なおかつ傷だらけであり、周りの壁もクレーターが出来ている場所、さらには穴があいて貫通している場所もあった。その光景を見て、三人はそっと息を詰める。


「そうとう派手にやったようじゃの……」

「ぼこぼこですね。でも揺れは激しいですが、金属音のような戦闘音は聞こえませんね」

「おわったということは……どちらがどうなったんですか?」

「一応主殿は生きている。生きているが……状態は良くわからぬ」


 足を止めて周りを観察し、二人を探す。聖霊たちによればこの付近にいるはずなのだが、姿が見えない。


「まさかここにいるとか言わないじゃろうな?」

「考えたくありませんがこのふかーい亀裂の中にいるとしか考えられませんね」

「……たかいです」


 三人が見下ろすのは、縦幅20mはありそうな大きな亀裂。亀裂というより渓谷といった方が近いかもしれない。なぜダンジョンの中にこんな大きな渓谷かあるのか気になっていたが、それをよそに一番先に動いたのはレムである。


「ワタシ、先にいきます……っ!」

「「あっ」」


 止める間もなくレムをは落ちていく。彼女はどんどん小さくなっていき、ドシン! と音が木霊して伝わってきた。

 二人は顔を見合わせて再び下を見る。


「さ、さて我らも行かなくてはな。先に行っていいのじゃソラ」

「い、いえ、ファラが先にひゅーって落ちていいですよ?」

「お、お主びびっておるのか?」

「そ

、そちらだってぶるぶるじゃないんですか?」

「我は高いところは嫌いじゃないのじゃ! むしろ好きなのじゃ!」

「なら先にヒューしていいですよ。どうぞ」

「嫌じゃ!!我はあとがいい!!」

「ぶるぶるじゃないですか!?」


 そんなやり取りを繰り返しているうちに何者かがのしのしと近づいてくる音が聞こえる。しかし二人には高い頃の恐怖によりそれどころではないようだ。


「わ、我らが一緒に落ちればいいじゃろ?」

「なら、せーので行きましょう。せーの――ってファラ、なんで踏ん張ってるんですか?」

「そそ、ソラだって足が震えておるじゃないか!」

「わ、我はこんなところにガクガクなんてし、しませんよ」

「ギャォォォ!」

「「……あっ」」


 早くしろと言わんばかりのリューグォが、優しめに二人向かって突進する。全力じゃなかったのは夕を恐れているためか、はたまた気まぐれであったためか。二人は重力に従い奈落の底へと落ちていった。




 ~~~~~~



「がはっ……」


 生きてる。一応生きてる。ああ、生きてる。

 身体中から徐々に大きくなっていく痛み。それにより意識も同時に戻ってきた。背中には寝転がっているため冷たい感触がある。足は無事に二本ある。痛くて動かせないがとりあえず


「……生きてる?」


 片目を開ける。血液を失ったためか、寒い。なんでこうなったんだっけ。腕の状態は……折れているかもしれない。痛くて動かせない。

 さらに周りは暗くてよく見えない。光量がすくないためか、まだ慣れてないためか良くわからない。


「ん、起きた?」

「アル……ト?」


 暗くてよく見えないが、声は先程の状態の冷たいアルトではなく、聞きなれた優しい状態の彼女であった。


「ユウの本気。見せてもらったよ」

「あぁ……負けたんだよな、俺」

「うん。僕の勝ちだよ」


 それからすぐに聞こえてくる地響き、更には何かが落ちてくる音。どこか遠い音であったため、土砂などが崩れてきたのだろう。


「はぁ……確かにバカ正直だったな」

「うん。闘技大会での当時の僕の気持ち。少しは分かったかな?」

「ああ。痛いくらいわかったよ」


 俺はあの時、近接攻撃で彼女との勝負を決めようとした際に、彼女は《完璧なる指揮者パーフェクトコンダクター》を使用した。その途端に刃を振ったのだが、何故か衝撃波が俺の元に返ってきて、なおかつ大量の岩石が俺に向かって突撃してきた。そしてそれを身に食らいながら落ちていった。

 ここまでが記憶の限界だ。

 彼女がいいたかったことは互いの全力を込めた近接攻撃をぶつけ合いたいという欲望のことだろう。実際俺もそれに飲まれていたのかもしれない。


「それと、なんで俺は生きてるんだ?」

「……死にたいの?」

「それは嫌だな。二週目なんだからな」

「ユウ、さっきも言ってたよね?二度目の命って。ユウはさ、実は人造人間だったり……する?」

「そんなもんじゃない。まぁ確かに捉え方によればそうなるかも知れないが」


 彼女が俺を殺さないことがは不思議でしょうがなかった。あれだけ殺すオーラは全開であったのに、今の彼女からは何も感じられない。最期に話をしようってことだろうか。


「ユウ、ちゃんと答えてね。ユウは何処から来たの?」

「信じるかどうかはお前次第だが……お前らとは違う世界に住んでいた」

「っ!? ……ほんとなの……それ?」


 驚いたようすだが、どこかしら予想してたようなオーラが感じ取れる。いつの間に察されたんだろうか。とりあえず体を起こして話を続けるとしよう。

 今の俺の姿勢は足を伸ばして両手は股の前で組んでいる。一番体制的に楽だ。


「元々いた世界には魔法なんて無くてな。もちろん転移石みたいな意味のわからないアイテムなんて存在しない。その状態で初めて人間に出会ったのがアルト。お前だ」

「……そっか。だからユウはこの世界について全然知らなかったんだね。なら、二回目って事は?」

「やっぱりそこに気がつくか。俺は転生者という存在でこちらの世界に来たんだよ。あっちの世界では一回死んたんだ」

「そーなんだ。だから二回目なんだね……生き返ったんだ……」

「因みに俺が死んだとしてもあんまりいいふらさないでくれよ。人として知ってるやつはアルトが初めてなんだからな? ああそれと、生き返す方法は知らない。俺もなんだかんだで巻き込まれた身だからな」

「ふふふ、言わないよ」


 恐らく笑顔であったアルトはゆっくりとしゃがみこむ動きが僅かながら確認できた。何をしようとしているのかわからないが、いまの疑問点を口に出す。


「んで、殺さないのか? 流れでいえばオレは負けた訳だし、命でも何でも差し出さなきゃいけないわけだが」

「ならユウ、最後に聞かせて」


 その瞬間に瓦礫が崩れて光が差し込む。ダンジョン内の弱い光だが、夜目が聞く俺からしたらとてもありがたいものだった。そのおかげでやっと、アルトの顔が見える。

 真っ直ぐ、その無垢な赤と青の双眼に吸い込まれそうだ。こんなにしっかりと見つめ合うのは初めてかもしれない。だから俺も、恥ずかしがらずに真っ直ぐ見つめ返す。


「こんなボロボロになってまで、伝えたかったことって……何?」

「確信犯だろ? ……まぁこれを伝えるために来たんだが……いうぞ?」


 彼女は目を離さず俺も目を離さない。この時だけは痛みを忘れて、耳でら自らの鼓動の音と彼女の吐息の音でいっぱいであり、視界には彼女の僅かな動きがやたら鮮明に映りこむ。言うなら今しかない。大きく深呼吸をしてこの言葉を伝える。


「アルト。お前が……大好きだ」

「……どれくらい?」

「そうだな、今俺が死んだとしても、化けてずっと傍に居たいくらい……か?」


 まさか程度を聞かれるとは思わなかったが、今ならどんな臭いセリフでも吐けるような気がする。最後ぐらい親父のように格好よく生きていたい。格好よさを履き違えているような気がするが気のせいだ。


「ふふふ、こういう時でも、ユウはやっぱりユウだね」

「少しぐらい変わった反応しても良いんだがな。ついでだし俺も殺される前に最期に聞こうか」

「……なーに?」


 彼女の顔が紅潮しているのは一応恥ずかしがってくれたということの証拠だろう。無表情で返されたら俺は精神的にも死んでいただろうな。


「アルト、俺の事を一瞬でも好きになってくれた事はあったか?」

「…………」


 多分俺はめちゃくちゃ顔が赤いと思う。先程まで寒かったが、いまは顔だけ熱い。反応がないということはあの占い師が詐欺ったということだろう。この無言の反応にはかなり傷ついたが、どうせ死ぬのだし辛さは一瞬だ。


「……ユウのばーか」


 言葉と同時にふっとアルトがしゃがみこみ、そのまま顔が近くに――?!


「んっ……」

「んっ?!」


 アルト押されて倒されてしまったため背中に鈍い痛みがはしるが、そんなものを気にしていられない。唇に感じる柔らかい感触。その感触は繊細で、感じたこともないような甘くて甘い愛の味……と言うのだろうか? 今の状況では深く考えることが出来ない。


「……()()が貰うのは、ユウの唇。これで許してあげる」


 そういってアルトは俺に倒れかかる。俺は元々倒されていたので自然とアルトが上に覆いかぶさっているような形になっている。不思議と邪な気持ちは沸かない。


「ユウ。気づくのが遅いんだよ?」

「……ああ、ほんとに遅かったよな。ごめん」

「ふふふ……」


 ゆっくりと、これまでで一番心を込めて彼女を撫でつつ目をつぶっていたが、しばらくすると何やら視線を感じる。そういえば気配探知付けてなかったな。


「…………アルト」

「なーに……?」

「うぬうぬ、青春じゃな」

「ほっ、マスターが暴挙に出なくて安心です」

「はゎ……」


 気配探知を使用した途端、夢見心地な雰囲気は一気に霧散。こいつらは、見ていたのだ。


「わあああああああっっ!!」

「ちょっと待てっ」


 爆発しそうなほど顔を赤らめた彼女は俺の襟首を掴むと思いっきり俺を聖霊達の元へ投げる。聖霊たちは相変わらず余裕の表情だが、こちらはボロボロなので死の危険がある。


「ここで死んだら女神は俺の事を生き返らせてくれるのだろうか」


 そんな場違いな感想を抱いた俺であった。その後に人間ミサイルによる爆砕音が洞窟中に響き渡ったのは言うまでもない。


ついに想いが通じ合った……?



高覧感謝です♪

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