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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第七章 心の距離感
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学園祭一日目 王子と囚われの姫君

「そういうわけで、くれぐれも学園の顔に泥を塗るような行動は慎むように!」


 適当な挨拶と諸注意を聞きながらアルトたちを待っていたが結局二人とも来なかった。気配探知を使えば、しばらく同じところに佇んだあと、つい先程二人とも動き出してこちらに向かって来ている。この集会はもう終わるので、次に合う時には教室の中だろう。念話で伝えておこう。最近の彼女は考えすぎて変な方向に進まないか心配である。


「これにて、事前注意を終了します。各自、一時間後にまで迫った本番の準備を怠らないように!」


 教頭らしき人の声が響くと大きく会場が沸き立つ。生徒のほとんどの人が楽しみにしていたこの日なのだ。文化祭なら沸き立つのもわかる。

 さてと、彼女たちに連絡しなければな。


(もしもし? アルト、レム、聞こえるか?)

(あっ、ユウ……もしかして終わっちゃった?)

(寝坊してごめんなさい……です……)


 彼女達も、うすうす間に合わないことに気がついていたようだ。レムが珍しく寝坊した原因はわからないが、狐は夜行性と聞いたことがあるので彼女もオールナイトしたのが不味かったのだろうか? 夜には強いが朝には弱いというのは当然といえる、のか? 正しいかは不明である。


(多分気にしなくていいだろう。あっちも忙しいらしくて人数確認してなかったから心配することはないぞ)

(うん、わかったよ。とりあえず教室で待ってればいいのかな?)

(出来ればそうしてくれ)

(了解……です!)


 彼女達に伝えたし、俺のすべきことは終えたはずだ。これからは先程と同じく、演劇のセリフ、立ち回り等の確認をするはずだ。俺のセリフは一言二言程度しかないので大きく緊張しない限り忘れることは無いだろう。一応確認はするが。


「こっちの学園祭はどんな催しがあるのか期待ものだな。これだけ大きいんだし、大学の文化祭より大規模であればいいのだがな」


 歩きながら学園祭に期待する俺は少しだけ口元を緩めながら教室へと向かう。ただこの途中に、テュエル以外の知り合いには会いたくないものだとしみじみ感じてしまって俺中で、波風 夕 は人見知り説 が成り立ってしまった。


「……ん?」

「…………」


 目の前に立っている女の子は藍色の髪をしたラスフィという生徒。なぜ教室に入らず、その入口の前で壁によりかかりながら目を瞑っているか不思議であった。


「俺の気にすることじゃないよな」

「いいえ、少しは気にしてください」


 寝ているのかと思ったら彼女は起きていたようだ。目をと開くと相変わらずの鋭い視線で俺を睨みつけてくる。敵意を持っているような視線だ。


「お前をか?」

「いいえ、貴方の周りの子です」

「……周りの子?」


 彼女は腕を組むと俺から視線を外すようにそっぽを向く。こいつが何を言いたいのか分からないため聞き返してしまった。俺の周りの子といえば……アルトとかレムか?


「貴方は、彼女たちをなんの魔法で束縛しているのでしょうか」

「束縛はしてないぞ。むしろフリーダムだ」

「ふりーだむの意味は分かりませんが、アルトはまだしも、シーナやレムが貴方に惹かれる程の魅力は見当たりません」

「…………もうちょっとオブラートに包んでくれると助かるんだが」


 顔つきから物事を正面切って言いそうとは思っていたが、ほぼ初対面で物凄くストレートに言ってきたよこの人。こいつが言いたいのは俺が魅力がないくせに女の子を侍らせてるのが気に食わないってことか? 俺にそんな気は無いのだがな。


「なので、貴方は魔法を使い彼女たちを拘束していると考えたので、ここで問いたださせてもらいます」

「使ってない。そもそもそんな魔法あるのか?」

「知りません」


 だめだこいつ、俺に噛み付いて離さない。なんの恨みがあるっていんだ?……とりあえず児童養護施設で培ってきた、怒った相手を流す時にてきめんな効果をもつあの手段を試してみるか。


「お前、お腹すいたんだろ?」

「……は?」

「ほらよ、俺の朝ごはんのつもりだったがお前にやるよ。お腹が減ってる時はこれに限るよな」


 俺が魔法陣から取り出して彼女に渡したのは、学園内に売っている菓子パン。菓子パンがあることに驚いたのでついつい多めに買ってしまったのだ。ちなみに彼女に渡したのはブルーベリーのような物がパンの中心に詰められている物である。


「……私まで食べ物で釣るつもりですか? 生憎ですがそんな手段は――」

「いいから貰っとけよ。毒が入ってたら学園に文句を言ってくれ。じゃ、俺は教室に失礼させてもらおうか」


 彼女の頭をポンポンと軽く叩いてから教室に入る。我ながら華麗なスルーの仕方であったと思う。この時間帯は朝ごはんを食べていないものにしては辛いだろう。頭をポンポンとした時には彼女はびっくりしてきたが、特に何も言ってこなかったのでそこの時には怒っていないのだろう。


「っ!! ユウ……ナミカゼ……えぇっ!」


 前言撤回。扉を閉める直前に憎々しげな声が聞こえたのでやっぱり怒っているのかもしれない。ちなみに彼女は隣のAクラスである。

 クラスは違うためこちらには入ってこないだろう。

 Aクラスにも関わらずSクラスの面々を差し置いてリンクス達と一緒に入れるほどの実力をもつ彼女を出し抜いたため、勝利の余韻に浸っていた。が、その時に教室にいる生徒を数えているメガネの先生に話しかけられた。


「えっと、君でちょうどだね」

「すみません、遅れました」

「じゃ! 全編を流して皆でやってみようか!」

「「「おおー!」」」


 俺が来るあいだ全員が待ってていてくれたようだ。ちょっと申し訳ない気分である。本番でセリフを間違えないようにしっかりとした気持ちで挑んでおこう。ここにいるアルトもレムも、他の生徒もやる気は十分なようで、二人とも衣装に着替えて、にこにことした表情が見られた。少し元気がないような気がしたのですこし安心である。


「はぁ、できるだけ目立たないようにがんばるか」


 魔方陣から取り出したこい茶色のウィッグを被りながら、役者とは思えないセリフを吐いた俺であった。


 ~~~~~~



 ボォン!ボォン!と青い空の下で爆音が鳴り響く。元の世界とかわらずの昼の花火である。

 これは学園祭の一般公開の開始で、人々は目当ての商品や、出し物に向けて学園へと踏み出して行った。どぉっと激流が流れるように、静かだった校内が一気に喧騒に埋め尽くされる。そして、その入ってくる人の数が尋常ではないほど多かった。


「う、うわぁ……いっぱい来たね……」

「人気アトラクションパークのスタッフの気持ちが分かる人数の多さだ」

「はいはい! アルト!ユウ!リンクス! なんとかしてこの整理券を全部売っぱらうわよ!」

「おう! 任せろっ!」


 と、いうわけで俺達は第一部公演の整理券を売る役をこなしている。ここにいるのは俺たちと、D組の客寄せパンダである謎の着ぐるみ集団。着ぐるみの外見は、兎のような耳に亀の甲らを背負い、そしてあかいモフモフとした毛皮を着ている。さらにリューグオのような一本角を額に持っているこの生き物ともいえない着ぐるみの可愛らしさは、俺からしたら皆無である。


 噂ではD組は屋台以外に教室で、喫茶店をやっているらしい。その喫茶店は珍メニュー()()無いという情報があるためちょっと気になっている。

 昼休みが空いてれば行ってみるつもりだ。ここで余談だが生徒経営の屋台以外で食事店を出すクラスは無い。喫茶店は珍メニューでゴリ押しするらしいが、それを除けば他のクラスは食事をメインとした出し物はしない。

 何故ならここには学食があるからだ。その学食もつくる人もプロを雇っているので客はそっちに流れていく。なのでプロに勝負を挑もうとするのはDクラス以外にいなかった。D組は色々おかしいらしく、噂ではこれは食べられない、とされるメニューを考案したらしいが……それも含めて気になるな。


「さ! アルトも元気だして! 来るわよっ!」

「う、うんっ!」


 俺とアルトは入場料と引き換えに整理券を渡す役をこなす予定だ。入場料なんてとったら誰も来ないだろうと思っていたのだが、大きく予想は外れた。


「いっぱいこっちに向かってくる?!」

「アル! ユウ!計算間違えるなよ!」


 再びかなりの人数がこちらに向かって歩いてきた。それと、俺がつい最近知った事だが、ここの世界でも硬貨はある。この世界の人間は基本的に支払い方法として硬貨で払うそうだ。ギルドや市役所にて、所持しているお金に見合う額を硬貨として交換することが出来るらしいが、硬貨というものがあるとは思っていなかったため、俺は場面がいつもカード払いであったことになる。

 いつも俺が元の世界で将来の支払い方として考えていたニコニコ現金払いとはなんだったのか。今度から硬貨を使おう。


「Sクラスの出し物の、【王子と囚われし姫君】の整理券はこちらになりまーす!」

「是非ともいらしてくださいねーっ!」


 D組がゆるキャラ? で攻めるならばこちらも美男美女の二人がいる。こっちだって若い心を掴めるはずなのだか、それが俺たちからしたら逆効果になった。


「はい、100Gです。……はい。ありがとうごさいます。楽しんで下さいね。次の方」

「えとえと! はい! 楽しんでくださいね! お手洗いですか?! えとえと……ここの突き当たりを左に向かってください!」


 正直かなり忙しい。真面目にやらなければおそい、と野次が飛んできそうだ。リンクス達もいったん客よせを辞めて受付の手伝いをしてくれているが、なかなか行列は解消できない。たまに全く関係ないことを聞いてくる奴がいるのでイライラするが我慢するしかない。


 そんなこんなで、落ち着いた頃は迷子のお知らせが聞こえてくる頃だった。広いので迷子があってもしかたない。


『迷子のお知らせをします~~』

「はい、二名様ですね。劇他の出し物もあるので、劇が始まるまで楽しんで下さいね」

「わーいっ! いこっ!」

「ありがとうごさいます」


 たくさんあった整理券の残量は残りわずかで、減り方を見れば、どれだけの人がお金をはらってまで学生を見に来るのか良く分かる。男女のカップルも何名も来たのでここはもう学園祭ではなく、単なるアトラクションパークと思われているのだろう。


「ふぅぅ、終わったぁ」

「みんなお疲れ……」

「予定してたよりたくさん来たわね……。席が足りるかしら?」


 予定では最大で100名程度受け入れ可能であったつもりなのだが、長いあいだ整理券の受け渡しをしていた俺から見れば、心配なのもうなずける。アルトとミリュは机に突っ伏して疲れをあらわにしていた。


「こんな沢山の人に見られるなんて、なんか恥ずかしいな」

「王子様がんばれよ。間違って魔王に負けてしまってもいいからな」

「負けていいよーリンー」

「ふ、二人とも……それじゃ成り立たないわよ」


 ミリュが苦笑いしながら冷静に突っ込みを入れて、リンクスはとても楽しそうな表情だが俺は面白さのためにそのような事があってもいいのではないかって思う。


「若いっていいねぇ……」

「あっ! いらっしゃいませ! えっとお一人ですか」

「…………」

「あっ」


 どこかで聞いたことがあるような声を耳にしたので思わずその声の方向を見れば、頭に包帯を巻いているドリュードがいた。そしてサングラスのような黒いグラサンをかけている。彼のようすから見て意外と怪我は大きかったようだ。一応前回のダンジョンについてお礼は言っておかないとな。今は言わないが。


「ああ、一人だ。それと人を探してるんだが……なぁそこの少女、ユウ ナミカゼってしらないか?」


 ドリュードが指名したのはアルトだ。なぜ俺を探しているのかは分からないが、俺は茶髪のウィッグを被って気配遮断まで使っている。なので俺とは思っていないのだろう。諸注意で言われたように生徒の個人情報を出すことは厳禁である。そういえば伝えてなかったと思い、彼女に耳打ちしようとしたその時に助け舟が来た。


「すみません。そういうことを教えるのは禁止されてるんです、それでこの整理券を買いますか?」

「おいおい、そんな警戒するなよ少年。そいつとは実際の知り合いなんだからさ。まぁ、買わせてもらうとしようかね」


 リンクスが少しだけ目を細くして買うか買わないかを問う。彼に不審者認定されてしまったようだ。顔が不審者と言われても仕方ないかもしれない。あそこでマスクしたら完全に不審者だしな。


 ドリュードは整理券を買った後、手をひらひらとさせながら去って行った。その軽くて何を考えているのかわからない彼の様子にリンクス達は懐疑の思いを話し出した。


「あの人なんか怪しくないか?」

「うん、怪しいよね。ユウはここにいるけど教えないで正解だったかも」

「あはは……あの人怪しいよね」

「なんで俺なんかを探しているんだかな」


 これに対してアルトも苦笑いである。相変わらず変な格好で来るものだからいつも怪しい人認定されるのは彼は気がついていないのだろうか。ちなみに、彼は昔学園に侵入したが、顔は割れていないようなので犯人と知るものは俺たちしかいない。なのでこいつはあんな怪しい格好でここに来たのだろう。そんなことを考えていたら、ゴォォンと大きな音の鐘が鳴る。


「おっと、整理券の販売はここまでだな」

「はぁ、今更緊張してきたわ……」


 この鐘がなったらおおよそ二十分後に演劇の開始である。俺たちも準備があるためこの辺で販売は中止した方が良いだろう。


「ユウ、僕頑張るよ!」

「ああ、応援してるぞ」


 アルトもやる気の程を見せて胸の前で二つガッツポーズをとる。少し元気になったようで一安心だ。

 リンクスとミリュがニタァっと変な笑みを浮かべていたがあえてスルーすることにした。


 聖霊二人は今頃屋台巡りだろう。来るとは思うが、開始しても伝えないことにしておこう。それをネタにされたくないのが本心だが。


「よーしっ! がんはるぞっ!!」

「「おおー!」」

「やる気があって何よりだ」



 ~~~~~~


「うーん、あの少年は確かにこの学園のどこかにいるはずなんだが……まぁ行ってみるか。この演劇」


 俺はユウと話をするためにこの学園へと来たのだが、未だに会えなかった。あの茶髪のやつの顔つきはユウに似ていたが、黒髪では無かったため、人違いだろう。似ている人は三人はいるっていうからな。


 演劇の会場に向かう途中知った顔が二つ見えた。


「はむはむ……さすがはマスター、こういう時に息抜きさせてくれるあたり聖霊に対する愛情を感じさせてくれますね」

「もぐもぐ……いまから主殿が演劇をするのじゃろ? 小馬鹿にしてやろうぞ!」

「良案ですファラ。ちびちび弄んであげましょう」

「よう、聖霊さんたち」


 こいつらはソラとファラ。あの状況でユウはこいつらと契約を交わしたらしい。聖霊なんて御伽噺だと思っていたら殺されかけたり、助けられたり……あいつはいったいどこから予測不能な事態を持ってくるのだろうか。


「お、でかいだけの人か。久しぶりじゃな」

「でかいだけの人ですね。こんにちは。その怪我はゴブリンにでもやられましたか?」

「おい!? 久しぶりに会ってそれかよ?!」


 聖霊の主が主なら、聖霊も聖霊だ。出会っていきなり弄りにかかってくる。ニヤニヤと笑う二人を見て、どっと疲れが出てきた。


「さ、行きましょうファラ。マスターをいじるネタはここで沢山得られるでしょう」

「うぬ、では向かおうかのソラ。かみかみだと一興なのじゃがの、なはは!」

「お前らは弄るだけ弄って放置かよ……」


 二人について行き、入ったのはホールのような広い会場。そこらじゅうに装飾がされており、時間のかけ具合を暗示させるようだった。


「あいつらとは離れておくか」


 何やられるか分かったものではない。俺はすぐにここから離れようとこそりこそりと足音を立てずに逃げたつもりだったが、背を向いた途端にガシッと両肩を掴まれてしまった。


「にこにこ、逃がしませんよ?」

「ぬっふっふ、我らが知り合い(おもちゃ)を簡単に手放すと思うかの?」

「し、知り合いの読みがおかしかったような気がするんだが?」

「気のせいです。さぁきりきり動いてください。あ、あとこれ持っててくださいね」


 渡されたのは二人分の飲み物。俺のはない。今すぐに逃げ出したい気分である。席についた途端いきなり周りが暗くなる。どうやらもう始まるようだ。


「おっ、ついに来たかの」

「こら、勝手に動こうとしないでください。見えなくても気配でわかります」

「俺も気配遮断を使ってるんだが?!」

「静かにせんか」


 ファラの一喝で静まる俺はなんとも情けない。周りは既に人でいっぱいであり、ほぼ満員の状態だ。それほど人気があり、行列を作っていたのは驚きだが、そこまで価値があるものか、見ものだな。


 カーテンが横に引っ張られ、光とともに出てきたのは受付にいた茶髪で短髪の少年。なにやらあの少年も俺を警戒していたようだが、何かおかしなところはあったのだろうか?


「うぬ、この演劇の名前【王子と囚われし姫君】の通り王子が主人公のようじゃな」

「マスターは魔王役でもやるのでしょうか、わくわくです」

「お前らのワクワクはなにか違うところに期待している気がするんだがな」

『~~の王子は、とても忙しい日々を送っていました。ですが、そんな王子にも恋する機会がありました』

「王子様、お召し物の用意ができました」

「いつもありがとな」


 どうやら今回の姫君となるものは姫という立場にいるのではなく、侍女的な立ち位置にいる身分の差がある恋愛なようだ。


「いえ! 当然のことですからっ!」

「いやいや、ありがたいよ。っとそうだ。これを君のために送りたくてちょっと街で買ってきたんだ。良かったらもらってくれないか?」

「わぁぁ……綺麗」


 王子が渡したものは指輪のようなもの。小さくて見えにくいがおそらく指輪だろう。なんとも幸せなスタートだと思っていたら、事態は突然急変する。


「くははははっ! その女は貰っていくぞ!」

「?! 何者っ!」


 王子は表情をこわばらせ、突然響いた謎の声に焦りを覚える。姫君も驚いたようすをうまく演じているようで今のところ不服はない。


「後ろだ」

「なに――ぐあっ?!」


 どこか強そうだが、黒全身タイツに角が生えた人間が突然後ろから現れると王子を吹き飛ばす。

 そう、全身黒タイツだ。


「くっ、笑いをこらえろってことかよ」

「…………やばいのじゃ」

「…………やばいですね」


 二人の様子はぷるぷるしつつも笑いをこらえているようである。それにしてもいきなりの黒タイツはずるくないか……?


「なんだ……貴様っ!」

「我は魔王様に使える者! この女は頂いていくぞ!」

「きゃぁぁぁっ!!」

「ま、待て! 待てぇぇぇぇっ!」


 悲鳴がやたら真に迫っているように聞こえたが、侍女的な女の子は魔王の手下に連れ去られて左へと消えて行った。そのあと場面が切り替わるようで一度真っ暗になる。


「おいおい、これって恋愛感動ものじゃなかったのか? いきなりネタに入ってるだろうが……」


 俺はこんなことを呟きながら、感動とはなんなのか少しだけ考えてしまった。




高覧感謝です♪


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