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七罪の召喚士  作者: 空想人間
第六章 遠征に縁あり
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第102話 脱獄

 暗い空間にカチャカチャという金属同士が擦れる音が木霊する。この空間は松明があるものの、本数は非常に少なくかなり暗い。俺には夜目があるが、もしそれが無かったなら俺は何も見えなかっただろう。

 そして、そのカチャカチャという音の原因となるのはg

 ――


「これもハズレなのじゃ……」

「ごくり、残るは後二本」


 俺の手錠を開けようと、二人が鍵を突き刺して答え合わせを行い、鍵穴にぴったりあう鍵を探している音である。

 しかし、俺が思うに数十本もある鍵をここまで連続して外すのだから、この獣人は俺の手錠の鍵を持っていないのではないかと薄々感じ始めていた。彼女らはそのようなことに気にしたようすもなく、俺が出した案である、先に俺の手錠を外したものに擽る魔法を受ける時間を二分の一にすると言う案で頭がいっぱいであり、鍵を差し込む時に妙な緊張感が漂っている


「さ、最後の一本づつじゃな」

「そうですね。そして次は……ごくり、我の出番のようですね」


 最後の一本づつを最初に入れるのはソラだ。かなり緊張気味であり、手が震えている。そこまで緊張することでもないとは思うのだが、そんなにも擽る魔法は受けたくはないのだろうか? 俺だったら絶対お断りだが。


 ソラは鍵を持っている指をプルプルと震わせながらゆっくりと手錠の穴に差し込んでいく。緊張しているためだとは思うが口呼吸で吐息が俺の手にかかる。二人とは違う意味でドキドキしてきた。なぜこんな雰囲気になってしまったんだろうか。


「ぜんぶ入りました……っ」


 捉え方によっては危ないが、鍵と鍵穴である。何らイヤらしい意味はない。いやそれも捉え方によってはあれだが。

 先程から手錠は空いていないものの、鍵穴に入る鍵と、入らない鍵がある。鍵穴に入らないのはその時点でポイ捨てである。ソラが持っている鍵は前者であったようだ。ソラは息を飲みつつゆっくりと鍵を回――


「そんな……っ」


 せなかった。鍵は何かに阻まれてカチャカチャと音が鳴るだけであり、鍵は回らない。しばらく試行錯誤していろいろな方法を試してみても、結果は変わらず鍵は回らない。あきらめがついたのか、鍵を抜くとがっくりとうなだれる


「がくーん、負けました……ファラ」

「ソラ、まだ確定したわけじゃない。ファラの鍵も合わないことだってあるぞ」

「ぬ?! ならこれも合わない可能性もあるのか……?」


 ファラは再び自らの鍵を見つめているが、見つめたところで分かるものではない。ファラもやはり緊張しているようだ。もっとも緊張させている原因、擽る魔法を止めればいいという発想もあるが、俺の意思は揺るがない。


「で、では主殿……行くぞ?」

「確認取らなくていいからな」


 俺はジト目でファラを見つめているが彼女はその視線を気にもせず鍵先を震わせながら鍵穴へと狙いを定め、一気に差し込む。どうやら第一関門は突破のようだ。


「ふぅ、なんとか入ってくれたかの」

「ファラ、ここからですよ」

「そうじゃったな、それっ!」


 ファラは両手で鍵を持ち思いっきり捻る。鍵はあっていないのにも関わらず思いっきりやってしまったので、鍵はパキッと音を立てて半ばから折れてしまった。


「おい、ファラ。折れたんだが」


 鍵が折れてしまったということはもう鍵では開けられないということ。なにせ合わない鍵が詰まっているのだから。


「な、なははは……折れてしまったのじゃ」

「はぁ、もう鍵での手錠の開放は期待できないようですね」

「結局力で壊すしかないのかよ……」


 今までの時間は何だったのか。そう思っていたその時、気配探知に俺に対する敵意が強い者たちの反応が多数感じられた。この倒れている獣人と連携が取れない事を知り、ついに獣人側も動き出したようだ。

 ちなみに獣人の特徴として連携性の高さというものが上げられる。人間より優れた統率性、連携性、そして身体能力の高さを生かし、人間や魔族が行う魔法に対応が出来るようになったようだ。図書館の本による情報である。

 因みに竜人は獣人以上の身体能力に、エルフ以上の魔法操作能力がある。流石は伝説の種族といったところだ。


 これからどうしようと考えていた時にファラが何かを思いついたようで目を大きく開く。


「! そうじゃ! 我らの想具で壊してみたり出来んかの?」

「そう言われればそうですね。かなり強力な武器であるのできっと壊せると思いますよ」

「……お前らに任せるのは正直言って怖いんだが」


 二人は何もない空間から光の塊を作り、それを手に掴むと元の世界でよく見たハンドガンが二丁ずつ。やはりちょっとだけ羨ましい。後で貸してもらおうと思う。

 できる限り手錠の鎖の部分を伸ばし、衝撃波が腕まで及ばないことを祈る。勿論のこと二人には下に向けて射ってもらう。


「では行きますよ?」

「全力で壊しに掛かるからの?」

「獣人が動き出したから早めに頼むぞ」


 二人に向かって頷くと、彼女達は魔力を込めて、引き金を引く。

 ダァン!!と前回とは大きく違う重く響く音。前回はかなり軽めの音であったのでこれは召喚のスキルの熟練度が上がったから、二人の想具の威力も上がったのであろう。しかしその威力が上がっている想具でさえ、この忌々しい手錠は破壊できなかった。


「ど、どうなっておるのじゃ……」

「かちかちですねこれは、余程マスターが警戒されていると考えた方がいいですね。ここまで硬い素材をふんだんに使った手錠というのはなかなか見ません」

「はぁ、どんだけ警戒されてるんだ俺は……さて、獣人も向かってきているし、急いで出なくてはな。戦闘では出来る限り遠慮したいところだが、二人とも前線を頼めるか?」

「勿論じゃ! 安心して守られるのじゃ!」

「ばっちり任せてください。こちらには想具だってありますので」

「なら安心だ」


 俺たちは牢獄から抜け出ると、すぐさま階段を見つけたので駆け上がる。今現在、気配探知の反応はまだ遠い場所にある。一応大丈夫だとは思うが気配遮断を持った獣人が居ないともかぎらない。警戒していかなくては。


「それにしてもこの手錠。どーするかな」


 階段を素早く登りながら、唯一の心残りであるこの手錠について考える。戦闘をするにしてもにしても早く外した方が良いであろう。この手錠のせいで魔法は使えず、帰りたいのに帰れないという状況に置かれているのだ。

 それに仕方なく戦闘をするにしても魔法と腕が使用禁止なのは辛い。先は体術で強化された俺の蹴りを喉元に当てたのにも関わらず、獣人は気絶してくれなかった。このことから彼ら獣人は蹴りを急所に当てても気絶しないほどの耐久力があることがわかる。

 気功術を纏えば押し通れるかもしれないが、纏うと同時に気配遮断が切れてしまうのだ。出来る限り身の安全を守るスキルは手放したくない。


 しばらく階段をかけ登っていると一人が異常な速度で周りを抜き去りこちらへ向かってきていることを感じ取った。周りの素早い獣人を抜き去るほどの素早さ。相変わらずいい予感はしない。


 さらに駆けると何やら大きな部屋に出てきた。その大きな部屋では沢山の魔物がいた。さきほどいた空間より明るく、薄暗い程度の明るさだ。なにやら研究所のようにカラフルな液体が瓶詰めにされてるものが沢山あった。なんの研究をしているのだろうか。


「ガォォッ!」

「ギャギャキ!!」

「ウアガァァッ!!」


 辺りにいる魔物はだいたい目が血走っているのが確認できた。完全に狂っている目だが、気配が一匹たりとも感じられない。恐る恐る観察眼を使用すると


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 合成ゴブリン レベル50 種族合成獣(キメラ)


 HP 2000/2000 MP 0 /0


 備考


 魔法によってほかの魔物と合体し、限界を超えたゴブリン。常時激しい飢餓感に襲われているため人間を見るとどんな手を使ってもその対象を捕食しようとする。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――


「き、合成獣(キメラ?)」

合成獣キメラといいますと魔法を使う上で禁忌中の禁忌な筈ですが……」

「うぬぅ……そもそも獣人がそのような技術を持っているとは思えん。どこかでこの魔物を買ったのじゃろうか」

 

 見えるのは 羽が生えているゴブリン、炎を纏っている狼、牙が黒光りしている猪など多種多様である。共通するのはそれぞれが俺たちを捕食しようとばかりにギラギラと目を輝かせている。相当にやばそうだ。レベルはどうってことはないがな。


 また、魔物を買うということは世界の何処でも犯罪とされている。魔物が買えるなら誰だってテロを起こせるようになるからな。元の世界が武器を持つことを禁止した法律に近いイメージだ。


 獣人たちがここまで向かって来ているのでこいつらと戦っている時間はない。俺たちが取った手段は


「無視だ。駆け抜けるぞ」

「了解しまし……たっ!!」

「わかったの……じゃ!!」


 二人は同時に駆け出すと、奥に見える上りの階段に向かい、その道を塞ぐ邪魔な魔物に向かって両手の銃で一匹につき一発ずつ射ち抜いた。


 ガトリング弾が射出されるかのような轟音が細かく連続して響き渡り、音だけでこの洞窟を震わせる。


「ギャ?!」

「ガォ?!」

「グォッ!?」

「おっと……凄まじいな」


 凶弾は炸裂し、被弾した魔物たちは液体を散らしながら倒れていく。そのようすに俺は思わず驚いてしまった。様々な大きさの魔物がいるのにも関わらず、全ての弾丸は的確に一発一発それぞれの頭部を貫いたからだ。チートかと思うぐらい的確な射撃時である。ドリュードも凄かったが、両手持ちでここまでのエイムを魅せてくれたのだ。彼よりすごいと思う。


「さ、逝くぞ主殿!」

「ごーごーです、マスター」

「流石は伝説の聖霊だなっ」


 銃撃により空いた道を駆け抜ける。二人の銃撃は留まることを知らず、二人は作った道を塞ぐことがないように、立ちふさがる敵が道に飛び出す前に射ち抜く。ドリュードもこの様子を見れば、あまりのテクニックに涙目になっていることだろう。

 魔物に追われつつ、俺は二人の先導についていく。たまに後ろから襲いかかって来る魔物もいるが、余裕で回避可能であったので特になんの影響もなかった。さらに階段を駆け上れば何やらシャッターのようなものが見つかる。現在は上に上がっていたが、下ろせば魔物に追いかけられることは無さそうだ。


「ソラ、ファラ。あのシャッターを下ろすぞ。時間はないがこの魔物を外に出すのも後々不味くなりそうだ」

「じゃが足の早い魔物は……」

「俺が抑える。頼むぞ二人とも」

「っ! びしっと了解しました」


 二人は即座にシャッターの前へ移動すると、魔力を体に巡らせる。どうやら凄まじく重そうなシャッターなので魔法を使うようだ。


「来やがったか」


 後ろから迫る魔物たちの相手をするにあたって、できないことを確認しておく。気配遮断が解けてしまうので、身体強化の機能がある気功術は使えない。

 獣人たちは俺の気配を探知しているのかどうだかは分からないが、取り敢えずスキルにより俺の位置はバレていないはずだ。とりあえず頑張ってみよう。


「グオォォゥ!!」

「出来ればこの手錠を壊して欲しいところだなッ!」


 気功術を発動しなくても魔力を巡らせることはできる。状態異常は未だに回復していない。この治りの遅さのようすだとゲームのように専用のアイテムが必要になりそうだが、俺には状態解除ディスペルがある。まずはなんとかこの手錠を外せればいいんだが。

 まず最初に来たのは猪突猛進してくる狼。数は一体。後ろには何体かの同じ魔物の狼もどきがいる。先導するかの物が最速の狼だったようだ。取り敢えずこいつを止め、あわよくば手錠の鎖を壊すため、俺は鎖の部分を支点に受け止める事にした。

 イメージとして狼が大きく口をあけたところに手錠の鎖の部分を突っ込む。噛み砕かれて突破されたらそのまま膝蹴りを叩き込む。それでも壊れなかったらコイツの勢いを完全に殺してから蹴りを叩き込む。どちらにせよこいつを抑えなくてはいけない。


「かなり怖いが、やってみるか」

「ガォァァァッ!」


 俺の予想通り狼は大きな口を開けて飛びかかってきた。しかし、ここで予想外の事態が起きてしまう。狼の口腔の横幅が完全に手錠の鎖の幅を超えている。このままでは腕ごと噛み付かれるのがオチだ。


「無駄にでかい口しやがって……」


 俺は手錠を壊してもらうことを諦めて少しだけ左にジャンプし、狼の噛み付きから回避する。

 ギリギリまで引きつけておいたので、ガチン! と音がした瞬間、歯並びが良いともいえる狼の口が閉じられる。あんなのに噛み付かれたら、本当に腕が千切られそうだ。

 次に着地した瞬間地面を再び蹴り、地面から離れる。地面を蹴った足とは逆の足で狼の胴体に向かい勢いを殺さず蹴りとばす。


「ギャワン?!」


 なかなかのスピードで飛んでいった狼はその吹っ飛んでいる最中に見えなくなった。やはり耐久力はそれほど高くないようで、割と楽である。そして二人の様子を見ると体の内から魔力が高まっているのが確認できた。


「ぬっふっふ、主殿が期待しておるぞ、ソラ」

「これはアピールポイントですねファラ、もしかしたら魔法の時間が減るかもしれません。頑張りましょう」

「うぬ!付加エンチャント!《磁強化マグネットフォース》! 」


 ファラが放ったのは灰色の細いビームのようなもの。しかし威力はないようだが、そのビームは上にとどまっているシャッターにぶつかった。その後はなんの変化も起きない。

 何の為にうったのかは疑問ではあるが、今は目の前の魔物の対処を――


「主殿! 準備おっけいなのじゃ!」

「うらっ! もういいんだなっ」


 迫り来る狼の大顎に蹴りを入れつつ、シャッターの向こうへと向かう。あのシャッターはおそらくゆっくりと下ろすものだろう。閉まる寸前の時にギリギリで俺が向こうへ滑り込みすると思っていたが、何かあるようだ。


「おっけいじゃ! ソラ!」

「了解です、《磁力変化ベクトルチェンジ》!」


 魔物をおいてシャッターの向こう側へたどり着き、ソラが魔法を放った途端、凄まじく重そうなシャッターがすごい速度で落ちてくる。正直言ってかなり危ない。シャッターの落ちる衝撃波で転びかけたとか恥ずかしくて言えない。

 ズドォォン! と凄まじい爆音を上げながらシャッターはそこの下にいた魔物すら関係無く潰して、地面にたどり着く。潰された魔物は見るも無惨な姿になっているだろう。


「さて、出口はもうすぐそこはのずじゃ!」

「さっさと行きましょう」

「やっと出――っ?! はぁ……出たくないんだが」

「ぬ? 急にどうしたのじゃ?」

「? どうかしましたか?」


 俺はインドア派ではあるものの、さっきから必死出ることを望んでいた俺がここから出たくない、と言った理由はしっかりとある。


「少し来るのが遅かったようだ。今から俺が前線にでる」

「まさか……」

「どすどすと音が気こえます。やはり少し遅かったようですね」


 二人は顔をしかめて聞こえる音の正体を予測する。かなり沢山の足音。それにそこそこ強い者の感じがある。残念ながら俺たちは獣人が入口まで来る時間にこの洞窟を出ることは出来なかったようだ。


「ゆっくり、慎重に出るぞ。光が見えるから出口はすぐそこのはずだ。基本逃げるが、戦闘は合図をしてから始めてくれ」

「りょ、了解じゃ」

「分かりました」


 俺たちはゆっくりと光の差し込む階段を登る。光が眩しくなってくると同時に気持ちも重い。なにせ、入口では獣人たちに出待ちされているのだから。

 階段の一番上にたどり着き、両開きの鉄の扉が目に入る。俺達は一度目を合わせてに見つめ合い、頷いた。二人は後からで、俺が最初にここを出る。扉を開けて出た瞬間、弓矢などで二人が怪我をしたら困るからな。

 鉄の扉は二人が開けてくれるというので任せるが、どんな攻撃が来てもいいように俺は気功術を纏っておいた。さぁ、来るなら来い


 ゴゴゴゴと重々しい音を立てながら鉄の扉は開く。――が、光が差し込んだ瞬間に弓矢が飛んでくるということはなかった。ゆっくりと歩いていき、そしてついに外に出る。二人も続いて外に出た。


 久々に見る朝日。既に日は登っていたようだ。風も心地いいが、空気はピリピリしていて最悪である。周りを見渡せば周囲に弓矢を構えている獣人が数十名。近接先頭が得意そうな獣人が数名ほど立ちすくんでいた。

 やはり思ったとおり出待ちであった。距離はあるものの囲まれている。


「はぁ、失礼ですが俺たちを狙う理由はなんですかね? 人間だからか?」

「黙れっ! このお方の前で無礼な口を聞くんじゃない!」

「まて、カイン、落ち着け」


 白い狐の獣人を押しのけ、奥から出てきたのは銀髪で九本の尻尾を持つ、ギルドにて俺を攻撃した獣人であった。口調はファラに似ている感じはする。胸はあるのでレムもいずれああなってくれるだろうか。……って何考えてるんだ俺


「私たちから大切なものを奪い、なおかつあの子にも手を出した黒髪の人間。ギルドでは仕留められなかったものの、今回は確実に仕留めに来たぞ?」

「やっぱり同一人物か。そもそも俺はお前たちから何も奪って……」

「この世には存在しないとされる黒髪。お前だけではなく更に黒髪の女子めこを二人も連れてまだとぼけるか?」


 ソラとファラは頭にはてなマークを浮かべているだろう。俺でも何のことだか分からない。そもそもこいつらに俺たちの話を聞く気はあるのだろうか? 全く話を聞いていない気がする。


「……とりあえずだ。俺達は今すぐ人間界に帰りたいんだが手錠を外してくれないか? 外してくれたらすぐ帰る。お前らに危害は加えないと約束しよう」

「ふざけるな!! 我らから沢山の大切なものを奪ったお前たち黒髪共を許しておけるわけかろうっ!? さっさと――死ね」


 目の前の彼女は、同じ銀髪のレムからは想像できないほどの大きな声をあげて、上げていた手を手を振り下ろす。その瞬間沢山の弓矢が一斉に、放たれた。


「ソラ、ファラ《戻れ》」

「?! ちょっと待つのじゃ?!」

「っ、マスター?!」


 俺が指示すると二人は光と共に消えていった。流石にこの一瞬で彼女たちも守り切れるとは思えないのでこうするのが一番安全だろう。

 さてこの弓矢の嵐を回避するには、まずは移動しなくてはいけな――


「ぐぅぅぅっっ!?」

 

 何日ぶりかのバリバリ電撃が走るようなとした感覚があった。突然過ぎたこともあり、何の予測もしていなかかったので弓矢が飛来しているというのに。肩膝をついてしまう。なんで急にっ――!?


「逃がさんぞ黒髪!」


 見れば何かのリモコンのようなものを俺に向けているようすが確認できた。あれのせいで手錠から電撃が送られてビリビリ来ているようだ。


「くっ間に……あえ……!《障へ……》」


 そのスキルを発動しようとした途端、俺の目の前に凄まじい風と共に光が発生する。上から降ってきたようだが、攻撃魔法の類ではない。そしてこの光は、最もこの異世界で長く付き合ってきた彼女の転移の時に発生するものだ。

 弓矢は風の影響を受け、全て途中で落ちてしまい、俺の体を貫く事は無かった。


「突然なんのことだかは知らんが……このチャンスはのがしはしないっ!!《貫矢》!」


 なにかの武芸を発動しながら、どこからか取り出した弓矢を放つ。その弓矢は威力もスピードも桁違いだったが、転移してきた彼女によって素手で止められる。光から素手が出ている状態だ。


「ふふふ、ユウ、無事でよかった。僕信じてたよ?」

「ははは、ほんとお前はヒーローだな。俺が女だったら惚れそうだ」

「っ!……もーユウったら……」

「あると……ずるいです」

「アルト、貴方って人は私の時といい、今回の時といい……もういうことも無いです」


 光の中から出てきたのは、以前より何倍もたくましくなった仲間たちであった。もちろん肉体的な意味ではないものの、なにか頼れそうな雰囲気が以前より強く出ている。


「だれだっ……貴様らっ!?」


 光と風が収まると笑顔であったアルトが、徐々に困ったような微妙な顔へ変化してくようすがはっきりとわかった。その理由とは――


「ユウ……拘束プレイ好きなの……?」

「いや違うから」


 久しぶりの再開だというのに、大きなに勘違いをされてしまった俺であった。


ご高覧感謝です♪

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