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アムルディアの戦将《ウォーロード》 ~アールシア戦記TRPG異譚~  作者: GAU
第二章 “聖騎士”サーシャ・レクツァーノ
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第75話


 突然の悲鳴に駆けつけたロンドが見たのは、切り伏せられた皮鎧の少年と、震える神官の少女。そして五体もの骸骨に立ち向かう今ひとりの少年の姿だ。

 人骨らしき骸骨たちは、小剣や手斧を手にカタカタと音を立てながら立ちふさがる少年へと攻撃を仕掛けていた。

「スケルトンかっ?!」

 ロンドは声をあげながら少年に加勢する。

 鋭く振り下ろした剣を、骸骨が小剣で受け止めた。筋肉など無いにも関わらず、力強いそれがロンドの腕に伝わる。

「くっ?」

 ロンドは剣を押し込もうとして、逆に押し退けられてしまい、目を見開いた。

「なんだっ?! 強いっ?!」

 崩し掛けた体勢を強引に踏ん張って盾を構える。

 ロンドは油断無く相手を見た。スケルトンと戦ったことのある彼だが、そのときはこれほどの強さは無かったはずだった。


 骸骨が踏み込みながら小剣を振りかざした。

「ちぃっ!」

 ロンドはそれを盾で受け止めると、剣を横薙ぎに振るった。

 それが骸骨の左側頭部に命中し、砕きながら半ばまで食い込んだ。

 会心の手応えに、笑みが浮かぶ。が、すぐに引きつった。

 剣が抜けないのだ。

「くっ!」

 ロンドは慌てて引き抜こうとするも、骸骨は左手でロンドが剣を持つ腕を掴み、ふたたび小剣を振るおうとした。

「しまっ?!」

 ロンドは己の失策に目をみはり、その一撃を覚悟した。

 瞬間。

 骸骨の眉間に矢が突き刺さり、ロンドの剣でのダメージと合わさって頭蓋は砕けた。

 さらに光の矢が骸骨の腕を粉砕し、ロンドは自由となる。

 遅れてやってきたリンとケインの攻撃だ。

「すまないっ! リン! ケイン!」

 仲間からの援護に振り向かずに礼を言うと、そのまま前蹴りで骸骨を突き放した。そして渾身の力を込めて剣を振り下ろす!。

 その斬撃を受けた首無し骸骨が、粉々に砕け散った。

 だが、敵はまだ残っている。

「ロンド! そいつはスケルトンじゃない! ボーンサーバントです!」

 ケインの指摘を聞きながら、ロンドはさらに迫ってくる骨従者を迎え撃った。

 ボーンサーバントは低級なゴーレムモドキだ。低レベルの魔術師でも簡単に作成できるのが特徴で、簡単な作業を言いつけることもできる従者だ。

 ほかにも木や石を素材としたものもあるが、ボーンサーバントは見た目こそ悪いがこうして武器を持たせて戦わせることも可能なくらい優秀だ。スケルトンと比べても一段も二段も強いのである。この辺りの優秀さから、さらに高位で戦闘能力を重視したボーンウォーリアという上位種が存在するほどだ。

 その事を思い出してか、ボーンサーバントの一撃を受け止めたロンドの表情が引き締まった。さらに横合いから繰り出された手斧を盾で受け止める。

 相手はまだ四体残っているのだ。油断はできない。

 向こうの少年が一体、自分が二体引き受けているが、残る一体は自由に動ける。

 その一体が、弓を構えたリンの方へと移動し始めた。

「リン! ケイン! そっちに行くぞっ!」

 すぐさまとって返したいが、二体を相手に背中は見せられない。さりとてボーンサーバント二体を瞬殺できるような腕も無いロンドには、警告を発した後はふたりを信じるしかないのだ。

 そして警告を受けたリンは、弓に矢をつがえて放つ。

 が、矢じりは骸骨に突き刺さらない。

 骨と骨の隙間に挟まり、有効にダメージを与えられていなかった。

 リンは弓を素早く背負い、腰から短剣を引き抜いた。

 接近戦用の予備武器だが、ボーンサーバント相手にどこまでやれるかわからない。

「き、来なさい!」

 リンは緊張を滲ませながらもボーンサーバントに相対した。

 一方でケインは冷静に戦場を観察した。

 戦力的にはこちらが劣勢である。それは確実だ。

 この状況を打破するにはどうすべきか?

 彼は思考を巡らせながら、ボーンサーバントを迎え撃つリンの武器へと魔法を使った。

「“その刃に力宿せ!” 【エンチャントウェポン】!」

 ケインの周囲に集まった魔力が、言霊と共に解放され、リンの短剣へと集束する。それに気づいて、リンは笑みを浮かべた。

「! ありがとうケイン!」

 敵から目を離さずに礼を言い、そのままボーンサーバントに切り付けた。

 魔力によって強化された刃は、骨の従者を容赦無く一撃四斬に素早く切り刻んだ。

 盗賊であるリンは、ロンドのような戦士と違い、強力で重い武器を扱うことは難しいが、取り回しの良い軽い武器による今の一撃四斬のような攻撃を得意とする。

 これはリンが習得している盗賊の攻撃用スキルである【フォアエッジ】である。

 ゲーム的に言えば、命中判定にサイコロ一個を追加し、かつダメージにスキルレベル×4点加算するという強力なスキルである。

 低レベルからでも使えるスキルながら破格の威力であるこのスキルは、シーン内一回制限と高いMPコストを必要とする。

 現にリンはこの一撃だけで、MPの二割以上を消費しているのだ。

 それでも、その一撃は高いダメージを叩き出していた。

 四斬のうちのひとつが、骨の従者に致命的な一撃をもたらしたのだ。

 そう、クリティカルサクセスと呼ばれる通常より良い成功が発生したのだ。

 アールシア戦記TRPGでは、命中判定のサイコロの出目のうち、六の目が二つ以上あればクリティカルサクセスとなる。

 【フォアエッジ】で命中判定のサイコロを一個追加出来ることで、その確率が大幅に上昇するのだ。

 そして、クリティカルサクセスが発生した攻撃はダメージが上昇する。

 リンはその一撃を以て、骨の従者に大打撃を与えたのだ。

「よし!」

 会心の手応えに快采をあげるリン。そのままロンドを見れば彼が骨の従者の一撃を肩口に受けたところであった。

「ロンドっ?!」

 幼なじみが撒き散らした血飛沫に、一転して悲鳴をあげるリン。

 その視界に、神官の少女がくの字に曲がった短杖を彼に向けたのが見えた。

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