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アムルディアの戦将《ウォーロード》 ~アールシア戦記TRPG異譚~  作者: GAU
第一章 “戦将”メルスノウリーファ
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第19話


「やあああぁぁぁああっ!!」

 気合いを込めて雄叫びながら、スノウが剣軍の先陣を切って突撃する。

 将が最前線に立って突撃するというのは、本来なら戦術的に下策だ。

 しかし、戦将であるスノウには、味方の先頭に立って戦うことにより、配下と自身に戦闘ボーナスがつくスキルがある。

 さらに、【ウォークライ】という鴇の声を挙げることで自身と味方に攻撃ボーナスを発生させるスキルを使用し、全軍の戦闘能力を底上げできる。

 現状で先陣をきって突撃することに大きな意味がある以上やらない選択肢は無いだろう。

 このスノウの突撃により、カレンもまたボーナスを受け取っていた。

 強い精神の高揚と自身の使う攻撃魔法へのボーナス効果を認識し、さらに【エレメントスペル:火】と【シュートマジック】で攻撃を仕掛けていく。

 MP残量の関係から高コストの魔法は使えないが、低コストの初期攻撃魔法ならまだまだ使用できる。

 高レベルならではの、魔法の効果の高さも手伝って、それすら侮れない威力を発揮できる。

 とは言っても、高レベルの攻撃魔法に比べれば見劣りするのは明らかだ。

 カレンはそのことを十分承知しており、スノウの援護に徹し始めていた。


 そして、突撃するスノウをスキュラクラーケンが押し止めんと鋏を振り回した。

 それを見てスノウが叫ぶ。

「防いでっ!」

 それに従い数十の剣が鋏の軌道をそらさんとカーテンのように並んだ。

 勢い良く振り下ろされたそれが、数本の剣を巻き添えにしながらスノウから逸れた。

 続けて剣軍がスノウを追い越し、スキュラクラーケンの本体へ肉薄する。

 もはや本体を守る蛇頭も甲殻も失い、獣魔の本体へと剣軍が突き刺さ……らない。

 最後の砦とばかりに、もうひとつの鋏が剣軍の進路を阻んだのだ。甲高い音を立て、剣達が弾かれ、砕かれる。

 しかし、防御のためにかざされた鋏の真下を、金糸をたなびかせてエルフの少女が走り抜けた。

 それに気付いたスキュラクラーケンが、鋏を振り下ろす。

 が、スノウを乗せた水のサーフボードはそれを避け、跳躍した。

 同時に紅と翠の魔剣が炎と風の刀身を伸ばした。

 それが、スキュラクラーケンの巨大な身体を切り裂く!



 キョゥアアァァァァアッ?!



 スキュラクラーケンが悲鳴を挙げた。スノウは構わずサーフボードから飛び出し、身体をしならせるように横回転させながらスキュラクラーケンへ炎と風の二刀を繰り出し切りつける。

 それに呼応するようにして、剣軍が飛来し、スキュラクラーケンへ突き刺さっていく。

 さらに【ブラストイリュージョン】で爆破し、紅い魔剣と翠の魔剣を獣魔へ突き刺した。

 溢れる炎と嵐が、獣魔の体内を蹂躙する。

 堪り兼ねてかスキュラクラーケンが暴れ始め、スノウを振りほどこうとする。

 彼女はそれに逆らわず、二本の魔剣を手放し、宙を舞った。

 さらに、黄色の魔剣と蒼い魔剣を引き抜き、空中で幻剣の一本に着地。

 ぐんっと身体を沈めるように屈んで、剣を蹴って飛翔する。

 黄色い魔剣が砂の刃を伸ばし、蒼い魔剣が水の刃を伸長させる。

 そのまま二刀を振りかざし、急降下の勢いを乗せてスキュラクラーケンを切り裂いた。

 ふたたび巨大獣魔が声を挙げた。

 スノウが獣魔に激突仕掛けた寸前に、幻剣の一本が滑り込んで主を救う。

 剣の腹に着地して、そのままサーフィンよろしく飛翔する剣に立ち乗りするスノウ。

 その眼はまんまるに見開かれていた。

「て……テーブルトークじゃ出来なかったのに!?」

 飛行する幻剣上でバランスを取りながら言う。

 そのまま急上昇して暴れるスキュラクラーケンの真上へと駆け上がった。

「フィアフェアリーっ!」

 眼下に獣魔を見下ろしながら叫ぶスノウ。その声に応えるように、紅い魔剣は炎と化し、翠の魔剣は風に変じてまっすぐ主の元へと飛んだ。

 さらにスノウは剣軍を作り出し、海上で暴れ続けるスキュラクラーケンを睨む。

「行けっ!」

 号令と共に巨大な獣魔へと降り注ぐ、剣の雨。さながら豪雨が海を叩きつけるように派手な轟音を響かせて、剣群がスキュラクラーケンの身体を切り刻んでいく。

 もはや身を守る部位も、甲殻も無く、全身に剣を突き立てられるスキュラクラーケン。

 小山のようなその巨体に、びっしりと剣が刺さり、さながら針の山のようである。

 それでも、この獣魔の強靭な生命力《HP》は尽きない。

 それを見越して、スノウがすべての幻剣を【ブラストイリュージョン】で爆破した。

 無数の爆発音が海に響き渡り、大気は震え、海面は一瞬クレーターを作った。

 スキュラクラーケンの巨大な身体が、爆煙に隠された。

 それを割るように大きな鋏が姿を表すが、それは崩れるように海に向かって落ちていく。

 スキュラクラーケンの受けたダメージは創造を絶するほどだ。前日にスノウが戦ったハイギルマンならば、数十体は葬れるほどのダメージになるはず。

 しかし、スノウもカレンも気を抜かなかった。

 この巨大な獣魔が、まだ生きていると確信しているのだ。

 エルフの少女は息を乱しながら眼下の巨体を見下ろしていた。さすがのスノウも自前のMPはすっからかんである。

 今は“ヘスペリアの戦鎧”に蓄えられている魔力を使っている状態だ。

 鎧に充填された魔力は使用してしまうとアイテムやスキルでは回復せず、自然回復させるしかない。TRPGのルール的にはひとつのシナリオが終了し、次のシナリオが開始されると回復されることになっている。

 シナリオの区分が無くなった今は、シナリオ制限のスキルと同じく、十日ほど経たねば回復しない。

 だが、いかに高レベルキャラとはいえ、スキュラクラーケンはたったふたりで戦うような相手ではない。

 手札を温存していては、それを切るタイミングを失ったまま敗北しかねない。

 だからこそ、スノウもカレンも惜しげも無くリソースを消費していくのだ。

 やがて煙が晴れると、全身がズタズタになり、焼けただれた身体をさらすスキュラクラーケンの姿が現れた。

 防御力の低下した甲殻は砕き散らされ、軟体生物のような本体が完全に露出している。

 それもあちらこちらが裂け、爛れ、体の内側は曝しつつどす黒い血を流していた。

 それを見てスノウが顔をしかめた。あからさまにグロテスクな状態を直視して、気分が悪くなり掛けたのだろう。

 それを振り払い、スノウが蒼と黄の魔剣を構えた。

「フィアフェアリーっ! お願いっ!」

 スノウの声に、彼女の一番の相棒達が応えた。

 スノウの元に戻っていた紅と翠の魔剣が姿を顕し、即座に炎と風に変じた。

 それはスノウが手にした蒼い魔剣と黄色い魔剣に絡み付いていく。

 翠風が蒼い魔剣へ。

 紅炎が黄色い魔剣へ。

 それぞれが混じり合い、氷雪の魔剣と溶岩の魔剣となる。

 今は四本に別れているが、本来の“フィアフェアリーシスターズ”は、一本の強力なアーティファクトだ。

 森羅万象の精霊力を操る魔剣は本来の力を失い、四人の妖精の魂と融合することで永らえている。

 その力の一部を、スノウと妖精達の絆が一時的に呼び戻したのだ。

 精霊力を合成し、強力な力を宿した氷雪の魔剣と溶岩の魔剣を構え、スノウはスキュラクラーケンを見やる。

 そして、足場にしていた幻剣をコントロールし、巨大獣魔へ向かって急降下した。

「やああああぁぁぁぁああっっ!!」

 裂帛の気合いを込めて、剣軍を従えたスノウが飛翔する。

 スキュラクラーケンはそれを迎え撃たんと身体をスノウに向けた。

 くちばしから水流のブレスを吐き、残った鋏を振り上げ、幾本もの蛸足も伸ばして彼女を打ち払わんとする。

 だが、大木の幹のように太い水流は、溶岩の剣によって切り裂かれて蒸発し、蛸足は氷雪の剣によって凍りついて砕けた。

 残っていた鋏も、カレンが正確な射撃魔法で撃ち抜いた。

 もはや防御力など無きに等しかったそれは、ひどくあっさり破壊された。

 そして、開けた道を飛翔したスノウが、溶岩と氷雪の魔剣を交差させスキュラクラーケンの本体を×字に切り裂いた。

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