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その5

私は外でけたたましく鳴り響くサイレンの音で目を覚ました


部屋の外からも普段は走らない使用人達が皆走り回っている音が聞こえてきた


それの意味するところを悟った私はすぐに実戦用の防具と弓を持ち、部屋から出る


丁度近くにいた使用人さんに声をかけようとして、こちらに向かって駆け足で来ていた永琳に気が付いた


「その格好をしているということは、今何が起こってるかも分かってるようね」


「はい、これから詰所に行って指示を仰ごうと思いまして」


一瞬永琳が物憂げな表情をした気がした・・・が


「頑張って」とだけ返された



訓練所に併設された詰所に向かうと疎らではあるものの、実戦向けの訓練をしている人たちが既に集まっていた


「・・・全員集まったな

状況は見ての通りだ、外から妖怪の群が攻めてきた

今は当直の兵士達が迎撃しているが、いつまで保つか分からん

そこでお前等には後方からの支援に回ってもらう

各班に配布した端末に随時情報が送られてくるから、それに従って動け」


解散、の掛け声と共に対妖怪用に特化した術式の組み込まれた矢のケースを持ち出す


私の所属する班の班長・・・確かアーサーだったか・・・が走りながら端末に表示されている情報に目を通し

「我々には西の第15ゲート付近での迎撃指示が出ている

余り激しくはないそうだが・・・無理はするなよ」


迎撃指示のポイントに近付くと、機関銃(マシンガン)の発砲音が聞こえてくるようになった


それが徐々に大きくなり、姿が見えるようになったところでアーサーが停止と伏せの指示を出した


「・・・端末の情報は当てにならんな


今から遮蔽物に身を隠しながらの援護攻撃を行う

あちらさんから狙われんよう適度に散開しろ、OK?」


彼の下の訓練生達がジェスチャーで肯定の意を示すと、彼は


「では、Good luck」とサムズアップをして、離れていく


それに従うように、私も物陰に身を隠しながら距離を置く


適度に散開したことを確認した私はケースを開け、矢をつがえた


そして物陰から身を乗り出して矢を放つと、人に似た形をした妖怪の額に直撃した


その妖怪が倒れるのを見届ける前に素早く物陰に隠れる


すると一拍おいて頭上を何かが高速で飛んでいった


一瞬だけ振り返って背後を確認し、

壁にぶつかっていたのは最早原型を留めていない兵士だった


一気に冷や汗が吹き出し、脚が震え出す・・・が甘えてはいられない


気を抜いたら次は自分がああなるのだ


発砲音がやや疎らになってきた頃、後方から防衛軍直属の兵士達が現れた


彼らは乗ってきた車両から降りると、素早く散開しながら妖怪が居ると思われる方向に向かって躊躇なく銃のトリガーを引く


丁度矢をつがえて放つタイミングであったため、立ち上がってみると十人ほど居たはずの先行迎撃隊は殆ど残っていなかった


・・・と、妖怪のうちの一体と目が合った


まずい・・・と思った頃には近くにいた兵士に倒されていた


そのすぐ上を妖怪が放ったと思われる咆哮が薙いだ


一瞬おいて後ろの壁が吹き飛ぶ音が聞こえてきた


言葉を発する前に「気をつけろ!!」

とだけ発した兵士は離れながら構えた砲を放つ


複数の兵士達がタイミングを合わせるようにして一斉に大火力の砲を放ったため、前方から激しい爆発音がした


だが、まだ終わったわけではなさそうだ


再び前方から激しい発砲音が聞こえてくる


先ほど私を押し倒した兵士が隠れていた物陰ごと吹き飛ばされる


まずい、と思った私は咄嗟に吹き飛ばされた兵士が居た方向とは反対側の物陰に素早く移動する・・・と、さっきまで隠れていた遮蔽物が吹き飛ばされていた


再び矢をつがえながら、私はあることに気が付いた


ここ最近、レーザー発振器が兵器用に小型化に成功したばかりだ


それでも大型のライフルサイズではあるものの、1人で携行する事なら可能な程のサイズだ


何故わざわざそれを配備していないのか


次に矢を放とうと立ち上がった瞬間、またも先頭にいた妖怪と目が合い



「・・・詞?」


その妖怪が私の名を呼んだ


その一瞬の静止を軍属の兵士が見逃すはずもなく、銃を構えて撃とうとしたその瞬間



激しい地響きと轟音が背後から伝わってきた


思わず背後を見ると、丁度都市の中央に当たる所から明らかに有人用のロケットが空に向かっていくのが見えた


それも、一機だけではない


複数のロケットが空に向かって打ち上げられたのだ



それが意味するところに気づいたのは私だけだったようだが、気づけば


「総員退避!!」と叫びながら都市の中心から離れるように駆け出した


軍属の兵士達はポカンと口を開けたまま固まっていたが、やがてその意味に気付いたようで


「そういうことか、我々は捨て駒にされたのか」


と誰かが呟いて、膝を折った


生き残っていた妖怪達も固まっていたが、先程私の名を呼んだ人型の妖怪が何か周囲の妖怪達に伝えると、周りにいた妖怪達も一斉に走り出した


私の名を呼んだ妖怪が併走を始めた頃、背後から再び轟音と激しい地響きが伝わってくる


首だけで後ろを確認すると、都市の中心部から強烈な火球が膨れ上がっているのが見えた


「・・・ッ!!

こっちに!!」


と併走していた妖怪が叫び、前方に見えた穴に投げ込まれる


直後、周囲を強烈な光が覆い、私の意識も吹き飛んだ

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